something cool

「モノ」から「コト」へ



こめかみに銃口を
さよならにさよならを
心臓に腐った水を



こめかみに銃口を
愛に実感を
ぼくにリアリティーを



こめかみに銃口を
少女に鞄を
くるぶしに30°60°90°の三角定規を



都市ビルの合間を吹き抜く
風は血の匂いがした
ガムを噛んでいるぼくは
歯が欠けるのを感じた
欠けるのを感じた!



奇跡の中で立ち小便
右から左から
それぞれ希望と絶望がやって来て
どちらも嘘ばっかり言うので
ぼくは百歳まで生きてやろうと決意した



火曜日がなくなってしまった
その日の夜
ぼくたちは飲み明かすこともできず
薄紅の家を目指して線路沿いに歩いた
ひょっとしたら火曜日が
戻ってくるんじゃないかと思って



本当は暗闇は紺だと信じていたら真っ黒だった 悔しい



火曜日は少女
日曜はつまらない
秋は少女
夏はつまらない
水瓶座は少女
天秤座はつまらない
巳年は少女
寅年はつまらない
平成は少女
大正はつまらない
日常は少女
妄想はつまらない
透明に少女
半透明に少女
濁り切ってつまらない
君は君の美しさを理解できない
君は君の美しさを知らない
君は君の美しさを軽蔑する
君は君の美しさをぼくに見せてくれない
君は君の美しさをどっかに置き忘れてくる
君は君の美しさをそっと失う
ぼくは君の美しさをそれでも知っている



「砂漠の果てまで連れてって」
ヒッチハイク少女のリュックサックは可愛い
ヒッチハイク少女の爪は真っ赤



見渡せばここ砂漠
ここから始まる と呟くと
ここで終わり と風の声
月も太陽も砂まみれ
ここで終わり と風の声



電車に乗って
見知らぬここへ
ここも砂漠
一面の灼熱



33階からの眺めは
18階建てのビルの屋上
飛び移れそうな気がする
下降と上昇
真昼の少女は暴力的に
笑ったりする



テレビで見たことある風景
フラフープ持った少女が横切って
気づいたら満月だった
(鳥が飛んでいた)



雀卓の横でぼくたちは
マネキンと戯れ
少女たちは退屈そうにコーラを飲む
少女たちは退屈そうに笑ったりする
海のきらめきと風の血の匂い



飛んだり跳ねたり
春騒ぎ
少女の右手に蛍光ペン
砂漠がきらきら彩られ
飛んだり跳ねたり
春騒ぎ
いつのまにやら眠ってた



日本酒片手にダンスをしても
酔ってるだけの千鳥ステップ
「少女一」を抱きしめたいのに
「少女二」を口説くのはなぜ!?
都市の片隅
土曜の夜の
いつもの眺め



電話から
少女の声が
きこえてこない
ぼくはぼくに言える唯一のことを言いたくないがために
腐った水を心臓にそそぎこむ



砂漠と都市の真ん中で
右往左往のバカ騒ぎ
右も左もほとんど同じ
今朝も早くに迎え酒



不眠明けの朝五時半
始発電車の中から見える
いつもの都市はいつもと違う
いつもの都市はいつもの姿で
ほんの少しだけ容子を変えて
ぼくらを惑わす
不眠明けの朝5時半
始発電車の中から見える
いつもの都市がいつもと違って
変わらずぼくらを惑わせる
不眠明けの朝五時半
いつもの都市が透き通って
見える
見える
見える



日めくりカレンダーをめくって
少女の一日の始まり



雑誌読む少女パスタを食べる
目薬差す少女道路の右側を歩く
大きな黒縁めがね少女恥ずかしそうにステップ踏む
朝食作る少女昼間は友だちに恋愛相談する
ロウソクの光に少女伸びやかに歌う
白黒少女カメラ片手に空き缶蹴飛ばす
汗かいて少女笑ったりする



帽子を買った
雑誌を買った
テレビを見た
電池を入れた
トマトを食べた
キャベツを刻んだ
傘を差した
小走りで駆けた
君達と喋った
二三コ嘘吐いた
酒を飲んだ
明日つらくなるだろう



緑色の少女
優しい戸惑い
白い海に飛び込み
風の血の匂い



すだれ下ろして忘れて寝れば
夜のすきまに竹が鳴る
ちょっとやそっとじゃ起きられないから
夜通し竹が鳴り響く



あの娘が空を指差して
「緑色だ!」と言ったから
緑色の空だった
白く染まった海に
空色の水着のあの娘は飛びこむ



どうしてこうなっちゃうんだろうね
って顔見合わせて笑う

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25時のTVショー

最寄り駅がとても汚い25時の呻き声オレは唐突に焦りを覚えるではまた来週
前方に行けばそれだけ汚れが増える辛辣な意見を取り入れられん時計のない教室いつになれば授業は終わる?
マンガなんかで読んだことのある風景世界の終わりと名づけられた風景あなたとわたしとで生き延びねばならん風景にとってもそっくり
走って電車飛び乗って気分悪なって吐き気催して尼崎の駅で八分停車して姿勢正して吐き気やり過ごして更けゆく夜にまつわる憎悪憎悪憎悪
何だか昼よりも暖かい気がするけど愛がないと感じるとてもここにはずっとはいられんだろう気持ちになるそっとその場を離れたいような感じがする
電子辞書の使い過ぎで眼が悪くなる文字サイズを最大にしても翳んでしか見えない翳りゆく部屋にいる様々な人の声が聞こえる
聖書の字もとても小さいので眼の悪化に一役買っているかもしれぬ愛し合いなさいと頁をめくるごとに言われるのでオナニーをする
下を見て満足するのは悪趣味だといわれても下を見てしまう、と同時に下に落ちたくなる
世界と己が融け合っているこの感じ世界と己が融け合っているこの感じ世界と己が融け合っているこの感じまだまだ足りてないよ足りてない
叫び声25時のプラットホームで泣き声25時の欄干で喋り声25時の西側で喚き声25時の牛丼屋で怒鳴り声25時のTVショーで
頁をめくれどめくれど彼は愛しなさい 愛し合いなさいとしか言わないわたしとあなたとで生き延びねばならん愛アイI相あい! ラブラブラブユーユーユー!
いつになればなればこそしかしまだ25時の授業は終わらん? そんなことはあらん早う終われ、授業料はオレでなく親が出しとる俺は唐突に焦りを覚えるではまた来週
眼が悪くなるようなオナニーするような翳りゆくような下に落ちていくような252525時のような百の頭と二百の目のような汚いようなTVショーTVショー
右腕を忘れてしまっても残るものがある呻き声の響くプラットホームで散歩八分停車の時をやり過ごすオレは焦りを覚える
辛辣な意見を取り入れられん崩壊、世界の終わりの風景だが世界と己が融け合っているこの感じこの感じがまだ足りん壊れようにも壊れられんこの感じ受け入れられん?
呻き声は地上を覆わない また来週お会いしましょうTVショーにてまた来週

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大破せよ車

 大破せよ車

 涙を君がこぼした 白い骨はついさっきまで生きていた君の夫 今は大破した車の窓ガラスをぶちやぶって血みどろ 白い骨は血みどろの皮膚を破って見えている

 大破せよ車

 冬の海のもくずとなった君の弟とそのお仲間はついぞ見つからず君は海に弟の宝物だったギターを投げ捨てて不法投棄の罪に問われている 拘置所もまた寒いか?

 大破せよ車

 スピード違反はなくなった 飲酒運転もなくなった 駐車違反もなくなった 自転車二人乗りだけがなくならない 罰金五十万円などないもののように制服姿の男と女は二人乗りをする 輝く青春は未来を廃れさせよ

 大破せよ車

 すべて車のせいだ ぼくの不幸も 母の死も父の苦労も 兄弟姉妹たちの幸せで平穏な生活も すべて車のせいだ 我が家の運命を暴け

 大破せよ車

 四つのできごとよ
 大破せよ車
 四つの言葉よ
 大破せよ


「現代詩手帖」2008年5月号新人作品・選外佳作(選・藤井貞和)

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十五行目

 この十五行目が重要なんだ
 おれは郵便ポストをひっくり返して君の手紙を探すだろう
 でも明日の朝までにはトーストもハムエッグも焼け終わる
 みじめな一日よりもみじめな休日を
 楽しかった休日よりも毎日休日を
 飛び込んだ? いいえその目論見とともに飛び込みましょう
 飛び込んだ? いいえその算数は四年生にも簡単です
 この十五行目が重要なんだ

 こめかみに 銃口を つきつけたなら引き鉄を引く
 こめかみに 銃口を つきつけたなら引き鉄を引く

 鏡に映っていたのは自由に飛べる緑色の女でした
 おれは彼女にほれていました 心底心底ほれていました
 賭けもしました 七百円の。それがおれの全財産だったから
 飛びました? いいえその期待とともに負けたのだろうね

 こめかみに 銃口を つきつけたなら引き鉄を

 私は二十六行目です その十五行目が重要なんだ
 ある絵描きはその美しき風景画でもって知られていたが死後前衛芸術の運動家たちに祭り上げられた 遺作「穴」 彼の特徴でもある風車のある田舎の風景画の真ん中に筆でつきつけられた黒い丸。それだ題名のごとくまるで穴 しかしその絵自体に風景画、田舎の純朴さは失われておらずむしろいきいきしている そして彼はその作品以外にはそのようなことを一切しないでいた 遺作「穴」 おれは彼のマニアで長年見続けてきたがまったく純朴そのもの、黒い丸、穴はこれといって意味を持たないでいる そこを前衛芸術の輩に利用されいまや謎の絵描きなどと言われてしまっているがいいや、まったくそんなことはない とおれは言いたい
 この度、彼の「穴」の製作過程の収められたフィルムが発見された おれは狂喜した そのようなものがいままでなぜ埋もれていたのか そもそも真偽さえも危うい フィルムがまわりはじめる。
 彼が美しき風景画(穴の描かれる前の『穴』だ)を見ている そして こちらに顔を向ける こちらがわに話しかける。
―この作品はね、いまから完成するんだ
―まだ完成じゃないのかい? ぼくにはもうできあがったようにしか見えないよ
 晩年、彼が懇意にしていた写真家の声と思われる、と大学教授が説明した

―いままでのぼくなら完成だった けどね。
 彼は画面外に、そしてバケツ、中には穴の成分、墨汁か。筆を持ち、バケツにつける とても用心深く 左利きの彼は右手に反故紙を持って垂れる墨を受け止めさせている そのかたちで絵の中央へ
―いいかい?
 彼が言う
―これで「完成」だ。
 穴ができあがった。おれの知っている「穴」が。

 こめかみに 銃口を つきつけたなら引き鉄を
 引く「穴」があく これで「完成」だ「穴」の完成だ

 飛びました? いいえ落ちました

 あ 十五行目が重要なんだ
 こめかみに            引く


「現代詩手帖」2008年5月号新人作品・選外佳作(選・蜂飼耳)

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