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原田時男はカメラマンである、写真を撮影して雑誌社や出版社に売り込む、売れるカメラマンではなかったがそこそこに生活は出来た。45歳で独身、結婚は30代までは考えたが40過ぎるとどうにも面倒になった、写真は持ち込めば売れたし贅沢はできないが食べる分は稼いでいた、ある雑誌の依頼で温泉特集を組むと言う、そこで彼は有馬温泉に目をつけた、華やかな温泉の気分もありしなびた風情も併せ持つ空気もある温泉である。 彼は身軽に有馬温泉に出かけた、構想として温泉の表看板としなびた風情をカメラに収めようと考えていた。雑誌の依頼の構想は充分に心得ていた、有馬温泉の旅すがら何を被写体に収めるか考えていた。 温泉に到着すると早速宿を予約した、旅館では夕方になると仲居さんがやってきた、てきぱきと事務的に用件を済ませると仲居は消えた、40歳くらいの若作りの女性だった、妙に印象に残る人だった。翌日彼は早速温泉街に出かけた、看板になる写真としなびた風情を求めて歩き回った、夕方宿に戻った昨日と同じ仲居が応対した、彼は興味を持って仲居に聞いた、藤岡という名前だった。 「藤岡さん有馬温泉はあなたは長いの?」 「私は根っこが生えています」そう言うと彼女は笑った。 「というと随分長いわけだ、もしかしてここで生まれたとか?」 「生まれは北海道です、それかから流れ流れて有馬に到着しました」そう言うと彼女は微笑んだ。 彼は温泉にはいろんな人間がいるからなと思った、この女も訳ありの女なのかもしれない、もう少し聞いてみよう、勘ぐられては仕事に差しさわりが出る、まぁ気楽に聞けば許してくれるだろう。 「北海道からここ有馬に?随分長旅だね?」 「若いときには芸者置屋に実を寄せて温泉芸者をしていました、でも年を取ったので商売替えをしたんです」 「元芸者なの?へー驚いた、で、なんで止めたの?」 「華やかな売れる芸者じゃなかったんです、旦那も持たなかった、私は器量悪いですから」そう言うとコロコロと笑った、それが彼の興味をそそり益々深入りしようと思った。 「訳ありの人だと思った、芸者から仲居さんとは随分な方向転換だ、結婚はそれに子供はいるの?」 「旦那も子供もいません、売れる時期を逃したんです、お客さん奥さんはいらっしゃるのでしょ?」 「いや独身だよ、買い時にうっかり買うのを忘れてね」なんとかごまかしたつもりだったが女はかすかに笑った、やれやれこれで恥をかかずに済んだか、そう思うとどっと疲れが出てきた、なんとか仕事を終わらせて帰りたいものだと思った。 彼は有馬温泉に1週間滞在した、仕事はうまくいった、ところが思いがけないハプニングに遭遇した。それはハプイニングとしか言いようがないもので彼の運命まで変えてしまうことになる、藤岡は彼と懇意になり色々話してくれた、彼に下心があったわけではない、でも運命のいたづらか二人は急速に接近していた、お互いに秘める思いがあった訳ではない、それは「空気の流れ」としか説明できないものである日彼は突然ガバッと藤岡に接吻してしまった。 びっくりした藤岡は彼をじっと凝視した、大きく眼を開いて何が起こったのか説明を求めていた、次の瞬間彼はいきなり藤岡の着物を脱がし始めた、帯を解き下着に手をかけた、下着は着物用の薄いショーツでブラはなかった、両足を押し広げて強引に割り込み恥部に手をかけた、それは男そのままの振る舞いで女に嫌とは言わせない強引そのものの行為だった。「ア、アア、」藤岡は声を出した、彼はそれ行けそけみたいに押しまくった、藤岡は目を大きく見開いて声を出していた、このとんでもない朕入者に拒否する力を失っていた、私の大事な「操」を奪う憎い奴、殺してやる。
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エッセイ
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