ラルバ・ムジカーレ 活動日誌

アマチュア古楽アンサンブルのゆるい奮闘記。

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「語るように歌う」という歌唱の新しい理想論がバロックの初期頃、イタリアに現れました。それまで音楽の真骨頂とされていたのは複雑な対位法で作られた多声楽曲でした。歌唱法も、他の旋律を壊さないようにするため破綻なく滑らかに歌う事が要求されます。音楽的には美しいのですが、どうしても言葉が聞き取り辛くなってしまいます。

音楽劇の創造に挑んでいた当時の文化人にとって、歌詞の内容が表現できないというのは致命的な事だったようです。言葉で状況を説明し、言葉で感情の表出ができなければ劇は成立しません。そこで、語るように歌う、レチタール・カンタンドという考え方に基づいた歌が主流になっていったようです。この「レチタール」という言葉、2つ前の記事の「レチタチーヴォ」と語感が似てますよね。動詞 "recitare" には諳誦するとか演ずるとかいう意味があるみたいです。

その根幹は言葉、すなわちイタリア語にあります。言葉の表現を最優先させるという考え方は、今秋の私の課題曲のひとつ、モンテヴェルディの "Sì dolce è'l tormento" にも当てはまりそうなので、何はともあれ歌詞を分析してみることにしました。

とりあえず、文節のまとまり毎に改行して並べてみます。11音節の繰り返しから始まった歌詞は、形を変じながら円を描くようにリズムを刻んでいきます。画像の赤と黄色の部分は韻の構成。入り組んではいますが、厳格に作られています。青色は同じ語、もしくは似通った音を当てている部分。出現する音節の位置など、かなり注意深く作られていることが分かります。

"Sì dolce è'l tormento" は、バロック音楽愛好家にとっては超有名曲ですから、何度も聴いていますし、だいたいの歌詞内容も知っていました。「苦しみはかくも甘き」などと訳される事が多いようですが、そもそもこういったロマンチックな悲恋の歌詞に文学的価値を期待していませんでした。しかし、じっくり向き合ってみると、これが本当に美しい「詩」だったのです。

レチタール・カンタンドは、イタリア語の音の響き、イタリア語の音の流れ、そしてイタリア語の音の構成だという事なのでしょう。詩の段階で、すでに音楽は出来上がっています。曲を付けたモンテヴェルディも心得たもので、冒頭から短調スケールの下降形をまるっと当てただけ。実にシンプルです。

そして、シンプルな楽曲ほど表現が難しい。これがまた半端ではなく難しい。と、気付いた頃には、本番まで残りひと月ばかりになっていたのです。


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