(新名称) 法と公正手続きへの基本的理解が欠如した原子力規制委

(旧名称) 九州電力第三者委員会、郷原委員長、そして枝野経産大臣への疑問

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【論点7】挙証責任の問題
 挙証責任の問題も、敦賀会合の場合に問題が凝縮して現れています。
 伊方原発設置許可取消訴訟における最高裁判決では、一義的な疎明責任を国側に負わせました。安全を証明するための根拠資料を保有しているのに対して、住民側にはそれがないという、情報保有の非対称性があることが理由です。しかし、国側が安全性について証明すれば、それに対して安全ではないとする反証責任は住民側に移ります。このような責任分担は定着しています。
 今回の破砕帯評価の場合、国(=規制委)と電力会社とは、情報保有の非対称性はありませんから、破砕帯が活断層だと判断するのであれば(そしてそれが安全性を損なうとするのであれば)、基本的には規制委側にあるはずです。原電は、規制委の前身である保安院での意見聴取会での審議に基づく指示に即して調査を行い、材料を揃えました。了承されていた調査計画に基づいて調査の上、集めた材料を評価し、活断層ではないと証明しました。その評価については、外部の第三者によって適切である旨の検証もされています。
 その原電側評価が適当ではなく、活断層の定義に当てはまると規制委が考えるのであれば、その根拠となる具体的材料を示して合理的推論による反証をしなければなりません。規制委は、二言目には、「まだ十分でない」「そうとは限らない」と言い、「安全サイドで判断する必要がある」と言いますが、安全サイドでの判断というのは、合理的推論をした上で残る不確定性についての判断の話であり、合理的推論をしないままに安全サイドで活断層だとの判断はありえません。そのような趣旨は、ピアレビューの際に、栗田委員も述べていました。
 この後に別途述べますが、評価会合は、委員からの質問、指摘に対する原電側からの追加的反論や第三者による参考人としての意見陳述を排除したまま結論を出しましたので、合理的反証をしていないことになります。しかも、判断の内容が、次の評価書案の記述の通り、「そうとは限らない」「〜との可能性も排除できない」式のものばかりです。決して、「〜〜の材料から、〜〜と判断される」という合理的推論を経た認定にはなっていません。
 最後の部分の「K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、〜〜」という箇所は、それこそ期待を含んだ想像で言っているだけで、通常の推論であれば、自ら根拠を示し、「南方での××の調査結果から判断し、南方に連続しているものと認められる」と展開しなければなりません(実際には、原電が南方でボーリングして連続していないデータを示している点で事実誤認)。
 様々な制約があるなかで、「絶対にない」ということを完全に証明することを求めることは「悪魔の証明」に類するものであり、通常であれば、一定の制約の中で、どちらの積極的な合理的推論がより説得性が高いかで判断される筋合いのものです。ところが、評価会合は、原電側の見解に対して、消極的に「そうとは限らない」「別の可能性もありうる」というだけで、規制基準の下の審査ガイドのそのまた解釈に盛り込んだ「明確な証拠による否定」を要するという名目の下で、絶対否定にはなっていないという指摘に終始しています。
 
※ 評価書案の記述例
「以上のことから、有識者会合としては、日本原電が説明する“⑤層下部テフラの降灰層準”は、再堆積である可能性が否定できないと考える。」
「③層の堆積年代は、「古くとも MIS6」であり、MIS6 以前であるとすることはできないと考える。」
「以上のことから、D-1 トレンチにおいて、K 断層は、⑤層上部の堆積時期すなわち K-Tz 降灰年代(約 9.5 万年前)以後には活動していない可能性が高いが、⑤層下部堆積以前に活動した可能性を明確に否定することはできないと考える。」
「以上のことから、有識者会合としては、K 断層の活動の履歴については現状のデータでは確実な評価は難しく、中期更新世以降に複数回活動した可能性を否定できないと考える。」
「以上のことから、K 断層が D-1 トレンチ南方においてほとんど変位が認められなくなるとは判断できず、また南方へ連続している可能性も明確には否定できない。有識者会合としては、K 断層は、D-1破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考える」
「さらに、有識者会合としては、K 断層は、現状で D-1 トレンチ及び原電道路ピットよりも南方へ連続している可能性を否定する根拠がなく、D-1 破砕帯と一連の構造である可能性が否定できないと考えている。」

 
【論点8】審議手続きの重大な瑕疵
 今回の敦賀評価会合は、昨年と同じ轍を踏んでいると思います。昨年は、委員自身がその会合での質問・確認事項が少なからずあったにも拘わらず、また、委員自身も原電の主張の趣旨がやっとわかったと言っていたにも拘らず、そして何より、原電がその1カ月強の後には最終報告書を提出すると言っていたにも拘わらず、強引に審議を終結し、活断層との断定を行いました。しかし、案の定、原電側の調査結果により、新しい材料が提示され、審議再開に至りました。
 今回も、委員自身が照会している事項もあったわけですし、原電が追加提出している資料は、いずれも審議過程で出された質問、疑問に答え、論点について反駁するものです。
 科学的な検討のための会合なのですから、各個別論点ごとの原電側の主張に評価会合側がきちんと具体的材料を以て反論しなければ、評価会合側の判断根拠、手続きに明らかに重大瑕疵ありということで、正当性が保てなくなってしまいます。
 
94日の評価会合で、原電からの追加資料に基づく議論を排除し、専門家による意見陳述も拒否したことは、産経新聞も以前大きく取り上げて批判していましたが、規制官庁の手続きとしてはちょっと信じがたい話です。
 自分のHPで(「被規制者との面談」欄)、議事要旨として公表している中で、自ら「了解した」と記載した話を、島崎氏が覆しているのですから、訴訟等で争われたら、もう一発でアウトです。
 
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当方から、次回以降の会合の進め方に関し、
・作成中の「議論の整理案」(資料)を提示。
議論の整理については、現在精査中であり、今後変わる可能性もある。来週前半には確定する予定なので、確定したら示す。
・次回(第4回:9/4予定)は、議論の整理に沿って、事業者の説明について誤認がないかどうかを確認すると伝える。
先方からは、次回の会合に関し、
7月23日の面談で提出した申し入れ資料「敦賀発電所敷地の地質・地質構造D−1破砕帯の評価 コメントに対する回答」の使用と当日新たに作成する資料について、当日持ち込みすることもある。
・事実関係の聴取だけでなく事業者側からの確認も行ってよいのか。
次回会合でコメントが示され、即答出来ないものがあった場合は、引き続き対応する。
・「議論の整理案」の日本原電の説明の記載内容について、事実誤認等があれば、事前にコメントしてもよいか。
との申し入れがあり、当方も了承した。
○また、事業者が招聘する専門家の会議への出席については、当方としても検討中であり、来週の早いうちに回答する。
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 島崎氏は、「1週間前に資料を出すのがルールだ」「きりがない」といい、鈴木氏は「いつも直前、当日に持ち込んできて何だ」と不満を述べていますが、そもそも、時系列でみれば、これらの発言がいかにピントはずれであるかは一目瞭然です。
 
  8月27日(水) 第3回追加調査評価会合
  8月29日(金) 原電が事務局と面談し、次回会合で用いる「議論の    整理(案)」ペーパーを手交される(変更ありうるとの留保付き)
  9月 4日(木) 第4回評価会合
 
 島崎氏、鈴木氏らが言う、「1週間前」に資料提出など物理的に不可能ですし、8月27日の委員だけの会合を傍聴はできたとはいえ、その議事録が公開をされているわけでもなく、29日に手交された「議論の整理」ペーパーに即して、27日の会合での指摘等を分析し、論点整理して補足説明資料、補強資料を作るので精一杯だったはずです。9月4日の1週間前は、828日であり、その翌日の29日に「議論の整理(案)」を手交されて(しかも暫定的なものとして)、どうやったら1週間前に資料を提出できるのでしょう?
 島崎氏は、退任前に決着させてしまいたいという思惑が前面に出ていて、ほとんど支離滅裂です。
島崎氏のみならず、それを更田委員や田中委員長も同じようなことを言って、次々と資料を出してくるとして、原電を批判してしますが、規制官庁のトップとして無知に過ぎます。規制行政における行政手続きの基本が分かっていないとつくづく感じます。
 
 島崎氏が主宰する評価会合での、同氏の定番のセリフは、
「時間がない」「時間が迫っているので簡潔に」
②「いくら議論しても、(また資料が出てくるので)きりがない」
③「1週間前に資料を出すのがルールだ」
④「この会合での議論がすべてだ。」
 
 こういったセリフを、何の疑問も持たずに、自信を持って言い放つところが信じられません。会合の趣旨、審議の目的、科学的・法律的議論の在り方等のいずれの観点から見ても、あり得ないセリフであり、これらは、自ら、「私は不公正な手続きにより結論を出しました」と告白しているようなものです。
 
 94日会合では、829日に手交された整理ペーパーに基づいて議論が行われており、当日原電から提出された意見ペーパーは、当日の議論には反映されていません。
 
 その原電の意見ペーパーが、1119日のとりまとめ会合での今回の評価書案に取り入れられているのかどうか、詳細にはわかりませんが、しかし、原電が、1121日に発表した
「(第5回追加調査評価会合)における主な問題点について」とのペーパーをみると、評価会合側の事実誤認や思い込みが多すぎるように感じます。
 
 調査データを示しているのに、データがないとしている点などは、内容以前の基本的な部分で信頼性に疑問符が付きますし、これだけ多くの点で具体的に根拠を以て反論されるような内容では、科学的にも訴訟的にももたないのではないでしょうか。
 
 訴訟となった場合、ともかく、お互い主張を出し合って、論点に即して相手の主張に根拠を以て合理的に反駁できなければ負けですから、規制委側は、上記ペーパー等での原電指摘に対して、逐一反論する必要があります。
 訴訟では、時間がないから意見を聞かないとか、きりがないからもう聞かないとかが罷り通るはずもなく、原電側の参考人も当然採用されることでしょう。評価会合での島崎氏の議事進行のように、「もう十分議論した」と漠と主張して議論を打ち切ることもできません。
むしろ、そういう発言を繰り返して議事進行をしたことや、第4回会合に提出され公式にも規制委HPに掲載されている原電説明ペーパーでの主張、指摘について、ほとんど議論も反論もないままに、評価書をまとめたとなると、これは審議手続き自体に重大な瑕疵があるものとして違法となる可能性が多分にあります。内容も、科学的な合理的推論に基づかないものとして斥けられることでしょう。
 
 既に上記の諸論点で述べたように、もともと規制委及び評価会合には、憲法論を含む多くの深刻な問題を孕んでいます。活断層に関する基準の局面だけをとっても、基準自体とその策定過程が、学会のコンセンサスを一顧だにしていないものとして、最高裁判例に照らして重大な疑義がありますし、その適用局面における評価会合でも、これまた重大疑義、瑕疵があるというダブルでの問題を孕んでいます。
 
 今後のピアレビューや、規制委会合で、これらの問題の一端なりとも理解した人々がいればいいのですが、どうなのでしょうか。ピアレビューでの栗田委員などはまだ筋論的なことを述べていましたし、新しく就任した田中知委員が原子力工学の専門なので、何かコメントするのか、よくわかりません。
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本来目的の原発重要施設への影響評価をしようとしない規制委
 しかし、ともかく、規制委は、この破砕帯調査の元々の趣旨を忘却し、肝心要の原発の重要施設への断層の影響を評価するということには、文字通り一顧だにせず、その破砕帯が12-13万年前以前のものかどうかということだけに延々時間を費やしてきました(空転による浪費もして)(しかも、その活断層の定義が、絶対否定の証明を求める非科学的なもの)。浦底断層が動いた場合に、どう原発の地盤に伝わり、直下の破砕帯がどう動き、施設に影響するか、という最も分析評価が期待されている点については、何もせずに時間を浪費したのが規制委なのです。原電がその評価を持っていて、規制委での審議を求めていたにもかかわらずです。
 地質学者の島崎氏らが、「下に断層があると、何が起こるかわからない」からという科学的とは思えない主張に立脚して、工学的検討を一切排除してきたというのが実態です。
 
どこからも制度上牽制されない不合理な制度―立法的解決が図られるべき
 活断層に関する基準や解釈の問題は、大飯原発の差止め訴訟で論点になっているようですから、そちらで司法判断が先行して出るのかもしれません。
 しかし、憲法論に関わる問題は、独立性の高い委員会になってしまっている中では、立法的に解決することが必要になっています。どういう機関であっても、どこかで牽制がなされる仕組みになっていますが、原子力規制委は、そういう牽制をする立場の組織がなく、独立愚連隊的存在になってしまっています。それに対しては、立法的解決が図られることが必要だと思います。あるいは、国会の決議でもいいと思います。
 立法上手当てが必要と思われるのは、次の諸点です。米国のNRCが規範としている点も考慮に入れることが適当でしょう。
 
 
1 原子力規制委が留意すべき点を法律上盛り込む。
(1)  原発が原子力基本法に基づく平和利用を通じ、電力の安定供給上重要な役割を果たし、事業者も供給義務を負っていることを踏まえ、その役割・義務遂行とのバランスにも十分配慮しなければならない。
(2)  憲法上の基本原則である利益の比較衡量、比例原則、公正手続きの確保等に十分配慮しなければならない。
(3)  独善に陥ることなく、広く事業者、科学界との対話に努め、科学的知見を行政に反映するよう努めなくてはならない。
(4)  原発等の立地地域に対して、その安全性確保状況等について、十分説明するよう努めなければならない。
 
 2 業務監査人を置く。
 (1)規制行政が、憲法、行政法、規制委員会法、その他の法令上、適切になされているかについて監査する者を置く。
 (2)業務監査人は、職権により又は外部からの要請により業務を行う。
 (3)業務監査人は、環境大臣が任命し、独立して業務を行う。
 

  こういった措置により、誰が委員として来ても、暴走しないような仕組みをビルトインし、委員や事務局にもその意味に気付かせ、外部からの牽制と対話促進が図られるようにすることが必要と思います。
 もちろん、事務局の規制庁には、これらの点に十分なセンスのある人間を配置しなければなりません。いくら、東日本大震災後の空気があったとしても、今の規制庁には、あまりにも規制行政の基本的センスがなさすぎます。出るところに出て争われれば完敗するであろうことは、容易に想像できると思うのですが・・・。


【論点4】新基準上の多重防護措置との関係
 上記の憲法上の法益の比較衡量や比例原則等の観点から、もう少し補足します。
 それは、これまでの安全基準に即して運転が行われてきた原発を、安全基準の激変、即時の遡及適用によって、直ちに廃炉に追い込むことは、新基準自体の二重、三重の防護措置からしても、バランスを著しく失しているということです。
 もともとバックチェックによって、設計を上回る地震、津波に襲われたとして、その耐えうる限界はどこまでか、という評価はなされています。東日本大震災後に保安院から求められた緊急対応措置にも対応していることは、原電が公表しているかと思います。その緊急対応措置の多くは新基準にも反映されているかと思います。それでもなお、運転継続を一切許さない事情があるのか、という点が問われることになります。バックチェックと緊急対応措置によって、必要な補強工事も行いつつ、運転を継続させるという方針は、電力の安定供給とのバランスを取るという観点からは妥当なものだったと思います。
 しかし、原子力規制委は、バックチェック作業・評価は棚上げしてしまい、新基準での評価だけを行い、それが終わらないうちは再開させないという方針をとりました。新基準を遡及適用するとしても、激変緩和のための一定の猶予措置(準備期間等)をとるのが規制行政の基本です。それは措くとしても、その新基準では多重の防護措置が盛り込まれています。

 ・事故が起きないように、重要施設の耐震、耐津浪のレベルを引き上げる。 
 ・事故が起きたとしても、その被害が最小限のものになるよう多重の防護措置をとる。

 バックチェックや緊急対応措置による補強に加えて、新基準が求めるこのような多重防護措置をとったとしても、活断層とされるものが事後的に見つかったというだけで、しかも、その活動態様、重要施設への影響等の評価をしないままに、入口のところでシャットアウトして全否定するということが許されるのかと言えば、公益事業として電力の安定供給に果たしている役割、公益企業にとっての経済活動の自由、私有財産でありながら公益的財産でもある財産権の尊重、被害の蓋然性の程度に比例した対応等の憲法的視点からみて、許されるわけがありません。
 それが許されるのは、設計上の対応、補強工事、代替措置等によってもなお、発生する蓋然性が高い地震、津波に耐えられず、危険が現実に予想されるという場合です。その場合でも、公益的財産ですし、既存基準を満たしていたわけですから、廃炉に向けた経済的インセンティブの付与は必要でしょう。
 安全性の確保はもちろん重要ですが、絶対安全を限りなく追求し、予想される震災の程度に比して、著しく過剰で、コスト的にもバランスを欠くような安全策を求めるということは、比例原則からして適当ではありません。「牛刀をもって鶏を割く」ようなことを求める規制は不可ということです。それは規制行政の基本です。この活断層論議の場合は、「その活断層がどういう態様のものか、どう動くのかがわからないが、安全サイドで、耐震補強の可能性を検討するまでもなく、これまで安全に稼働してきたものであっても、全部止めてしまえ」と言うに等しい話ですから、比例原則どころの話ではありません。それ以前の話です。
 

【論点5】活断層に関する新基準の策定過程と適用のあり方の問題性
 今回の問題の根源は、活断層に関する新基準とその解釈にあります。それらは、その策定過程、内容とも、相当恣意的なものになっています。
 基準や解釈については、今回の評価書案の末尾のp31以降に掲載されています。
 
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○実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成 25 年原子力規制委員会規則第 5 号)
第三条 設計基準対象施設は、次条第二項の規定により算定する地震力(設計基準対象施設のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度が特に大きいもの(以下「耐震重要施設」という。)にあっては、同条第三項に規定する基準地震動による地震力を含む。)が作用した場合においても当該設計基準対象施設を十分に支持することができる地盤に設けなければならない。
耐震重要施設は、変形した場合においてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤に設けなければならない。
耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
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 この第3項が、議論の対象となった点です。
旧基準では、「建物・構築物は、十分な支持性能を持つ地盤に設置されなければならない」とされていたのに対して、新基準では、「変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない」とされました。第1項の「地震力の作用」、第2項の「変形」については、「施設を十分に指示することができる地盤」「安全機能が損なわれるおそれがない地盤」とされているのに対して、「変位」だけは、そういうパターンの「変位が生じたとしてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤」という規定の仕方ではなく、単に「変位が生じるおそれがない地盤」とのみ規定されました。
そして、「審査ガイド」では、次の【論点6】で述べるように、その解釈と審査ガイド、更にその解釈と、法規レベルの下層に降りていくほど、ハードルがどんどん高くされていきました。その結果、本来、原発施設への安全性がどうなのか、という観点からの基準んはずが、それとはかけ離れた、12-13万年以前であることの「明らかな証明」を電力会社に課し(証明方法、指標はなし)、その活動態様、規模さえも検討されることはないという構図になってしまいました。
 
基礎地盤分野の専門家である岩盤工学の学会関係者が詳細検討の上で、パブリックコメントの意見として提出し、安全基準検討チーム会合においても、独立行政法人の防災科学技術研究所谷委員がその代表として提出した意見が、文字通り一蹴されてしまっています。
 谷委員は次のように意見を提出しています。
 
「活断層が露頭に現れている場合の立地制限に関する規定については,現在の骨子案の内容(施設の要求性能に無関係に,想定される断層変位がどんなに小さくても,将来も活動する可能性あれば立地を制限)は,当該分野(岩盤工学)の専門家(検討チーム内のメンバーでは私のみ,検討チーム外ではパブリックコメントをした多数の岩盤工学の専門家)が異口同音に不適切な規定であると指摘している。多くの専門家の指摘を無視した規定は修正されるべきであり,・・・」
「この検討チームの中では、岩盤工学を専門としているのは、残念ながら私しかいなくて、本当に増やしてほしいと思いますけれども、私だけでなくて、実はパブリックコメントをやったときに、専門学会又は協会もありますけれども、そこで組織的に合議をして、この岩盤工学の専門家が意見をされた内容があるわけです。
それで、・・・活断層の露頭に現れている場合の立地規制について何遍も申し上げていますけれども、これはこの岩盤工学の専門分野から見ればおかしいということを異口同音に申し上げているわけです。
私は、専門分野の専門家の意見と、そうでない方の意見は重みが違うと思いますね。専門家の意見は尊重されるべきだと思いますし、そうでない方の意見は配慮するというレベルじゃないかなというふうに私は思うわけです。・・・こういう専門学会が組織的に出した意見を一蹴……、何というんですか、一顧だにせずいるということは、私は正しいことではないと思います。」
 
 このように、岩盤工学の専門学会が組織的に検討して、一致して提出された意見がまったく一顧だにされずに策定されたということからして、この基準及びその適用方針=審査ガイドの科学的妥当性に深刻な疑問があるということです。この点は、【論点1】で述べた、何のための議論なのか、ということと共通する話です。
 
 もともと、安全基準は、その制定根拠は、原子炉等規制法の「第43条の36」第四号にあります。
 
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(許可の基準)
第四十三条の三の六  原子力規制委員会は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一〜三 略
 発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。
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 この規定にある通り、「汚染物質や原子炉による災害の防止上支障がないものとしての基準」ですから、学会の一致した見解に反して、変位がわずかでもあれば、「災害の防止上支障がある」ことの証明責任は、規制委側にあります。
 しかし、基準検討の会合では、上記の谷委員の意見提出、発言に対しては、感情的な物言いがあるだけで、科学的根拠に基づく合理性のある見解は示されることはありませんでした。その際の空気は、島崎副委員長がさかんに台湾地震での橋や建物の写真を示して煽っていた「何が起きるかわからない」という漠然としたもので、原子力工学等の学会での一致した意見に対する合理的反論等のやりとりはなされませんでした。
 つまり、この変位に関する新基準は、内容及び手続きにおいて違法と言えるでしょう。
 
伊方原発訴訟最高裁判決では、次のように判示されており、局面は違いますが、まさに、規制委による活断層関係の基準の策定と、原電敦賀の破砕帯評価会合そのものを指しているかのような内容になっています。
 
「現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」
 

【論点6】基準の透明性、予測可能性の問題
 規制行政の基本として、基準の透明性と予測可能性ということが挙げられます。これは基本中の基本です。冒頭の森嶌教授が感想として述べた
「規制委は原電側に『提出した資料は不十分』とするばかりで、何が足りないのか、どういう資料を示せばよいのかが分からない」
 という点は、まさにそれらの基本が守られていないことを指しています。
審査基準の運用指針である「審査ガイド」では、基本方針として、
 
「「将来活動する可能性のある断層等」は、後期更新世以降(約12〜13万年前以降)の活動が否定できないものとすること。」とし、解釈として、
「約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。」
 としています。この部分が盛り込まれる審議過程の問題は別途詳細に書きました。ここでは、どういう手法で調査を行い、どういう指標で判断するのか、ということが定められていません。「それは証明する側の電力会社が考えろ。それが妥当かどうかを規制委側が判断する」という考え方ですから、原電側も手探りになってしまいますし、相当のコストをかけてボーリングしても、それが認められうるのかどうかもわからないという状況でずっと推移してきました。
 もともと、保安院での指示に基づき調査が開始されたものですが、調査方針、内容については、意見聴取会での議論を経てその了承の下にスタートしています。ボーリングは、どこの箇所をどういう理由で選定するのか、どういう評価手法、指標で評価するのかということも、計画書の中に明記されていました。ところが、規制委の有識者会合に移行した途端に、「御破算で願いましては」となり、そのような経緯を無視して、委員によっててんでばらばらな思いつきの意見や指摘をするばかりで、評価側、被評価側が共通理解に立たなければならないはずの調査手法、判断指標等が、宙に浮いてしまいました。
 それでも原電側が、委員の指摘に即して追加調査をしたり分析したりしても、「そうとは限らない」「まだ資料が足りない」「安全サイドに判断すべきだ」「こちら側を掘ってはどうか」等々、まるで蜃気楼か逃げ水のように、近づいたと思ったらすぐに遠のいてしまうということの繰り返しでした。
それによって、「明確な証拠が示されたとは言えない」→「将来の活動を否定できない」として、活断層認定をしているという、およそ規制行政の基本とは無縁の行為です。電力会社の調査のコストは、電力料金に跳ね返るものですし、その調査によって稼働が停止する期間が長くなれば安定供給面で支障が生じますし、既設である以上調査には限界もあるということをすべて念頭に入れながら、明確な手法と基準、指標を示し、計画も承認した上で、その結果を評価するということが、当然行われなくてはなりませんでした。
 
 その基準の運用指針の審議過程をみても、二重の意味で不公正です。
基準本体が、地盤の変位の程度、影響の如何に関わらず、また新設、既設の如何に関わらず、設置不可としたことに加えて、更に「基準の解釈」→「審査ガイド」→「ガイドの解説」と多層化された適用基準の細則の中で、次々とハードルを高くしていっています。「審査ガイドの解説」はその到達点でしょう。「12〜13万年前以降のものでない明確な証拠を挙げよ。ずれ、変形がなくても、より判断を明確にするためにそれより古い時期も調べよ」ということですから、基準、指標を明確にしないままに、地層に変形等がないことの挙証責任を全面的に負わせ、加えて、なお書きで、本来必要がないはずの「12−13万年以前の地層も調べよ」という追加負担を負わせるという、手の込んだやり方です。挙証責任のあり方については、この後の別途の論点として述べますが、上記のなお書きなどは、科学的裏付けがない話です。20数万年前まで遡る話が通らなかったために、なし崩し的に、それに近い運用となるように、「審査ガイドの解釈」という最末端の指針で、盛り込んだというわけです。 このような一連のハードルを恣意的に高くしていき、本体の議論では否定されているはずのことを実質的に盛り込ませるということが、まず一つ目の不公正です。
 
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(参考)
【基準本体】
耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
【基準の解釈】
「変位」とは、将来活動する可能性のある断層等が活動することにより、地盤に与えるずれをいう。
上記の「将来活動する可能性のある断層等」とは、後期更新世以降(約12〜13万年前以降)の活動が否定できない断層等とする。活動性の評価に当たって・・・安全側に判断すること。


【審査ガイドの解説】
約12〜13万年前以降の複数の地形面又は連続的な地層が十分に存在する場合は、これらの地形面又は地層にずれや変形が認められないことを明確な証拠により示されたとき、後期更新世以降の活動を否定できる。なお、この判断をより明確なものとするため、活動性を評価した年代より古い(中期更新世(約40万年前)までの)地形面や地層にずれや変形が生じていないことが念のため調査されていることが重要である。
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 もう一つの不公正は、基準とその運用指針の策定者と、適用者(=破砕帯評価会合メンバー)とが同じだということです。同じというだけでなく、破砕帯評価で活断層認定に持っていくために、基準適用者が基準の運用指針のハードルを上げたという流れに見えることです。たしか、最初に示された審査ガイド案と、その後検討会合メンバーからの意見に基づいて修正された案とは大きく異なっていたはずです。その修正過程では、敦賀会合のメンバーである鈴木教授と島崎副委員長の意見、考え方が色濃く反映されていました。
 その審査基準や審査ガイドの審議が行われていた時期は、まさに原電敦賀や関電大飯の破砕帯が活断層だと主張していたのに対して(敦賀はいったんは早々と認定されていた)、原電や関電が猛反発して反論を行っていた時期に当たります。それを封じるための手段として、基準の運用指針のハードルを非科学的に上げたというように見えます。実際、鈴木教授などは、審査ガイドがまとまった後に、敦賀会合で、「安全サイドで評価ことになっている」「証明するのは電力会社側で、どういう方法で証明するかは電力会社が考えることだ。こちらは結果が出されたら、それが適当かどうか検討し指摘するのだ」と言い放って、規制側の透明性、予測可能性ということはまったく念頭にもないような発言をしていました。島崎氏も同様です。
 基準・指針の策定者と適用者とは別々にあるべきであり、それは立法と司法との役割分担に似た話だと思います。検察が立件に持って行くために、捜査中に、拠って立つべき法律とその適用基準を変えるに等しい構図になってしまっていました。
                          続く

 原子力規制委員会の敦賀の破砕帯評価会合が、1119日の会合で、敦賀2号機直下の破砕帯を、活断層と改めて認定する評価書案をとりまとめました。
 
◎日本原子力発電株式会社敦賀発電所の敷地内破砕帯の評価について(その2)(案)
 
 規制行政の暴走も極まれり、というところでしょう。前回の轍をまた踏むのか?とつくづく感じます。当事者の原電からすれば、あきれるだけでは済まず、死活問題です。
 島崎委員から石渡委員に変わってどうなるかな、と思いましたが、流れが変わることはありませんでした。今後、他の有識者によるピアレビューがなされた後、原子力規制委の了承手続きに進むものと思われます。
マスコミ報道の中では、産経新聞が批判的な論調ですが、他のメディアはそういうトーンはあまり感じられません。
 
産経新聞の記事の中で、法律学者として著名な森嶌教授のコメントを載せていたのが目にとまりました。
 
「名古屋大の森嶌(もりしま)昭夫名誉教授(民法・環境法)は「被規制者(原電)にとって不利な判断をする場合には十分な反論の機会を与えなければならない。規制委は原電側に『提出した資料は不十分』とするばかりで、何が足りないのか、どういう資料を示せばよいのかが分からない」と規制委の対応に首をひねる。
 さらに、森嶌名誉教授は法律的な位置づけのない専門家会合を問題視。「専門家会合では、メンバーに法律上の権限がなく責任も負わない。専門家会合の法的な根拠を明確にし、責任を負わせて判断させるべきだ」と指摘する。」
 
 森嶌教授は、原子力関係とは無縁の法学者で、環境行政や消費者行政などの面ではよく知られている方かと思いますが、同教授の感想が普通のリーガルマインド的センスだと思います。
原子力規制委は、巨大で強力な規制官庁であるにもかかわらず、法律的センスの点ではほとんど素人同然で、各種評価会合や基準作りの会合等でも、規制行政のイロハを踏まえない運営を続けてきました。その集大成というか、その縮図というか、それが敦賀の破砕帯評価会合とそれに関連した原子力規制委の対応でした。
原子力規制委の委員には、そういう法的手続きの面での専門家がいません。事務局にいるかといると、これもまたいません。本来は、規制庁長官なり次長なりが仕切るべきでしょうが、警察官僚出身のせいでしょうか、刑事法しかわからず、憲法の大原則や行政手続きの基本を理解しているとは思えず、存在感がありませんでした。
 
森嶌教授が述べるところの、「専門家会合に法的位置づけがなく、責任も負わない」という点は、この会合での議事なり評価なりが、一連の行政法に基づき、その可否を争い得る行政手続きや行政処分と位置づけられないということと同義だろうと思います。
これだけ、原子力事業者の存亡に関わるような評価をするとしても、その是非を争う法的手段がありません。評価の内容や手続きを争うことができないため、それにも基づき報告徴収や再稼働申請不許可(あるいは不作為)という行政処分として現れた場合に、初めてそれを争う形で、実質的にその評価内容、手続きを争う形になります(「名誉棄損」で訴えるという方法もありますが、本筋ではありません)。しかし、そこで最終的に訴訟となり、勝訴するまでには膨大な時間と労力とがかかるわけであり、その間の様々な経済的、社会的不利益は甚大なものとなりかねません。企業倒産など最悪の事態もありうるわけです。
これは、別に原子力規制委のせいではなく、法制度上の問題ですので、規制委に言っても仕方ないのですが、しかしだからこそ、規制委はそういう点を考慮において、行政手続、行政処分に準ずるものとして、慎重の上にも慎重に審議を進めるべきでした。
 
 この原電敦賀破砕帯評価会合の評価内容と手続きに関しては、多くの問題点を内包しています。それに基づいて再稼働申請不可となれば、取消訴訟で、瑕疵のある違法な手続きと内容だとして、取消になるでしょうが、憲法及び行政法の観点から、悪しき事例として記憶されることでしょう。
 公正手続きということを多少なりとも知っている人ならば、誰しも森嶌教授と同じような印象をもつことでしょう。
 
「事業者の存亡を左右する話が、こんな杜撰な手続きで評価されるなど、あり得るのか?!」
 
 ということです。
 いくつかの重大な論点があるかと思いますが、ざっくりと問題の所在を述べると次のようなものになるかと思います。かなり多岐にわたります。
 
【論点1】何のために評価しているのか?―原発の重要施設への安全上の影響評価のはず
 もともと、破砕帯評価は、バックチェックから始まった話の延長だったはずです。破砕帯が活断層なのかどうか、活断層だとしてどういう構造で、それが動いた場合にどういう影響を原発の重要施設に及ぼすのか、ということが根本的な問題意識だったはずです。浦底断層が活断層だということがわかって、それとの連動がどうなるのかというのことが、基本的出発点だったはずです。
 
 ところが、それは何ら評価されないままに、基準上の「今後動く可能性のある断層」の定義に当てはまるかどうかの、いわば矮小な議論に終始しました。
平成18年9月の耐震設計審査指針の改訂に伴い、各事業者に対して、耐震バックチェックを指示している中で、東日本大震災が発生し、その教訓を踏まえて、意見聴取会での議論がなされ、平成23年11月に更に深堀りした調査指示がなされたという流れです。それに応じて、調査が行われてきたということです。何を目的として、どこでどういう手法で何を調べるのかといった点を盛り込んだ調査計画書が、保安院と原子力安全委員会で承認され、それに即して調査が行われてきたというのが、原子力規制委に引き継ぐ時点までの話です。
 平成23年11月の最初の保安院指示には、次のように書かれていました。
 
「貴社敦賀発電所については、文献調査から天正年間に若狭地域に大きな津波が到来した旨が記載された古文書の存在が明らかとなったこと及び地震・津波に関する意見聴取会において周辺斜面の安定性評価も必要であるとの指摘があったことを踏まえ、当院は、同地域における既往津波に関する調査とそれを踏まえた津波の影響評価及び基準地震動の変更に伴い、周辺斜面の安定性の再評価と当該再評価を踏まえた安全上重要な施設等への影響評価が必要であると考えます。
また、貴社は、耐震審査の改訂に伴う耐震安全性評価結果中間報告書において、同発電所敷地内を通る浦底断層及び原子炉建屋直下に存在する破砕帯の活動性については、地形・地質調査の結果に基づき否定しているところです。
しかしながら、当院は、当該地震に伴う想定以上の地殻変動により、広域にわたって応力場に影響を与え、正断層型の地震も発生していることを踏まえ、浦底断層の活動に伴う破砕帯も含めた地盤の変位について原子炉建屋等への影響について評価すること、また、貴社東海第二発電所については、従来、耐震設計上考慮していなかった断層についても、活動性の再評価が必要であると考えます。」
 
ここに書かれている通り、調査の目的は、「重要施設への影響評価」だったはずです。ところが、新基準に、重要施設の直下に活断層がある場合には立地不可とする旨が盛り込まれ、既存原発に対しても、規制行政としては極めて異例のことながら、即時に遡及適用するとの措置が取られたことにより、実質的に新基準適合性審査に変質してしまいました。
約12万年前以前の断層(=活断層)かどうかだけが焦点となり、その活動性はどうなのか、どの程度の地震が生じるのか、その場合重要施設にはどの程度の影響があるのかというもっとも肝心な点は、ほとんど議論されることはありませんでした。
それまでは、規制内容が厳しくなった新基準が制定されても、法的には遡及適用はせず、バックチェックの形で耐久性をチェックし、必要あれば補強する、という形で、安全と利用のバランスがとられてきました。立地後に活断層が直下に見つかっても、その重要施設に与える影響を評価して判断する、という本来目的に即した運用方針が公式に取られていました(国会での質問主意書への答弁書)。
しかし、新基準で、活断層と認められた場合には、直上にはともかく設置不可とされたことにより、活断層だとしても、それがどのようなメカニズムでどの程度の地震を生じ、それがどういう影響を重要施設等に与えるのか?それは運転を継続できないほどのものなのか? あるいは代替的な補完策があるのかどうか?といった当初のバックチェックの本来目的とするところが吹き飛んでしまって、それらについての議論が何らなされないという異常な展開となってしまいました。
 自分で出した指示にもかかわらず、それに応じて報告しようとしているのを拒否しているに等しい構図ですから、本来考えられない話です。その点の影響評価をしないままに、「絶対に基準にいう活断層でないとは言い切れない」というだけで、思考停止、検討停止し、再稼働不可の判断をすることなど、あり得ようはずがありません。
 まして、今回の評価書案では、9.5万年前以降は動いていないことを認めましたから、なおのこと、動いた場合の影響評価をしないままに、9.51213万年前の間に動いたか不明という一点だけで廃炉に追い込むということは、本来趣旨からしても逸脱しています。
 
【論点2】昨年7月の重要施設への影響なしとの報告徴収を了承したこととの関係
 いったい何のために議論しているのか? ということについては、昨年5月に規制委本体の会合で、いったんは活断層と断定され、ただちに影響評価についての報告徴収をかけたのに対して、影響なしとする原電の回答を了承したこととの関係からしても、疑問です。
昨25年5月の規制委で、活断層だと断定した評価会合の報告書が了承され、断層が動いて重要施設である配管が全壊して冷却水が失われた場合の影響を評価せよ、という報告徴収命令が発せられました。重要施設にどういう影響を与えるかを評価せよ、という命令ではなく、いきなり全壊することをアプリオリに決めつけての命令というのは前代未聞の奇妙な命令だと思いますが、いずれにしても、誤った認定に立ったものであるとして、原電は異議申立てをしました。しかし規制委は、命令に応じていることを以て訴えの利益なしとして却下しましたが、それは、判例にも反する決定でした。裁判になれば規制委は負けますが、原電としては、それに時間と精力を費やすのは無駄だということで、争っていないだけです。それに甘えて、判例違反の決定をすることは、本来許されません。
それは別として、規制委は、その命令に応じて影響評価を提出し、配管が全壊しても他の代替措置により、安全性を損なうことにはならないとの原電の評価を、あっさり了承しました。
それであれば、バックチェックとしての、そして立地基準としての本来目的である原発の耐震面の安全性はまず担保されているということですし、全壊に至らない補強工事も十分に可能です。破砕帯が12万年以前か以降か、破砕帯がK断層とつながっているかどうかといった点は、ある意味で些末な話でもあります。「活断層である」との認定にも拘わらず、それが耐震面で安全性に影響しないということであれば、その原発を全否定し、運転を認めずに廃炉に追い込むことは、法益の比較衡量において均衡を著しく失した措置であり、憲法上の問題となってきます。この点は後ほど詳しく述べます。
 
【論点3】憲法上の基本原則への違背
このブログで当初から一貫して述べていることは、原子力規制委の規制行政は憲法の基本原則の多くに違背しているということです。
法益の比較衡量、不利益措置の不遡及、比例原則、公正手続きの確保 といった基本中の基本であるはずの原則に反する措置が、実にあっさりと講じられています。こういう原則に、田中委員長を筆頭として、委員も規制庁も誰も勘案する様子さえも見せず、原発の安全確保のみを考えているとの台詞のもとに、それを当然としてきました。
原発の安全確保ということはもちろん、非常に大事な国民の利益であり、いったん深刻な事故が起きれば大変なことになるということは、福島原発事故で体験したことです。それは、電力会社を含めて誰も否定しているわけではないでしょう。
問題は、法益の比較衡量とバランスということです。原子力発電は、これまで原子力基本法による平和利用の促進という枠組みの下に、電力の安定供給を担うベース電源としての役割を果たしてきました。地球温暖化対策のカギとしても、菅直人政権の下で、一時は比重を50%まで引き上げるとの方針も決定されました。電力の安定供給は、電力会社の法的義務として定められていますが、電力会社とすれば、これまで政策的にベース電源として推進されてきた原発を一定割合以上組み込むことを前提としていたわけです。
安全確保も大事な課題ですが、安定供給(量、質、価格の三面での)もまた大事な課題です。絶対安全ということはあり得ないわけですから、利用促進、安定供給の確保とのバランスをどうとるために、どこまでのレベルで線を引くのかが重要な視点になってきます。これは、別に原子力安全規制に限らず、すべての安全規制に共通していえる基本原則です。米国の原子力規制委員会においても、安全確保と利用促進とのバランスをとることが要請されており、事実上の利用禁止に等しいような安全確保策というのは、この原則を無視したものであり、適当ではありません。ところが、それを無視し、「安全のことだけを考える」と宣言して委員会運営を行ってきているのが、田中委員長でした。安全確保だけでなく、安定供給の確保も社会的、政治的、経済的要請なのですから、すべての原発を止めて、新基準適合性審査を行うという方式は疑問です。というか、明らかに不適当です。

法益の比較衡量とともに、憲法の基本原則としてあげられるのは、不利益措置の不遡及です。これは直接的には刑事面での原則ではありますが、不利益措置を遡及適用してしまうと、既存の権利関係を侵害することになりますから、この点でも利益の比較衡量の視点に立って、基本的には遡及しないというのが原則です。建築物等の耐震基準の適用についても、新基準はこれから建築するものに対して適用されるのであって、既存の建築物については、建て替えや補修の際に適用していくとか、経済的インセンティブ(補助金、税制優遇等)を与えて、新基準への自主的適合を促していくというのが基本的な行政のあり方であるはずです。もし、新しい知見等によって、切迫した危険が迫っているということが判明したのであれば、それは緊急避難的に対処が検討されるべきことです。
原発の安全基準についても、通常の建築物と同様の方式により適用されてきました。新基準が定められても、遡及適用はせず、行政指導の形でバックチェックを行わせ、実質的な安全確保を図るというのが、これまでのやり方でした。
今回の規制委の下での活断層議論は、そういう憲法の基本原則を一切無視したものです。
 直下に仮にそれが活断層だとしても、その規模、形状、活動度合い等に関わらず、一律に公益事業として供されている私的財産の価値、効用を無に帰する措置をとるということは、財産権の侵害であり、経済活動の自由の侵害です。比較衡量の重要性を認識しているのであれば、評価の順序は次のようになるはずです。
 
 ・活断層かどうかを判定する。
 ・活断層だとして、その活断層の活動の切迫度合い、将来的活動時期の見 通しを評価する。活断層としての規模、活動度合、見通し等から、原発 の重要施設への影響を評価する。
 ・影響評価の結果が、耐震工事や代替的保補完策等によりカバーできるも  のかどうか評価する。
  
 このような一連の評価の結果、耐震工事や代替策を講じたとしても、原発の安全性が確保できる見通しがつかない、ということになった場合に初めて、廃炉ということになるわけです。その場合にも、経済的なダメージを補完するようなインセンティブが必要になってくることでしょう。
 ところが、【論点1】で述べたごとく、規制委や破砕帯評価会合は、そういう一連の評価を何も行っていないのです。昨年5月に活断層だと認定した後も、報告徴収でそのような評価を求めることはありませんでした。そのような影響評価こそが、規制委に求められているはずの基本的アクションだと思いますが、もともとバックチェックの指示から話が始まっていることからしても、理解できない対応です。
 それに、活断層の定義は、新基準になるごとに、活動時期の目安が遡っていっています。原電敦賀1,2号機が設置された当時は、5万年前だったはずです。それが遡ることはいいですが、それを既設置済みの原発に遡及して、しかも即時適用し、適合しなければ廃炉しかないというのは、不遡及の原則、激変緩和の原則、比較衡量の原則等を全く顧慮しないものであり、あり得る行政措置ではありません。通常は、新設のものから適用していくというのが基本です。
 ここで問題となっているのは原発ですが、それを自分の家に置き換えて考えればすぐに理解できる話でしょう。自分のマンションが、建築基準法の新基準に適合しないからといって、いきなり使用不可とされ、取り壊しを迫られるとすれば、到底納得がいくものではありません。現実に切迫した倒壊の危険がある、ということであれば、また別ですが、通常は、どの程度の地震に耐えられるのかを評価し、必要な耐震補強工事を行うことによって対応するはずです。
                           続く

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