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「脱原発」ということがよく言われるが、そう簡単な話ではないと思う。
電力会社は安定供給義務がある。安定供給というときには、量だけではなく、質も含めての話である。
安定供給義務については、脱原発論者も、マスコミも、第三者委員会も、郷原氏も、誰も責任を取ってくれるわけではないのだから、ともかく必死にこれを果たして必要がある。
●原発が動かなくても電力が足りているというのは間違いで、企業等に5%とか15%とかの節電要請をしておいて、足りているとはいわない。菅総理が、埋蔵金ならぬ埋蔵電力があるといって、大企業の自家発電所に期待を寄せ、経産省からほとんど期待できないような集計結果を報告されて激怒していたが、そんなことを考えること自体、あり得ない話である。企業の自家発電は、文字通り自己使用を前提としている上、余剰電力があったとしても、そもそも安定供給義務はない。余剰分は新規参入の電力事業者(三菱商事系その他の)がキープしているだろう。それ以外で、安定供給が担保されない電力に頼るなどあり得ない。現実的でないにもほどがある。
●それから、「原発に依存せずに、風力発電や太陽光発電に力を入れれば、やっていける」というようなことを言う人は多いが、そんな甘いものではない。この二つしか言わない論者は、「代替策も一応考えてます」というアリバイ作り的に言っているだけだろう。基幹エネルギーになりうるのは天然ガスだ(後述)。
残念ながら、自然エネルギーは、量の面でも質の面でも決して良くはないし、基幹エネルギーにはなり得ない。自然に影響されて、それがどれだけ安定的に電力網に入ってくるのか見通せないのでは困る。多すぎて負荷が大きくなっても困るのである。一時的負荷が大きくなれば、電圧が狂って停電もあり得る。だから、一定量に調整するための機器が必要になる。そうするとコストは一気に増大する。結局、買い入れ量も制限されざるを得ない。風力なり太陽光なりの発電機器に投資した人がコスト回収できるとは限らない。耐久性や耐用期間の面でも制約がある。
そもそも、すべての発電量を電力会社に買い取れという仕組みに無理がある。量も質も安定させないで有無を言わさず高額で買い取らせるなど、例えは悪いが、粗悪品を買い取れという押し売り悪徳業者と同じである。良質なものにして、コストを下げる努力をして初めて買ってもらえるというのが、普通の工業製品の相場だ。初期段階でサポートが必要だというなら、本来は補助金でやるのが筋だろう。量産メリットで価格が下がって普及する、というシナリオも疑問だ。無制限に買ってもらえるという前提が続くと思うのが甘いと思う。
今はまだ全体量が少ないからいいのだろうが、増えてきたときに電力網への負荷が増大することになり、不安定さが増すという問題も念頭におかなくてはいけないだろう。
メガソーラーなどが注目されているが、これも言葉は悪いが、人の褌(ふんどし)で相撲を取ろうという思惑の塊だろう。遊休農地を地元が提供しろ、税金はまけろ(タダにしろ)、しかし雇用はほとんど生まない、作った電力は質や量の如何に関わらず電力会社に全量引き取らせる。その高額の費用は電力料金を通じて一般国民によって負担させる・・・。協力する地元にはどういうメリットがあるのだろうか? 他人を踏み台にするようなビジネスモデルは長続きしないし、現にスペイン等欧州では続かなかった。ドイツが原発をやめたといっても、それを埋めるのはフランスの原発で発電した電力だ。
●今後、省エネ技術や、ピーク時電力量をカットするような電池等の技術が進めば、無理しなくても電力消費量は足りるようになるかもしれないし、その削減分は原発数基分に相当するというのも当たっているとは思うが、この1〜2年でそれが劇的に進むという確たる見通しがあるわけでもない。
原発と同等の基幹エネルギーになりうるという点では、天然ガスが筆頭にあがる。化石エネルギーだからというところで思考停止をしてはいけない。政情が安定しているところが供給源だし、CO2排出も比較的少ない。新しいタイプのものが見つかって埋蔵量も飛躍的に伸びている。コンバインドサイクルの発電所にすれば高効率でCO2発生量も抑制できる。CO2にしても、それ自体を資源として使ったり、地下や海底に貯蔵する技術も進みつつある。東京都が進めている天然ガス火力発電所も、こういう利点に着目したものであろう。
ただし、いくら政情が安定している国が供給国だといっても、国産ではないという点では懸念が残るし、近いからロシアから買うということでそこに頼りすぎると、グルジアの二の舞にならないとは限らない。価格の点でも、世界需要がシフトすれば、高区なっていく懸念もある。
それでも、原子力発電に比肩しうるのは、天然ガス(+省エネ、コジェネ)であって、自然エネルギーではない。
これらの電源構成を、バランス良く、無理なくシフトしていくにしても、来年、再来年で実現できるわけではない。石油危機前後の70年代から時間をかけてここまで来たのであるから、それをただちに脱原発で廃止だ、というわけにはいかない。
何が何でも、量と質の両面で安定供給を電力会社は義務として果たしていかなくてはならないのだから、原発にはいやでも付き合っていかざるを得ないのだ。
●このままいけば、来年の4月には国内全原発が止まるという。節電で国民や産業界に皺を寄せておいて、それで大丈夫だというのは大間違いだ。一口に「節電」というが、工場稼働日を週末にシフトさせたり、勤務時間開始を早朝にシフトさせたり、製品の連続生産を断念したり、電車は間引きされたり、家庭では冷暖房が制限を受けたり等等で、その陰には国民や企業・団体の大小様々の膨大な犠牲がある。勤務時間や曜日のシフトで、子供の保育園がやっていなくて困り果てた家庭も少なくないだろう。
そして、企業にすれば、高い電力料金で、おまけに節電を迫られ、安定供給も期待できないとなれば、海外に逃げることを本気で考えるし、現に逃げつつある。円高がそれを加速する。かくして雇用の受け皿がなくなり、税収の源もなくなっていく。「脱原発」のスローガンで、子どもを守るつもりが、子を扶養すべき親の仕事はなくなり、子どもは就職難にもなり、高齢者を支える税源もどんどん減っていく。民主党の金持ち叩きが、税源の海外逃避を加速している。こうして、国の将来はどんどん危うくなる。
だから、安全面を犠牲にして、あるいは無視して原発を動かせというのではもちろんない。何が問題だったのかを見極めた上で(それは、主として津波対策だと思うが)、防護措置を急ぎ、それが有効なものかどうかの判断を、まずは政府が責任持ってすることだ。社会の反応を見極めるというのでは、責任放棄である。見極めが立ったらそれをきちんと地元に説明した上で、速やかに再稼働させなくてはならない。ストレステストはやむを得ないにしても、今、大飯や伊方の原発をはじめとして出始めた結果を専門家の目でチェックし、それで可となれば地元に十分説明の上、再稼働を認めなければならない。「政治判断」の名の下に、「地元理解が十分でない」と責任回避することは許されない。地元に説明する責任を負い納得させる責任を負っているのは、あなた=国 なんですぞ!
●一口に「電力の安定供給」というが、その言葉の中には、こういった膨大な国民生活、産業活動、インフラ基盤の現在と将来への責任が、凝縮して詰まっているのである。それらを支え、保障するというのが「安定供給の責任を果たす」ということなのだ。九電幹部には当然それがわかっている。九州は、シリコンアイランドと言われるほどに、半導体関連工場が集積し、さらには自動車産業も集積しており、ハイテクの塊のような地域である。電力の安定供給のことが、頭から離れた時はないだろう。
郷原氏や第三者委員会報告書のように、「電力会社は黙っておれ。理解増進活動は許さず」「県も能動的に動くな。一般から出てきた意見の出具合をみて多いほうを支持せよ」「社会が決めるのだから、法律なんて関係ないさ。原発いやだという人が多かったら、その通りにせよ。それが社会の審判を受けるということだ」という、ほとんど無政府主義かと見まごうばかりの無責任な評論のようなものに惑わされて、国民生活や国民経済の現在と将来とを危うくさせることは許されないのだ。
●思うのだが、量と質と両面で安定供給が如何に重要なのかという点をもっと国民に理解してもらう素材を多数揃える必要があるように感じる。
たとえば、昨年12月に起きた東芝の四日市工場での瞬間停電による広汎な影響と大きな損害の話などは、その重要性について実感を持ってもらえるのではなかろうか?
火力発電所の不調で、わずか、0.07秒という瞬間的電圧低下により、東芝のフラッシュメモリーの生産が止まり、出荷量が最大2割、200億円の減収になると言われた話しのことだ。一般の人からみれば、ピンとこないが、それでも、家庭での停電などにより、パソコンのハードディスクがクラッシュした経験を持っている方なら、多少は想像も付くのではなかろうか。
こういう電圧低下や停電が、自然エネルギーの買電によってどんどん流れ込んでくると、生じうるということや、それを防ぐためには大きなコストがかかったり、一定の制限をせざるを得ないということなどは、基礎知識として理解してもらうことが必要なのではないかと感じる。漠然と、「風力や太陽光などクリーンエネルギーで脱原発を」といっても、それは現実的な話ではない。
政府は、原発への依存度を減らしていくとしても、代替エネルギー源のあり方とその展開の道筋の全体像を明らかにするとともに、当面は原発に依存せざるを得ないのだから、ストレステストの結果によって原発の安全性を早期に確認し、それを地元住民、自治体に対して丁寧に説明の上、再稼働につなげていくことが求められている。
※ 電力会社とは無関係の人間ですが、あえて書かせていただきました。
間違いもあるかもしれませんが、こんな趣旨のことを、電力会社はわかり
やすく情報提供していくことも大事だと思っています。
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九州太郎さんが電力会社と無関係とは思えないほど的確な視点だと思います。なかなか一般の人には分かってもらえない点です。
いったいあなたは何者ですか?
2011/11/15(火) 午後 7:06 [ うー ]
九州太郎さんのおっしゃる通りです。
このことをもっときちんと世の中に広めなくてはいけないですね。
だから知事もいろんな意見を出してほしいとおっしゃっていたのだと思います。県のサイトでも個人のHPでも書いておられます。
原発についてきちんとご自分の考えを持って発信しておられます。
九電がこれを言っても古川知事がこれを言っても、どうせ原発推進派だろうという目で見られますが、こういう第三者的に書いていただいて、たくさんの人に考えてもらうことはとてもいいことですよね。
2011/11/15(火) 午後 8:04 [ てんてん ]