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最近の報道での気付きの点の第2番目です。
九電が29日開いた取締役会で、監査役6人で構成する監査役会が「メール問題を早く収束させるべきだ」と注文を付けたと報道されていました。
「九電の監査役は常勤3人、社外3人の計6人。九電関係者によると、取締役会(20人)で予定されていた議題が終わった後に、監査役会としての意見が出たという。これに対し、松尾新吾会長は「分かりました」と述べた。眞部利應社長は、経済産業省への最終報告書再提出を巡って対立している同社第三者委員会の郷原信郎元委員長と「連絡を取って対応する」などと返答し、問題の早期収拾を図る考えを示したという。」
(西日本新聞 11月30日付け朝刊)
「メール問題の早期収束を」ということは、「筋を曲げろ」という趣旨ではもちろんないと思います。
第三者委員会報告書に対して疑問点の質問状を元委員に提出し、それに対して一通り回答があったことを踏まえて、その内容の整理を急ぎ、修正最終報告書に反映して、経産省に早期に提出すべきということでしょう。
正確には、経産省から最終報告書の提出を正式に求められているわけではありませんが、経緯上、修正の上再提出するということでしょう。経産省は、淡々と受理するだけです。枝野大臣は、先月の10月16日の記者会見では、「最終報告書の再提出は求めないが、任意で提出するなら受け取る」と言っていました。
●もともと、調査報告書をどういう方法で、どういう内容でまとめるかは、九電側の意思決定に属する事項です。第三者委員会の設置は、あくまで九電の意思決定の中での話ですから、その扱いについても九電の裁量に本来は属する話です。政府、経産大臣が関与する話では全くありません。
「内容に問題、疑問があっても丸呑みすべし」という権限はもちろん政府にはありませんし、もし、そういう行政指導をするのであれば文書にすればいいでしょう。しかしそれを出すほどの覚悟で言っているわけではないですし、眞部社長が会って説明したいと言っているにもかかわらず会わない、説明も聞かないなど、法治国家としてあり得ない対応です。
自分で注文をつけておいて、それを直接の当事者である社長に対して説明しない、会いたいと言われても会わないこと自体が、社会常識としても極めておかしな対応です。
政府は、「出るところに出てちゃんと対抗・説明ができるのか」ということを不断に自らに問わなければなりません。「江戸の敵を長崎で打つ」かのような威嚇で、筋を曲げて企業等を従わせるようなことは決してしてはいけません。「法律以前の問題だ」という台詞は、社会やマスコミが言うものであって、政府の大臣が言うべき台詞ではありません。そうでなければ、政府は法律に縛られることなく、エンドレスで民間活動に介入できることになってしまいます。
●監査役の役割にはいくつかありますが、最重要の役割は、「取締役の経営意思決定の監査」です。経営判断の原則に従って意思決定が行われているかをチェックするというものです。その具体的な観点として、日本監査役協会の監査基準第19条では、以下の諸点が規定されています。
①事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと、
②意思決定過程が合理的であること、
③意思決定内容が法令または定款に違反していないこと、
④意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと、
⑤意思決定が取締役の利益または第三者の利益ではなく、会社の利益を第
一に考えてなされていること、
●上記の監査基準に照らせば、今回、監査役会が総意として述べたという「早期に収拾すべき」というのは、抽象的ではありますが、以下の点を前提とした上での意見でなくてはなりません。
①第三者委員会報告書の内容に関して、「疑問があるにも関わらず、それを棚上げして会社としての見解とせよ」という趣旨では決してないこと。「疑問を糺す」ということは、取締役に求められるべき善管注意義務に忠実な行動であり、それをしなければ、かえって善管注意義務違反になってしまいます。監査役としてのスタンスは、「疑問があるのであればきちんと照会するべきこと」であって然るべきです。
②経産大臣が、「第三者委員会報告書を、内容が間違っていると思っても丸呑みせよ。さもなければ再稼働を認めない。」と言っているとしても、「大臣の考えに従って早期に経産省と妥協を図れ」という趣旨では決してないここと。本ブログで繰り返し述べましたが、枝野大臣は行政手続法に二重三重に違反しています。加えて、政府として関与してはいけないところまで介入しています。矩を越えています。それを受け容れることは、九電という企業利益を著しく損なうことです。企業利益を守るとの観点に立てば、「経産省、経産大臣の指導の趣旨が不明なのであれば、法令手続に従って正式にその趣旨を照会すべきこと」、「法令要件を満たしているにもかかわらず再稼働を認めないのであれば、行政不服審査法に基づき不服審査請求をするとともに、それによって生じた損害について、国家賠償請求を行いその損害を国に補填させるべきこと」を、いざとなれば述べなくてはなりません。
●「第三者委員会」については、日弁連ガイドラインができてから、まだ1年半も経っていない発展途上の制度です。以前、以下の記事で述べたように、様々な浮上してきている問題点について、検討を加える必要があります。今回の「九電第三者委員会事件」は、多くの反省材料を提供したはずであり、早晩、日弁連や経団連等で議論の俎上にのぼることでしょう。
枝野大臣が言うような「第三者委員会がまとめた報告書には、内容が間違っていても従うべき」(11月22日記者会見)といえるほどのデュープロセス(公正手続き)が備わった成熟した制度ではまったくありません。その内容に合理的な疑いがあるのであれば、その疑問について糾すことは、取締役として当然行うべき善管注意義務の一環です。特に今回のように、電源立地地域の自治体の首長の名誉に関わり、長年築いてきた両者の信頼関係を揺るがすおそれがあるものであれば、今後の業務に支障が生じることは明らかですから、細心の注意を払って報告書の内容を精査した上で疑問をぶつける必要があります。そして明らかに不合理であると判断するのであれば、それを斥けることも、善管注意義務に則った行動でしょう。
●もちろん、九電の監査役の皆さんには釈迦に説法であり、上記の認識を十分に持っておられるとは思いますが、「早期に収拾を図るべき」という言葉だと、人によって受け止め方が様々かもしれません。場合によっては、「大臣の指導に従うべき」「第三者委員会の意見に従うべき」という妥協を求めているかのように受け取るあるいは曲解する人もいるかもしれません。ですから、あえて念のためという意味で書かせていただきました。
●私の個人的考えですが、もう郷原氏とは接触することなく、前回記事に書いたような案文で修正最終報告書を提出するだけでいいと思います。郷原氏ら元委員は、公式に記者会見を開き、本件からは手を引くと宣言したのです。郷原氏も聞かれても返事に困るでしょうし、何か言わなければならないことになりかねません。郷原氏が何か否定的なことを言えば、枝野大臣の振り挙げた拳の下ろし先が微妙になります。
経産省は、提出された報告書に対して異議を唱えることはできません。淡々と受理する以外の選択肢はありません。九電は、あとは、再発防止措置と、定期検査とストレステストのクリアに向けて邁進するだけです。
法律と時間は、九電に味方しています。
「時間が味方する」というのは、「世間が忘れる」ということではありません。もうしばらく時間が経過し、この夏以来郷原氏らによって引き起こされた一連のことについて興奮が収まったとき、九電経営陣が「前代未聞」と言われながら選択した対応について、高く評価されるときがきっとやってくることでしょうという意味です。
そういう「後世」の評価をきちんとしてもらうためにも、九電としての疑問点や考え方は文書の形でしっかり残しておくことが必要なのです。口頭では雲散霧消してしまいます。
少し話が飛躍するかもしれませんが、戦後、戦犯として裁かれて絞首刑になった人の行為について、数十年経ってからそれが冤罪であったことを立証したのは、その人が最期の時に残した走り書きのメモだったという話があるといいます。死んでいくことが確定していたとしても、文字を残しておくことによって、後世の人が無実を明らかにしてくれた例が現実にあると聞き、感銘を受けました。
それに比するのは大げさかもしれませんが、「九電けしからぬ!」との世間と政府の興奮の中で、「無実の人に濡れ衣を着せるわけにはいかない」という強固な意志の下に、「第三者委員会」「経産大臣」という「権威」「権力」にも抗して、その考えをきちんと世に示すことにより筋を通す行為は、必ず「後世」の人々の支持を集めることでしょう。それは、そう遠い日ではないような気がします。
※ もう終盤だと思いますが、あと書くつもりでいるのは、
・郷原氏ら3元委員からの回答のうち、残るプルサーマル関係の部分に
ついてのコメント
・北海道庁、国の第三者委員会報告書と、九電第三者委員会報告書との
比較
・「九電第三者委員会事件」の総括
といったものです。
あとは、記事整理をして、記録として残しておければと思っています。
コメント欄も700件近くになっています。それ自体が様々な視点から、 考える材料になることでしょう。
※ 郷原氏の新検証サイトからは、コメント欄が一切なくなったのですね・・・。
「投稿フォームより、どうぞ、皆さんの考えを投稿してください。どうぞ、みんなで一緒に考えて いきましょう。」とあるのですが・・・。
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九州太郎さん。あなたの下り、これはまったくちがうでしょう。九電にこんな権利はありません。こんな権利を付与されるのは、なにを根拠にされているのか。根拠ゼロですが。
「もともと、調査報告書をどういう方法で、どういう内容でまとめるかは、九電側の意思決定に属する事項です。第三者委員会の設置は、あくまで九電の意思決定の中での話ですから、その扱いについても九電の裁量に本来は属する話です。」
2011/12/2(金) 午前 0:03 [ 根拠ゼロ ]
大変勉強になっております。ありがとうございます。
終盤とのことですが、一休みしたら話題を変えて震災後のエネルギー政策について取り上げていただけませんか?お考えをご披露いただけたらと思います。
電力叩き、風評被害、震災がれきの受け入れ問題、元大臣による被災地での暴言・失言などなど、日本人の心の奥に潜む差別意識の現れだとしたら悲しいことですね。
2011/12/2(金) 午前 1:06 [ Tikuzen Jiro ]
根拠ゼロさん へ
第三者委員会の調査報告を100%そのまま受け入れることが必須という根拠がそもそも無いと思うのですが。
ガイドラインにはステークホルダーへの開示義務のみ定めてありますが、九電の報告書には、第三者委員会報告書がそのまま添付されていたはずですし、ホームページでも公表されています。
何だか、九電が第三者委員会報告書を改ざんしたというコメントもありましたが、これは完全に間違いですね。
そもそも、第三者委員会が利用されるケースというのは、まだ常識なるものが成立するほどは多くありません。
だからこそ日弁連のガイドラインが存在し、しかも、これは完成されたものではありません。
第三者委員会報告書を否定するのは可能です。ただ、その結果は社会が判断するというだけです。
枝野大臣には判断の権限がありません。
今回は、既に第三者委員会の報告と九電の主張がほとんど同じであり、単なる誤解であることを郷原氏がみとめていますので、九電の報告書は、第三者委員会報告書の曖昧な部分を明確化しただけのものになるでしょうね。
2011/12/2(金) 午後 0:56 [ 赤べえ ]
根拠ゼロ氏の言う「権利」って何なんだろか。
第三者委員会を設置する権利?
第三者委員会の報告書の内容を受け入れない権利?
そもそも、権利って付与されるもの?
2011/12/3(土) 午前 8:40 [ - ]