裁判とジャズと映画の日々

革命前夜を知らない者は、その耽美を知らない…

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 東京都写真美術館で北井一夫写真展『いつか見た風景』Somehow Familiar Placesが開催されている。なんと、と言うか…初めての個展。
 
 北井一夫と言えばつげ義春との仕事が印象深い。
 現在私が所有している物としては、『つげ義春流れ雲旅』(朝日ソノラマ)、『アサヒグラフ116(昭和45116日発行)
 
 また、私がよく旅をした時期とも重なっている。というより、つげの作品に刺激されて旅に出たのだからあたりまえか…
 
 ポスターにもなっていて、カタログの写真にもなっている写真「五能線」は1972年の作品である。私が五能線に乗ったのは19813月初めである。その時の旅は五能線に乗ることだけが目的で、その路線で読めない地名「艫作(へなし)」に興味を持ちそこへ寄り、黄金崎不老不死温泉へ行ったのだ。
 不老不死温泉と言っても地元の人たちが利用する銭湯で、その二階に宿泊させてもらった。夜になると雪交じりの雨になり、窓を開けると完全な暗闇で、波の音だけが聴こえたことが大変印象深かった。
 
 旅日記には以下の記述がある。
「その店を出る頃には湿った雪も止んでいて、列車に乗る頃には日が差しはじめていた。五能線は地元の生活路線で、駅々での乗降客が結構多く、五所川原の病院へ行くという10歳位の男の子と母親と知り合った。母親は私を警戒してかあまり口を開かなかったが、子供は人なつこくクイズをして遊んだ。彼の最初の問題が「ボクの名前はなんてんだ」というもので、思わず吹き出したのだがおかげで彼のムラカミマサユキという名前は憶えてしまった。確かつげも「オンドル小屋」の舞台となった八幡平の温泉場にいった時に病気療養している子供とその母親と口を交わしていたな、などど思っていた。」
 
 その後4,5年経って再訪した時に、観光地化されているので驚いたのだ。
 日本における(行政用語としての)「地方」は、限界集落と観光地しか残らないという印象はその時に感じた。
 
 また、「ベースボール」(1980)は大阪新世界の道路で野球をやっている作品だが、私も下北半島の材木で子どもたちが道路で野球をやっている写真を撮っている。実に懐かしさを感じた。
 これはかつてあたりまえにあった風景だが、現在ではほとんど見られない風景になってしまった。今見られるのはユニフォームを着た少年野球チームの子どもたちである。
 
 私は時代の経過や、社会構造の変化で「昔はよかった」とセンチメンタリズムに浸る者ではない。しかし心理的な変化については無惨なものを感じる。懐かしさではなく、失ったことの原因を知りたいと思うのだ。
 
 作品は、他に学生運動、労働者、三里塚、船橋、90年代の北京…等々。もっとも大きなテーマは、英語タイトルにあるように「家族」である。
 
 2013127日まで

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