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【論点7】挙証責任の問題
挙証責任の問題も、敦賀会合の場合に問題が凝縮して現れています。
伊方原発設置許可取消訴訟における最高裁判決では、一義的な疎明責任を国側に負わせました。安全を証明するための根拠資料を保有しているのに対して、住民側にはそれがないという、情報保有の非対称性があることが理由です。しかし、国側が安全性について証明すれば、それに対して安全ではないとする反証責任は住民側に移ります。このような責任分担は定着しています。
今回の破砕帯評価の場合、国(=規制委)と電力会社とは、情報保有の非対称性はありませんから、破砕帯が活断層だと判断するのであれば(そしてそれが安全性を損なうとするのであれば)、基本的には規制委側にあるはずです。原電は、規制委の前身である保安院での意見聴取会での審議に基づく指示に即して調査を行い、材料を揃えました。了承されていた調査計画に基づいて調査の上、集めた材料を評価し、活断層ではないと証明しました。その評価については、外部の第三者によって適切である旨の検証もされています。
その原電側評価が適当ではなく、活断層の定義に当てはまると規制委が考えるのであれば、その根拠となる具体的材料を示して合理的推論による反証をしなければなりません。規制委は、二言目には、「まだ十分でない」「そうとは限らない」と言い、「安全サイドで判断する必要がある」と言いますが、安全サイドでの判断というのは、合理的推論をした上で残る不確定性についての判断の話であり、合理的推論をしないままに安全サイドで活断層だとの判断はありえません。そのような趣旨は、ピアレビューの際に、栗田委員も述べていました。
この後に別途述べますが、評価会合は、委員からの質問、指摘に対する原電側からの追加的反論や第三者による参考人としての意見陳述を排除したまま結論を出しましたので、合理的反証をしていないことになります。しかも、判断の内容が、次の評価書案の記述の通り、「そうとは限らない」「〜との可能性も排除できない」式のものばかりです。決して、「〜〜の材料から、〜〜と判断される」という合理的推論を経た認定にはなっていません。
最後の部分の「K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、〜〜」という箇所は、それこそ期待を含んだ想像で言っているだけで、通常の推論であれば、自ら根拠を示し、「南方での××の調査結果から判断し、南方に連続しているものと認められる」と展開しなければなりません(実際には、原電が南方でボーリングして連続していないデータを示している点で事実誤認)。
様々な制約があるなかで、「絶対にない」ということを完全に証明することを求めることは「悪魔の証明」に類するものであり、通常であれば、一定の制約の中で、どちらの積極的な合理的推論がより説得性が高いかで判断される筋合いのものです。ところが、評価会合は、原電側の見解に対して、消極的に「そうとは限らない」「別の可能性もありうる」というだけで、規制基準の下の審査ガイドのそのまた解釈に盛り込んだ「明確な証拠による否定」を要するという名目の下で、絶対否定にはなっていないという指摘に終始しています。
※ 評価書案の記述例
「以上のことから、有識者会合としては、日本原電が説明する“⑤層下部テフラの降灰層準”は、再堆積である可能性が否定できないと考える。」
「③層の堆積年代は、「古くとも MIS6」であり、MIS6 以前であるとすることはできないと考える。」
「以上のことから、D-1 トレンチにおいて、K 断層は、⑤層上部の堆積時期すなわち K-Tz 降灰年代(約 9.5 万年前)以後には活動していない可能性が高いが、⑤層下部堆積以前に活動した可能性を明確に否定することはできないと考える。」
「以上のことから、有識者会合としては、K 断層の活動の履歴については現状のデータでは確実な評価は難しく、中期更新世以降に複数回活動した可能性を否定できないと考える。」
「以上のことから、K 断層が D-1 トレンチ南方においてほとんど変位が認められなくなるとは判断できず、また南方へ連続している可能性も明確には否定できない。有識者会合としては、K 断層は、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考える」
「さらに、有識者会合としては、K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、D-1 破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考えている。」
【論点8】審議手続きの重大な瑕疵
今回の敦賀評価会合は、昨年と同じ轍を踏んでいると思います。昨年は、委員自身がその会合での質問・確認事項が少なからずあったにも拘わらず、また、委員自身も原電の主張の趣旨がやっとわかったと言っていたにも拘らず、そして何より、原電がその1カ月強の後には最終報告書を提出すると言っていたにも拘わらず、強引に審議を終結し、活断層との断定を行いました。しかし、案の定、原電側の調査結果により、新しい材料が提示され、審議再開に至りました。
今回も、委員自身が照会している事項もあったわけですし、原電が追加提出している資料は、いずれも審議過程で出された質問、疑問に答え、論点について反駁するものです。
科学的な検討のための会合なのですから、各個別論点ごとの原電側の主張に評価会合側がきちんと具体的材料を以て反論しなければ、評価会合側の判断根拠、手続きに明らかに重大瑕疵ありということで、正当性が保てなくなってしまいます。
9月4日の評価会合で、原電からの追加資料に基づく議論を排除し、専門家による意見陳述も拒否したことは、産経新聞も以前大きく取り上げて批判していましたが、規制官庁の手続きとしてはちょっと信じがたい話です。
自分のHPで(「被規制者との面談」欄)、議事要旨として公表している中で、自ら「了解した」と記載した話を、島崎氏が覆しているのですから、訴訟等で争われたら、もう一発でアウトです。
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○当方から、次回以降の会合の進め方に関し、
・作成中の「議論の整理案」(資料)を提示。
・議論の整理については、現在精査中であり、今後変わる可能性もある。来週前半には確定する予定なので、確定したら示す。
・次回(第4回:9/4予定)は、議論の整理に沿って、事業者の説明について誤認がないかどうかを確認すると伝える。
○先方からは、次回の会合に関し、
・7月23日の面談で提出した申し入れ資料「敦賀発電所敷地の地質・地質構造D−1破砕帯の評価 コメントに対する回答」の使用と当日新たに作成する資料について、当日持ち込みすることもある。
・事実関係の聴取だけでなく事業者側からの確認も行ってよいのか。
・次回会合でコメントが示され、即答出来ないものがあった場合は、引き続き対応する。
・「議論の整理案」の日本原電の説明の記載内容について、事実誤認等があれば、事前にコメントしてもよいか。
との申し入れがあり、当方も了承した。
○また、事業者が招聘する専門家の会議への出席については、当方としても検討中であり、来週の早いうちに回答する。
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島崎氏は、「1週間前に資料を出すのがルールだ」「きりがない」といい、鈴木氏は「いつも直前、当日に持ち込んできて何だ」と不満を述べていますが、そもそも、時系列でみれば、これらの発言がいかにピントはずれであるかは一目瞭然です。
8月27日(水) 第3回追加調査評価会合
8月29日(金) 原電が事務局と面談し、次回会合で用いる「議論の 整理(案)」ペーパーを手交される(変更ありうるとの留保付き)
9月 4日(木) 第4回評価会合
島崎氏、鈴木氏らが言う、「1週間前」に資料提出など物理的に不可能ですし、8月27日の委員だけの会合を傍聴はできたとはいえ、その議事録が公開をされているわけでもなく、29日に手交された「議論の整理」ペーパーに即して、27日の会合での指摘等を分析し、論点整理して補足説明資料、補強資料を作るので精一杯だったはずです。9月4日の1週間前は、8月28日であり、その翌日の29日に「議論の整理(案)」を手交されて(しかも暫定的なものとして)、どうやったら1週間前に資料を提出できるのでしょう?
島崎氏は、退任前に決着させてしまいたいという思惑が前面に出ていて、ほとんど支離滅裂です。
島崎氏のみならず、それを更田委員や田中委員長も同じようなことを言って、次々と資料を出してくるとして、原電を批判してしますが、規制官庁のトップとして無知に過ぎます。規制行政における行政手続きの基本が分かっていないとつくづく感じます。
島崎氏が主宰する評価会合での、同氏の定番のセリフは、
①「時間がない」「時間が迫っているので簡潔に」
②「いくら議論しても、(また資料が出てくるので)きりがない」
③「1週間前に資料を出すのがルールだ」
④「この会合での議論がすべてだ。」
こういったセリフを、何の疑問も持たずに、自信を持って言い放つところが信じられません。会合の趣旨、審議の目的、科学的・法律的議論の在り方等のいずれの観点から見ても、あり得ないセリフであり、これらは、自ら、「私は不公正な手続きにより結論を出しました」と告白しているようなものです。
9月4日会合では、8月29日に手交された整理ペーパーに基づいて議論が行われており、当日原電から提出された意見ペーパーは、当日の議論には反映されていません。
その原電の意見ペーパーが、11月19日のとりまとめ会合での今回の評価書案に取り入れられているのかどうか、詳細にはわかりませんが、しかし、原電が、11月21日に発表した
「(第5回追加調査評価会合)における主な問題点について」とのペーパーをみると、評価会合側の事実誤認や思い込みが多すぎるように感じます。
調査データを示しているのに、データがないとしている点などは、内容以前の基本的な部分で信頼性に疑問符が付きますし、これだけ多くの点で具体的に根拠を以て反論されるような内容では、科学的にも訴訟的にももたないのではないでしょうか。
訴訟となった場合、ともかく、お互い主張を出し合って、論点に即して相手の主張に根拠を以て合理的に反駁できなければ負けですから、規制委側は、上記ペーパー等での原電指摘に対して、逐一反論する必要があります。
訴訟では、時間がないから意見を聞かないとか、きりがないからもう聞かないとかが罷り通るはずもなく、原電側の参考人も当然採用されることでしょう。評価会合での島崎氏の議事進行のように、「もう十分議論した」と漠と主張して議論を打ち切ることもできません。
むしろ、そういう発言を繰り返して議事進行をしたことや、第4回会合に提出され公式にも規制委HPに掲載されている原電説明ペーパーでの主張、指摘について、ほとんど議論も反論もないままに、評価書をまとめたとなると、これは審議手続き自体に重大な瑕疵があるものとして違法となる可能性が多分にあります。内容も、科学的な合理的推論に基づかないものとして斥けられることでしょう。
既に上記の諸論点で述べたように、もともと規制委及び評価会合には、憲法論を含む多くの深刻な問題を孕んでいます。活断層に関する基準の局面だけをとっても、基準自体とその策定過程が、学会のコンセンサスを一顧だにしていないものとして、最高裁判例に照らして重大な疑義がありますし、その適用局面における評価会合でも、これまた重大疑義、瑕疵があるというダブルでの問題を孕んでいます。
今後のピアレビューや、規制委会合で、これらの問題の一端なりとも理解した人々がいればいいのですが、どうなのでしょうか。ピアレビューでの栗田委員などはまだ筋論的なことを述べていましたし、新しく就任した田中知委員が原子力工学の専門なので、何かコメントするのか、よくわかりません。
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本来目的の原発重要施設への影響評価をしようとしない規制委
しかし、ともかく、規制委は、この破砕帯調査の元々の趣旨を忘却し、肝心要の原発の重要施設への断層の影響を評価するということには、文字通り一顧だにせず、その破砕帯が12-13万年前以前のものかどうかということだけに延々時間を費やしてきました(空転による浪費もして)(しかも、その活断層の定義が、絶対否定の証明を求める非科学的なもの)。浦底断層が動いた場合に、どう原発の地盤に伝わり、直下の破砕帯がどう動き、施設に影響するか、という最も分析評価が期待されている点については、何もせずに時間を浪費したのが規制委なのです。原電がその評価を持っていて、規制委での審議を求めていたにもかかわらずです。
地質学者の島崎氏らが、「下に断層があると、何が起こるかわからない」からという科学的とは思えない主張に立脚して、工学的検討を一切排除してきたというのが実態です。
どこからも制度上牽制されない不合理な制度―立法的解決が図られるべき
活断層に関する基準や解釈の問題は、大飯原発の差止め訴訟で論点になっているようですから、そちらで司法判断が先行して出るのかもしれません。
しかし、憲法論に関わる問題は、独立性の高い委員会になってしまっている中では、立法的に解決することが必要になっています。どういう機関であっても、どこかで牽制がなされる仕組みになっていますが、原子力規制委は、そういう牽制をする立場の組織がなく、独立愚連隊的存在になってしまっています。それに対しては、立法的解決が図られることが必要だと思います。あるいは、国会の決議でもいいと思います。
立法上手当てが必要と思われるのは、次の諸点です。米国のNRCが規範としている点も考慮に入れることが適当でしょう。
1 原子力規制委が留意すべき点を法律上盛り込む。
(1) 原発が原子力基本法に基づく平和利用を通じ、電力の安定供給上重要な役割を果たし、事業者も供給義務を負っていることを踏まえ、その役割・義務遂行とのバランスにも十分配慮しなければならない。
(2) 憲法上の基本原則である利益の比較衡量、比例原則、公正手続きの確保等に十分配慮しなければならない。
(3) 独善に陥ることなく、広く事業者、科学界との対話に努め、科学的知見を行政に反映するよう努めなくてはならない。
(4) 原発等の立地地域に対して、その安全性確保状況等について、十分説明するよう努めなければならない。
2 業務監査人を置く。
(1)規制行政が、憲法、行政法、規制委員会法、その他の法令上、適切になされているかについて監査する者を置く。
(2)業務監査人は、職権により又は外部からの要請により業務を行う。
(3)業務監査人は、環境大臣が任命し、独立して業務を行う。
こういった措置により、誰が委員として来ても、暴走しないような仕組みをビルトインし、委員や事務局にもその意味に気付かせ、外部からの牽制と対話促進が図られるようにすることが必要と思います。
もちろん、事務局の規制庁には、これらの点に十分なセンスのある人間を配置しなければなりません。いくら、東日本大震災後の空気があったとしても、今の規制庁には、あまりにも規制行政の基本的センスがなさすぎます。出るところに出て争われれば完敗するであろうことは、容易に想像できると思うのですが・・・。
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敦賀破砕帯の評価会合の中で、原電側の実質的参考人として参加した奥村教授の発言が、「恫喝である」として、規制委側が反発するという騒ぎがありました。実態は「何を聞いていたのだ」と強い口調で一言述べただけの話で、これを恫喝云々と規制側が言いたてるセンスにもまた信じがたいものがあります。
「恫喝」と言うのであれば、関電大飯にみられたように、規制委側が、三連動、震度、津浪の高さ等に関して、まだデータが足りないと延々と引き延ばしつつ、自らの主張根拠を示さないままに、その規制委側の主張を飲まなければ結論をまとめない=再稼働を認めない、という人質行政のほうが、よほど悪質な恫喝です。
2014/11/24(月) 午後 8:40 [ kyusyutaro ]
また罵倒のコメントが多数来ていますので、一括して倉庫に移しました。移す筋合いもありませんが、罵倒パターンを典型的に示していると思いますので、参考までにということで保存しておきます。
「井戸端会議レベルで無価値」と言いながら、ご愛読いただいているのも妙ですし、「有害」ということは、影響ありと考えているということなのでしょう。
これらの罵倒コメントに対するコメントは、こちらではなくて、「倉庫」サイトのコメント欄でお願いします。
2014/11/25(火) 午前 7:51 [ kyusyutaro ]
読ませていただきました。
最近は敦賀以外の有識者会合もチェックしているのですが、メンバーが変わると会合も全然違うんですね(汗)
ピアレビューで、どのようなコメントがでるのかなあ?と思ったり…
事務方の対応もひどくて、QMSで不適合出るんじゃないか?と心配になりますね。きちんと、品質監査をやるべきだと思いますが、誰がやるんでしょうか……?それとも、IAEAにいろいろ言われるから、形だけ入れた…とかじゃないことを祈ります。
情報公開請求を本気でやられると耐えられないでしょうね。
これからも記事を楽しみにしています。
2014/11/25(火) 午後 8:47 [ とくめいきぼー ]
他の有識者会合の方はしばらくフォローできていないのですが、お書きの通り、有識者会合によって判断基準や調査方法等も異なっているとすれば、それが、規制委全体の審査の透明性、予測可能性の欠如の証左ともなると思います。
昨年2月のときのピアレビューでは、有識者会合の評価については、事実上、科学的でないとの指摘もなされていましたし、その後のレビューでも相当議論があったと思いますが、今度はどうなることでしょうか・・・。
2014/11/26(水) 午後 8:58 [ kyusyutaro ]