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(2007年2月20日掲載)
京都の市民団体が国際協力機構(JICA)の資金支援を受け、フィリピン・サマール島のスラム地域に建設したバイオガス利用施設が順調に稼働を始めている。管理、運営は住民組織に移行。環境や衛生に関する意識向上にも積極的に取り組んでいる。JICAも「途上国の暮らしに密着した小規模援助の成功例」と評価している。(社会報道部 日比野敏陽)
京のNPOが比に建設
環境、衛生意識も向上
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バイオガスを利用できる共同調理場。マングローブの不法伐採も減少しつつある
マニラから古いYS11機で1時間半かけ、サマール島カルバヨグ市の空港に到着する。市内のカライマン地区を訪ねると、若い母親がガスこんろでお湯を沸かしていた。ガスは地下のタンクで発生させたメタンだ。利用者が増えているため、当初はひとつだったこんろの口を増やしたという。
この地域の施設は2006年2月に完成。個室3室のあるトイレとガスこんろを備えた共同調理場、養豚場がある。生まれたばかりの子豚が元気な泣き声で走り回っていた。
海岸近くの低湿地帯にある地区は62世帯。トイレがあるのは4世帯だけで、人々が木陰などで用を足すため、特に雨期は衛生状態が悪化し感染症が発生することも多かった。またマングローブを伐採して燃料にするため、環境の劣化も深刻になっていた。
施設の運営は住民組織が担当する。習慣のなかった手洗いの大切さを母親たちが伝え合い、施設の管理も女性が当番で取り組む。豚の世話は地元の青年が担当している。
養豚事業の収益から施設管理に週700円、豚の世話に月4000円程度が支払われているという。「定職を持つ男は少なく、たまの山仕事も給料は安い。バイオガス施設の給料はありがたい」と地元の男性は話す。
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養豚場。子豚の売却益で施設を運営する
施設を建設したのはNPO法人の京都サマール友好協会(京都市)。サマール島には第2次大戦中、京都の第16師団が駐屯したことなどから市民交流を続けてきた。
代表の元京都市職員北上田毅さん(61)=西京区=が退職を機にサマール島に長期滞在。建設局と環境局で勤務した経験を生かしてバイオガス施設を設計し、カライマン地区とサンタマルガリータ町ソルソゴン地区(05年6月完成)の2カ所で建設にこぎつけた。
北上田さんは「予想以上に住民の理解や協力が得られ、施設が地域に定着している。維持管理の費用は養豚事業でまかなわれている。修繕費用の積み立てなどが今後の課題になるだろう」と話す。
施設図
JICAマニラ事務所は「施設建設だけでなく、住民に引き渡して順調に運営されている。現地の住民ニーズを的確にとらえた草の根ODA(政府開発援助)の好例になる」と評価している。
【バイオガス】 ふん尿などの有機廃棄物を微生物で分解し、メタンなどを利用する。ネパールやベトナムの農村でも普及。サマール島の施設はトイレと豚の飼育小屋を併設し、地下のタンクでふん尿を発酵させ、ガスを地域の人が毎日の調理に利用。肥育した豚を売却して施設の運営費をまかなう仕組み。発酵したふん尿は液肥になり、農業に活用する。
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/ecology/eco/eco90.html
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