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『かなりネタバレ的な感想』(失礼、そうしないと感じたままを伝えられないから・・・)となります。
いつものことながら、宮部さんの本には騙される。
この小説、上巻を読み終わった時点では、
「なんだよ、ミヤベミユキも『お気楽RPG小説』書くのかよ」
「まぁ、書き方丁寧だし、とりあえず中巻いくべぇか」
と、半分落胆しながら読み進めたのであるが、ところがギッチョン、そんなヤワな作品ではない。
こちらとしては、読者にそう思わせること自体が一つのトリックじゃないか?と勘繰る訳である。
ひどい(いや、すんごい)作家である。。。
宮部作品は、読後の爽快感がたまらない作品が多いが、これは、そんな中でもピカイチだろう。
自分の部屋のベッドの下で泣いていた少年が、
自分の身に降りかかった不幸な運命を変えたいと、
それだけを願って幻界(ヴィジョン)に旅立った少年が、
変えるべきは『降りかかった不幸な運命』ではなく、
「正」の心も「負」の心も、全て等しく自分自身の心と認識し、
全て受け止め、全て受け入れ、生きていける『勇気』であることに気付く。
こー来たかぁ!!って感じ。
なぜ、自分の運命を変えることを願わず、幻界を救うことを願ったのか、
なぜ幻界を救うことが、自分を救うことになるのか、
ミステリーの解決編を読むように、最後の1ピースまでがジグゾーパズルに収まったように、
予定調和の『あるべき姿』に最後に気付かされた、というか、騙されてたことに気付かされた。。。
それと、
一度目に読んだときは、うるうるしながらも、なぜ主人公が小学校5年生なんだろう?と疑問に思った。
読み返して、ようやく判った。
ある程度大人に近い知識は持っていながらも、大人になる直前のピュアな魂でなければ、
この結論にたどり着けなかったのだと。。。
ここでもまた、ようやくトリックに気が付いた気分である。
宮部作品には爽快感を感じる作品が多いが、その理由の1つには『救い』があるのだと思う。
ワタルよりも遥かに成績も優秀で、大人びた『美鶴』。
最後の最後に己のエゴによって肥大した憎しみに敗れ去るが、
その美鶴も、死の直前には全ての過ちを悔いる素直さ。
(彼は、光となって彼を迎えに来た妹とともに天上に昇っていく)
また、女神によって『ハルネラ』の半身(ヒト柱)に選ばれたロンメル隊長の、
「カッツが生まれ変わり、次の生を生きる幻界を、私は見守ることになるわけだ。悪くない。ますます悪くない」
と言い切れる潔さ。
いずれも、大人だからこそできること。
宮部作品は、『美しい』。。。
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