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東北電力東通原発の破砕帯評価会合の状況を覗いてみて気が付いたのですが、規制委の会合運営は、一貫性がなく不公正ではないでしょうか。
それは、外部の学識経験者からの意見の扱いについてです。
原電敦賀の評価会合でも、外部有識者の参加については、事業者側の協力者としての立場でしか意見表明や参加を認めませんでした。
同様に、東北電力東通会合においても、7人の識者の見解書が提出され、2人が審議に参加していますが、
<参考資料>
事務局の規制庁の説明は、
「それから、参考資料1でございますけど、東北大学名誉教授、大槻様からのコメント、それから、参考資料2-1〜7でございますけど、これは東北電力側の専門家からの見解書でございます。2-1〜2-7までございます。
(中略)
なお、本日は、事業者側の説明者として、肩書きは兵庫教育大学の徳山名誉教授、それから、首都大学東京の大学院の山崎教授のお二人が出席されています。こちらについては、先日の事業者との面談において、事業者側から、東北電力調査評価に携わった方、協力者として出席させたいという要請がございまして、事務局としても、これまでの東北電力以外の出席者と同様に、第三者の立場ではなく、あくまでも事業者の調査に携わった方として出席を認めることとしたものでございます。」
「第三者としての意見表明は認めない」ということのようです。
しかし、それならば、同時にコメントが配布されている東北大の大槻教授の意見書は何なのか? という疑問がすぐに湧きます。
驚きましたが、大槻教授は、今年になってからの会合では、毎回、意見書を提出しています。そこで何と書いてあるのか?といえば、
「真実により近づくのが専門家の務めであると考え、コメントをしたためました。参考にして下されば幸いです。」
ということは、第三者として、自らの意見を表明しているということです。
これが、2012年11月の日付で、その後も毎回、意見書が提出されています。そして、途中からは、評価会合に佐藤教授が、これについて解説をしています。
上記の事務局説明でも、さらっと、「参考資料1でございますけど、東北大学名誉教授、大槻様からのコメント」というだけで、その位置づけについては、他の識者のような性格付けを述べていません。
この大槻教授の意見提出が認められ、それが正式の議事次第で配布資料として位置づけられるのであれば、他の識者にしても、第三者の立場として意見提出が認められて然るべきです。
学識者の扱いについては、規制委は不公正です。しかも科学的ではありません。
以前にも書きましたが、思いつくだけでも事例が三つあります。
第一は、関西電力の大飯会合で、地質の詳細な専門家がいないということで、評価会合委員3人が一致して依頼した識者の意見を、参考扱いとして、実質的に無視しましたし、
岡田委員らから、自分達ではカバーできないので、もっとその分野の専門家を加えてほしい、との強い要請に対して、島崎委員長はこれを拒否しています。
第二は、大飯・高浜の再稼働申請についての審査で、三連動地震の危険論を主張する中田高教授、渡辺満久教授の見解を、アプリオリに採用して、それに対する反証要求から審議を進めています。それでいて、中田教授の指摘する箇所が調査では見つからないという指摘に対しては、うやむやにしてしまっています。
第三は、原電敦賀の最初の評価書案とりまとめにおいて、首都大学東京の鈴木教授の見解を部分的に援用していました。情報公開請求で、依頼したメールと回答メールの全体について公開請求したのに対して、「私人だから」という信じがたい理由で却下されています。
要するに、規制委側は、自らが誘導したい見解を補強するためには、外部識者の意見を第三者のものであるかのように扱う一方で、電力側の見解を支持する識者からの第三者としての意見提出、表明は認めないという、一貫性を欠くダブルスタンダードの対応を取っているということです。
<!--[if !supportLists]-->●今日の日経の1面下の「春秋」コラムに、「人質司法」について触れられていました。
「町奉行の下で市中の見回りや取り調べにあたる与力に辣腕でならす男がいた。ある日、思い立つことがあって家に帰ると着替えもせず下男を「金を盗んだな」と問い詰めた。無実は承知のうえである。もちろん下男は否認したが、厳しい追及にやがて罪を認めてしまう。自慢の強引な吟味が冤罪を生むのにショックを受けた与力は、職を辞し隠居したという。
逮捕した容疑者や裁判が始まった被告の身柄を捜査当局が長い間拘束する。その間に都合よく供述させたり、否認する限りは自由になれないと脅したりする。そんな批判が「人質司法」の言葉にはこもる。逃げたり証拠を隠したりの可能性を吟味して拘束の是非を決めるはずの裁判所も、検察の言いなりだといわれてきた。」
規制委がやっていることは、「否認する限りは自由になれないと脅したりする」のと同様、「三連動なり、高い基準想定を否認する限りは審査を進めないと脅す」方法であり、文字通りの「人質行政」です。科学的な主張−反駁のサイクルとは程遠いことは由々しい限りです。
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3 それでも規制委は、重要施設への影響評価をせざるを得なくなること。
上記のように、規制委と有識者とは、有識者会合の位置づけ等を巡って迷走してきましたが、基準適合性審査の段階になれば、「有識者会合による評価にかかわらず」、否が応でも、重要施設への影響度合いの評価をした上で判断をせざるを得なくなるでしょう。
有識者会合の判断が「12〜3万年前以降に活動したことを否定できない断層」であるから、基準不適合で不許可という「門前払い」には決してできないと思います。
それは、審査する規制委側に、活断層(「今後活動する可能性のある断層)」であれば、常にすべてが「安全機能に重大な影響を与えるおそれがある」ことを立証する責任を負っているからです。
この点は、こういうことです。
(1)まず、安全基準の大元の規定は、原子炉等規制法にあります。
(許可の基準)
第四十三条の三の六 原子力規制委員会は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
(一〜三 略)
四 発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。
基準制定の考え方として、法律が示していることは、あくまで、
「発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして」
の基準です。
(2)他方、規制委が定めた新基準では、
「第3条
3 耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。」
その解釈として、
「3 第3条第3項に規定する「変位」とは、将来活動する可能性のある断層等が活動することにより、地盤に与えるずれをいう。また、同項に規定する「変位が生ずるおそれがない地盤に設け」るとは、耐震重要施設が将来活動する可能性のある断層等の露頭がある地盤に設置された場合、その断層等の活動によって安全機能に重大な影響を与えるおそれがあるため、当該施設を将来活動する可能性のある断層等の露頭が無いことを確認した地盤に設置することをいう。」
としています。
こういう法令の委任構造の下での規定であれば、立法府の定めた法律を施行する立場の行政府である規制庁としては、
①「変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければ」(断層の態様、規模に関わらず)、必ず「災害防止上支障がある」ことを合理的に証明し、更に、
②「将来活動する可能性のある断層等の露頭がある地盤に設置された場合、その断層等の活動によって安全機能に重大な影響を与えるおそれがある」と断言する形で解釈する以上は、12〜13万年前に活動したことが否定できない断層が、常に必ず、「重要施設の「安全機能に重大な影響を与えるおそれがある」ことを合理的に説明できなければなりません。
③更には、旧基準からあえて考え方を激変させ、既設原発に対しても、即時・遡及適用し、質問主意書への回答(閣議決定)を覆して、活断層の態様等に関わらず一律に、立地・再稼働不可とする合理的説明をしなければなりません。
しかし、この規定と解釈は、原子力工学等の関係学会の総意として提出された意見を無視して定められたものですから、それらの学会から見解を述べられた場合に、規制庁がこれに自ら反証して合理的説明をすることは至難の業です。島崎氏が繰り返した「何が起こるかわからない」というセリフだけでは、通用しようがありません。
要するに、重要施設への影響評価をしないで済ませようとすれば、法律の受任範囲を逸脱して、法の運用をしているということになり、違法ということになってしまう、ということです。
薬事法で、通信販売を不可とする厚労省令が違法とされたことと同じことです。
規制委の違法性は、これまで本ブログで縷々述べているように、憲法の諸原則に抵触するものですから、極めて違法性の程度が大きいということです。
いずれ、不許可処分取消訴訟となれば、こうなることは目に見えています。そうなれば、規制委の行政は大混乱に陥ることになり、その威信は失墜しますから、今のうちに軌道修正をしていく必要があります。
そのことに遅ればせながらやっと気が付いて、徐々に軌道修正を図るために、今回の規制委の方針の「確認的」な整理と相成った・・・ということであれば、歓迎すべき話でしょうが、実態はどうなのでしょうか・・・?
どのみち、原電からは、矢継ぎ早に、問題指摘と申し入れがなされており、今週早々には、詳細な問題点の分析資料を公表するとのことです。
12月10日にピアレビューが開催されるそうですが、どういう展開になるのか注視したいところです。
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原子力規制委が、12月3日会合で、破砕帯評価の有識者会合の評価と再稼働の安全審査(基準適合性審査)との関係について、改めて整理しています。
破砕帯の活動性については、設置変更許認可の審査の中で可否を決定していくというものですが、これについて、マスコミ報道の一部では、従来方針の見直しと報じるものもありました。
「原子力規制委員会は3日、日本原子力発電敦賀原子力発電所(福井県)、東北電力東通原発(青森県)など、6原発の敷地内断層(破砕帯)が活断層かどうかを調べてきた有識者会合の判断について、「有識者会合による評価にかかわらず、規制委が(安全)審査を行った上で許認可の可否を決定する」との方針を決めた。
再稼働に必要な「安全審査」の前段階で、少数の専門家が活断層かどうか議論する有識者会合の位置付けを事実上見直すもので、現在の仕組みが機能不全に陥っていることを認めた形だ。」(読売新聞2014年12月3日付)
このあたりの位置づけについては、当初から混乱はしてはいましたが、田中委員長は、変更申請が出てこれば審査はすると言っていましたので、それを単に改めて確認しただけだ、というのが規制側のスタンスのようです。
委員会での配布資料には、次のように書かれています。
「2.適合性審査との関係
○有識者会合での評価は、旧原子力安全・保安院が行った調査指示に基づき各事業者が実施した敷地内破砕帯に関する地質調査結果について、有識者が専門的知見を基に評価を行い、原子力規制委員会に報告するもの。
○他方、新基準への適合性審査は、原子力規制委員会が「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく許認可を行うにあたって、審査会合やヒアリングを通じて審査を行った上で処分を決定するもの。敷地内破砕帯の活動性についても、設置変更許可を行う際の審査項目の一つとして位置づけられており、有識者会合による評価にかかわらず、原子力規制委員会が審査を行った上で許認可の可否を決定する必要がある。」
3.今後の対応
○有識者会合による評価を実施中のサイトについては、可能な限り早期に評価をとりまとめていく。その際、有識者による評価が分かれる部分があれば、その旨 を明記した上で評価書をとりまとめていく。
○新基準適合性審査にあたっては、他のサイトと同様に、原子力規制委員 会が審査を行い、許認可の可否を決定する。この際、有識者会合による 評価を重要な知見の一つとして参考とする他、事業者から追加調査等に よる新たな知見の提出があれば、これを含めて厳正に確認を行ってい く。」
委員会の議事録をみても、当初方針を確認しただけだ、という趣旨を確認しています。
「○更田委員長代理
ここで櫻田部長から、改めて適合性審査との関係を整理とはあるものの、ここの2.で書かれているものは、従来からこういった方針であったはずで、私の理解では、ですから、何も別に変わっていないと受け取りましたけれども、それでよろしいですか。
○櫻田原子力規制部長
原子力規制部長、櫻田でございます。
そのとおりでございまして、改めてというのは、今までこのような形で進めてまいりま16したが、それを確認するためにもう一度整理させていただいたということでございます。
○田中委員長
有識者会合の意見というのは、ここに書いてあるように、重要な知見の一つとして参考にするということについては、これは紛れもない私たちの基本的な姿勢ですけれども、実際に法的な手続からいうと、まず、適合性審査に申請が出てくれば、それについてきちんと対応しなければいけないということだと思います。」
これらの一連のやりとりを見て感じることを、書いてみます。
1 「法的責任がない専門家会合」との批判を意識したと思われること。
前回記事で書いたとおり、敦賀の有識者会合の活断層認定判断については、法律学者の森嶌昭夫教授からも、「法的責任を負わせて判断させるべきだ」「何が足りないのか、ということがわからない」等の批判をされていました。これを意識したであろうことは想像ができます。
昨年5月の敦賀の有識者会合による活断層判断の際には、規制委会合で、ほとんど議論もなく、有識者会合の評価を追認し、冷却用配管が全壊するという前提で影響を報告徴収させていました。
また、田中委員長は、再稼働申請が出てこれば審査はするけれども、結果は見えているかのような示唆的な発言をしていたかと思います。
そういう流れだったことからすれば、今回、「従来方針の確認」と言いながら、
「有識者会合による評価にかかわらず、原子力規制委員会が審査を行った上で許認可の可否を決定する必要がある。」
としたことは、有識者会合の評価の比重をかなり落としたような印象を強く受けます。
そもそも、今回の規制委ペーパーにあるように、許認可の審査の中で、
「事業者から追加調査等による新たな知見の提出があれば、これを含めて厳正に確認を行っていく。」
ということであれば、昨年5月の時点で、再稼働の許認可申請を受理してその中で原電からの追加的知見も含めて審査を行うとの方針を打ち出せばよかったはずです。
電力の安定供給確保のためにも、審査の早期促進のためにも、そして何より評価内容、手続きが行政手続き、行政処分として、法的に責任のある訴訟で争い得るものとして位置づけられるという点で、適切だったと考えられます。
しかしそうはならず、ずるずると時間ばかりが空費され、あげくにろくな根拠もないままに、「そうとは限らない」「別の解釈余地もある」という極めて曖昧な理由で活断層判断をしてしまいました。当然、原電からも強硬な批判がなされ、法学者からも批判がなされたことによって、遅ればせながら、リスクと問題性に気が付いたのかもしれません。顧問弁護士にでも相談すれば、「持たない」という指摘はなされていることでしょう。
田中委員長の記者会見での発言も、かなり持って回った言い方に終始しています。
「○記者 もう一つ確認ですけれども、今回有識者会合の評価は重要な知見の一つとして参考という形で明文化されましたけれども、そうすると、有識者会合で出る結論と審査会合で出る結論がこれは違っていても、これは問題ないという認識でよろしいでしょうか。
○田中委員長 問題があるかどうかということよりも、有識者会合の結論と違うような結論になるかどうかということについては、これは今後の進展を見ないと何とも言えないと思います。問題あるかないかということは今の時点で予断を持って言うことはちょっと今できないかなと思います。
○記者 問題云々というより、可能性としてありうるということでよろしいですか。
○田中委員長 だから、もともとこの活断層があるかどうか、動くかどうかという調査については、保安院のときに問題提起がされてそれをずっとやっているわけですね。だからそれをきちっと調べることは我々の一つのミッションとして引き継いでいるわけですから、そういう要するにクエッショナブルなところ、疑義のあるところについて始めたわけですから、それを本当に明確に大丈夫か、白か黒かという言い方が正しいかどうか分からないけれども、そういうことが明確になるようにするのが本当の姿なんだけれども、なかなかそれが出来がたいところもあるわけです。既にプラントが建ってるんで。そういう中で、どういう判断をするかというところですから、あまり予断を持って何かしなければいけないというわけでもないと思いますが、最終的には、法的には変更申請が出てくれば我々は法律に基づいて審査の結果を示すことになりますので、そういう手続きに入った方がいいのではないかというところもあります。」
2 依然として、破砕帯有識者会合の位置づけは曖昧であること。
今回の規制委での「確認」にも拘らず、この有識者会合の評価の位置づけは、依然として混乱していると思います。
今回の規制委資料では、次のように、保安院の調査指示に基づく調査結果を評価し報告するものとしています。
「○有識者会合での評価は、旧原子力安全・保安院が行った調査指示に基づき各事業者が実施した敷地内破砕帯に関する地質調査結果について、有識者が専門的知見を基に評価を行い、原子力規制委員会に報告するもの。」
しかし、ここで言及されている保安院の調査指示内容と、有識者会合がやっている検討内容とは乖離しています。
原電敦賀に関しては、平成23年11月の最初の保安院指示には、次のように書かれていました。
「貴社敦賀発電所については、文献調査から天正年間に若狭地域に大きな津波が到来した旨が記載された古文書の存在が明らかとなったこと及び地震・津波に関する意見聴取会において周辺斜面の安定性評価も必要であるとの指摘があったことを踏まえ、当院は、同地域における既往津波に関する調査とそれを踏まえた津波の影響評価及び基準地震動の変更に伴い、周辺斜面の安定性の再評価と当該再評価を踏まえた安全上重要な施設等への影響評価が必要であると考えます。
また、貴社は、耐震審査の改訂に伴う耐震安全性評価結果中間報告書において、同発電所敷地内を通る浦底断層及び原子炉建屋直下に存在する破砕帯の活動性については、地形・地質調査の結果に基づき否定しているところです。
しかしながら、当院は、当該地震に伴う想定以上の地殻変動により、広域にわたって応力場に影響を与え、正断層型の地震も発生していることを踏まえ、浦底断層の活動に伴う破砕帯も含めた地盤の変位について原子炉建屋等への影響について評価すること、また、貴社東海第二発電所については、従来、耐震設計上考慮していなかった断層についても、活動性の再評価が必要であると考えます。」
破砕帯が活断層(設計上考慮すべき断層)かどうか、ということよりも、あくまで、
「浦底断層の活動に伴う破砕帯も含めた地盤の変位について原子炉建屋等への影響について評価すること」
という実質に主眼が置かれていたことは明らかです。実際のところ、保安院指示後は、意見聴取会の中で調査計画、評価方法等について審議していましたから、原子炉建屋等への影響評価までを念頭においていたことは明らかだったと思います。
ところが、保安院から原子力規制委に引き継がれた途端に、有識者会合の趣旨は、「設計上考慮すべき断層かどうかの認定」だけに変質してしまい、その先の肝心の「原子炉建屋等への影響評価」ということについては、どこかに飛んでいってしまいました。
「(趣旨)
関西電力(株)大飯発電所では、発電所敷地内の破砕帯について本年7月の原子力安全・保安院の指示に基づき追加調査が行われているところ。
当委員会としては、同破砕帯について自ら確認と評価を行い、耐震設計上考慮する活断層の認定に係る判断を行う。」(平成24年9月26日資料)
話がややこしいのは、原子力規制委での有識者会合が、「設計上考慮すべき断層かどうかの認定」にあったとしても、旧基準下では、そうだとしても、その先に原子炉建屋等への影響評価があったことです。国会での質問主意書への政府答弁書により、その旨は明らかでした。
「発電用原子炉施設が「活断層の上」にあることのみをもって立地指針に不適合となるものではない。なお、発電用原子炉施設の耐震安全性については、新耐震指針等に基づいて、活断層が発電用原子炉施設にどのような影響を及ぼすか、また、それに対してどのような耐震安全設計を講じるかを厳格に評価した上で、判断するものである。」
ということでしたので、この前提に立てば、
有識者会合=活断層か否かの認定、
適合性審査=原子力施設等への影響評価
という役割分担に変更したのだろうとも解釈することはできました。
ところが、有識者会合での検討開始後に、新基準とその運営指針、審査ガイドが定められ、活断層上の立地は不可であるかのように定められたため、そこから先の影響評価が何らなされないままに推移するということになってしまいました。
「今後活動する可能性のある断層=12〜3万年前以降に活動したことを否定できない断層」とし、その否定の絶対証明がなされない限り、活断層と認定され、その影響評価はなされないままに、廃炉に追い込めると鈴木教授や島崎副委員長らは踏んだのでしょう。
東北電力の東通原発の破砕帯などは、有識者委員自身、そして島崎氏自身が「活断層だとしても大したことのない断層」との趣旨の発言をしていましたが、新基準の運用方針では、活動性の大小を問わず、立地不可とするという趣旨ですから、ひどい話です。
ともかく、有識者会合の位置づけ、役割は曖昧になったまま、現在に至りました。今回の「確認」的整理によっても、曖昧さが払拭されたとは言えないでしょう。
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【論点7】挙証責任の問題
挙証責任の問題も、敦賀会合の場合に問題が凝縮して現れています。
伊方原発設置許可取消訴訟における最高裁判決では、一義的な疎明責任を国側に負わせました。安全を証明するための根拠資料を保有しているのに対して、住民側にはそれがないという、情報保有の非対称性があることが理由です。しかし、国側が安全性について証明すれば、それに対して安全ではないとする反証責任は住民側に移ります。このような責任分担は定着しています。
今回の破砕帯評価の場合、国(=規制委)と電力会社とは、情報保有の非対称性はありませんから、破砕帯が活断層だと判断するのであれば(そしてそれが安全性を損なうとするのであれば)、基本的には規制委側にあるはずです。原電は、規制委の前身である保安院での意見聴取会での審議に基づく指示に即して調査を行い、材料を揃えました。了承されていた調査計画に基づいて調査の上、集めた材料を評価し、活断層ではないと証明しました。その評価については、外部の第三者によって適切である旨の検証もされています。
その原電側評価が適当ではなく、活断層の定義に当てはまると規制委が考えるのであれば、その根拠となる具体的材料を示して合理的推論による反証をしなければなりません。規制委は、二言目には、「まだ十分でない」「そうとは限らない」と言い、「安全サイドで判断する必要がある」と言いますが、安全サイドでの判断というのは、合理的推論をした上で残る不確定性についての判断の話であり、合理的推論をしないままに安全サイドで活断層だとの判断はありえません。そのような趣旨は、ピアレビューの際に、栗田委員も述べていました。
この後に別途述べますが、評価会合は、委員からの質問、指摘に対する原電側からの追加的反論や第三者による参考人としての意見陳述を排除したまま結論を出しましたので、合理的反証をしていないことになります。しかも、判断の内容が、次の評価書案の記述の通り、「そうとは限らない」「〜との可能性も排除できない」式のものばかりです。決して、「〜〜の材料から、〜〜と判断される」という合理的推論を経た認定にはなっていません。
最後の部分の「K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、〜〜」という箇所は、それこそ期待を含んだ想像で言っているだけで、通常の推論であれば、自ら根拠を示し、「南方での××の調査結果から判断し、南方に連続しているものと認められる」と展開しなければなりません(実際には、原電が南方でボーリングして連続していないデータを示している点で事実誤認)。
様々な制約があるなかで、「絶対にない」ということを完全に証明することを求めることは「悪魔の証明」に類するものであり、通常であれば、一定の制約の中で、どちらの積極的な合理的推論がより説得性が高いかで判断される筋合いのものです。ところが、評価会合は、原電側の見解に対して、消極的に「そうとは限らない」「別の可能性もありうる」というだけで、規制基準の下の審査ガイドのそのまた解釈に盛り込んだ「明確な証拠による否定」を要するという名目の下で、絶対否定にはなっていないという指摘に終始しています。
※ 評価書案の記述例
「以上のことから、有識者会合としては、日本原電が説明する“⑤層下部テフラの降灰層準”は、再堆積である可能性が否定できないと考える。」
「③層の堆積年代は、「古くとも MIS6」であり、MIS6 以前であるとすることはできないと考える。」
「以上のことから、D-1 トレンチにおいて、K 断層は、⑤層上部の堆積時期すなわち K-Tz 降灰年代(約 9.5 万年前)以後には活動していない可能性が高いが、⑤層下部堆積以前に活動した可能性を明確に否定することはできないと考える。」
「以上のことから、有識者会合としては、K 断層の活動の履歴については現状のデータでは確実な評価は難しく、中期更新世以降に複数回活動した可能性を否定できないと考える。」
「以上のことから、K 断層が D-1 トレンチ南方においてほとんど変位が認められなくなるとは判断できず、また南方へ連続している可能性も明確には否定できない。有識者会合としては、K 断層は、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考える」
「さらに、有識者会合としては、K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、D-1 破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考えている。」
【論点8】審議手続きの重大な瑕疵
今回の敦賀評価会合は、昨年と同じ轍を踏んでいると思います。昨年は、委員自身がその会合での質問・確認事項が少なからずあったにも拘わらず、また、委員自身も原電の主張の趣旨がやっとわかったと言っていたにも拘らず、そして何より、原電がその1カ月強の後には最終報告書を提出すると言っていたにも拘わらず、強引に審議を終結し、活断層との断定を行いました。しかし、案の定、原電側の調査結果により、新しい材料が提示され、審議再開に至りました。
今回も、委員自身が照会している事項もあったわけですし、原電が追加提出している資料は、いずれも審議過程で出された質問、疑問に答え、論点について反駁するものです。
科学的な検討のための会合なのですから、各個別論点ごとの原電側の主張に評価会合側がきちんと具体的材料を以て反論しなければ、評価会合側の判断根拠、手続きに明らかに重大瑕疵ありということで、正当性が保てなくなってしまいます。
9月4日の評価会合で、原電からの追加資料に基づく議論を排除し、専門家による意見陳述も拒否したことは、産経新聞も以前大きく取り上げて批判していましたが、規制官庁の手続きとしてはちょっと信じがたい話です。
自分のHPで(「被規制者との面談」欄)、議事要旨として公表している中で、自ら「了解した」と記載した話を、島崎氏が覆しているのですから、訴訟等で争われたら、もう一発でアウトです。
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○当方から、次回以降の会合の進め方に関し、
・作成中の「議論の整理案」(資料)を提示。
・議論の整理については、現在精査中であり、今後変わる可能性もある。来週前半には確定する予定なので、確定したら示す。
・次回(第4回:9/4予定)は、議論の整理に沿って、事業者の説明について誤認がないかどうかを確認すると伝える。
○先方からは、次回の会合に関し、
・7月23日の面談で提出した申し入れ資料「敦賀発電所敷地の地質・地質構造D−1破砕帯の評価 コメントに対する回答」の使用と当日新たに作成する資料について、当日持ち込みすることもある。
・事実関係の聴取だけでなく事業者側からの確認も行ってよいのか。
・次回会合でコメントが示され、即答出来ないものがあった場合は、引き続き対応する。
・「議論の整理案」の日本原電の説明の記載内容について、事実誤認等があれば、事前にコメントしてもよいか。
との申し入れがあり、当方も了承した。
○また、事業者が招聘する専門家の会議への出席については、当方としても検討中であり、来週の早いうちに回答する。
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島崎氏は、「1週間前に資料を出すのがルールだ」「きりがない」といい、鈴木氏は「いつも直前、当日に持ち込んできて何だ」と不満を述べていますが、そもそも、時系列でみれば、これらの発言がいかにピントはずれであるかは一目瞭然です。
8月27日(水) 第3回追加調査評価会合
8月29日(金) 原電が事務局と面談し、次回会合で用いる「議論の 整理(案)」ペーパーを手交される(変更ありうるとの留保付き)
9月 4日(木) 第4回評価会合
島崎氏、鈴木氏らが言う、「1週間前」に資料提出など物理的に不可能ですし、8月27日の委員だけの会合を傍聴はできたとはいえ、その議事録が公開をされているわけでもなく、29日に手交された「議論の整理」ペーパーに即して、27日の会合での指摘等を分析し、論点整理して補足説明資料、補強資料を作るので精一杯だったはずです。9月4日の1週間前は、8月28日であり、その翌日の29日に「議論の整理(案)」を手交されて(しかも暫定的なものとして)、どうやったら1週間前に資料を提出できるのでしょう?
島崎氏は、退任前に決着させてしまいたいという思惑が前面に出ていて、ほとんど支離滅裂です。
島崎氏のみならず、それを更田委員や田中委員長も同じようなことを言って、次々と資料を出してくるとして、原電を批判してしますが、規制官庁のトップとして無知に過ぎます。規制行政における行政手続きの基本が分かっていないとつくづく感じます。
島崎氏が主宰する評価会合での、同氏の定番のセリフは、
①「時間がない」「時間が迫っているので簡潔に」
②「いくら議論しても、(また資料が出てくるので)きりがない」
③「1週間前に資料を出すのがルールだ」
④「この会合での議論がすべてだ。」
こういったセリフを、何の疑問も持たずに、自信を持って言い放つところが信じられません。会合の趣旨、審議の目的、科学的・法律的議論の在り方等のいずれの観点から見ても、あり得ないセリフであり、これらは、自ら、「私は不公正な手続きにより結論を出しました」と告白しているようなものです。
9月4日会合では、8月29日に手交された整理ペーパーに基づいて議論が行われており、当日原電から提出された意見ペーパーは、当日の議論には反映されていません。
その原電の意見ペーパーが、11月19日のとりまとめ会合での今回の評価書案に取り入れられているのかどうか、詳細にはわかりませんが、しかし、原電が、11月21日に発表した
「(第5回追加調査評価会合)における主な問題点について」とのペーパーをみると、評価会合側の事実誤認や思い込みが多すぎるように感じます。
調査データを示しているのに、データがないとしている点などは、内容以前の基本的な部分で信頼性に疑問符が付きますし、これだけ多くの点で具体的に根拠を以て反論されるような内容では、科学的にも訴訟的にももたないのではないでしょうか。
訴訟となった場合、ともかく、お互い主張を出し合って、論点に即して相手の主張に根拠を以て合理的に反駁できなければ負けですから、規制委側は、上記ペーパー等での原電指摘に対して、逐一反論する必要があります。
訴訟では、時間がないから意見を聞かないとか、きりがないからもう聞かないとかが罷り通るはずもなく、原電側の参考人も当然採用されることでしょう。評価会合での島崎氏の議事進行のように、「もう十分議論した」と漠と主張して議論を打ち切ることもできません。
むしろ、そういう発言を繰り返して議事進行をしたことや、第4回会合に提出され公式にも規制委HPに掲載されている原電説明ペーパーでの主張、指摘について、ほとんど議論も反論もないままに、評価書をまとめたとなると、これは審議手続き自体に重大な瑕疵があるものとして違法となる可能性が多分にあります。内容も、科学的な合理的推論に基づかないものとして斥けられることでしょう。
既に上記の諸論点で述べたように、もともと規制委及び評価会合には、憲法論を含む多くの深刻な問題を孕んでいます。活断層に関する基準の局面だけをとっても、基準自体とその策定過程が、学会のコンセンサスを一顧だにしていないものとして、最高裁判例に照らして重大な疑義がありますし、その適用局面における評価会合でも、これまた重大疑義、瑕疵があるというダブルでの問題を孕んでいます。
今後のピアレビューや、規制委会合で、これらの問題の一端なりとも理解した人々がいればいいのですが、どうなのでしょうか。ピアレビューでの栗田委員などはまだ筋論的なことを述べていましたし、新しく就任した田中知委員が原子力工学の専門なので、何かコメントするのか、よくわかりません。
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本来目的の原発重要施設への影響評価をしようとしない規制委
しかし、ともかく、規制委は、この破砕帯調査の元々の趣旨を忘却し、肝心要の原発の重要施設への断層の影響を評価するということには、文字通り一顧だにせず、その破砕帯が12-13万年前以前のものかどうかということだけに延々時間を費やしてきました(空転による浪費もして)(しかも、その活断層の定義が、絶対否定の証明を求める非科学的なもの)。浦底断層が動いた場合に、どう原発の地盤に伝わり、直下の破砕帯がどう動き、施設に影響するか、という最も分析評価が期待されている点については、何もせずに時間を浪費したのが規制委なのです。原電がその評価を持っていて、規制委での審議を求めていたにもかかわらずです。
地質学者の島崎氏らが、「下に断層があると、何が起こるかわからない」からという科学的とは思えない主張に立脚して、工学的検討を一切排除してきたというのが実態です。
どこからも制度上牽制されない不合理な制度―立法的解決が図られるべき
活断層に関する基準や解釈の問題は、大飯原発の差止め訴訟で論点になっているようですから、そちらで司法判断が先行して出るのかもしれません。
しかし、憲法論に関わる問題は、独立性の高い委員会になってしまっている中では、立法的に解決することが必要になっています。どういう機関であっても、どこかで牽制がなされる仕組みになっていますが、原子力規制委は、そういう牽制をする立場の組織がなく、独立愚連隊的存在になってしまっています。それに対しては、立法的解決が図られることが必要だと思います。あるいは、国会の決議でもいいと思います。
立法上手当てが必要と思われるのは、次の諸点です。米国のNRCが規範としている点も考慮に入れることが適当でしょう。
1 原子力規制委が留意すべき点を法律上盛り込む。
(1) 原発が原子力基本法に基づく平和利用を通じ、電力の安定供給上重要な役割を果たし、事業者も供給義務を負っていることを踏まえ、その役割・義務遂行とのバランスにも十分配慮しなければならない。
(2) 憲法上の基本原則である利益の比較衡量、比例原則、公正手続きの確保等に十分配慮しなければならない。
(3) 独善に陥ることなく、広く事業者、科学界との対話に努め、科学的知見を行政に反映するよう努めなくてはならない。
(4) 原発等の立地地域に対して、その安全性確保状況等について、十分説明するよう努めなければならない。
2 業務監査人を置く。
(1)規制行政が、憲法、行政法、規制委員会法、その他の法令上、適切になされているかについて監査する者を置く。
(2)業務監査人は、職権により又は外部からの要請により業務を行う。
(3)業務監査人は、環境大臣が任命し、独立して業務を行う。
こういった措置により、誰が委員として来ても、暴走しないような仕組みをビルトインし、委員や事務局にもその意味に気付かせ、外部からの牽制と対話促進が図られるようにすることが必要と思います。
もちろん、事務局の規制庁には、これらの点に十分なセンスのある人間を配置しなければなりません。いくら、東日本大震災後の空気があったとしても、今の規制庁には、あまりにも規制行政の基本的センスがなさすぎます。出るところに出て争われれば完敗するであろうことは、容易に想像できると思うのですが・・・。
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【論点4】新基準上の多重防護措置との関係
上記の憲法上の法益の比較衡量や比例原則等の観点から、もう少し補足します。
それは、これまでの安全基準に即して運転が行われてきた原発を、安全基準の激変、即時の遡及適用によって、直ちに廃炉に追い込むことは、新基準自体の二重、三重の防護措置からしても、バランスを著しく失しているということです。
もともとバックチェックによって、設計を上回る地震、津波に襲われたとして、その耐えうる限界はどこまでか、という評価はなされています。東日本大震災後に保安院から求められた緊急対応措置にも対応していることは、原電が公表しているかと思います。その緊急対応措置の多くは新基準にも反映されているかと思います。それでもなお、運転継続を一切許さない事情があるのか、という点が問われることになります。バックチェックと緊急対応措置によって、必要な補強工事も行いつつ、運転を継続させるという方針は、電力の安定供給とのバランスを取るという観点からは妥当なものだったと思います。
しかし、原子力規制委は、バックチェック作業・評価は棚上げしてしまい、新基準での評価だけを行い、それが終わらないうちは再開させないという方針をとりました。新基準を遡及適用するとしても、激変緩和のための一定の猶予措置(準備期間等)をとるのが規制行政の基本です。それは措くとしても、その新基準では多重の防護措置が盛り込まれています。
・事故が起きないように、重要施設の耐震、耐津浪のレベルを引き上げる。
・事故が起きたとしても、その被害が最小限のものになるよう多重の防護措置をとる。
バックチェックや緊急対応措置による補強に加えて、新基準が求めるこのような多重防護措置をとったとしても、活断層とされるものが事後的に見つかったというだけで、しかも、その活動態様、重要施設への影響等の評価をしないままに、入口のところでシャットアウトして全否定するということが許されるのかと言えば、公益事業として電力の安定供給に果たしている役割、公益企業にとっての経済活動の自由、私有財産でありながら公益的財産でもある財産権の尊重、被害の蓋然性の程度に比例した対応等の憲法的視点からみて、許されるわけがありません。
それが許されるのは、設計上の対応、補強工事、代替措置等によってもなお、発生する蓋然性が高い地震、津波に耐えられず、危険が現実に予想されるという場合です。その場合でも、公益的財産ですし、既存基準を満たしていたわけですから、廃炉に向けた経済的インセンティブの付与は必要でしょう。
安全性の確保はもちろん重要ですが、絶対安全を限りなく追求し、予想される震災の程度に比して、著しく過剰で、コスト的にもバランスを欠くような安全策を求めるということは、比例原則からして適当ではありません。「牛刀をもって鶏を割く」ようなことを求める規制は不可ということです。それは規制行政の基本です。この活断層論議の場合は、「その活断層がどういう態様のものか、どう動くのかがわからないが、安全サイドで、耐震補強の可能性を検討するまでもなく、これまで安全に稼働してきたものであっても、全部止めてしまえ」と言うに等しい話ですから、比例原則どころの話ではありません。それ以前の話です。
【論点5】活断層に関する新基準の策定過程と適用のあり方の問題性
今回の問題の根源は、活断層に関する新基準とその解釈にあります。それらは、その策定過程、内容とも、相当恣意的なものになっています。
基準や解釈については、今回の評価書案の末尾のp31以降に掲載されています。
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○実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成 25 年原子力規制委員会規則第 5 号)
第三条 設計基準対象施設は、次条第二項の規定により算定する地震力(設計基準対象施設のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度が特に大きいもの(以下「耐震重要施設」という。)にあっては、同条第三項に規定する基準地震動による地震力を含む。)が作用した場合においても当該設計基準対象施設を十分に支持することができる地盤に設けなければならない。
2 耐震重要施設は、変形した場合においてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤に設けなければならない。
3 耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
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この第3項が、議論の対象となった点です。
旧基準では、「建物・構築物は、十分な支持性能を持つ地盤に設置されなければならない」とされていたのに対して、新基準では、「変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない」とされました。第1項の「地震力の作用」、第2項の「変形」については、「施設を十分に指示することができる地盤」「安全機能が損なわれるおそれがない地盤」とされているのに対して、「変位」だけは、そういうパターンの「変位が生じたとしてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤」という規定の仕方ではなく、単に「変位が生じるおそれがない地盤」とのみ規定されました。
そして、「審査ガイド」では、次の【論点6】で述べるように、その解釈と審査ガイド、更にその解釈と、法規レベルの下層に降りていくほど、ハードルがどんどん高くされていきました。その結果、本来、原発施設への安全性がどうなのか、という観点からの基準んはずが、それとはかけ離れた、12-13万年以前であることの「明らかな証明」を電力会社に課し(証明方法、指標はなし)、その活動態様、規模さえも検討されることはないという構図になってしまいました。
基礎地盤分野の専門家である岩盤工学の学会関係者が詳細検討の上で、パブリックコメントの意見として提出し、安全基準検討チーム会合においても、独立行政法人の防災科学技術研究所谷委員がその代表として提出した意見が、文字通り一蹴されてしまっています。
谷委員は次のように意見を提出しています。
「活断層が露頭に現れている場合の立地制限に関する規定については,現在の骨子案の内容(施設の要求性能に無関係に,想定される断層変位がどんなに小さくても,将来も活動する可能性あれば立地を制限)は,当該分野(岩盤工学)の専門家(検討チーム内のメンバーでは私のみ,検討チーム外ではパブリックコメントをした多数の岩盤工学の専門家)が異口同音に不適切な規定であると指摘している。多くの専門家の指摘を無視した規定は修正されるべきであり,・・・」
「この検討チームの中では、岩盤工学を専門としているのは、残念ながら私しかいなくて、本当に増やしてほしいと思いますけれども、私だけでなくて、実はパブリックコメントをやったときに、専門学会又は協会もありますけれども、そこで組織的に合議をして、この岩盤工学の専門家が意見をされた内容があるわけです。
それで、・・・活断層の露頭に現れている場合の立地規制について何遍も申し上げていますけれども、これはこの岩盤工学の専門分野から見ればおかしいということを異口同音に申し上げているわけです。
私は、専門分野の専門家の意見と、そうでない方の意見は重みが違うと思いますね。専門家の意見は尊重されるべきだと思いますし、そうでない方の意見は配慮するというレベルじゃないかなというふうに私は思うわけです。・・・こういう専門学会が組織的に出した意見を一蹴……、何というんですか、一顧だにせずいるということは、私は正しいことではないと思います。」
このように、岩盤工学の専門学会が組織的に検討して、一致して提出された意見がまったく一顧だにされずに策定されたということからして、この基準及びその適用方針=審査ガイドの科学的妥当性に深刻な疑問があるということです。この点は、【論点1】で述べた、何のための議論なのか、ということと共通する話です。
もともと、安全基準は、その制定根拠は、原子炉等規制法の「第43条の3の6」第四号にあります。
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(許可の基準)
第四十三条の三の六 原子力規制委員会は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一〜三 略
四 発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。
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この規定にある通り、「汚染物質や原子炉による災害の防止上支障がないものとしての基準」ですから、学会の一致した見解に反して、変位がわずかでもあれば、「災害の防止上支障がある」ことの証明責任は、規制委側にあります。
しかし、基準検討の会合では、上記の谷委員の意見提出、発言に対しては、感情的な物言いがあるだけで、科学的根拠に基づく合理性のある見解は示されることはありませんでした。その際の空気は、島崎副委員長がさかんに台湾地震での橋や建物の写真を示して煽っていた「何が起きるかわからない」という漠然としたもので、原子力工学等の学会での一致した意見に対する合理的反論等のやりとりはなされませんでした。
つまり、この変位に関する新基準は、内容及び手続きにおいて違法と言えるでしょう。
伊方原発訴訟最高裁判決では、次のように判示されており、局面は違いますが、まさに、規制委による活断層関係の基準の策定と、原電敦賀の破砕帯評価会合そのものを指しているかのような内容になっています。
「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」
【論点6】基準の透明性、予測可能性の問題
規制行政の基本として、基準の透明性と予測可能性ということが挙げられます。これは基本中の基本です。冒頭の森嶌教授が感想として述べた
「規制委は原電側に『提出した資料は不十分』とするばかりで、何が足りないのか、どういう資料を示せばよいのかが分からない」
という点は、まさにそれらの基本が守られていないことを指しています。
審査基準の運用指針である「審査ガイド」では、基本方針として、
「「将来活動する可能性のある断層等」は、後期更新世以降(約12〜13万年前以降)の活動が否定できないものとすること。」とし、解釈として、
「約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。」
としています。この部分が盛り込まれる審議過程の問題は別途詳細に書きました。ここでは、どういう手法で調査を行い、どういう指標で判断するのか、ということが定められていません。「それは証明する側の電力会社が考えろ。それが妥当かどうかを規制委側が判断する」という考え方ですから、原電側も手探りになってしまいますし、相当のコストをかけてボーリングしても、それが認められうるのかどうかもわからないという状況でずっと推移してきました。
もともと、保安院での指示に基づき調査が開始されたものですが、調査方針、内容については、意見聴取会での議論を経てその了承の下にスタートしています。ボーリングは、どこの箇所をどういう理由で選定するのか、どういう評価手法、指標で評価するのかということも、計画書の中に明記されていました。ところが、規制委の有識者会合に移行した途端に、「御破算で願いましては」となり、そのような経緯を無視して、委員によっててんでばらばらな思いつきの意見や指摘をするばかりで、評価側、被評価側が共通理解に立たなければならないはずの調査手法、判断指標等が、宙に浮いてしまいました。
それでも原電側が、委員の指摘に即して追加調査をしたり分析したりしても、「そうとは限らない」「まだ資料が足りない」「安全サイドに判断すべきだ」「こちら側を掘ってはどうか」等々、まるで蜃気楼か逃げ水のように、近づいたと思ったらすぐに遠のいてしまうということの繰り返しでした。
それによって、「明確な証拠が示されたとは言えない」→「将来の活動を否定できない」として、活断層認定をしているという、およそ規制行政の基本とは無縁の行為です。電力会社の調査のコストは、電力料金に跳ね返るものですし、その調査によって稼働が停止する期間が長くなれば安定供給面で支障が生じますし、既設である以上調査には限界もあるということをすべて念頭に入れながら、明確な手法と基準、指標を示し、計画も承認した上で、その結果を評価するということが、当然行われなくてはなりませんでした。
その基準の運用指針の審議過程をみても、二重の意味で不公正です。
基準本体が、地盤の変位の程度、影響の如何に関わらず、また新設、既設の如何に関わらず、設置不可としたことに加えて、更に「基準の解釈」→「審査ガイド」→「ガイドの解説」と多層化された適用基準の細則の中で、次々とハードルを高くしていっています。「審査ガイドの解説」はその到達点でしょう。「12〜13万年前以降のものでない明確な証拠を挙げよ。ずれ、変形がなくても、より判断を明確にするためにそれより古い時期も調べよ」ということですから、基準、指標を明確にしないままに、地層に変形等がないことの挙証責任を全面的に負わせ、加えて、なお書きで、本来必要がないはずの「12−13万年以前の地層も調べよ」という追加負担を負わせるという、手の込んだやり方です。挙証責任のあり方については、この後の別途の論点として述べますが、上記のなお書きなどは、科学的裏付けがない話です。20数万年前まで遡る話が通らなかったために、なし崩し的に、それに近い運用となるように、「審査ガイドの解釈」という最末端の指針で、盛り込んだというわけです。 このような一連のハードルを恣意的に高くしていき、本体の議論では否定されているはずのことを実質的に盛り込ませるということが、まず一つ目の不公正です。
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(参考)
【基準本体】
3 耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
【基準の解釈】
「変位」とは、将来活動する可能性のある断層等が活動することにより、地盤に与えるずれをいう。
上記の「将来活動する可能性のある断層等」とは、後期更新世以降(約12〜13万年前以降)の活動が否定できない断層等とする。活動性の評価に当たって・・・安全側に判断すること。
【審査ガイドの解説】
約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。なお、この判断をより明確なものとするため、活動性を評価した年代より古い(中期更新世(約40万年前)までの)地形面や地層にずれや変形が生じていないことが念のため調査されていることが重要である。
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もう一つの不公正は、基準とその運用指針の策定者と、適用者(=破砕帯評価会合メンバー)とが同じだということです。同じというだけでなく、破砕帯評価で活断層認定に持っていくために、基準適用者が基準の運用指針のハードルを上げたという流れに見えることです。たしか、最初に示された審査ガイド案と、その後検討会合メンバーからの意見に基づいて修正された案とは大きく異なっていたはずです。その修正過程では、敦賀会合のメンバーである鈴木教授と島崎副委員長の意見、考え方が色濃く反映されていました。
その審査基準や審査ガイドの審議が行われていた時期は、まさに原電敦賀や関電大飯の破砕帯が活断層だと主張していたのに対して(敦賀はいったんは早々と認定されていた)、原電や関電が猛反発して反論を行っていた時期に当たります。それを封じるための手段として、基準の運用指針のハードルを非科学的に上げたというように見えます。実際、鈴木教授などは、審査ガイドがまとまった後に、敦賀会合で、「安全サイドで評価ことになっている」「証明するのは電力会社側で、どういう方法で証明するかは電力会社が考えることだ。こちらは結果が出されたら、それが適当かどうか検討し指摘するのだ」と言い放って、規制側の透明性、予測可能性ということはまったく念頭にもないような発言をしていました。島崎氏も同様です。
基準・指針の策定者と適用者とは別々にあるべきであり、それは立法と司法との役割分担に似た話だと思います。検察が立件に持って行くために、捜査中に、拠って立つべき法律とその適用基準を変えるに等しい構図になってしまっていました。
続く
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