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2005年3月22日掲載
フィリピンのスラムに公衆トイレと養豚施設を建設し、集めた大小便から発生するメタンガスを燃料として利用する現場をこのほど訪ねた。大小便の「垂れ流し」を改善しながら燃料を作るとともに、養豚で地域の現金収入も確保しようという、京都市のNPO(民間非営利団体)が計画したユニークな事業で、住民の関心も高まっていた。(社会報道部 日比野敏陽)
衛生環境の改善
貧困脱出に期待
マニラからプロペラ機で南東へ1時間。ココヤシのプランテーションの広がるサマール島が見えて来る。空港がある島の中心地カルバヨグ市は人口約10万人。海岸沿いに、主にヤシの葉で作られた家々がひしめき、スラムを形成している。
子どもが走りまわり、にぎやかな声が響く。住民は「スクオッター」(不法占拠者の意味)と呼ばれる最貧困層だ。サマール島は島しょ国フィリピンで3番目の広さを誇るが、経済的には最貧地域のひとつ。大人の多くがマニラに出稼ぎに行き、残る人もプランテーションや漁業労働者として働く。
写真
建設が進むバイオガスプロジェクトの施設。奥は養豚施設。メタンガスを発生させるタンク(手前)は地中に埋められる(フィリピン・サマール島)
京のNPO奮闘
京都市のNPO「京都サマール友好協会(KSFA)」が進めているバイオガスプロジェクトのプラント建設現場はこのカルバヨグ市郊外、ソルソゴン地区のスラムにあった。
一帯は海が近い低湿地だ。住民は茂みや海岸で用を足す。満潮時には大小便やごみの混じった水が床下まで押し寄せる。KSFA代表で元京都市職員の北上田毅さん(59)は「飲料水などの汚染で、寄生虫が原因の風土病や感染症が多い。乳幼児死亡率も高い」と話す。
バイオガスのプラントは養豚施設(40平方メートル)や大小便をためる地中タンク(直径4メートル)、トイレなどからなる。京都市環境局の技術者だった北上田さんが設計した。建設資金は日本で集めた寄付金のほか、国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業の予算があてられた。
養豚も近く始める予定で、順調にいけば、5月にもメタンガスの発生が始まる。北上田さんは「建設は第一歩にすぎない。重要なのはトイレや養豚施設が完成した後、住民が自主的に管理、運営していく仕組みをいかに定着させるかだ」と強調する。
このため北上田さんらは地元の住民グループと協力。地域の母親グループを集めてプラントの管理、運営を担当する新たな組織を立ち上げた。住民グループ代表のベイビー・パノイさんは「素晴らしい設備ができた。今後はトイレを利用する習慣や手洗いの大切さを母親たちに知らせ、衛生や環境の知識を広めてもらう。そうすれば、各家庭や地域全体の衛生意識が向上するはずだ」と話す。
2ヵ所目も着手
そうしたなか、北上田さんらはカルバヨグ市で2カ所目のプロジェクトにも着手した。計画地には約60戸350人が暮らすが、トイレがある家は3戸だけという状況だ。2月初めに開いた説明会には100人近くが参加した。カルバヨグ市や提携する住民グループと事業開始に向け、正式調印を済ませた。
2003年3月に京都市で開かれた「世界水フォーラム」は水・衛生環境と貧困問題が密接に結びついていることを確認した。北上田さんは「バイオガスプロジェクトが貧困と劣悪な衛生環境の悪循環を断ち切るきっかけになればうれしい」と意気込んでいる。
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/ecology/eco/eco67.html
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