コメント欄でご紹介のあった地方自治総合研究所のサイトの解説
に触発されて、調べてみました。判決文は次のとおりです。
○最高裁サイト
ポイントは、次のとおりで、
「1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は,国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。」
指定機関、指定管理者と同様、公権力の外部委託で、委託業務の性格・内容、委託先との結びつきの程度、指揮監督関係等を勘案して判断されるということのようです。上記の地方自治総合研究所のサイトの解説では、次のように書かれています。
「「公権力の行使」やその「委任」をめぐって、これまでの最高裁判決・決定において確定しつつある判断枠組みは、おおよそ以下のようである。まず「公権力の行使」については、①当該事務が法令によって国および地方公共団体に排他的・専管的に帰属しているか、②その事務の処理が非私法的手段(対等関係を前提にした契約的手法ではなく、法令に基づいて行政が優越的に法関係を形成し得る手段を行使することが認められているか(許認可、確認、措置<上記の最高裁判決の例では、児童福祉法27条1項3号の措置>。そうすると保育園の入園をめぐる「契約的」扱いは、どうなるのであろうか)、事務・権限の私人への委任については、①公務を受託する私人が公的権限の委譲を受けるなどして「行政主体」のために「公権力を行使」していると評価されること、②その評価は、法令に基づく委任の根拠、手続、監督などが存在するかどうかによるようである。)」
● どうも、公権力の民間委託については、奥深い?議論があるようで、あまりすっぱりと割り切れないような印象です。
備忘録的に、ヒットしたサイトを書いておきます。まず、駐車違反対応業務を委託された調査員の行為について、国会で、公権力の行使になるのかどうかの質疑がなされています。
あと、地方自治総研で、かなりの専門的な論文がありました。
● それで、もう少し今回の事例に近い例はないものだろうか、と探してみると、福井県の執務用の判例集というのがあって、そこに次のような判例の紹介がありました。直接は、外部有識者の氏名の公開を求めたものですが、有識者の性格付けについて興味深い指摘がなされています。
〔名古屋高判金支平成14・7・24〕(『福井県訴務資料 平成14 年』P36)
〇 知事と有識者の懇談における有識者の考え、提言等の説明と質疑の記録の公開請求に対する一部公開決定の取消しを求めて提訴された事案について、原告の請求を認容した原審の判決に対して県が控訴したが、控訴が棄却されたもの〔確定〕
〔対談の相手方氏名および対談の内容→公開〕
「本件対談の有識者が公費から謝礼(対価)を得たうえ、もてなしを受けている以上、本件対談の場における有識者の言動は、もはや単なる私人のそれではなく、県政に関与する者の言動として評価されるべきものである。そうすると、本件対談の場における有識者は、公務を遂行する県職員に準じる地位にあるということができ、その限りにおいて、当該有識者の氏名などは、旧条例7条1号本文の「個人に関する情報」には該当しないものというべきである。そして、このことは本件対談を非公開とする旨の事前の合意があったことによっても、何ら左右されるものではない」
つまり、政策提言で懇談した有識者は「職員に準じた地位」であり、私人としての個人情報には該当しない、ということです。それであれば活断層の有識者会合は、政策提言どころではなく、再稼動の可否を決める前提としての活断層の該非を決めるのもので、宮内教授もその一員として、その判断材料に直接なるものして鈴木教授のコメントを収集したわけですから、規制庁の「職員」として、業務上発信し取得したメールは「行政文書」に当たるという解釈は、ごく自然に出てくるのではないでしょうか。
● そもそも、情報公開法の趣旨に立てば、「国民への説明責務の全う」という観点から公開されて然るべき文書です。
第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。
●以上の諸材料をもとにして、立論を検討してみると、こういうイメージでしょうか。
行政機関情報公開法のそもそもの目的は、「政府の諸活動の国民への説明責務の全う」「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」という点にある。条文の解釈は、この目的に照らして、合目的的に判断されなければならない。
その観点から考えると、有識者会合のメンバーである有識者が「職員」に該当するかどうかは、公務員発令の有無という形式的概観で捉えるのではなく、
・有識者会合の業務がどういう性格のものか。国民の権利義務に密接に関 わるものかどうか。
・その有識者がどういう業務を担っているのか。
・その有識者の行為が、規制委の業務と密接不可分な関係にあるか。規制 委からの受託的、代行的要素があるか。
といった点を総合的に斟酌しつつ、その有識者が行った行為に関する文書(発信したメール、回答で取得したメール)が、「行政文書」に該当するかどうかを判断すべきである。今回のケースは、明らかに、規制委の下に事業者の権利義務に多大な影響を及ぼす活断層判断のために設置された評価会合のメンバーとして、その評価のための材料収集を目的として、同会合の代行・受託行為として行っていることは明らかであるから、有識者は「職員」とみなして法適用し、メールは「行政文書」と解釈すべきである。
このことは、行政機関から業務受託された民間団体の職員の行為が国家賠償法対象となるとされ、業務の性質上から、その民間職員が公務員扱いされた判例があることや、政策提言を受ける有識者との首長との懇談に関して、その有識者は県職員に準じる地位にあると認定され、その発言等が情報公開対象となった判例があることからも、妥当な解釈である。活断層有識者会合メンバーの有識者は、これらの判例において位置づけられたステータスよりもはるかに職員に準ずる度合いは高いことは明らかである。
もし、形式的な公務員発令の有無だけで、職員か私人かが峻別され、情報公開対象となるかどうかか機械的に決まってしまうならば、行政機関側は情報公開を免れるために、公務員発令を意図的に行わないことにより、情報公開の範囲を自在に繰ることが可能になってしまう。それは、情報公開法の趣旨に著しく反するものである。
加えて、今回の有識者会合というのは、本来であれば、原子力規制委員会設置法に定められた炉安審において審議されるべき性格のものであった。しかし、広範な課題を迅速かつ機動的に審議するという目的から、規制委員会直属の検討会合として設置されたという経緯がある。つまり、そこで行われている審議は、公務員発令がなされる委員から構成される炉安審の役割と業務とをを代替しているのであって、その意味からも、構成メンバーである有識者は、炉安審委員と同様の公務員(職員)と位置づけて、法適用することが法目的からしても適当である。
●こういうような立論により、有識者である宮内教授は「職員」であり、鈴木教授間でやりとりしたメールは「行政文書」というところに持っていく道筋はできると思われますが、残る点は、「行政機関が保有」しているかどうか、ということかもしれません。
情報公開法での「行政文書」の定義をみると、次のようになっていて、
「2 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。」
①職員が職務上作成・取得
②職員が組織的に用いるもの
③当該行政機関が保有
という3つの要素から成っています。このうちの、①と②は上記のようなことでクリアするとして、規制庁が保有しているのかどうかがよくわかりません。
規制庁が公開しない建前としての理由がいまひとつわからないのですが、「私人が作成・取得した私文書だから公開対象ではない。」というのは明らかですが、規制庁は保有しているのかいないのかが、明確ではないように思います。
「保有していない」と言っているのかもしれませんが、次の
①「行政文書」としては保有していない。
②そもそもメールの全体は保有しておらず、保有しているのは切り貼りさ
れたもののみ。
のいずれなのかが不明です。
評価書案に引用する以上、メールの全体像を読まずに切り貼りされたものを渡されて、そのまま使うとは考えがたいですし、以前にも書きましたが、先方の鈴木教授に依頼するときには、規制委の有識者会合の業務の一環として行っていることを示したり、やりとりのシェアを図るために、普通はCCで、島崎委員長代理や規制庁の担当者にも送るはずです。先方からの返事もそのCC宛に同時にくるのが通常の進め方です。ですから、そのCCに入っていることを以て、島崎委員長代理や担当者という「職員」が「取得」しているはずです。それをしていないのだとすると、杜撰な評価書作成過程だということになります。質問する際の前提となる説明ぶりが適当かどうかのチェックは当然するはずです。それによって答は大きく変わってきてしまいます。自分の考えを述べてそれに沿った方向に誘導しようとしていないか、原電の提出した一式資料、説明内容を全部渡しているのか等、重要なポイントです。
ですから、宮内教授を「職員」と位置づけてその作成・取得した文書というアプローチと、島崎氏や事務局が取得した文書というアプローチと、併行して攻めていくのがいいのではないでしょうか。
いずれにしても、これは、不開示処分の取消訴訟になれば、情報公開法の関係判例として重要なものとなりますから、原電にはこの取消訴訟も検討をしていただきたいものです。今までありそうでなかった重要論点だと思います。