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以前、地震・津波関係の新安全基準の「審査ガイド」の問題点を書きましたが、改めて当初案と修正後の案とを比べて読んでみましたが、およそ想像もできないような飛躍した修正になっており、内容的にも手続的にも無効だと思いますので、再度書いておきます。
これは、今回の敦賀有識者会合での活断層認定の話にも関わってきます。
この審査ガイドについては、以前、以下の記事で問題を指摘しています。
敦賀有識者会合の第5回目でのとりまとめで、活断層と現時点で判断するとするに際しての判断基準は、現行の平成18年基準でした。しかし、第4回会合では、鈴木委員が、「どうせ新基準になれば、活動年代は関係なくなるのだ」という趣旨の発言をしばしばしていましたし、島崎委員長代理もそれを追認するニュアンスで自ら発言していました。
現時点での敦賀有識者会合のとりまとめが18年基準が前提だとしても、実際に再稼働申請する時期は、新基準が施行された後ということになります。規制委側は、この審査ガイドの考え方を適用して、「否定できないから活断層である」という結論に持っていこうとしていることは明らかです。そこで、この主張を徹底的に潰しておく必要があります。
審査ガイドの活断層認定の「解説」部分は、無効である。
というのが、このブログ記事での主張です。問題となる「解説」部分というのは、主として次の部分の考え方です。一言でいうと、以下の内容です。
「地層に少しでもずれか変形があれば、活断層とみなす」
「地層の活動が、12-13万年前で止まることはありえない」
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〔解説〕
(1)約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は連続的な地層にずれや変形が全く認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。なお、この判断をより明確なものとするため、活動性を評価した年代より古い(中期更新世までの)地形面や地層にずれや変形が生じていないことが念のため調査されていることが重要である。
(2)約12〜13万年前の地形面又は地層が十分に存在しない場合には、より古い(中期更新世まで)、地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。
(3)約40万年前から約12〜13万年前までの間の地形面又は地層にずれや変形が認められる場合において、約12〜13万年以降の地形面又は地層にずれや変形が確認されない場合は、調査位置や手法が不適切であるおそれがあるため、調査結果を詳細に検討する必要がある。
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無効である理由は以下の点にあります。
①新基準の本体の記述を根本的に否定する考え方を示していること。
②そのような考え方により新基準を適用するということは、パブコメ募集に際して、一切説明されておらず、事後に特定委員の個人的意見を全面的に反映して急遽大幅修正されたこと。
③何より、そのような考え方は、学会の共通理解ではなく、18年基準はもちろん、新基準での考え方でさえ、本来ないはずであること。
④変更動機が、時系列と内容から推測すると、敦賀有識者会合での合理的推論ができないことの弱点をカバーすることにあったと思われること。
1 「地層の活動が、12-13万年前で止まることはありえない」との点について
新基準の考え方の基本は、18年基準と同様、
「後期更新世(12-13万年前以降)の活動が否定できないものとする」
ということです。この点は、島崎氏が40万年前とすべきだと会合では主張したものの受け容れられず、結局、12-13万年前以降の地層が存在しない場合は、中期更新世(40万年前以降)まで遡るということで決着しています。そして、パブコメでも、「40万年前以降にまで遡って判断すべき」との意見が出ましたが、これは退けており、その理由として、
「我が国の活断層の活動周期がおおむね千年から長いものでも5-10万年程度であると考えられていること」
とパブコメ結果に記載しています(3月13日付「意見募集結果について」別紙のp1)。これを分かりやすく言い換えれば、
「12-13万年前以降に活動した形跡がなければ、活動周期を過ぎており、もう動かないと考えられる」
ということです。ところが、敦賀有識者会合のメンバーでもある鈴木委員が、
「12万年前位で活動が止まるというのは、非常に今までの知見には反する」
との意見による修正案を出し、それを反映する形で修正され、
「(3)約40万年前から約12〜13万年前までの間の地形面又は地層にずれや変形が認められる場合において、約12〜13万年以降の地形面又は地層にずれや変形が確認されない場合は、調査位置や手法が不適切であるおそれがあるため、調査結果を詳細に検討する必要がある。」
という一文が設けられました。12-13万年前以降の地層にずれや変形がないからといって、もう動かないと考えるのは間違い、という考え方によるものです。
これは明らかに、新基準本体の規定内容とそのベースとなる基本的考え方として規制委自らがパブコメ回答で述べた「活動周期は長くても5-10万年前である」との内容と、全く矛盾しています。
新基準本体の考え方を否定していることが明らかな「審査ガイド」は、無効であることは言うまでもありません。
2 「地層に少しでもずれか変形があれば、活断層とみなす」との点について
「(1)約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は連続的な地層にずれや変形が全く認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。なお、この判断をより明確なものとするため、活動性を評価した年代より古い(中期更新世までの)地形面や地層にずれや変形が生じていないことが念のため調査されていることが重要である。」
この解説の後半は、先述の「地層の活動が、12-13万年前で止まることはありえない」との考え方を反映したものでしょう。
前半部分がとんでもない内容です。
「ずれや変形が全く認められないことが明確な証拠で示されたとき・・・否定できる」
ということですから、これを裏返すと、
「ずれや変形が僅かでもあれば、・・・否定できない」
ということになり、イコール活断層という結論に直結してしまいます。
このような考え方は、学会の共通理解であるはずもなく、新基準としての考え方でさえないでしょう。
彼らは、これを以て、活動性を論ずるまでもなく、破砕帯があれば、その実態の如何に拘わらず、即それは活断層であると結論づけることができる、という思惑なのでしょう。しかし、現在の科学的知見に明らかに反するような内容で、しかも、パブコメ募集でそのような考え方を示したわけでないのですから、そのようなことが許されるはずもありません。
時系列でみても、敦賀有識者会合での合理的推論の必要性をピアレビューで指摘された後の動きです。その辺は、以下の記事で書きました。
審査ガイドの当初案には、このようなことは、全く片鱗さえ書かれていませんでした。極端な個人的独走とそれに引きずられた事務局の暴走としか言いようがありません。
以前、下記の記事で伊方原発最高裁判決を紹介しましたが、
「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」
との判決の考え方に照らすと、もし審査ガイドに即して活断層判断がなされるのであれば、審査ガイドの内容には不合理性があり、過程にも看過しがたい過誤がありわけですので、その判断は違法です。
以上のことから、審査ガイドの活断層認定の解説部分は、無効だということです。
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規制委員会が活断層の認定を急いでいる理由について、「自己保身的な役人根性により、再稼働申請の足切りをしているのではないか?」という趣旨のコメントを以前しました。
しかし、島崎委員以下の「活断層ムラ学者」の思惑は別かも知れません。
彼らが急ぐのは、参議院選挙までになるべく多くの発電所の破砕帯に「活断層」ラベルを貼り付けるためでしょう。
人選がおかしかろうが、論理破綻していようが、国が定めた手続きによって、原子力規制委員会が一旦「活断層」と認定してしまえば、現在の日本の「原子力は悪」という風潮からして、これを「安全サイド」とは逆の判断に修正するのは衆参過半数を獲得した自民党にとっても相当に困難です。
おそらく、行政訴訟でひっくり返すしかないでしょうが、少なくとも相当な時間がかかるでしょう。
規制委員会が本気で認定するようであれば、即座に行政訴訟に訴えて、差し止め請求するべきです。
これだけ荒っぽいことを、全く急ぐ必要が無いのにやってるのですから、確実に勝てますし、島崎委員を罷免することができます。
2013/5/18(土) 午前 8:50 [ 便所の落書 ]
「原子力規制委員会や有識者の判断に政治が口出しするべきではない」というのは、確かに一理あります。
ただし、それは規制委員会等が「科学的かつ法的に正しい行動」を行っている場合に通用する原則であって、法に反する非科学的判断を行うなら、直ちに罷免するべきです。
原子力規制委員会のメンバーを国会承認する際に、自民党内には「島崎委員だけは認められない」との意見が最後まで強かったと聞いたことがありますが、心配したとおりになってしまいましたね。
2013/5/18(土) 午前 9:01 [ 便所の落書 ]
100パーセントの安全は、原子力に限らずこの世に存在しません。
そして、「100パーセントの安全に限りなく近づける」というのは、単なる精神論、意欲の表明としては良いのですが、実施しようとすれば、100パーセントを求めるのと同じ事で、存在しない目標を目指していては迷走するしかありません。
技術、安全の世界では実現可能な目標を定める事が必須であって、おそらく科学の世界でも概ね同じだと思いますが、活断層ムラは100パーセント活断層でないことを求めていますので、行政手続き的にも科学的にも破綻してます。
原子力規制委員会の最大の仕事は、実現可能で合理的な安全目標と、これを達成するために必要な具体的基準を定める事です。
これは、最近の更田委員が良く言う「安全を値切る」ことそのものです。
原子力規制委員会は「安全を値切る」総本山であって、それこそが存在意義なのです。
事業者が勝手に安全を値切っていては危なくて堪らないから、規制委員会が値切るのですが、これは「事業者の値切り要求を一切聞くな」ということではなく、合理性の有無を判断するだけの事です。
2013/5/18(土) 午前 9:28 [ 便所の落書 ]
更田委員が「事業者は安全を値切って
いるようだ」と怒っているのは、「俺の仕事(値切り)に口出すな!ケチつけるな!」と言っているのと同じ事です。
コストにも責任のある事業者が、規制委員会が目指す安全目標を達成できる範囲で、安全を値切ろうとするのは当然のことであって、全く非難されるべきことではありません。
一方で、電気料金の査定では、「あれは高い、これも高い、もっと安い材料で、少ない人数で、安い人材でできる」とドンドン安全が値切られているのですから。
2013/5/18(土) 午前 9:50 [ 便所の落書 ]