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海辺のカフカ(下)

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前回書いたように「海辺のカフカ」が初めて読んだ村上春樹作品です。
これまでは「読まなかった」というより「読めなかった」んです。
「ノルウェイの森」の頃から「村上春樹」=「いやらしい」っていうイメージがあったから。
実際にいやらしいところはあるんだけど。
そこで性器とかそういう行為を描写する必然性があるのかって。
う〜ん、あるんでしょうね〜。
僕みたいな素人には理解できないんだけど。
で、何はともあれ、今回、ある方から教えてもらって初めて村上作品を読んだわけです。
最近はほとんどビジネス関係しか読まないから文芸作品は久々なんですがとても面白かったです。
この作品を教えてくれた彼女にはとても感謝しています。
(あ、「彼女」って言うのは、女性の3人称単数形の「彼女」であって、それ以上の意味はありません。残念ながら・・・(T_T))

というわけで、気になった個所の抜粋、今回は下巻です。
(しつこいようですが、「お楽しみ」部分はありません。)

『・・・あるいは世の中のほとんどの人は自由なんて求めていないんだ。求めていると思いこんでいるだけだ。すべては幻想だ。もしホンとうに自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ。覚えておくといい。人々はじっさいには不自由がすきなんだ』(下P190)

『僕が求めている強さというのは、勝ったり負けたりする強さじゃないんです。外からの力をはねつけるための壁がほしいわけでもない。僕がほしいのは外からやってくる力を受けて、それに耐えるための強さです。不公平さや不運や悲しみや誤解や無理解―そういうものごとに静かに耐えていくための強さです』
(下P193)

『みんなが偉人、天才だと世の中は困ったことになっちまう。誰かがあちこちに目配りをして、いろんな現実的な始末をしなくちゃならない』(下P213)

『・・・生きることによって、俺はなにものでもなくなってしまった。・・・人ってのは生きるために生まれてくるんじゃないか・・・それなのに、生きれば生きるほど俺は中身を失っていって、ただの空っぽな人間になっていったみたいだ。そしてこの先さらに生きれば生きるほど、俺はますます空っぽで無価値な人間になっていくのかもしれない。・・・』(下P217)

『僕らがみんな滅び、失われていくのは、世界の仕組みそのものが滅びと喪失の上に成り立っているからだ。僕らの存在はその原理の影絵のようなののに過ぎない。風は吹く。荒れ狂う強い風があり、心地良いそよ風がある。でもすべての風はいつか失われて消えていく。風は物体ではない。それは空気の移動の総称にすぎない。君は耳を澄ます。君はそのメタファーを理解する。』(下P234)

『・・・迷宮というものの原理は君自身の内側にある。そしてそれは君の外側にある迷宮性と呼応している・・・相互メタファー。君の外にあるものは、君の内側にあるものの投影であり、君の内にあるものは、君の外にあるものの投影だ。だからしばしば君は、君の外にある迷宮に足を踏み入れることによって、君自身の内にセットされた迷宮に足を踏み入れることになる。それは多くの場合とても危険なことだ』(下P271)

『どうして人々は戦うのだろう。なぜ数十万の、数百万の人々が集団となって互いを殺しあわなくてはならないのだろう。そのような戦いは怒りによってもたらされるものなのか、それとも恐怖によってもたららされるものなのか。それとも恐怖も怒りも、ひとつの魂のべつべつの側面にすぎないのだろうか。』(下P346)

『戦いを終わらせるための戦いというものはどこにもないんだよ・・・戦いは、戦い自体の中で成長していく。それは暴力によって流された血をすすり、暴力によって傷ついた肉をかじって育っていくんだ。戦いというのは一種の完全生物なんだ』(下P348)

『ここにある森は結局のところ、僕自身の一部なんじゃないか・・・僕は自分自身の内側を旅しているのだ・・・その道は僕自身のとくべつな場所に向かっている。・・・疑問。どうして彼女は僕を愛してくれなかったのだろう。僕には母に愛されるだけの資格がなかったのだろうか?その問いかけは長い年月にわたって、僕の心を激しく焼き、僕の魂をむしばみつづけてきた。』(下P373)

『でもね、もしほんとうにそうだとしても、どうしてもわからないんだ。なぜ誰かを愛するということが、その誰かを深く傷つけるというのと同じじゃなくちゃならないのかということがさ。つまりさ、もしそうだとしたら、誰かを深く愛するということにいったいどんな意味があるんだ?いったいどうしてそんなことが起こらなくちゃならないんだ?』(下P380)

『誰の人生にだってそんなにはっきりとした意味があるわけじゃないんだろう。人間にとってほんとうに大事なのは、ほんとうに重みを持つのは、きっと死に方のほうなんだな・・・死に方に比べたら、生き方なんてたいしたことじゃないのかもしれない。とはいえやはり、人の死に方を決めるのは人の生き方であるはずだ。』(下P399)

『・・・言葉にすれば、その答えは意味を失ってしまうことになる。・・・奪い取られたり、なにかの拍子に消えてしまったりするくらいなら、捨ててしまったほうがいいと思った。・・・』(下P470)

『そのあとは森の中を抜けることだけに意識を集中する。道を見失わないこと。道からはずれないこと。それがなによりも重要だ。』(下P477)

『僕らはみんな、いろんな大事なものをうしないつづける・・・大事な機会や可能性や、取りかえしのつかない感情。それが生きることのひとつの意味だ。でも僕らの頭の中には・・・そういうものを記憶としてとどめておくための小さな部屋がある。・・・そして僕らは自分の心の正確なありかを知るために、その部屋のための検索カードをつくりつづけなくてはならない。・・・言い換えるなら、君は永遠に君自身の図書館の中で生きていくことになる』(下P519)


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