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先日の原電からの異議申立てに対して、報告したことを以て、訴えの利益なく違法につき、「却下」との決定について書きました。いわゆる「門前払い」というものです。
これが取消訴訟に移行したときに、上記記事でも触れたように、どういう判断になるのかは微妙なところがあるかもしれませんが、仮に結論は同様であっても、もしかすると、報告徴収命令の違法性について何らかの言及がなされる可能性はあるのかもしれません。
そう考えたのは、先日の「受刑者の選挙権の一律制限は違憲」との大阪高裁判決の記事を読んでです。
これを読んで、改めて、規制委による訴えの利益なしとの却下判断への対応について考えてみました。前に、取消訴訟へ移行するかどうかはじっくり考えてからでもいいのでは、と書きましたが、早期に移行するメリットも少なくないのでは、とも感じたりします。
さて、上記の大阪高裁判決については、違憲判断のところが大きく取り上げられていますが、おそらくこれは、いわゆる「蛇足判決」というもの一種ではないでしょうか?
「違憲確認の訴えは「既に懲役刑の執行を終えており不適法」として一審・大阪地裁と同様に却下。「国が規定を廃止しなかったことが違法とはいえない」などとして賠償請求も棄却した。」(上記日経新聞)
もともとの訴えは、「投票できる地位の確認」でしたので、服役を終えた段階で訴えの利益がなくなり、不適法として、原告敗訴となったものです。それであれば、入口に入って憲法判断をするまでもなく、斥けるだけで済んだはず、というのが読売の社説の趣旨です。
こういう「蛇足判決」は、しばしば、自衛隊違憲判決、靖国神社参拝違憲判決等の下級審で出されていました。自衛隊のイラク派遣差し止め請求でも、名古屋高裁で訴えの利益なしで却下ながら、違憲判断がされていました。
これらの「蛇足判決」の最大の問題点は、形式上は被告(国等)勝訴となるため、傍論で述べられた違憲判断に不満があっても、それに関して上告して最高裁の判断を仰げないという点にあります。結果として、違憲判断のみが一人歩きしてしまうというものです。裁判官のスタンドプレーではないか、という批判がなされました。
最高裁自身も、蛇足判決をしている例もある一方で(外国人参政権関係等)、門前払いしている例もあるので、私も不勉強でどういう一貫したスタンスなのかよくわかりません。重要な憲法判断について上級審の判断を仰ぐという権利を奪われるという点では、「蛇足判決」には大きな問題点があると思いますが、一方で、何か一言あってもいいのではないのか?と感じるような例も少なからずあります。
建築確認無効確認訴訟で、建物ができてしまったから訴えの利益を喪失したとか、運転免許の取消しの違法確認訴訟で、期間経過により再び免許を取得したから訴えの利益なしとか言われると、それはちょっとひどいのじゃないの? と言いたくなります。強引で違法な行政処分はお咎めなしかよ? というのはごく自然な受け止め方です。その行政処分の違法性はどこで争えばいいというのでしょうか?裁判を受ける権利の侵害だということも言えるわけです。
今回の原電の異議申立て却下も同様でしょう。刑罰その他の不利益を回避するために、留保をつけて報告したら、それ自体を捉えて訴えの利益なしで門前払いで、中味については何らの言及もないというのは、理不尽さが感じられます。
自衛隊や靖国参拝などの違憲訴訟は、多分に政治闘争的色彩が強く、実際、原告が敗訴しているにも拘らず、上告もせず、違憲判断部分だけアピールするというパターンがほとんどです。あまり健全なパターンとはいえません。
ただ、古くは、皇居前広場使用禁止処分を争った訴訟で、最高裁は、使用許可申請したメーデーの日は過ぎてしまったので、訴えの利益は喪失なしとして斥けたものの、使用不許可処分の適否について、憲法上の集会の自由との関係も含めて、意見を付加的に述べたという例もあります。
●そういったことをあれこれ考えると、今回の原電の異議申立て却下決定についても、取消訴訟に移行して、報告徴収命令の不当性を正面から訴えるというのは、あり得る選択肢のような気がします。仮に結果は、訴えの利益なしということになるとしても、付加的に、報告徴収命令の違法性について言及される可能性もあるかもしれません。
命令の不当性は、憲法上の公正手続きの保障や、財産権や営業の自由と安全性確保との比較衡量にまで密接にかかわってくることですし、何といっても、伊方原発訴訟の最高裁判決で示された考え方に大きく違背するという点にあります。
情報公開請求結果も踏まえて、こういった点で違法性のある行政判断に基づいて発せられた報告徴収命令もまた違法である点を訴えていくことによって、判決上、それに関する判断を引き出せる可能性があるかもしれません。
●規制委の動きはあまりに遅すぎます。「論点整理」だけでいったいいつまで放置するつもりなのか、現地調査もせずに何やっているのか?と思いますが、そういう規制委側に鈍すぎる動きを牽制し、手続きを前に進めるための促進材料としても、取消訴訟は使えるのではないかと感じます。
活断層だという前提に立っても、それによって、使用済み燃料貯蔵施設にも、原子炉施設本体にも格別の安全面の影響は生ぜす、特に指示することもないと田中委員長が言ってしまっている中で、規制委全体としてどういう整合性のあるスタンスを取るのか? それについても、訴訟が提起されれば、応答する中で、嫌でも説明しなければならなくなります。
裁判官によっては、本当に謙抑的に、訴えの利益のあるなしだけの判断で終わってしまう可能性も一方ではありますが、訴えの提起自体、有識者会合報告書の見直しに関する手続き促進材料としては有効に使えることでしょう。
●それにしても、規制委の手続きの遅さは異常です。8月30日の原電からのヒアリング会合からまもなく2カ月です。他の原発サイトの破砕帯調査の有識者会合も進む中で、調査・判断手法について全体の整合性も取れなくなってきていますから、規制委としてはどう説明をするのか苦しいところでしょう。現地調査は基本中の基本でしょうに、その体制さえも組めないということでしょうか。
これだけ、敦賀有識者会合報告書については、各方面から批判がどんどん出てきていますから、携わった有識者自身も、その立場上、このままで済ませることはできないでしょう。当初、メンバーの鈴木康弘教授らが、有識者会合の中で援用材料として言及した、杉山、遠田両教授の活断層の可能性指摘については、当の両教授が、有識者会合報告書を批判し、原電の調査結果のほうが合理性ありという見解に転じていますから、有識者たちの立場は辛いものになっています。
特に、最も鍵となるK断層の消滅については、判断の根幹を左右しますし、断層の不整合面を捉えて、その上下が連続して同時代だろうという判断が、地質学の常識を知らない人間の言うことだとまで言われて、看過するわけにもいかないでしょう。学者生命に関わる話です。規制委や島崎氏と心中して汚名を着せられるのは良しとはしないでしょう。
もともと、5月15日の最終会合で、判断材料が足りないといいう指摘が有識者自身からあったわけですので、このまま島崎氏らが押し切れるとは思えません。現在、有識者会合メンバー間の葛藤があって、その収拾で苦しんでいるのでは?という気もします。九電第三者委員会事件のときのように、途中で内部分裂を起こし、それが表面化したら、もう規制委としてはアウトです。
敦賀有識者メンバーに取材するプレスはないのでしょうか? 海外専門家グループが報告書を出した時点で、普通は敦賀有識者メンバーに感想を聞くと思うのですが・・・。何か聞こえてきてもおかしくありませんが、不思議な沈黙です。
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<パワーポイント資料> 2013年6月末〜7月初作成
【総論】『原子力規制委への根本的疑問』PPT.pdf 64枚 6/16アップ
―法と公正手続きへの基本的理解が決定的に欠如
【各論】「敦賀有識者会合の非科学性と不公正性」PPT資料 130枚 7/11アップ
―原子力規制委の問題性の縮図
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ※ このブログの意図2点―①規制委の科学的判断のプロセスのおかしさ ②科学的判断を
規制行政に反映させ適用する仕方の間違い |
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2013年10月20日
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