(新名称) 法と公正手続きへの基本的理解が欠如した原子力規制委

(旧名称) 九州電力第三者委員会、郷原委員長、そして枝野経産大臣への疑問

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 おそらく、田中委員長の根本的勘違いは、原子力規制は、「科学」だけの議論だと思っている点にあります。このブログで縷々述べてきたように、それはそうではなく、「規制行政」としての役割、責務を果たすことが必須です。「規制行政庁」としては、公正手続きを踏むことが求められます。利害関係者の意見を十二分に聴き、これに対して判断の理由・考えを示すことは基本中の基本です。また、安全のために他のすべて要素を顧みないというのではなく、ともに憲法上の要請である経済活動の自由や不利益措置の不遡及の原則等との比較衡量、電力の安定供給の必要性とバランス、憲法上の比例原則に立った検討等が、規制行政庁としては必須です。それらの考え方の趣旨は、米国NCRの「良い規制の原則」にも含まれています。
 そういった諸々の考慮要素をしかるべく把握するためにも、関係者と会って問題の所在や論点を把握することが必要なのです。
田中委員長は「科学(だけ)に基づいて判断していく」と言っていますが、有識者会合をみてもわかるように、科学的判断の基準も示されない、根拠に基づく合理的推論もなされない、規制基準策定の際に(原子力土木工学、電気等の)学会としての意見を「一顧だにしない」というのは論外で、科学に基づく判断になどなっていません。各分野の科学的知見をすべて反映した上での合理的推論に基づく判断をして初めて、その処分等が科学的合理性ありとして認められる、というのが規制行政というものです。
  
●田中委員長の発言を、原子力規制委会合や記者会見で見て、しばしば感じるのですが、彼は、各種有識者会合の議事録や提言書をろくに読んでいないような気がします。また、規制委会合での議案についても、事前に事務局から十分に内容の説明を受け、こなしているわけでもないようにも感じます。「自分は専門ではないのでよくはわからないが」と言いつつ若干のコメントはしますが、思いつきの域を出ない印象です。


 この点に関連しての田中委員長のもうひとつの決定的勘違いは、委員会や事務局内部で、ブレーンストーミングを含めて議論をすること自体、「透明性」を損なうと思っていることでしょう。そして、委員同士の議論は、委員会会合の場だけで行うことが「透明性」確保の上であるべき姿だ、と思っていることです。
 実際、記者会見で、ほとんど委員同士では話さないと堂々と言っていますから、驚くべきことです。これは、本末転倒の典型です。
 求められるべきは、あらゆる関係者の主張を集約し、問題の所在を把握し、論点を整理し、科学と法令の観点からの判断基準を明確にし、それに則して、規制委・規制庁の判断としてどうあるべきか? 判断プロセスとしてどうあるべきか? 何が担保されることが必要か? といった点を、それぞれの委員の専門分野の知見や情報を共有しながら検討し、結論に導いていくことのはずです。それらは、非公式のブレーンストーミングも含めて議論を重ねないと、実質的なものにはなりません。自問自答しながら、議論というのは進んでいくものです。
 ところが、それらの議論を公開しないでやると、「透明性を損なう」ので、そもそもやらないというわけですから、実質的な検討が期待できようはずもありません。


それでいて、活断層の各有識者会合での議事運営、議論内容を見ればわかるように、判断基準がそもそも示されない、各会合ごとに基準も手法もばらばら、承継した原子力安全委や保安院での検討も無視等、規制行政の根幹である「透明性」と「予測可能性」が全く担保されていません。
 意思決定過程の透明性の確保という要請はありますが、しかしそれは、内部での議論の場、物理的発言そのものを公開するということではなく、「内部での議論としてこういう点が論点として整理され、それぞれこういう議論もあったが、こういう理由、基準、事情からこういう判断になった」といった点を明らかにすることこそ、実質的透明性の確保につながることだと思います。
 田中委員長のこれまでの一連の発言は、


 「何も議論はしません。でもその会合の映像と議事録とを公開しているから透明性があります」


 と言っているに等しく、本来の役割と期待に即すものではありません。
 


塩崎氏は、規制委設置法案の審議の際に、3条委員会化への修正を、野党サイドで主導した政治家でした。その際、菅直人元総理や枝野経産大臣ほか民主党的行動パターンを目の当たりにして、政治による恣意的な介入を阻止しなければならないとの思惑の下、3条委員会化することはやむをえなかったとしても、こうなることの歯止めをしておかなかったことは、塩崎氏以下の自民党の失敗だったと思います。

 歯止めをかけるチャンスは2回あったはずです。一回目は設置法修正の過程と付帯決議の時、もう一回は、規制委員の国会承認のときです。改めて付帯決議をみてみると、これでは、塩崎PTが強調する「良い規制の原則」を読み取ることは難しいでしょう。
 
透明性や利益相反の排除の名の下に、事業者や既存の専門家とは距離を置け、排除せよというメッセージに聞こえます。世界最高水準の安全基準を、という文章も、今日の規制委の勘違いによる暴走を予感させるものがあります。当時は民主党政権でしたから、そうなってしまったのかもしれませんが、次のチャンスである規制委員の国会承認のときは自民党政権になっていたわけですから、何らのアクションも起さなかったのは、痛恨の失策でした。
 なぜなら、その今年2月の承認時点で、昨年12月の敦賀有識者会合、今年1月の大飯会合等での考えられない運営ぶりが明らかになっていたのですから、それに対する牽制を十分にしておかなければなりませんでした。これらの強引な運営を目の当たりにして、不承認とすべき、という声も強かったのですから、承認するにしても、きっちりと承認条件を決議しておくべきだったのではないでしょうか。
 
 もう、田中委員長はPT提言を聞く耳はもたない・・・というか、提言内容が理解できないということが明らかですから、あとはPTで出たという議員立法による原子力規制委設置法の改正により、委員会運営上の基本指針的なものを盛り込み、それとともに、一定の運営についての監視方策を盛り込むべきでしょう。3条委員会だから、一切、政治の指図を受けないと勘違いしていますが、政府サイドに(国会の同意を得た上で)解任権があるわけですから、解任に至らない段階で、政治の側が改善要請をすることは十分にありうるはずです。何も言わずにいきなり首を切るわけではなく、それに至るまでにやりとりがあることが当然想定されています。
 
 今回の緊急提言は、現行の原子力規制委員会に対する不信任に近い位置づけであり、今後も状況が変わらなければ、議員立法による運営指針の追加改正がなされることになるでしょうし、今後任期が到来する委員の再任はないでしょう。田中委員長の任期は長いのでしょうが、ここまで緊急提言を事実上拒否する姿勢を続けるのであれば、途中解任もありうる事態でしょう。
 敦賀有識者会合が再開されましたが、今後どういう結論にするつもりかわかりませんが、どちらにしても、検討の混乱と迷走の責任は免れません。
 


●また、今回の緊急提言で、規制庁長官ら、規制庁幹部が「経験が皆無」の素人であり、「専門性の欠如についてあまりにも反省がなさすぎる」と批判されています。このブログでも縷々述べてきたように、規制庁長官や次長の存在感のなさは如実に感じられました。
 ただし、それは憲法上の基本的人権の比較衡量や、基本的法原則(事後法による不遡及、公正手続き、透明性と予測可能性の担保、比例原則等)等の、規制行政庁として必須の要件を何ら顧慮しないことについての話です。
 一般に専門性といいますが、強力な規制行政を行う場合は、出来得る限りの広い科学的知見に基づき行うための科学性の観点と、憲法や行政法等の法の基本原則に基づき行うための法律的観点との双方の観点からの要請に応えるための専門性が必須です。ですから原子力や原発に関する科学的専門性を担う専門家と、法の基本原則を踏まえた行政に関する専門家とが、ともに委員及び事務局幹部として役割を果たすことが期待されると思います。
現在の池田規制庁長官は、警視総監まで務めた警察官僚で、刑事畑としては優秀だったでしょうし、マスコミ報道によれば官邸の補佐官候補にもなっているとのことですから、決して無能なわけではなく、畑違いのミスマッチの人事だったということでしょう。ご本人にとっても気の毒な気がします。森本次長はもともとは環境省の人だそうですから、原子力行政とは無縁だったということでしょう。別にこれまで無縁でもいいのですが、憲法、行政法の基本原則を反映させることに意を砕いて欲しかったところです。田中委員長や島崎副委員長のような「交通ルール」(=基本的法原則)をまるで知らない「暴走ドライバー」に対して、「車のメカ」(=科学的合理性)についてはともかく、少なくとも、「交通ルール」の面では助手席で誘導する役割を期待されていたはずですが、残念なこの1年でした。
長官に原子力の専門家で視野の広いバランスのとれた識者を、次長なり副長官に行政の専門家を配することが、適正な規制行政の担保のためには必要と思われます。
 
この点は、塩崎PTで設置が提言されている内部監査機関、外部監視組織においても、同様に監査や監視がなされるべきです。「科学的合理性」(内容と手続き)の点と、「規制行政(法令面)」の両面からのチェックが必要であることは、この1年間の原子力規制委の迷走、暴走を見ていれば明らかでしょう。

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安全審査「年度内は困難」=認可前 に意見募集も―規制委
時事通信 2月12日 17時22分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140212-00000163-jij-soci

この記事を読んで私は『馬鹿も休み休みにしろ!』と怒鳴ってしまいまいた。どのツラ下げて「一般からの意見募集」など戯けた事が言えるのでしょう?何のために誰の意見を聞こうと言うのか?専門家として判断を下す責任を放棄し、アリバイ作りを企てたいのでしょうか?敦賀の破砕帯問題では、原電の反論や複数の専門家の批判には一切聞く耳を持たなかった。ならば大飯の審査でも、その独善を貫けば宜しい。

田中俊一委員長の頭の中には責任逃れと保身以外無いようです。それなら委員長の座にしがみ付かず、サッサと辞任すれば良いのです。それが何より世のため人のためでしょう。

2014/2/12(水) 午後 8:37 [ 中年九電社員 ]

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最近、田中委員長のやっていることが、憲法上の問題を惹起しうるということを指摘する記事もちらほら出てきました。
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/02/post-791.php

まだまだ、田中委員長は、「公正手続き」の重要性や「規制行政庁」として留意すべき行政法上の留意点を理解していないのでしょう。
以前、「専門家は言いたいことがあるなら言えばいい」と言っていましたが、それに相応する専門家からの意見聴取手続きはとりませんでした。記者会見でもその点の指摘がありましたが、無言のままでした。
それが今になって、一般からの意見聴取手続きをとるとはどういうことでしょうか?? 一般からの意見聴取がだめとはいいませんが、専門的判断をするのに、専門家の意見は聴かずに一般からの意見だけを聴くというのは、理解に苦しみます。

2014/2/15(土) 午前 10:28 [ kyusyutaro ]

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田中委員長が12日に発表した「安全審査の許認可を出す前に一般から意見募集をする」との考えは、規制庁には事前連絡無く田中委員長が発表したらしく、規制庁にとっては正しく「寝耳に水」だったようです。ともかく規制庁は19日の規制委定例会合までにたたき台を作るようですが、当日は一体どんな議論になる事やら…。こんなやり方が続けば、規制委に対する規制庁職員の不信感は募る一方でしょうね。

参考:電気新聞2月14日号1面

2014/2/17(月) 午後 6:18 [ 中年九電社員 ]

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同日の電気新聞のコラムでは、山口彰大阪大大学院教授・西脇由弘東京工業大特任教授がともに、私的な会合に過ぎない有識者会合に実質的に規制の実務を担わせている事を問題視しており、法定組織である炉安審・燃安審が立ち上がるのを機に関係を整理して示すべきだと指摘しています。
これと同様、田中委員長には「許認可に先立ち一般から意見を求める」事に対してキチンと根拠を示し、これまで原電敦賀の破砕帯評価にあたって専門家の意見を一切無視してきた事との整合性を説明してもらいたいものです。
ついでに言えば、田中委員長の組織運営に対するデタラメぶりは、法的根拠の無い行政刷新会議に事業仕分けを行わせ、実質的な権限を与えていた民主党政権と同じです。

2014/2/17(月) 午後 6:45 [ 中年九電社員 ]

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補足です。
前記の山口氏・西脇氏の指摘については、両氏が直接紙面で意見を述べたものではなく、山下友彦記者による記事の中で、炉安審・燃安審査の位置づけに対する両氏への聞き取りの一部として書かれているものです。

2014/2/17(月) 午後 11:06 [ 中年九電社員 ]

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私も一言さん、何故、左翼とやらの人達に対して会話する必要があるのでしょうか。
核心は、すでに出来上がった旧基準の原発の安全がどのような基準で確保されたかです。
事故前、諸外国との比較、数値での対比なども分かりやすい。そこに触れずして、原発に反対している人間達を分析したところで意味がないと思います。彼らが騒いでいるのは、これなら大丈夫と確信が持てるものが一向に出てこないからです。
論的の最大関心事に触れずして、論的の上っ面を撫でて一括りにされて退出を画策される点や、論的を根拠なく組織的市民活動と断じる姿勢に、失礼ながら失望しました。
そうされるのは、安心できる安全やゴミ処理の客観的指標や数値、具体的方策など、存在しないからではないですか。

2014/8/26(火) 午前 8:25 [ 小泉純一郎 ]


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