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衆院選が終わり、「脱原発」、「卒原発」を公約等で掲げて選挙を戦った政党は、激減、壊滅状態となりました。
国政政党である以上、国政に関するすべてのテーマについて、その方向性や具体的道筋のについての見解を出さなければならないはずですが、その辺が何ら明らかではなかったことに対する不信がこのような結果となったのでしょう。
少なくとも、「脱原発」、「卒原発」を最大の問題意識として訴えるのであれば、それに関する諸情勢についての分析評価と、それに基づく具体的なエネルギー戦略を述べなくてはなりません。「政権取ってから考える」では許されません。
細かいところまではもちろんいいのですが、実際に課題として指摘されているさまざまな考慮要因について、方向性についての整合性のある見解が求められます。
具体的には、以下のような点についての見解を明確に、かつ整合的に述べることが責務と言えるでしょう。今までも項目としては書いているつもりですが、論点整理の意味で、改めて質問の形にしてみました。
現代は、中世のように加持祈祷で解決する時代ではないのですから、「脱原発!」「卒原発!」と言葉だけ唱えていても、原発なきユートピアが出現するわけではありません。さまざまな複合的要素が絡み合っていますから、それらの解決の道筋を一つ一つ探りながら進めなければ、物事は解決しません。
総選挙で「脱原発、卒原発」政党が支持を得られなかったのは、このような目前の現実の困難を無視し、複雑な要因を考えずに言葉を唱えているだけではないのか?という無責任さへのレッドカードだったと感じています。
「脱原発」を主張する場合には、以下の点についても、十二分に検討してその見解とセットで提示しないことには、説得的なものにはならないでしょう。
以下の論点に思いを致すのであれば、
「そう簡単なものではなさそうだ・・・」
と、普通の実業に携わっている社会人であれば直感として感じることであり、それが選挙結果に反映されたものと思っています。
自民党が、「10年後を目途に、エネルギーのベストミックスを構築する」とした公約は、そういう意味で、現実的なものだと思います。現時点では、脱原発を目指そうにも、不確定要因が多すぎます。下記の諸要因の動向が、もう少しはっきり見えてくるまでには、数年はかかるでしょうし、それを踏まえたベストミックスの構築ということになれば、10年という期間は決して長い時間ではありません。
質問1 脱原発という場合、それに代わる主力供給源として、何を想定しているのですか?
火力ですか? 新エネですか? 火力、新エネ、それぞれその具体的内訳として、どのくらいの割合と想定しますか?
質問2 代替エネルギー源については、多くの課題が指摘されています。大きく分けて下記のような指摘がありますが、これらについては、どのようにクリアするお考えかご教示下さい。
<火力>=地球温暖化、高価格、途絶可能性、環境への負荷
①「温室効果ガス削減の観点から、限界がある。」
民主党政府は、25%削減の「国際公約」を維持するとしていますが、どう対処するのですか? 技術開発で火力発電のCO2排出等は十二分に削減できるものとしては、どのようなものを想定していますか? そのコスト面ではどのように評価されていますか?
②「毎年3兆円にも上る国富が流出しており、原発の選択肢を捨てることを公言すれば、更に足下を見られて価格は高くなりかねない」
明らかにコスト上昇要因になっており、現実に電気料金の値上げにつながっていますが、この事態についてはどのように改善を見込むのですか? 国際市場の価格が下がる中長期的要因としてどのようなものを想定されますか?(共同調達等?)総選挙の結果、自公政権となり、今後円安に進む可能性が大きいと言われていますが、その場合には更にコストは上昇していきますし、エネルギー源調達のためのコスト上昇は、人件費カットや資産売却で補えるレベルではありませんが、電気料金への影響を短期的、中期的にどう評価されているのですか?
③「原油等の火力発電のためのエネルギーの大半は、現時点では中東からホルムズ海峡を通過して運ばれているが、イラン危機等により海峡閉鎖がなされ途絶する可能性もある」
イランは厳しい経済制裁を受け、欧米、イスラエル等との対立は弱まる気配はまったくありません。実際に、イランは有事の際の海峡閉鎖の可能性を否定はしていません。その場合には、大半の電力用エネルギー源が途絶することになりますが、そのような危機についてどう分析評価していますか? 石油ショックは正に中東危機によって生じたのは記憶に新しいところですが、その再発可能性について見解をお願いします。
④「米国等のシェールガス(新型天然ガス)は、量や価格面で革命的といわれる一方、米国の輸出可能性が(議会での輸出推進決議があったものの)まだ不透明で、他方で環境への影響がクローズアップされてきており、不透明要因がある」
シェールガスへの期待は大きく、有力な供給源になるとの見方が多くなされていて、米国議会も積極的方法に転じつつあることは好材料ではありますが、他方で、強力な圧力をかける関係で水源にガスが溶け込む等の実例や反対運動も生じています。欧州ではシェールガス開発禁止に踏み切る国もあり、必ずしも好材料ばかりではありません。原発反対という場合には、環境破壊についても高い問題意識があると思われますが、この点はどう分析評価していますか?
⑤「ロシアからの供給に期待する声があるが、ロシアは不安定で過度な期待は禁物である」
プーチン大統領が「対日重視」でサハリンや東シベリアの原油、天然ガスの対日供給に積極的であると言われていることは確かですが、これまでロシアは、グルジア、ウクライナ等との政治的対立の際、ガスパイプラインを遮断し、結果、欧州への供給が一時途絶し大きな混乱となったことは記憶に新しいところです。またサハリンでは外資の開発案件について強制的に国営企業に資本譲渡させ経営権を握るなど強権的措置を講じています。こういう国柄の国に過剰に期待することは困難だと思いますが、どうお考えですか?
<新エネ>=供給安定性、高コスト、環境への負荷
①「風力発電は、欧州のように風が常に吹く適地も少なく、大型になればなるほど騒音、低周波等の問題が生じる。景観面の問題も大きい。」
騒音や低周波については、実際の問題として各地に発生していますし、破損してしまい、撤退に至ったケースも現実に出ています。風が吹きやすい尾根筋や海岸などにずらりと並んでいる例もありますが、景観破壊的面も指摘されています。このようなデメリットについて、どう克服する見通しをお持ちですか?
②「僻地に分散した風力発電所から主力送電網に繋ぐまでの送電線を確保するためには、多大なコストがかかる。」
環境面への配慮と風の確保の観点から海上風力基地の案がありますが、それであればなおのこと、需要地までの送電をどうするのかが大きな課題となります。そのコストは誰が負担するのですか?
③「風力にしろ、太陽光にしろ、量質の両面で不安定であるために主力電
源にはなり得ず、結局バックアップのためは、火力に頼らざるを得ない
。」
風力は風任せ、太陽光はお天気任せで、日本の風土では安定しないと容易に想像されますし、安定した電力として供給するためには、大型蓄電池等でいったん溜めたうえで流す必要が生じますが、当然コストがかかります。これらの点について、具体的な分析評価及び今後の見通しについてお聞かせ下さい。
④「新エネ論者はドイツを見本にしているが、欧州一円の巨大な走電線網が存在し、いつでも買えるという環境面で異なるし、新エネ買い上げ制度も、電気料金引き上げ負担に不満が高まり、見直されつつある。」
原発大国のフランスから電気供給もありますし、ドイツ自身まだ原発は稼働しています。もともと、新エネというだけで、高くて不安定な電力の購入義務を負わせるのか、わざわざ原価を大きく上回る買い取り価格を設定して参入事業者に絶対に利益が保障されるような環境をなぜ政府が強制して作らせるのか、理解しがたいところではありますが、実際に、ドイツでは新エネ買い上げ制度は行き詰まりつつあります。代替エネルギーとしては石炭火力が大きく増え、温室効果ガス排出量も増えています。これらの情勢についてどう分析し評価していますか?
⑤「風力発電にしろ、太陽光発電にしろ、原子力発電に代替するだけの電力を供給するためには、膨大な面積を必要とし、自然任せの面が強く、量、質とも不安定で代替電源にはなり得ない。」
風力発電の適地は限られていますし、山野、海岸等に巨大な風車を並べるのは非現実的ですし、太陽光発電にしても、メガソーラー、屋上利用にしても、出力と面積対比で言えば、とても火力、原子力の代替できるだけの量を確保することは難しいといわれます。また自然任せなので、電池等での貯蔵が必須ですが、そのコストが少なくとも現時点では大きいとされていますし、誰が負担するのかも不明確です。これらの点についてどう評価分析されていますか?
⑥「地熱発電は、地域的偏在に加え、国立・国定公園等の中にあり、開発にも限界がある。量的制約もある。」
地熱は確かに、太陽光や風力のような出力等が自然まかせでないところはありますが、如何せん、国立公園等の中に偏在しており、開発可能性にも一定の限界があります。公園地域外から斜めに掘削する方法も提唱されてはいますが、温泉の枯渇等の懸念があり、地元や観光業者との間の調整は簡単とは言い難いところがあります。これらの点についてどう評価分析されていますか?
⑦「バイオマスエネルギーについては、食糧との競合が現実化し、非食糧用作物へのシフトが課題となっている。」
実際、とうもろこし等がバイオ燃料資源に回され、食糧価格の高騰が現実のものになりました。非食糧用作物の開発が大きな課題となっています。油成分を多量に含む藻の遺伝子操作による燃料用に特化した種類の開発も進みつつあり、エクソン等も取組み、我が国でも各地で研究開発が進んでいますが、現時点ではコストと量の面でまだ見通しは十分な段階には至っていません。これらの点について、どのように分析・評価されていますか?
⑧ 上記以外で、新エネとして有力な選択肢となりうるとお考えのものがあれば、ご教示下さい。
続く
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