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さて、異議申立ての「訴えの利益なし」で却下されたことについての原電の今回の意見書から抜粋します。
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「原子炉等規制法第67条第1項に基づく報告徴収命令として、本件処分ほど唐突に出され、趣旨及び内容が曖昧なものは、過去に例を見ないと考えます。本件処分において報告を命ぜられた事項には、あるべき前提条件が欠如しており、当社は独自に条件設定して報告を行わざるを得ませんでした。」
「・・・そもそも同委員会の了承の法的意味は不明であり、またその後、当社は、原子力規制庁の要請により、同庁から6回にわたるヒアリング(説明、質問、要求等) を受け、数百万円の支出を要する追加解析を行うことを余儀なくされており、理由書の記載と明らかに矛盾したことが行われています。
当社は、罰則の付された行政処分を何故突然課せられたのか理由が分からないまま報告義務を負うことになり、また報告事項も曖昧であったため、何をもって本件処分に対する履行と言えるのかの合理的な判断基準を終始持ち得ませんでした。このことは、本年10月9日開催の原子力規制委員会において「現時点において、当委員会として早急に追加の対応を求める必要はないと判断する。」とされても何ら変わるものではありません。
また、後続処分について、理由書では、原子炉等規制法上、報告徴収命令の発令により必然的に何らかの後続処分が行われる法的仕組みも、同命令を後続処分を行う不可欠の要件と位置づける法的仕組みも、報告徴収命令を受けた者を不利益に取り扱うことを認めた法的仕組みもない旨述べています。しかしながら、そもそも報告徴収命令を前提とする規定や法的仕組みは、原子炉等規制法に限らず、我が国の実定法上存在しないことは明らかであるため、原子力規制委員会におかれては、むしろ報告徴収命令の趣旨・内容と運用実態、被規制者が被る不利益のおそれ等を具体的に考慮することが必要です。
本件では、適法に事業遂行している事業者が、突然報告徴収命令を出され、行政庁が求める報告内容は何か、その後に後続処分が予定されているのか、それはいかなる後続処分なのか、そして事業者はいかなる対応をすればよいのか、具体的な判断材料を何ら与えられないまま、行政庁の一方的な裁量に委ねられた状態に留め置かれています。このような本件処分の杜撰さこそが、問題の核心なのであります。
理由書は、原子力規制委員会が今後当社に追加の報告を求め、また、何らかの後続処分をした場合に、それが不服であれば、それ自体について争えば良いと言っていると思われますが、本件処分について罰則をもって履行を強制しながら、履行したことをもって異議申立てを却下して、争う途を排除したことに鑑みれば、何らかの後続処分等においても同様の扱いとされることは必定と考えます。
当社は、このように、本件処分が完了したのか合理的に判断できず、また、仮に本件処分の効果がなくなったとしても、将来の不利益な取扱いのおそれが存することから、なお処分の取消しによって回復すべき異議申立ての利益を有しています。
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ざっとまとめると、
① 委員会での却下決定後も6回にわたりヒアリングがあり、数百万円の支出を余議なくされるなど、報告義務を完了したとの却下決定と矛盾することが行われている。
② 報告徴収命令を前置とする処分などは、どの実定法でもない。命令をかけるのであれば、その趣旨・理由、内容、被規制者の不利益等を考慮して慎重に行われるべき。それもなく、当局側の一方的裁量に委ねられていることが問題。
③後続処分で争えと言っても、後続処分に従ったことを以て訴えの利益なしとされるのでは、結局争う道がなくなる。
ということかと思います。①にある却下決定後6回もヒアリングがあったとはここで初めて明らかになりました。何を以て報告義務を履行したことになるのか、については、コメント欄でも、極端な話、「へのへのもへじ」と書いて形式上報告したら義務履行になるのか?という指摘がありましたが、たしかに、何を以て報告義務履行完了となるのかはよくわかりません。異議自体は報告義務履行済みとして却下して争うことは封じておいて、実際には、その内容を更に詰めたり、要求したりということでは、実質上、義務履行していないと規制庁が受け止めている証左ではないか、それならば、依然として不十分な報告として刑罰による不利益がありうるではないか、ということで、訴えの利益ありということになる、という趣旨の主張かと思います。
これは、規制側の理屈に立った上で、報告義務履行済みとの決定理由とは矛盾しているではないかと反駁するもので、カウンターパンチになりうる主張ではないかと思いました。
それから、③で「後続処分で争え」というのが規制庁の趣旨だろうと書かれていますが、却下理由書の言わんとするところは、活断層云々の判断の部分を争うのであれば、それによって直接の不利益を被ることになる行政処分である新基準の不適合認定による原子炉設置変更不許可処分のところで争うべきだ、という趣旨だと私は理解しました。おそらくそれば、これまでの従来型の訴えの利益論の趨勢だったのではないかと思います。
後続処分が別途の報告徴収であれば、従わなければ刑罰その他のペナルティを受けると恐れという法的不利益が生じるので、それを以て訴えの利益を主張すればいいではないか、というのがあの理由書を裏側から読んだときのメッセージだろうと感じた次第です。銀行税訴訟のときも、リスクを避けるためにいったん納税をした上で、条例の無効確認訴訟や納税義務不存在確認訴訟をしても、なかなかうまくいかず、かろうじて過誤納の返還請求という中で、均衡原則に反するということで条例無効を勝ち取るという薄氷の争いでした。いったん行政処分に従ってしまうと、事後にその行政処分の違法性を争うのは難しいところがあるのではないだろうかと感じるところがありました。
しかし、処分に従わずに争うという対応は、被規制者側としてはリスクのある対応になることは確かです。刑事罰による威嚇だけでなく、法令遵守できないような事業者の再稼働は認めることはできないとされたり、あるいは、もんじゅのように再稼働準備作業の凍結を命令される恐れもあります。
そういったことを諸々考えると、やはり、命令にはいったん従って、ペナルティのリスクを除いた上で、その取消等を求める争い方が認められて然るべきではないか、というのが、ごく自然の発想だと思うのですが、なかなか参考例が見つけられずにいました。
●・ ・ ・・というところに、今回の原電の意見書を見たら、
「命令に応じた後であるからといって、異議申立ての利益が消滅することにはならないことを明示した判例」
があるという指摘があり、そういう判例があったのか・・と初めて認識した次第です。余りメジャーな判例ではないようで、最高裁の判例データベースにも登録されておらず、訴えの利益論のところでも紹介されることがない労働判例ですが、僅かにネット上に1件だけ解説論文がありました。それを読んでいくと、非常に多くのヒントが含まれていました。この判例は、今までの「法律で保護されている利益説」とは少々異なる「法律上の保護に値する利益説」的色彩のあるものなのだそうです。
解説を読みながら感じたのは、次の二点です。
①異議申し立てや取消訴訟をする場合でも、現在の「後続処分を受けるおそれ」という原電の主張以外にも、訴えの利益ありとの立論がいろいろできるのではないか?
「後続処分の可能性」という不利益だけでなく、上記判例の思想を踏まえれば、報告義務は完了しても、受忍限度を超える「名誉、信用、財産的価値へ棄損」という憲法自体に由来する法的不利益が残存するという立論や、「[『の法律の施行に必要な範囲』を逸脱する報告徴収を受けずに平穏に営業する原子炉等規制法に基づく法的利益」が損なわれているという立論なども可能ではないか?
②活断層認定を内容とする有識者会合の報告書公表〜委員会了承〜報告徴収命令の一連の措置を、他分野でしばしば問題となる(誤った調査による)「公表」(=行政処分ではない)と同様の位置づけと捉えて、その調査の違法性を争う国家賠償請求訴訟と同様のパターンで、活断層認定そのものの誤りを争うことができるのではないか?
という点です。
説明がだいぶ入り組んでくるのですが、原電紹介の判例の解説を読みつつ、頭の整理を兼ねながら、書いていきたいと思います。
続く
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2013年10月25日
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日本原電が、10月24日付けで、意見書を規制委に提出した旨、発表しています。
その概要は、次の福井新聞の通りです。
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●敦賀2号、規制庁が現地調査検討 活断層問題で原電に伝える
原子力規制委員会が日本原電敦賀原発2号機直下の破砕帯(断層)を活断層と認定した問題をめぐり、原電の市村泰規副社長は24日、規制庁の櫻田道夫審議官と面談した。原電側が断層の再審議を求めたのに対し、規制庁側は規制庁職員による現地調査を検討していることを明らかにした。
面談内容を公表した原電によると、櫻田審議官が「事務方による現地確認が必要であると考えており、今後の段取りを含めて検討している」と答えたという。
原電は7月に活断層を否定した追加調査結果を規制委に提出。規制庁が調査結果について論点整理を行っており、現地派遣の検討はその一環という。規制委員や有識者調査団の派遣は現時点で考えていないとしている。
また、原電側は、2号機使用済み燃料プールの影響評価命令の取り消しを求めた異議申し立てを規制委が却下したことに対する意見書を提出した。原電側は「命令に応じた後でも異議申し立ての利益が消滅することにはならない」と反論し、却下決定は違法だと主張した。(福井新聞 2013年10月24日午後8時16分)
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ポイントは次の諸点です。
①異議申立ての訴えの利益はあり、却下決定は違法である旨
②原電最終報告書の審議促進要請をした旨
※その際、規制庁事務方が現地調査の検討している旨、審議官から説明があった旨
③鈴木首都大学東京教授と宮内教授とのメールの全体を公開すべき旨
④10月2日の原子力規制委による却下の当日に提出した参考人陳述申立ては有効である旨
●今回の意見書のうち、特に訴えの利益に関する意見内容は、非常に参考に
なりました。インパクトのある内容ではないでしょうか。
これまでの主張のように、別途の報告徴収を含めて何らかの後続処分によって不利益を被る可能性を前面に出して、不利益ありとするだけでなく、
①報告徴収命令の履行が済んだのか不明である。委員会での了承後も、繰り
返し規制庁よりヒアリング(質問、説明、要求)を受け、解析費用の支出
を余儀なくされている。従って、履行が完了したのか合理的に判断できず
、今後も同様に、規制委の裁量次第で理由なく不安定な状況におかれる状
況を強いられている。
②履行後であっても、訴えの利益があるとの判例がある。
といった新しい観点も入れています。
●訴えの利益論の話は、上記の判例の関連を辿っていくうちに、さまざまな主張の可能性が開けてきているのではないかと感じました。それは、このあとじっくりと書きたいと思いますが、ここでは他の点について触れておきます。
第一は、事務方による現地調査は当然の話で、遅きに失しています。なお、福井新聞には、
「規制委員や有識者調査団の派遣は現時点で考えていないとしている」とありますが、有識者自身は見たいと思っているでしょうし、8月30日のヒアリングを規制庁主体で始めた手前(といっても、ヘッドは島崎委員長代理ですが)、また、委員会で第三者の有識者の意見も聴くということにした手前、今後の持って行き方は非常に苦しいところでしょう。
事務方が現地調査をし、そこでまた材料整理だといって延々数ヶ月も時間稼ぎをされたのではたまったものではありません。有識者会議の結論を覆すには、有識者に情報を与えず意見も聴かずに行うわけにもいかないでしょうから、そのプロセスを考えれば、今後いったいいつまで期間を要するのか想像もつきません。
あれだけ「原電からの報告が遅れたから」と批判しておいて、自分たちの検討の遅さには頬被りですから、ダブルスタンダードも極まれりです。原電は国定公園内の他人の土地も含めた、開発許可、ボーリング、解析等を伴うヘビーな作業で、規制委側は提出された資料のチェックですから、作業の質も違います。そして原電は、毎週、現地の規制委の事務所に調査進捗状況の報告をさせられていたわけですし、調査完了の目途も繰り返し明言し、それまで待つように要請していたところを強引に審議を打ち切られたのに対して、規制委側はいくら聞かれても「検討中」「論点整理中」の一点張りで見通しさえ示しません。
訴訟提起により、その作業を急がざるを得ないように追い込むことが必要ではないかと感じます。
第二の、鈴木首都大学東京教授と宮内教授とのメールの公開の件は、「出せるものはすべて出した」との回答だったそうです。どのみち、原電最終報告書の内容の議論の際に、有識者会合報告書の内容が議論になりますので、当然このメールの件も議論の俎上に上るはずですが、鈴木、宮内両教授の所属大学への情報公開請求によって、その全文を入手する試みも併行してトライしてみるのがいいのではないかと思います。訴訟になれば、文書提出命令の対象になることでしょう。
第三の、10月2日の委員会当日の参考人陳述申立ての扱いですが、原子力規制庁からは、「10月9日の会合で事務方として判断したものを委員会に報告したことで処理は終わっている」旨の回答があった由。10月9日の委員会での説明は、これ以上のアクションはないとの表明であり、それが了承された以上、「規制委は不作為をします」という公式宣言にほかなりませんから、不作為の違法状態に入ったということになります。今後、取消訴訟に移行する場合には、この点も含めて主張することになるかと思います。
●ところで、雑談になりますが、規制委による異議申立て却下決定の送達について、送達記録の写しと封筒の表のコピーが、今回の原電の発表資料の最後に参考資料として添付されています。これを眺めてみると、いろいろな感想が湧いてきます(笑)。
まずは、宛名書きが下手くそな字だなぁ・・・ということ(笑)。私も悪筆ですが、お仲間のようでつい笑ってしまいます。それから、宛名の3名に「殿」を付けていないこと。決定書そのものはそういうことでいいのですが、封筒に入れて送達するときは、普通はさすがに「殿」は付けるでしょう。まだ、若い職員でしょうか。
もうひとつは、書留便の引受け局が杉並郵便局であること。時間が10月2日23時06分です。原子力規制庁があるのは港区六本木1丁目で、遠く離れた場所です。想像するに、規制庁の事務方の若い職員が、「じゃ、君これ書留で出しておいて」と言われて、宛名書きをしこしことして、遅くまで残業しての退庁後、自宅近くの中央郵便局で手続きをした・・・ということではなかったでしょうか。深夜まで実働部隊として動かなければならない職員の皆さんにはご苦労様ですと言いたい気分ですが、こんな規制委委員や規制庁幹部の大迷走に付き合わされて、膨大な作業をこなさなければならないことには、同情を禁じえません。規制委委員や規制庁幹部に対しては、何も言わずに言われるがままにやっていると、こうやってその膨大な尻ぬぐいが事務局に来てしまいます。今でも既にそうですし、これで取消訴訟に移行したら、そこで費やすマイナスのエネルギーたるや膨大なものになってしまいます。今からでも遅くはないですから、筋論だと思うことをどんどん言っていかないと心身ともに消耗してしまうことでしょう。
このあと、訴えの利益の件について、書いて行きます。自分でも自問自答しながらブログを書いているので、あっちに行きこっちに行きになり、読者の皆さんには申し訳ありませんが、必ず道が拓けるような気がしますので、お付き合いいただければ幸いです。
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