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最後に、全体総括をしておきます。今後の第三者委員会の在り方について検討する際の検討資料になることを期待します。
「九州電力第三者委員会事件」の経過と問題点(全体総括)
1 九電第三者委員会設置と活動の経緯
(1)東日本大震災後の玄海2・3号機再稼働に関する緊急安全対策については、本年5月17日の原子力・安全保安院による佐賀県幹部に対する説明に続いて、6月26日に国主催県民向け説明番組の後、海江田経産大臣(当時)による地元玄海町岸本町長、佐賀県の古川知事との会談における国による安全の保証を経て、佐賀県側は再稼働に了承を与えた(しかし、その直後に、菅総理によるストレステストの実施の指示がなされたことから、事態は混乱し、地元了解は撤回された)。
(2)6月26日の国主催番組は、ユーストリームというネット中継ツールを使って一般県民らも視聴されたが、投稿ができる仕組みとなっていた。7月初めの国会質問において、共産党議員より、九州電力が取引業者らに対して賛成投稿要請(いわゆる「やらせメール」)をしていたとして問題視し、これを受け、経産省より九電に対して事実関係についての報告が求められた。九電は、社内調査を行い、7月14日に事実関係及び再発防止策を盛り込んだ社内調査報告書をまとめ経産省に退出した。その後、平成17年9月の国主催プルサーマルシンポジウム等においても、同様の賛成投稿要請が行われたことが判明し、これについては7月29日に報告書が経産省に提出された。
(3)九電では、事実関係、原因分析及び再発防止策のあり方を更に深掘りするために、7月27日に、元検事の郷原信郎弁護士(名城大学コンプライアンス研究センター長)を委員長とし計4名で構成される第三者委員会が設置された。同委員会は、9月8日に中間報告書、9月30日に最終報告書をとりまとめ、任務を終了した。
(4)他方、国(経産省)においても、同省職員により電力会社社員らによる意見陳述の慫慂がなされていたことが判明したため、全国の原発に関連してここ数年行われた国主催地元説明会、シンポジウム等及び平成17年12月に実施された佐賀県主催プルサーマル公開討論会における経産省職員の賛成投稿要請の有無等の事実関係について調査するための第三者委員会が設置され、やはり9月30日に最終報告書が提出された。
2 九電第三者委員会報告書取りまとめとその後の経過
<委員会活動の開始>
(1)第三者委員会は、7月27日に設置され調査が開始されたが、事実関係についての調査を詳細に行うために2つの調査チームが設置された。6月26日の国主催説明番組における投稿要請に関しては、7月28日に赤松弁護士らによる調査チームが設置された。更に、玄海3号機及び川内3号機に関する各種説明会等に関しては、8月3日に梅林弁護士らによる調査チームが設置された。赤松、梅林両弁護士とも、特捜部での捜査経験を持つ検事OBである。
<知事面談の事実の公表>
(2)社内調査報告書では、6月21日における副社長退任挨拶のための古川知事との面談時(佐賀支店長)の知事発言に関する佐賀支店長メモが存在したことは記載されていなかったが、眞部社長より、そのメモの存在を知らされた郷原委員長は、7月27日に知事に面談し(26日にも個人的に会っているがその点は後述)、支店長メモの存在を告げ、面談事実の照会を行った。知事は面談した事実は認め、自ら記者会見を開きその趣旨とともに公表した(7月30日)。郷原委員長は、それを受け、記者会見を行い、「知事発言が発端となった可能性がある」旨を指摘した。
<中間報告書及び九電「当社の見解」の公表>
(3)その後、第三者委員会は、中間報告書を9月8日に公表した。そこでは、国主催説明番組に際しての賛成投稿要請は、「知事発言が発端となった」旨が記載された。これに対して、九電は、同日で「当社の見解」を公表し、「知事の真意を反映しない支店長メモが発端となったと理解している」旨を述べた。それ以外にも若干の社としての理解を述べた。
<最終報告書の公表と九電への批判>
(4)これに対して郷原委員長ら第三者委員会側は反発し、第三者委員会に委託した以上はその事実認定に従うのは当然との観点から、9月30日に公表された第三者委員会報告書でも、九電が「異を唱えた」と厳しく批判し、それ自体がコンプライアンス違反であると断じた。
内容的にも、平成17年12月の県主催プルサーマル公開討論会に遡って、佐賀県・古川知事と九電との「不透明な関係」を背景に、同討論会、保安院説明会、国主催県民向け説明番組のいずれも古川知事がシナリオを書き、九電が実行したとの構図に基づく事実認定をした。
<九電最終報告書の提出と、郷原氏及び枝野大臣による批判>
(5)その後九電は、第三者委員会報告書を踏まえて、10月14日(午前)に九電としての最終報告書を経産省に提出した。これに対して、郷原元委員長は、「知事発言が発端となった」旨が盛り込まれていないと当日午後に批判した。その直後に、枝野経産大臣が同様に、出張先の中国広州において、第三者委員会報告書が反映されていないとして九電を批判した。九電側は、基本的には全て最終報告書に盛り込まれているとしつつも、知事からの賛成投稿要請があったとの認識はないとの立場から、その点は盛り込まなかった旨をプレス等の取材で語った。
<郷原氏による佐賀県議会での参考人陳述>
(6)10月17日、佐賀県議会に参考人招致された郷原元委員長は、委員会発足前日の7月26日に古川知事に個人的に接触し、辞職を「助言」したこと、8月4日には電話で支店長メモの内容を伝えたこと、その際知事は「この発言が表に出れば、どんな説明をしても辞任は避けられませんね」と発言したことなどを明らかにした。その際、知事の委員会同席を知事に求め、委員会も知事に出席要請するも知事は拒んだ。なお、知事は事後のプレス取材に対して、「いきなり電話で発言メモの全文を読み上げられ、一言一言言葉を選んで、後先を考えて話したわけではない」とし、「私の考えは、全体のメモが明らかになった後の8月9日の特別委で述べた通り」として、賛成投稿への関与と責任を否定した。
<元委員連名による「緊急メッセージ」の発出>
(7)報道では、九電幹部が10月27日の取締役会で最終報告書の微修正案を諮るとの報道があったため(諮らずに提出するとの報道もあった)、第三者委員会の元委員4名の連名で、九電役員メンバーに対して「緊急メッセージ」を発出し、知事発言が発端である旨を盛り込まずに修正案を提出することを認めるのであれば、それに伴う不信の惹起による混乱を招いた場合、善管注意義務違反となり、株主代表訴訟の対象になりうる旨の警告をした。記者会見は、郷原氏と阿部氏とで行われた。
<郷原氏による「オープンな形」の意見交換の提案と、九電からの文書でのやりとりの逆提案>
(8)続いて翌27日、郷原氏は、九電松尾会長に対して、社内での「オープンな形」(社内LAN等での視聴可能な形)での役員との意見交換会を開くことを提案、松尾会長は検討するとして引き取った。その後、九電は口頭ではなく文書による意見交換を提案したが、元委員側は、文書ではしっかりとした緊張感を持った意見交換にならないとしてこれを拒否した。
<岡本元委員による郷原氏批判会見>
(9)10月31日に、元委員の1人の岡本幸一氏(東洋英和女学院大学教授)が、福岡市で記者会見し、郷原氏の言動を批判し、緊急メッセージの発出にも最終了解はしていないこと、古川知事を擁護する九電の姿勢は評価できる等を述べた。以後、元委員全員での活動はなくなり、残る3委員による共同の活動となった。
<元委員3人による公開質問状の発出>
(10)九電は、文書による意見交換を前提に準備を進める一方、眞部社長が、社員ら内部向けに、九電幹部の問題意識として、「古川知事に濡れ衣を着せるわけにはいかない」と説明をした旨が報じられた。これに対して、郷原氏らは、第三者委員会報告書についてそのような指摘は名誉毀損に当たるとして、11月9日、その根拠について、眞部社長個人宛に公開質問状を発した。
(11)これに対して、九電側は社として回答し、「同社3人全員が否定しているにもかかわらず、知事から賛成投稿要請があったかのごとく論理立てがされているのはおかしい」とし、「知事の名誉に関わる重大な問題であることから、慎重に取り扱うことが必要であることを考慮して、判明している事実のみに基づき、報告書を取りまとめた」旨を11月14日付けで回答した。
続く
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