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サント・マルスと混沌の邪神
逆らえない運命なら、その運命を受け容れ、自分らしく生きる

書庫第二幕 第七章

 第七章(上)
 処刑を逃れたロナウハイドは久し振りにアドウェルサへと戻る。
「例の王女様はどうなった?。」そう尋ねる者もいたが、「今は話す時じゃない。」
そう言って、その話には口を閉ざした。
 「今のアドウェルサはルブルムモンス王国の統治下にあるものの、提督サルワートルの
元、皆が自由を取り戻し、平和な暮らしをしているそうだ。」
エルンテベルグが話してくれた。「そうか、それはよかった。」
戦乱に明け暮れ、生と死の間を幾つも垣間見てきたロナウハイドにとって、やはり平和で
あることは何よりの喜びだった。「平和か・・・。」
母がオルケルトで暮らしていた間はきっと平和で豊かな暮らしをしていたに違いない。
そんな中で、どんな事を考え、どんな事を夢見ていたのだろうか。自分が妻子と暮らして
いた時のように、この平和がいつまでも続くと信じていたに違いない。
「ロナウハイド。」
いきなり声を掛けられ、振り向くとラケルタ王が側にいた。「・・・な、何か?。」
「そんなに緊張せんでもよい。・・・私は、あのアドウェルサのクーデター以来、
お前の事に非常に興味があってな。会ってじっくり話がしたいと思っていた。」
ロナウハイドは突然の事で驚いている。
「まあ、そんな時、エルンテベルグがやって来て、お前さんが無実の罪で処刑台に
昇らされると聞いていても経ってもいられずここまで来た。勿論サルワートルからも
恩人であるから是非にと言われてもいたがな。」「そうか。」
 やがて、アドウェルサの国境を越え、旧アドウェルサ城が見えてきた。
「嘗てアドウェルサ城があった建物は今やサルワートル提督が執務を行い、ラケルタ王が
別荘として使っているそうだ。」
ルブルムモンス兵の一人が教えてくれた。
「王はあなたに提督の右腕となって、このアドウェルサを守っていただきたいとの事。
多忙な身である王に代わってあなた方にアドウェルサをお任せしたいのだそうだ。」
自分がアドウェルサの・・・。一瞬母の事が過ぎり、すぐには返事が出来なかった。

 城に近づくにつれ、様子が何かおかしい。「何だ?。・・・この雰囲気は」
ラケルタ王の顔が曇り始めた。「待て・・・。」
王は、皆の歩みを止めた。そして王とサルワートルの二人がゆっくりと城に近づいた。
 次の瞬間、いきなりおびただしい数の矢か飛んできた。「な・・・。」
一瞬で殺気を感じたのか、王に怪我はなかった。「王!!。」
「馬鹿な・・・ここを出るときは何もなかったはずなのに・・・。」
サルワートル提督も信じられない、と言う顔をしている。
「城門を開けろ!!。一体どういうことだ!!。」
王は叫んだ。すると城門が開いた。だが、剣や槍を構えたルブルムモンス兵が大勢
門を塞いでいる。「何の真似だ?。」すると城の中から高貴な身分の者と思われる
若者が歩いてきた。
「お帰りなさいませ。伯父上。」「プテロプース・・・一体どういうことだ?。」
「見ての通りですよ。」「何だと!?。」
王は辺りを見回す。見ればそれまでアドウェルサ兵が守ってきた場所にはルブルム
モンスの兵が立っている。
「まさか・・・お前、この国を・・・。お前にはルブルムモンスの東の領地を与えると
約束したはず。なのに・・・。」
「お忘れですか伯父上。私の欲望が貪欲である事を・・・。あんな痩せた土地を押し
付けておいて、それは無いじゃありませんか。私とて、いつまでもおとなしくして
いると思ったら大間違いですよ。まず伯父上の監視の目が届かないこのアドウェルサを
先に戴き、そこを足懸かりに・・・。」
「ふざけるな!!。このアドウェルサはアドウェルサ国民のもの。我々が手出ししては
ならん。いいか、よく聞け!!。他民族が争いもなく暮らしていく為にはお互いを受け
入れる必用があるのだ。それを・・・。」
「だから伯父上は甘いんですよ。多分今頃は本国ルブルムモンスにも火の手が上がる
頃でしょう。」「何だと!!。」
ラケルタ王の怒りが頂点に達した。サルワートルは王に近づき、耳元で囁いた。
「王。ここは私なんとかします。まずは御自分の国を優先なさって下さい。」
「しかし・・・。」「私一人なら、奴らは手出ししないでしょう。さあ、早く。」
「ロナウハイド。王を・・・ルブルムモンス王国を守ってくれ。」
 サルワートルは強い瞳でロナウハイドを見つめた。
「恩にきる。」
ラケルタ王は兵を率いて本国を目指した。ロナウハイドとエルンテベルグも王の後に
ついた。

 何日かかけてルブルムモンスに到着した。だが、時既に遅く、城は壊滅状態だ。
最後まで城に残った、ラケルタ王の一人息子で時期王位後継者のウルスス王子も、虫の
息のまま、国を守れなかった不甲斐なさを詫びた。
「・・・プテロプース。生かしておくものか・・・。」王の怒りはロナウハイドにも
痛いほどに分かった。
 
  
 王は兵を率いて城と王国を奪還せんと動き出した。しかし、多くの兵がプテロプースに
寝返っていた為、思ったより兵を集める事ができなかった。恐らく、前々から手を回して
おき、機会を覗っていたに違いない。そうなれば多分、王が城を奪還しようとする事は
既に予想済みかもしれない。王は悩んでいる。確かに時間をかければ兵士は集まって
くるかもしれない。しかし、アドウェルサに残してきたサルワートルとアドウェルサ国民
達が心配だ。兵の数が揃わないまま、王は反撃を開始する事にした。しかし、ラケルタ王
率いる兵はその数に圧倒され、城を奪還することは勿論、プテロプースに近づく事すら
出来なかった。これ以上の犠牲は出せない。王は苦渋の決断の末、敗北を認めた。
 囚われの身となった王、ロナウハイド、エルンテベルグ、そして王に仕えたルブルム
モンス兵士。それらを目の前にしてプテロプースは不敵な笑みを浮かべる。
「どうやら伯父上は私の事を恐れていたようだ。だからわざとあのような偏狭の地へ
追いやる必用があったのだな。」
「何を言う。あの地は決して偏狭の地などではない。私の身内だからこそだいぶ優遇して
やったつもりなのだぞ。」
「本心とは思えぬがな。厄介者である私を追い出したくていたくせに。」
「何!!。身の丈以上の物を与えた事を、そんな風に思っていたのか。情けない。」
それを聞いたプテロプースは王を鼻で笑い、今度はロナウハイドの方を見た。
「・・・そなたが噂に名高い『アドウェルサ・コロッセウムの英雄』ロナウハイドか。
どうだ。私の元で働かぬか?。優遇はするぞ。」
ロナウハイドはプテロプースを睨みつけた。「断る。」
「そうか、この私に楯突くつもりか・・・。残念だな。悪い話ではなかったのにな。
惜しい事をしたと後悔するだろうが、やむを得ぬな。」
「ラケルタ王には恩義がある。そして王の人柄も。後悔するのは貴様の方だ。」
「小癪な・・・。」
プテロプースはロナウハイドに殴りかかろうとして、手を止めた。
「こいつらは捕虜として東の偏狭の地の開拓地へ送る。伯父上が私に押し付けた領地で
私が受けた苦渋を自らも受けるがよい。」

 ラケルタ王を始め、ロナウハイド、エルンテベルグ、そして僅かに残った兵士は
馬車で東に移送される事になった。王は頭を下げた。
「済まぬ・・・私が不甲斐ないばかりに・・・。」
「王、頭をお上げ下さい。私は王に着いて行くと決めたのですから、こんな事ぐらいで
挫けたりしません。寧ろ王に死ぬまでお使えする事が私の希望でしたから。」
ラケルタ派の兵士の一人が言った。その言葉に王はもう何も言えないでいた。
「ロナウハイド・・・。」
ロナウハイドもエルンテベルグも大きく頷いた。
「これまでの事に拘っている場合じゃない。これからの事を考える。今生きていく為の
指標はプテロプースを倒し、国を奪還する事だ。」
王は少し考えた。「そうだな。」

 馬車が止まった。越えなければならないはずのリーヴァ川に架かる橋が壊れている。
「参ったな、こりゃ・・・。」
プテロプース派の兵士が文句を言っている声が聞こえる。当然、馬車の中にいる
ラケルタ王派の兵士だった捕虜達がざわめき始める。ふと、自分の側でなにやら音が
するのに気付いた。見ると、エルンテベルグが他の兵士の縄を解き、後ろ手を動ける
様にしているところだった。「おい、大丈夫なのか?。」
「見ろよ、奴ら橋に気を取られてこっちの監視が手薄だ。しかもこちらはこの人数だし
何とか行けないかと。」
確かに、エルンテベルグが居る場所には小窓があり、外の様子が伺える。「なるほど。」
「待てよ。こちらの兵士全ての縄を解くにはかなり時間が掛かる。全員を解き終える
までに気付かれたらどうする。」
「全員のを解く必要はないだろう。とにかく、気付かれた時点で動ける者は一人でも
多くの兵士を倒す。」
「そういうことか。」
まず、一人の兵の縄が解けた。兵士は王の縄を解こうとした。
「いや、私よりロナウハイドが先だ。こういう時は確実に複数の相手を倒せる者が
先のほうがいいだろう。」「分かりました。」
 一人、そして更に一人と縄を解いていく。中には短剣を隠し持っていた者もいて
プテロプース派の兵士を倒せるだけの人数を確保できそうだ。
 しかし、プテロプース派の兵士は思ったより早く戻ってきた。兵士は剣を抜き、
怪しい事をしている者はいないか確認していた。ロナウハイドは辺りを伺い、兵士が
一人だけなのを確認した。そして自分に近づいて来た時、すっと脚を伸ばした。
当然の如く兵士は転んだ。「な・・・何を・・・す。」
反対側に座っていた味方の兵士が敵の兵士の後頭部を殴り、気絶させた。そして
彼が持っていた剣を拝借した。「よし。」
 馬車の中がおかしいと気付いた敵兵はすぐに様子を見に来た。今度は二人だ。
二人が中に入ったのを見計らい、後ろから二人を羽交い絞めにし、剣を奪った。
「よし、こいつら縛っておこう。」
解いた縄を使い、三人を動けないように縛った。そして、馬車の幌をそっと捲り、
辺りを伺った。「な・・・。」「どうした?。」
「気付かれた・・・。この馬車を兵士が取り囲んでいる。」「何だって!?。」
もはやこれまで・・・誰もがそう思った。
「おい、外の兵士は何人位いる?。」「えーと・・・十二、三人程・・・。」
「俺に任せろ。」
ロナウハイドは奪った剣を掴み、馬車の外へ出た。「強行突破か。」
なんとか縄を外して貰ったエルンテベルグも同じように馬車の外へ出た。
「逃げ出そうなんて、そうはいかんぞ!!。」
敵の兵士達は数人でロナウハイドを取り囲んでいる。しかし、ロナウハイドは余裕で
剣を構えている。
「俺の強さは知っているはずだ。怪我をしたくなければ言う事を聞け。」
「何だとっ!!。」
敵兵は次々にロナウハイドに向かってくる。しかし、ロナウハイドはあっという間に
敵兵を倒してしまった。
「こ・・・こんな失態・・・プテロプース様に申し訳が・・・ぐふっ・・・。」
 そのうちに別の敵兵も集まってきた。
「ロナウハイドか。厄介な奴が・・・。」
「王と同じ馬車にしたのがまずかったようだな。」
しかし、集まってきた敵兵も彼の相手にはならなかった。
「なんだよ、俺の分け前は無いのか?。」
エルンテベルグが冗談交じりで加わってくる。「ま、そういうことだ。」

 馬車は一台ではなく、数台が連なっていた。同じようにプテロプース派の兵士を
倒し、自由を取り戻した。しかし、喜んでばかりもいられない。今後どうするかを
話し合う事にした。
「ルブルムモンスにはもう帰る事は出来ない。再び剣を取ろうにもまた同じ事になる。
かと言ってアドウェルサも同じだろう。サルワートルの身の上が心配だが、今は彼を
助ける事は不可能だ。」
皆暫く悩んでしまった。ロナウハイドはふと思いつき、訊ねた。
「マルス火山、と言う場所を知っているか?。」
しかし、誰もが何も言わない。つまり、知らないと言う事だろう。「あ、もしかして。」
一人の兵士が声を上げた。「知っているのか?。」
「いえ、御伽噺として聞いた話ですが・・・。それによると大陸の南の方に、火を噴く
竜がいて、神話に出てくる『ヴァルタヴルカン』という邪神の体の一部が火山になり、
それがマルス火山だと言うのですが、自分はそこまでしか知らなくて・・・。」
「そうか・・・大陸の南にあるのは確かなんだな。」「はい。」
そこまで聞くとロナウハイドは立ち上がった。
「俺は行く。ついて来てくれとは言わない。そこに何があるかは分からんが、どう
してもその地をこの目で見てみたい。」
「俺も行く。お前がそう言うんなら。」エルンテベルグだった。
「お前も着いてきてくれるのか?。」
「決まっているじゃないか。俺は一生お前についていくと決めたんだ。世界の果て
だろうが何だろうが一緒に行く。」
「私も行こう。」
ラケルタ王も立ち上がった。
「とにかく、落ち着ける場所に落ち着き、今後の事を考えたい。我が故郷であるルブル
ムモンスを奪還するまではこんな場所で死ぬわけにはいかんからな。」
すると兵スが次々と名乗りを挙げた。「私も行きます。」「王が行くなら、私も。」
「・・・こんなに、いいのか?。そこがどこにあるのかも分からんのだぞ。」
ロナイハイドは念を押す。「それでも、構いません。」
兵士達の瞳に自分を信じてくれる意思を、ロナウハイドは感じ取っていた。

 「馬車は・・・。」「持っていく。雨風だけでも凌げるだろう。それにいつまで
続くか判らない旅だ。馬も財産にはなるだろう。」
「財産か・・・。」
「ところで、南ってとっちだ?。」「太陽の方角を見れば分かるだろう。」
ロナウハイド、エルンテベルグ、そしてラケルタ王とルブルムモンス兵。その大所帯が
南を目指す旅を始めた。当てもなく、ただひたすら南を目指した。
 旅を始めて何日かした頃、街が見えてきた。そこで一台の馬車から幌を外し、馬車と
馬一頭を、山羊とアヒルに交換した。そして馬車の中で育てる事にした。それはこの
大所帯を支える為の食料を確保する為だ。途中で森を見つけたら、食料になる木の実や
水などを補充しながら旅を続けた。運命なんて信じるつもりなどなかったが、やはり
自分は母の故郷に帰らなければならない運命だったのだろうか?。
 旅は思った以上に困難を極めた。過酷さに耐え切れず旅の途中で命を落とす者もいた。
その度にロナウハイドはこの旅を諦めようかと悩んだ。しかし、自分を信じて付いてきた
者達の為にも、マルス火山を目指すしかなかった。
 兵士の一人が語った。
「嘗て聞いた伝説によると、とある一族が住んでいたといわれる地があり、そこでは
大陸神を祀っていたといわれています。それがオルケルト族かどうかは分かりませんが、
行ってみる価値はあるのではと。」その言葉に全てを賭け、皆旅を続けた。
 ある日、滝が流れ込んでいる小さな滝つぼを通りかかった。何日も歩き続けていたので
飲み水を確保しながら休憩する事にした。兵士の一人が服を脱ぎ、滝つぼで泳ぎ始めた。
「全く、子供みたいだな。」ラケルタが呆れるが、全員に水浴びの許可を出した。
すると皆喜んで水に浸かった。「ひゃーっ、気持ち良い。」「冷てー。」
当然の如くロナウハイドもエルンテベルグも服を脱ぎ、水に浸かった。
 「あれ・・・。」いつの間にか腕輪の上に巻いた布が切れていた。
どこに落としたんだろう。気になって探すが、見当たらない。仕方が無い、そう
思い、腕輪が見つからないように隠すようにして水浴びを楽しんだ。
 兵士の腕に皆絵が描いてある。「これ・・・何だ?。」ロナウハイドは訊ねた。
「ああ、これか、天空の使者を模した刺青だ。ルブルムモンスの兵士はこれを腕に
彫って兵士の証とするんだ。」「兵士の証・・・か。」
今まで自分達が居た国の兵士にはそんな決まり事はなかったので、不思議に思った。
「ところで君らの腕についている腕輪って、ロナウハイドもエルンテベルグもお揃い
だけど・・・何か意味でもあるのか?。」
えっ・・・見られてたのか。しかもエルンテベルグにもあると気づいているし。ロナウ
ハイドは焦ったが、今はどうにも出来ない。
「あ・・・いや、これ・・・。」慌てて右手で隠す。「・・・まあ、色々とあって・・・。」
「なんだよ。人の物は聞いてくるくせに、自分達のは話せないって事か、なんか
フェアじゃないよな。」
そう言われても、奴隷の印だなんて余り人には言いたくない。なんとなく誤魔化そうと
したが、納得できていないようだ。「おいおい、人にはそれぞれ事情というものがある。
あまり根堀り葉掘り聞くのは失礼じゃないか?。」
ラケルタが助け舟を出した。
「そ・・・そうなのですか。」そして兵士は二人の方を見た。
「俺達はこの刺青にルブルムモンス兵としての誇りを感じている。だから君らのも
てっきり・・・。」「いや・・・そんなんじゃない。」「そうなのか。」
側で見ていた兵士レーガトゥスが横から口を出した。
「君達・・・色々苦労したんだな。」
別に同情してくれなくても・・・二人はそんな風に思った。

 ある日、大きな市場があるというこの街にやって来たロナウハイド達。交代で馬車を
見張りながら街で必需品を購入する。この日は市が立つ日だという事もあり、街中は人で
溢れかえっていた。兵士の一人、ピスキスが何かを見つけたらしく、集団から少し
離れた。皆そちらを見ると小さな子供がたった一人で泣きじゃくっていた。
「迷子かな。」ロナウハイドも人助けと思い、近づいた。他に何人かの兵士もついて
きた。
「どうしたの?。迷子?。お父さんやお母さんとはぐれたのかな。」
ピスキスがガラにもなく高い声で話し掛けていたので、皆笑いを堪えるのに必死だ。
しかし、子供の方は大きな大人に取り囲まれた恐怖で更に泣き出した。
 見てられないな、と思ったロナウハイドはひざを曲げてしゃがみ込み、目線を子供の
方に合わせた。「どうした、一人か?。」しゃくり上げながらこくりと頷く子供。
「一緒に探してやるよ。」そう言って子供を肩車した。「どうだ?。居るか?。」
「ううん・・・。」その姿を見た兵士達は少し驚いていた。
「ロナウハイド・・・子守、巧いのか?。」
 無事に迷子の子を探していた親元へ返し、街の探索を続けた。
 「・・・えっ、じゃあロナウハイドって、家族持ちだったのか?。」
「まあ、昔な。」
ロナウハイドはそれ以上の事は言わなかった。兵士達も最近はロナウハイドが余り
自分の事を話さないと思っていたのでそれ以上は聞かなかった。
別の兵士が、「じゃ、エルンテベルグも?。」
「いや、エルは家族というものに興味が無い奴だから。」
「えーっ、勿体無い。俺なんか家族というものに憧れてるのになあ。新天地へ行ったら
絶対に嫁を見つけてやる。」「あ、俺も・・・。」
「私も、結婚というものに憧れてはいるが・・・。」兵士の一人、ブランデンが言った。
「南には美人が沢山いるといいがな。」「確かに・・・そりゃそうだ。」
「レーガトゥスは?。」「私は・・・。」
「そう言えば、お前は面食いだったもんな。」
 しかし、そんな会話を冷めた目で見ている兵士が何人かいた。その夜、何人かの
兵士がラケルタ王にどうしても伝えたい事があると話をしていた。ロナウハイドも
呼び出され、その兵士達の話を聞く事になった。
「確かに・・・王についていくと一度は決めました。ですが、やはり我々は国に
大切な家族を残してきている。最初は新天地へ着いたら家族を呼び寄せるつもりで
はいた。しかし、その地が本当にあるのかどうか分からない。ロナウハイドには悪いが、
私はここでルブルムモンスに帰る事にしたい。」
「ルブルムモンスにはプテロプースがいる。のこのこ帰ったら殺されるかもしれん。
それでも行くのか。」
「構いません。殺されようが何されようが、その地が自分の生まれ育った祖国ならば
そこで命が尽きても、その運命を受け入れるつもりです。」
皆暫く黙っていた。ラケルタは、
「それがお前の意志ならば、最期まで意志を貫き通せ。死ぬかもしれぬと分かっていて
行かせるのは身を斬られる思い出はあるが、覚悟が出来ているのであるならば、
止めはしない。」
すると兵士は今度はロナウハイドの方を見た。
「俺もラケルタ王の言うとおりだと思う。ただ、お前達を助ける為、プテロプースの
前で敗北を認めた王の気持ちも分かって欲しい。」
「王には感謝の気持ちで一杯なのは事実です。だが、私の・・・最初で最後の我儘を
お許し下さい。」
ラケルタ王もロナウハイドももう何も言わなかった。そして翌朝早く、数人の兵士達は
自分達の前から姿を消した。

 小さな川が流れていた。水がきれいだったのでこれで飲み水を確保しようと言う事に
なった。水を汲んでいる最中、水の中に何かキラキラ光るものがある。「これは。」
ロナウハイドとエルンテベルグは切れた幌の切れ端を持ってきて川に渡した。
「何を始める気だ?。」兵士の一人、ブランデンが訊ねる。
「丁度いい。そっちを引っ張ってくれ。」「こうか?。」「ああ。」
「他の者は上流で石を叩いてくれ。」「これでいいのか?。」
他の兵士が数人、石を叩き始めた。すると物凄い数の魚が勢いよく飛び跳ねている。
「凄いぞ!!。」
大量の魚を捕まえ、火を熾した。ここ二、三日ろくなものを食べていなかったので皆
夢中で食べた。残った魚はきれいに内臓を取り、保存食にした。
 いつの間にか夕方になった。天気も良かったこともあり、今夜はここで野宿をする事に
なった。
 久し振りの満腹感で皆満足したらしい。焚き火を囲い、皆様々な談義に盛り上がった。
「ところで。聞いた事なかったけど、ロナウハイドとエルンテベルグって、元々どこの
国の生まれなんだ?。やっぱりアドヴェルサか?。」
「馬鹿だなあ、ロナウハイドはお袋さんの故郷が南なんだからそんなはず無いだろう。」
「あっ・・・そうか。」
皆笑った。エルンテベルグが少し考えて話し出した。
「俺達は孤児だったんだ。父親も母親も分からない。十二、三歳の頃コルリスと言う国の
兵長に拾われてそこで兵士になった。例の王女様はそこの王女だったんだが、俺達が
アドヴェルサの捕虜になった時、王女とも離れ離れになって、あのクーデターの後彼女と
は再会できたんだが、結局助けられなかった。その後ロニーが『お袋さんの故郷を探す』
って言ってたんで俺も着いていく事にした。俺は故郷も行く当てもなかったから。ただ
ロニーについていけば何かいい事あるんじゃないかと思ってついてきただけだ。」
「へーえ。じゃ、ロナウハイドはどうなんだ?。」「俺は・・・。」
ロナウハイドは少し黙った。するとエルンテベルグは代わりに答えた。
「こいつは昔っから秘密主義で自分の事は話さないからな。」
するとロナウハイドはむっとして答えた。
「・・・余り自分の事を話すのは好きじゃない。それだけだ。」
するとエルンテベルグは突っかかるように言った。
「本当かあ?。」「・・・なんで疑う?。」「怪しい、皆にいえない秘密を隠している。」
「そんなわけ無いだろう。馬鹿馬鹿しい。」
「けど、言わないという事は、そうだろう?。」
するとロナウハイドは少し考えた。
「じゃあ、話すよ。・・・俺の名前は元々オルケルトの神話に出てくる勇者の名前
だったそうだ。」
「オルケルトの勇者か!!。凄い肩書きだな。」
ロナウハイドが話し始めたので、エルンテベルグは
「こうしないと、あいつ、喋らないから。」とラケルタに耳打ちした。
ラケルタは「成る程な。」と苦笑いした。

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