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「杉本博司 歴史の歴史」展 金沢21世紀美術館 3月22日まで開催 わたしが写真という装置を使って示そうとしてきたものは、人間の記憶の古層である 杉本博司の著書「苔のむすまで」(新潮社)の一文である。 どうやら、写真家杉本博司は科学者であり、詩人でもあるようだ。 彼の言葉は正直でウイットに富んでいて、飾らなくて分かりやすい。 客観的に自分を見据える眼と、その自分が深く感情移入する事柄に、自分を無防備にさらけ出す。 このバランスが絶妙であるが故に、この本はわたしにとって、精神安定剤のようなものだ。 例えば章始めのQ&Aにはこんな記述がある。 蝋人形を撮った一連の写真について Q;写真は真実を写すといいますが? A;写真が嘘をつかないというのは嘘なのです。 「Sea of Buddha」 (BURUTUSより抜粋) わたしは、一昨年、京都蓮華王院三十三間堂、千一体の千手観音像と二十八部衆を見たとき、途方もない数で迫ってくる仏像たちにいずれは自分も同化し、時間が途絶えた闇の底に沈んでいくのだろうと思った。 その後、画集でこの写真を知った。 そして、わたしが三十三間堂で得た感覚が、この作品の中にも存在していることに気付いた。 だから、わたしの「杉本熱」は日毎に高まっていった。 今回、初めて展覧会に行くことができて、ホントに幸せなひとときだった。 しかも、古都金沢で。 歴史の歴史 杉本博司は1948年生まれで、大学卒業後単身渡米。世界を放浪しながら、NYに落ち着き、そこでスタジオを構えた。 写真で有名になる前は、古美術商で生計をたてていたと上記の本に書いてあった。 展覧会には、化石や古代の石器、隕石、琥珀とか、仏像、仏具や能面、など彼のコレクションも並んでいた。これらが、半端じゃなくすごいものばかりだった。 タイトルの歴史に沿って、生命の誕生から死まで、生物の進化による自然の変化、人類の歴史、人類の解剖学的形態から、精神が生み出す宗教や芸術、など、それらは複雑に絡み合いながら、未来へと向かっていった。 ポストカードより 左;石炭紀の化石(3億5500万年〜2億9000年前)ウミユリなど。 中央;デボン紀(4億1000万年〜3億5500万年前)ジオラマを撮影 右;放電場 真鍮版に放電したものを撮影(この部屋には雷神さまが見守っていた。) 「レンブラント天使来迎図」 レンブラント・ファン・レイン「羊飼いの告知」1634年 図録によると、このエッチングは、17世紀初頭、日本で漉かれて、長崎の出島から輸出された和紙に印刷されたものであったという。 杉本は、この絵を初めて見たとき、光臨する天使が、阿弥陀如来とうり二つの構図だと思ったらしい。 373年を経て、異国の天使を乗せて里帰りしたこの作品を、掛け軸として表装し、写真に撮ったものがこれである。 これを見たくて金沢に来たわたしは、この天使図の牧歌的な明るさに気持ちが軽くなった。 何も難しいことはなかった。天使は掛け軸の中で自然な姿で収まっていた。 他にも1926年〜1959年の「TIME」表紙や、宇宙食、マルセル・デュシャンの「大ガラス」など、杉本博司の感性に触れたものは、非常に幅が広い。 金沢21世紀美術館は、平屋の円柱の建物で、室内は回廊式になっている。 SANNAの設計は、透明なガラスの壁と植物が特徴だが、期待したとおりの開放感あふれる癒しの空間が演出されていた。 たまには遠出をして、こうして精神世界に遊んでみるのもなかなか良い経験だと思った。
自分もウミユリと同じく、歴史の無限の層に埋もれる生であると感じた。 ウミユリがとても愛しく思えた展覧会だった。 |
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杉本さんは作品の対象になる世界が幅広くて私にはまだどう評価したらいいのか・・・世界で評価されたら素直にそれを受け入れる日本の美術界ですが。
私はまだ迷っています(笑)
2009/2/28(土) 午後 3:06
「悠々美術館」です。
なるほど、雪の金沢を訪れた理由が分かりました。
三十三間堂の写真、幽玄ですね。
惹きつけられます。
よいものを見せていただきました。
2009/2/28(土) 午後 7:36 [ manabugaku1479 ]
☆ひろさま
こんばんは〜♪巡礼の旅にようこそ〜〜(*^_^*)
写真って良く分からないんですけど、彼の作品はわたしにはすんなり入ってくるんです。
そうですね〜〜、なんていうのかな。記憶の古層が錘じゃなくて、それらが持つ様々な感情などを包み込んでくれたのが、杉本の写真であり、著書だったわけです。
読書は、2ヶ月で10冊ぐらいです。わたしにとってはすごく多いですよ(笑)
三十三間堂のこれは、本物より荘厳に見えますよね。実物みたいですよ〜〜!大阪の展覧会には出るのかな。
ウミユリにポチありがとう。とっても癒されました〜〜(^_-)-☆
2009/2/28(土) 午後 9:41
☆CAVEさま
こんばんは〜♪
早速のコメントありがとうございます(*^_^*)
彼は世界で認められているのですか?わたしはまだ、そういうバックグランドまでは知らないものですから。でも、今回展示された宗教シリーズとコレクションは、記憶の媒体としての写真を超えたとわたしは思ってますが、いかがでしょう?
4月14日から6月7日まで、大阪の国際美術館で展覧会があります。多分、わたしはそれも行くと思います(^^♪
2009/2/28(土) 午後 9:43
☆悠々美術館さま
こんばんは〜♪
今回の展覧会は、ほんとうに見る価値がありました。
悠々美術館さまにそのように感じて頂いてとてもうれしいです。
でも〜、残念だったのは、雪の金沢ではなかったのです(*_*;
雪なんかどこにもなくて、かえって暑いくらいでした。
お食事もおいしかったので、次回は冬の温泉旅行を計画しています。
いつもコメントありがとうございます(^_-)-☆
2009/2/28(土) 午後 9:45
les-fleurs様、こんばんは。(*^_^*)<m(__)m>
「See of buddha」・・夕日が沈む直前の太陽光線が海の波に
キラキラと輝く様子と遥か水平線に本当によく似ていますね。
このお写真を拝見して私もモネの「印象日の出」や多くの夕陽の海や水辺を想像に駆り立てるスピリチュアルのようなものも感じられます。人は亡くなると海の彼方のニライカナイに行くと行った沖縄の伝説も思い出されます。もしかしたら、波のキラキラは一体一体の仏像なのかもしれません。373年ぶりの里帰り、やっと故郷に帰って
天使の翼を休めることができて微笑んでるかのようです。(*^_^*)
生命・・いつ・どのようにして生まれたのでしょう?
放電場が生命の最初の最初なのですね。神秘的ですね。
でも、宇宙や生命を作られた神様はいったい何の目的でお作りになられたのでしょう?
杉本博司さんはもしかして、化石や様々なジャンルから神様のことばを紐ときたかったのかもしれないとさえ思えてきました。
いい展覧会に入って来られましたですね。ポチ☆!(*^_^*)
(*^_^*)<m(__)m>
2009/2/28(土) 午後 10:08 [ 優しいよっちゃん ]
☆よっちゃんさま
こんばんは〜♪
よっちゃんさまのビジュアルな表現が素晴らしくて、杉本氏にも教えてあげたいくらいです(*^_^*)
スピリチャアルなもの、そう、そうなんです〜〜!わたしはその言葉がなかなか使えなくて(泣)。感謝します〜〜!
レンブラントの版画の里帰りも何かのお導きなのでしょう。
杉本氏は自然、生と死をテーマにしておりますが、その世界は冷たいマグマのようです。決して大爆発はしません。
しかし、淡々と進む時間の流れにしっかりと記憶の層を積む事に努めています。素晴らしいアーティストだと思いました。
今回たくさんの化石が出品されていました。みんなニライカナイのようなところで楽しくしているのかもしれませんね。
ポチもいただき、ほんとうにありがとうございます(^_-)-☆
2009/3/1(日) 午前 0:23
大阪でもあるみたいですね、私も観にいくつもりです。とりあえずオリジナルプリントを堪能するつもりです。
椿画廊の澁澤展も記事にしてください、楽しみにしております。
2009/3/1(日) 午前 3:53
私も千手観音像を見たことがありますが、この写真は白黒で美しいですね。モノクロの美しさを再確認しました。
レンブラントのエッチングは何点も画集で見ているのですがこの作品は、はじめてで、手が込んでいて素晴らしいですね。
この作品は掛け軸になっているのですね。
レンブラントと掛け軸はどうですか?
2009/3/1(日) 午後 2:53
☆CAVEさま
こんばんは〜♪大阪は大判写真が多数出るそうですね。
わたしもなんとか時間をやりくりして大阪行きますよ〜〜(*^^)v
澁澤展、今からわくわくしてます!ハイ、報告しますね(^_-)-☆
再度のご訪問&コメントありがとうございますm(__)m
2009/3/2(月) 午前 0:02
☆haruさま
こんばんは〜♪
そうなんです。このレンブラントは非常に緻密で綺麗です。
掛け軸になっていますが、なんの違和感もありません。
他にも中世の宗教画が同じように掛け軸になっていましたが、やはり絵の完成度からレンブラントが最高でした。
杉本氏のモノクロはとても幻想的で、静謐で、水墨画のようにも見えます。とても満足のいく展覧会でした。
いつもコメントありがとうございます(^_-)-☆
2009/3/2(月) 午前 0:10
金沢まで行かれたかいがありましたね。私も知らない方で勉強になります。三十三間堂、不思議な美です。反対側に立派な建物の博物館があります。
骨董品のコレクション、レンブラントが気になります。ポチ☆
2009/3/2(月) 午後 10:06
☆hitomiさま
こんばんは〜♪
ハイ、金沢とんぼ返りでしたけど、行って良かったです。
展覧会に出ていたコレクションは、彼個人のものだというのが驚きでした。だって、これらだけで展覧会が開けますもの。
掛け軸のレンブラント、すごい発想ですよね。まっ、それを所持していること自体一般人の想像を超えてます(笑)
京都国立博物館ですか。この前行った時はリニューアル中でした〜!
いつもおやさしいコメントをありがとうございます(^_-)-☆
2009/3/2(月) 午後 10:19
こんばんは♪
遠征おつかれさまでした。金沢、楽しまれたようですね。
同じものを観た人の、とらえ方の違いが楽しめるのはブログのいいところですね。
私も、杉本の理知的でありながらのびやかな感性に惹かれて、「現の像」も買ってしまいました。
「373年を経て、異国の天使を乗せて里帰りした」ってくだり、
偶然の重なりの中に歴史のつらなりを見出す、その感覚がとても好きです。
ウミユリの写真のコーナー、それこそ海の底にいるような静謐な雰囲気がありましたね。
私が行った日は雪が降っていて、その印象もあるのかもしれませんが。
大阪での展示レポートも楽しみにしています!
2009/3/3(火) 午後 9:53
☆やまねこ軒さま
こんばんは〜♪わたしもブログで色んな方の個性を楽しませてもらってます。それに、自分の感じたことや考えを分かりやすく、しかも感性豊かに書いている方を見つけるととてもうれしくなっちゃいます。
今回のコメントもとても素敵で、わたしにはもったいないくらいです。ありがとうございます(*^_^*)
金沢に雪、絶対ありだと思ったんですけどね〜〜!それだけが心残りでした(泣)
ハイ、大阪はすぐ行けそうなのでレポートお待ちくださいね(^_-)-☆
2009/3/3(火) 午後 11:03
杉本博司氏の写真は「BRUTUS」誌上で見ておりましたが、ほ〜、こういう方だったのですね。知りませんでした。
もうちょっと金沢が近ければ、馳せ参じたいところです。
お出掛けになった甲斐がありましたね、記事からもヒシヒシと伝わってきます。
2009/3/4(水) 午前 9:42
俄か記事ですがTBさせてくださいね。
2009/3/5(木) 午前 8:34
☆andanteさま
こんばんは〜♪
わ〜〜、コメントばかりかトラバまでありがとうございますm(__)m
杉本氏をご存知だったのですね。
銀座エルメスが開店した時ギャラリーで展示されたらしいですが、わたしはあのビルにギャラリーがあることさえ知りませんでした。
ハイ、金沢は行ってよかったです。その情熱が今度は大阪行きになりそうです(笑)
2009/3/6(金) 午前 0:15
杉本博司は、直島の「護王神社」を見ました。「写真も建築も似たようなものだ」というような杉本さんのコメントがあったような気がします^^。
2009/3/14(土) 午前 11:37
☆月の骨さま
こんばんは〜♪
わ〜〜、いいですね〜〜!直島行きたい〜〜(*^_^*)
はい、「苔のむすまで」にも書いてあります。
「写真家といっても水と空気、それに光を扱ってきました。
建築もにたようなものです。」と。
この一文はわたしにもとても印象的でした。
いつもコメントありがとうございます(^_-)-☆
2009/3/15(日) 午後 10:00