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[06.07.30]
本当に大丈夫?10年W杯は南アフリカ開催が決まっているが、交通機関の不備や世界有数の犯罪発生率で開催が危ぶまれている。国際サッカー連盟(FIFA)は噂されるオーストラリアでの代替開催を否定するが、地元でも不安の声が高まっている。ブラジル開催が有力な14年W杯も含め、各大陸持ち回りの開催方式が問われている。
◇豪州、米国で「代替開催」浮上
南アフリカとブラジルが悪評を集める一方で開催が危うくなった場合の代替候補国が注目を集めている。米ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙はドイツ大会期間中「10年か14年大会が米国で開催されるかもしれない」と伝えた。いずれかの大会で開催国が権利を返上した場合、緊急避難先としてFIFAから指名される可能性があると報道。「FIFAもわれわれが開催したがっていることは知っている。希望を持とう」との米国協会関係者の談話を掲載した。
かつて「サッカー不毛の地」とされた米国も94年大会は競技場の大きさを生かしてW杯史上最多の358万人を動員。競技人口は今や野球を上回り、ニーズはある。さらに同紙は米国の競合相手として18年大会招致の方針を表明しているオーストラリア、大会を終えたばかりで設備がそろうドイツなどを挙げている。
またFIFAのブラッター会長は大陸巡回制度に関し「決まっているのは14年の南米まで」としており、18年以降の順番は不透明。UEFA(欧州サッカー連盟)のヨハンソン会長は「3大会に1度は欧州で開催すべき」と主張しており、ドイツ大会から3大会目となる18年大会はイングランドが意欲を示している。
◇有数犯罪大国
南アフリカのジョーダーン大会組織委員長は25日、議会で開催国としての自信を強調した。既にFIFAから代表強化などの準備金として2000万ドル(約23億円)を受け取っていることを明かし「不必要に騒ぎ立てるべきではない」と力説。40億ドル(約4700億円)とも言われる経済効果を引き合いに「計り知れない恩恵がある」と不安打ち消しに力を込めた。
地元紙ラポールがオーストラリアによる代替開催案を報じたのはドイツ大会も終盤を迎えた2日だった。南アフリカ大会準備室のパーマー室長はすぐに「100%事実ではない」と否定。7日にベルリンで行われたイベントで南アフリカのムベキ大統領は「開催できるか疑念がある人はいるだろうが、成功を約束する」と強調した。しかし、W杯の実現性に関する根拠は足元で揺らいでいる。
04年4月から1年間の殺人事件発生率は10万人あたり約40件で日本の約37倍。レイプや強盗など凶悪犯罪も日常的で、治安の悪い場所では赤信号で車を止めることがためらわれるほどだという。ケープタウン在住のニール・ワトソンさんは「治安の悪さが続けばW杯で観光客が被害に遭う」と個人サイトを開設。犯罪被害者の写真や手紙を掲載
「世界の殺人首都に来る前に(来るかどうか)考えて」と警戒を訴えている。
◇地元でも訴え
また、鉄道は路線が少なく運行が不安定な上に駅や車内で犯罪が多発。地元の経済学者が「ドイツでは会場から会場への移動が電車で2時間だったらしいが、南アフリカなら2日で行ければ幸運だよ」と苦笑する。移動の手段は道路網が整備された車が中心だが、市民が利用する乗り合いのワンボックスカーは違法運転が当たり前で事故が絶えない。エイズ感染者は人口の12%にあたる535万人。95年にラグビーW杯を開催した実績はあるものの、注目度や規模ではるかに上回るW杯開催能力には疑問符がつく。
◇14年有力ブラジルも…大陸巡回開催、早くも機能不全
「6大会に1度」欧州勢不満
それでも南アフリカが選ばれたのは各大陸持ち回りで開催国を決める巡回制度のおかげだが、制度そのものが既に機能不全の兆しを見せている。
初代対象国となった南アフリカに続き、南米開催が決まっている14年大会の選考で勝利が確実視されるブラジルに不安が続出。制度の採用を決めたブラッター会長でさえ「今のところブラジルにW杯開催に適した競技場があるとは思えない」と漏らすほどだ。経済状況は上向きにあるが、それが競技場の施設充実には必ずしもつながっていない。さらに開催地決定で協力を取りつけていたはずのコロンビアが最近になって大会招致に乗り出すなど逆風も吹き始めた。
サッカーの普及と機会均等のため導入された巡回制度だが、ブラッター会長が支持基盤固めに利用したとも言われ、欧州では評判が悪い。これまでは2大会に1度は欧州開催だったが、制度が維持されれば今後は6大会に1度が原則。開催能力が低いオセアニア連盟加盟国を省いても、欧州にとってW杯が縁遠くなるのは間違いない。ドイツでは史上2位の334万人を動員して大成功を収めたが、本場欧州を離れる今後は試練の大会が続くことになりそうだ。
http://www.sponichi.co.jp/wsplus/column_w/09407.html
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