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第七章(下)
またある日、足首が届く位の川に皆で川底を探っていた。ラケルタ王は着ていた
シャツを脱いで木の枝で器用に固定したもので川底を探っている。 「やれやれ・・・腰にくるな・・・。」 皆時折体制を変え、大きく背伸びをする。「何か見つかったか・・・?。」 「小さいのなら幾つか・・・。」「もうちょっと頑張るか・・・。」 「おっ・・・!!。」エルンテベルグが大きな声を上げた。「見ろよ。」 側に居たレーガトゥスに見つけたものを見せる。「おっ・・・凄いな。」 それは小指の先程の大きさの金の粒だった。 「これで、どのくらいの価値があるんだ?。」「分からん。」 「そうなのか?。昔砂金取りをしてた事があるって言ってたじゃないか?。」 「そりゃ子供の頃の話だ。それに、取れたとして俺達には何の利益もなかったからな。」 「そうか・・・そうだったな。」 「ロナウハイドも一緒だったのか?。」 「いや、あいつと知り合う前の話だから。あいつは砂金取りまではやった事無いんじゃ ないの?。」 エルンテベルグは再び川底を探り始めた。 暫くそんな事を続けていた。「もうそろそろ終わりにしよう。」 ラケルタが声を掛けたので、皆作業を終わらせる事にし、川からあがった。 「どれだけ集まった?。」「これ位・・・かな。」 砂金と思われる粒を皆合わせた。大人の握り拳位の量がある。 「結構取れたな。」「これでどれ位になるんだろうか。」 皆で覗き込むので手元が暗くなる。「見えない!!。」 その声に驚き、皆少し引いた。 「ええと、傷薬と非常食の向日葵の種、後はと・・・。」 「干し肉を、買える分だけ。」 大きな街に近づいた。先日採取した砂金を換金し、食べ物を交換するつもりだった。 「今回の買い物は・・・。ロナウハイドと、レーガトゥス、か。」 「じゃあ、行って来る。」「巧く交渉してきてくれよ。」「解かっているって。」 皆、街に入った。買い物を頼まれたロナウハイドとレーガトゥスは別行動で換金屋へ 向かった。 途中街道の端の方で二人の子供が棒切れを振り回し打ち合いごっこをしているのが 見えた。ロナウハイドは自分の子供達の事を思い出し、目頭が熱くなった。もしも 生きていればあの位の年頃なのか。幸せだったあの五年間が頭の中に蘇ってくる。 「見ろよ。」 我に返り、レーガトゥスのほうを見ると、同じ方向に視線を向けていたようだ。 「私の家は代々王家に仕えていた。特に私の父の妹、つまり叔母はウルスス王子の乳母 だった。その縁で私は王子の遊び相手として小さい時から城にあがり、王子と共に 育った。剣術の稽古も学問もいつも一緒だった。だからああいう子供達を見てると、 子供の頃の自分と王子の姿が重なってつい昔を思い出してしまう。」 二人の男達は少し感傷に浸っていた。それから再び歩き始めた。 「ウルスス王子って、どんな人だったんだ?。」 「・・・そうだな。おとなしいくせに負けず嫌いで、優しいかと思えば頑固で、 だが正義感が強く思いやりもあった。王としての素質は備わっていたと思う。 だが、私は王子というより幼馴染としての思い出の方が大きかった。だから助けて やれなかったのが心残りだ。」「そうなんだな。」 換金屋を見つけ、店に入った。店主は差し出された砂金を丁寧に吟味し、秤に載せ たりを繰り替えす。暫くして金貨を数枚だし、「これ位だな。」 「こっ・・・これだけ?。もう少し良く見てくれよ。」 「無理だな。余り質のいい金じゃないし、それに、砂も混じっている。居るんだよな。 砂を混ぜて量を誤魔化してくる連中も。」 「我々が誤魔化していると言うのか?。」レーガトゥスが食って掛かるのをロナウ ハイドが止める。 「とにかく、これでもかなり多く見積もってやったんだ。もうこれ以上は出せない。 それが嫌なら、他の街にある店を回るんだな。」 店主は頑として意志を曲げないようだ。「仕方が無い、わかったよ。」 無造作に金貨を掴むと、ふて腐れながら店を出た。 「ったく、あんなに苦労して集めたのにな。」 「まあ、金貨になっただけでも良しとするか。後は買い物だ。」 二人は今度は買い物の為の店を探した。「ん?。」「どうした?。」 「あれって、何だ?。」レーガトゥスが聞いてくる。「手配書か。」 「ええっと、詐欺師か・・・。賞金までついているんだ。」 暫く手配書を眺めていた二人だったが、「おっといけない、買い物、買い物。」 市場で買い物を済ませ、皆と合流した。二人が帰ってくるのを皆期待して待って いたようだったが、換金の額を知ると皆がっかりした様子だ。 「誰だよ、あの川に砂金がたくさん落ちてるっていったのは。」 皆、誰とも言わず文句を言う。ロナウハイドはもっと交渉のしようもあったのかと 思い、少し胸が痛んだ。 次の街の近くで野営を行う事になった。夕方には少し早いが、次の街に行くとなると 到着予定が夜中になってしまう。夕食当番が食事の支度をしている間、身体が鈍らない ように剣術や武術の鍛錬をしていた。 「お前さあ、すぐに右に動く癖があるみたいだよな。気付いてたか?。」 「えっ・・・そうなのか?。気付かなかったな。」 若い兵士にこうしてロナウハイドが直接剣術の手解きを教える。剣だけでなく、槍なども 使いこなせるロナウハイドに皆どうやったら勝てるだろうかと思案する。そんな中、 レーガトゥスがロナウハイドに一本取った時は皆絶賛した事もあった。 そこへ、馬車が一台通りがかった。御者がこちらをちらっと見て通り過ぎ街の方へ 向かって行ってしまった。 「街が近くにあるのに、こんなトコで野営してるのが珍しいんだろう。」 確かに、街で宿を取ればかなり楽だろう。、だがこの人数を収容仕切れるとは思わないし 第一に莫大な金が掛かる。そういう事は始めから予想がついていたので、病気や怪我 以外では宿泊などした事がなかった。 翌朝、街中にある街道を通り抜け、次の街へ向かった。 そこで皆手分けして買い物や、水等の確保に余念が無い。ロナウハイドは今回、そう いった当番からは外れていたが、オルケルトやマルス火山についての情報を集めていて 別行動を取っていた。「お供する。」一緒についてきてのはレーガトゥスだ。そんな訳で エルンテベルグを加えた三人で情報集めに回った。しかし、これと言った手がかりはなく 「もっと南へ行かなければならないのか。」そう思いながら馬車へ戻った。 戻ってみると、馬車の中の雰囲気がおかしい。何があったのだろうか。 「・・・。」「私から話そう。」 「いいえ、私達が直接・・・。」 雰囲気の原因が自分にあるのでは、と直感で感じたロナウハイドはそこに座った。 「何が言いたい。言ってみろ。」すると兵士の一人アッペンディクスが最初に口を 開いた。 「我々の中に、不幸を招くものがいる。あなたが言う新天地を目指すのにこれだけ 進んでも新天地が見つからないのはそういった者がいるからだ。確かに我等にはもう 帰る場所はない。だが、我々とて一刻も早く落ち着ける地を見つけたいが、それを 阻害しているのが、何を隠そう、ロナウハイド、あなただと。」 「俺が・・・不幸を招いてるって?。・・・だからどうした?。」 「我々は色々考えた。あなたには私達の前から消えて欲しい。つまり、ここから出て 行って頂きたい。我々は我々で自分達の新天地を目指す。あなたはあなたなりにその 何とかという地を目指して頂こう。そういう結果になった。」 「よそ者は排除しろって事か。」 「おい、待ってくれ、我々はここに来るまで共に様々な困難を乗り越えてきた仲じゃ ないか。それを・・・。」 「レーガトゥス。お前は、よそ者であるロナウハイドに味方するのか?。」 「味方とかそんな事じゃない。私は自分の目で確かめ、自分の目で見極めたからこそ ロナウハイドについていくんだ。よそ者とかそんな事は関係ない。」 「だが、いつまで経ってもその新展地とやらは見つからないじゃないか。見つから ないのではなく、見つけないようにしているんじゃないか?。」 「馬鹿なことを言うな。そんな事をしてロナウハイドに何の得がある?。今までだって 彼の力があったからここまで来れたんじゃないか。もし、彼がいなかったら、我々は ここまでさえも来られなかったと思う。」 アッペンディクスは暫く考えた。 「そうか、お前がそこまで言うんだったら彼についていけばいい。我々はもう沢山だ。 こんな呪われた奴と共に行動するは。」 「・・・呪われた?。どういう事だ?。」 「この街に来ていた旅の占い師に、あなたが目指す新展地に事について尋ねてみた。 結果はそういうことだった。道理で新天地が見つからない訳だ。」 「・・・占い師!?。」ロナウハイドはため息をついた。ラケルタ王は一呼吸して 言った。 「一言私から言わせて貰おう。ロナウハイドは私が認めた男だ。彼の人柄は皆もよく 知っているはず。苦楽を共にし、ずっと旅を続けてきた同士だ。私は、彼を信じる。」 王の言葉にうなだれる。しかし、アッペンディクスは納得出来ていないようだ。 「ここに来るまで随分と仲間を失った。それでも信じてついていけというのか。私は ごめんだ。明日の朝一番でお互い身の振り方を考えようじゃないか。」 そう捨て台詞を吐いて、別の馬車へ戻った。 「政は占いなんかでやるものじゃない、人を見てやるものだ。それが通じぬとはな。」 ラケルタは嘆いた。 その日の明け方、ロナウハイドは早くに目が覚め、用を足しに外へ出た。野営の 当番のエルンテベルグに一声賭け、街の近くの草むらへ向かった。 誰かいる。「なんだ、レーガトゥスか。」 「なんだ、は、あんまりでしょ。こんなに朝早くって事は・・・。歳、か?。」 「ほっとけ。大体お前とは二歳しか違わないじゃないか。」 用を足し終わったロナウハイドは街中から逃げるように出てくる馬車を見かけた。 「なんなんだ、こんな朝早くに・・・。」 余程慌てていたのか、カーブを曲がりきれずに馬車は転んでしまった。二人は手助けが 必要かと思い、その馬車へ向かった。「大丈夫か?。」「あああ、た、助かる。」 振り落とされた男の顔を見て二人は驚いた。「あーっ!!。手配書の・・・。」 その声にまずいと思ったのか男は慌てて逃げようとした。 「ここは俺に任せろ。お前は誰か呼んできてくれ。」「了解。」 ロナウハイドは男を捕まえた。紐がなかったので男のズボン吊りで男を縛った。 馬車の中には二、三人の男がいた。転んだ時に強く身体を打ったらしく、まだ動け ないようだ。その男達もあっという間に捕まえた。もう一人、奇妙な衣装を着た 女がいた。「お前も仲間か。」 女を丁度捕らえた時にレーガトゥスが何人かを連れて来た。 「なんだ、もう倒したのか。まさかとは思っていたが・・・。」 「こいつら、一体。」「この辺りを荒らしていた詐欺師らしい。」「あっ・・・。」 馬車の中の女をロナウハイドは後ろ手にしてつれて来ると兵士の一人が声を上げた。 「昨日の占い師!!。」「詐欺師と仲間だったのか!?。」 男達と占い師を役人に引き渡すと、役人はとても嬉しそうに頭を下げた。 「ありがとうございます。この占い師はかなり頭の切れる女でして、かなり悪さをして いたそうで皆頭悩ませていたんですよ。それにこの男達が用心棒で腕っ節が強く、 なかなか手も出せなくて・・・本当に助かりました。」 賞金を手にし、馬車に戻った。 「・・・申し訳ない。私が間違っていた。あんな占い如きに心揺るがされるなんて、 なんと侘びをしたら良いものか・・・。」 アッペンディクスは土下座してロナウハイドに詫びを入れていた。 「おいおい、大袈裟だな。」「しかし・・・。」 「で、どうする?。」「は・・・?。」 「お互いの身の降り方を考えようって言ったのはお前の方だろう。」「あ・・・。」 皆シーンと静まった。 「俺はこのまま南を目指す。エルもそうだよな。」「いわずと知れた事。」 「私も勿論着いていきます。なんなら一生お供しようと。」 レーガトゥスは力強く答える。「そうか。」 「ロナウハイドは私が心底惚れ込んだ男の中の漢。ついて行かぬわけが無い。」 そこまでか・・・。まあいいか。ロナウハイドは苦笑いをした。「私も。」「俺も。」 皆口々に答えた。ラケルタ王は、 「自分が一度決めた事。職業柄自分の意志を変える訳には行かない。自分がコロコロ 変わる事で自分を信じてついてくるものが路頭に迷う事になる。私の気持ちは 変わらん。」と言ってにっこりと笑った。 結局未だ答えがでていないのはアッペンディクスと何人かだ。 「ついていかない理由はなくなった。けど、ここまで啖呵を斬ってしまって今更 ロナウハイドについて行こうだなんて虫が良すぎるのかもしれない。」 暫く間があった。ロナウハイドがその静寂を打ち破り、訊ねた。 「お前は、それでいいのか?。どこを目指すか分からんがこれからその仲間だけで 旅を続けられるのか?。」「・・・えっ。」 「俺が思うに、これだけの仲間がいたからここまで来られた。そしてあの時失った 仲間がいればもっと楽できたかもしれない。今ここにいる仲間達は誰一人として 欠けて欲しくない大切な仲間だ。お前は啖呵を切った手前、ここに居づらい気持ちも 分かるが、じゃあ、別れても生きていく術はあるのか?。そこまでの覚悟は あるのか?。」「覚悟・・・。」アッペンディクスは言葉に詰まった。 「俺は細かい事に拘るつもりは無い。だが、それに納得できないのであれば好きに すればいい。」 アッペンディクスは暫く考えた。 「こんなことを言うのはずうずうしいとか、恥を晒すとか思われるかもしれない。だが、 やはりあなたの言う通りかもしれない。いや、その通りだ。それでもこんな私を許して くれるなら、お供をさせて欲しい。この通りだ。」 アッペンディクスは再び土下座し、頭を下げた。 「もう頭を上げろよ。」ロナウハイドは笑顔で話し掛けた。 「じゃ、一緒に行くんだな。しっかりついて来い。」「は、はいっ。」 「よし、じゃあ出発するか。」 手綱を引こうとするロナウハイドにラケルタ王は 「人を見る目がある、というのも人の上に立つ者の条件だからな。」 とウインクして見せた。 ある夜、ロナウハイド、ラケルタ王、レーガトゥスの三人は野営の見張りをしていた。 ラケルタ王がロナウハイドを相手にチェスをしている。「ちょ、ちょっ、とっと待て。」 「待ったなし。そう言ったのはラケルタ王の方だぞ。」「い、いや、前言撤回。」 「だめだ。」「往生際が悪いですよ、王。」 「・・・はあ、悔しいな。チェスを教えたのは私の方なのに・・・。」 「けど、負けは負けだな。」 「これが戦場だったら、やり直しも効かないって、そうも仰ってましたよね。」 「うーん・・・レーガトゥス、頼む、敵を討ってくれ。」 「分かりました。」「俺は容赦しないぞ。」「望むところだ。」 ラケルタはレーガトゥスに席を譲る。 駒を配備し、盤上での戦いが静かに始まった。 「・・・そう言えば、ロナウハイド。以前から聞こうと思っていたが、お前とエルンテ ベルグの腕輪は奴隷の印といわれているものだよな。」 王が、二人の対戦を見守りながら訊ねた。「・・・。」 「言いたくなければ、言わなくてもいい」「いや・・・。その通りだ。」 「やはり奴隷だったのか・・・でも何故?。」 「俺は八つの時奴隷にされた。というか生まれる前から決まっていた。母がとある 男の側室で、その男が死んだ後、母は敵国の捕虜になったという。その時母の胎内に いた俺は母が亡くなったら奴隷になることを約束されていたそうだ。エルは物心ついた 時にはもう既に奴隷だったと聞いている。後はこの前話したとおりだ。」 「あの時、奴隷の話は伏せていたようだな。」「ああ、聞かれたくなかったから。」 「・・・捕虜の子供か。よく殺されなかったな。」 「・・・奴隷ともなれば過酷な労働条件から寿命はせいぜい十五年から二十年ぐらい。 子孫を継承する前に命は尽きるから、その男とやらの血は継承されないと踏んだん だろう。」 「母を側室にした男はとある国の王だったが、俺がその王と血の繋がりは無い事を 告げ、何とか俺を生かしてくれるように訴えたのだそうだ。」 「そうなのか・・・。」「まあ、どこまで本当かは分からんがな。」 「その腕輪って・・・外すことはできないのか?。」「分からん。」「そうか。」 「・・・ん?。」「何か?。」「おい。見ろ、明かりが見えるぞ。」 ラケルタが指差す方向にぼんやりと明かりが見える。しかもこちらに近づいて くるようだ。「山賊か・・・?。」 三人は剣に手を掛けた。馬の蹄の音と共にがたごとと馬車が走るような音も近づいて 来ている。 「馬車か・・・山賊じゃないのか?。」「いや、何とも。」 「レーガトゥス。お前はここで待機していてくれ。」「はっ。」 ロナウハイドとラケルタ王は近づいて来る馬車に剣を構える。やがて明かりが馬車に 取り付けられたランプの灯りである事が分かった。「どおーっ、」 馬車が止まった。 「お、おおお待ち下さい。わ、私は怪しいものではありません、私達は旅の役者で、 道に迷ってしまっているうちに暗くなってしまって・・・。」 「役者・・・?。芝居か何かでもやるのか?。」「ええ、まあ。」 「へーえ、演目はなんだ?。」 「今、一番人気の演目が勇者が邪神を倒す『勇者ロナウハイドと邪神ヴァルタヴルカン』 という芝居でして、なんでもこの辺りに伝わる神話を元に私が脚本を書きまして。」 ロナウハイドは思わず頭を抱えた。いや、そんな場合ではない。ロナウハイドは恐る恐る 訊ねた。 「それって・・・オルケルト神話の・・・?。」 「えっ・・・オルケルト神話を御存知なんですか。そんなに有名なんですか。」 「俺達はその神話の出所を捜して旅をしている。場所を教えてくれないか?。」 「出所・・・ですか?。」「ああ。」 「確か・・・サントヴルカーン山の麓の・・・モーアって街だったかな。」 「サントヴルカーン山!?。マルス火山とは違うのか?。」 「マルス、火山・・・?。いいえ・・・。」 「・・・どういう事だ?。」 「まあ・・・サントヴルカーン山の麓といっても、モーアだけでなく幾つか街や国が ありますから、土地によってはそんな風に呼んでいる可能性もありますからね。」 「サントヴルカーン山か。ここから遠いのか?。」 「遠いか・・・うーん。旅慣れた者に言わせれば遠いうちには入らないですけどね。 ここから南西に行った辺りかな。大きな街道に当たればそこから行けると思いますよ。 ちなみに私達もモーアの街を目指している最中でしてね。」 「オルケルト神話の、オルケルトという一族がいた場所は判るか?。」 「オルケルト族ですか。随分前に滅びたって話は聞いたことがある位で、詳しい事 までは判らないですねえ。それこそ、モーアやその周辺の街か国に行けば何か 判るんじゃないですか。」 「行ってみる価値はありそうだな。」「よし、明日の朝一で話をしよう。」 翌朝、皆にその話をするロナウハイド。「じゃあ、その南西の街を目指すのか。」 「・・・初めてだな、オルケルトの手がかりらしい話を聞けたのは。」「そうだな。」 ほんの僅かだが希望の光が見えた気がしてきた。 前の晩に野営の見張りをした者は、昼間の移動中に馬車の中で寝て良い決まりが あった。ロナウハイドも馬車の中で横になってかけ布を被るが、移動の振動と、夕べの 話の内容で暫くは寝付けなかった。 「なんだ、寝てないのか?。気持ちは分かるが、寝てないと後がきついぞ。」 「判っているけど・・・。さ。」 が、やはり疲れが出たのかいつの間にか眠ってしまった。 「ここは一体・・・?。」 辺りは暗く重苦しい空気が流れる。この世のものとも思えぬ雄叫びが頭の中に響く。 「あれは一体・・・?。」何か分からないものを何故か倒さなければならない。 そんな衝動に駆られる。剣を振るうがまるで煙のように消えていく。側に人の気配が 感じる。ラケルタ王?。いや、違う。どういうわけか自分がこの者を守らなければ ならない気がして必死に戦う。その時、地の底から現れた光の帯がその周囲を包み 込む。意外にもその光は柔らかく、暖かい。光が徐々に消えていくと重苦しい雰囲気は 消え、真っ白な空間が広がる。ふと目の前に黒い玉のようなものが落ちているのが 見えた。それを手にした瞬間、身体の中に何か恐ろしいものが入り込んだ気がした。 そこで目が覚めた。酷く寝汗をかいていたようだ。「あ、起きたか。もう昼だぞ。」 そんなに眠っていたのか、そう思いつつ汗を拭いた。聞けばもう間もなくモーアの 街に近づくらしい。 モーアの街はそこそこ大きく、色々な市が立ち人々で賑わっていた。ロナウハイドは 街の住民にマルス火山、オルケルト、サントヴルカーン山について質問していた。 マルス火山については知る者が誰もいない。オルケルトについては神話でなら 知っているが、場所までは判らない、という事だった。 「サントヴルカーン山か。確か・・・ここから南の方、あそに二つ並んで見える山の 間にある。天気がよければもっとよく見えるんだが。」 あれが・・・あの山の向こうの山が、母の故郷なのか?。「おーい。」 エルンテベルグが自分を呼びに来た。 「ラケルタ王が、ここに巡業に来ている芝居を観ようってさ。」「あっ、ああ。」 山の方が気になりつつも、芝居の内容も気になる。ロナウハイドは逸る気持ちを抑え、 芝居を観る事にした。 芝居の内容は、というと、勇者と邪神の直接対決で、勇者が光の神の力を借りて、 邪神を倒すと言う在り来たりな内容だった。「そんな物語なのか?。」内容はともかく 役者の中に演技力に問題がある者がいたらしく、いまいち迫力に欠ける。ま、こんな もんかとその時は思って観ていた。ふと気がつくと、兵士の一人、アクトルの姿が 見えない。 「あれだってさ、『興味がある。』とかいってステージの設置から何から何まで 手伝ってたみたい。飛び入りで出てみないかって誘われたらしく、出演していた ようなんだ。さっき。」 「そうなのかあ?。あの演技力が今一つな奴がいたが、まさか・・・?。」 「いや、そうじゃなかったらしい。」「ふうん。」 その夜。 「予感はしていたが。やはりそうか。」ラケルタが呟く。 「勝手な話で申し訳なく思っています。ですが、自分の天職なのだと思い、覚悟を 決めました。自分には兵士ではなく、役者の方が向いてるのだと痛感しました。」 聞くと、兵士の一人アクトルは若い頃役者志望だったが両親に反対され、泣く泣く 兵士になったという。 「・・・いるんだよな。そういう奴。確かコルリスにもいたよな。」 エルンテベルグが言う。「ああ、あいつね。」ロナウハイドも相槌を打った。 「そこまで覚悟が出来ているならもう何も言わないが、俺達は多分この地に足を 踏み入れる事はないだろう。この仲間達とも二度と会うことは無いが、いいんだな。」 ロナウハイドは念を押して訊ねた。 「ああ、今までありがとう。君達が足を踏み入れなくても僕が君達の元を訪れるさ。 その時は一人前の役者になってな。」 こうして、また一人仲間が去っていった。 「さあ、出発するか。」馬車は再び南を目指し、進んでいった。 |
第二幕 第七章






こんにちは〜^^
色々な展開が待ち受けているのが良いですね☆
こういった流れの肉付けを豊富に飾れる業に憧れます^^
ポチっとな^^
2016/12/21(水) 午後 10:25
> 半兵衛さんコメありがとうございます。
そんな大した事はないですよ。
ただ妄想が暴走しすぎて逆に表現を削るのに
一苦労している状態です。
半兵衛さんの小説も読ませていただいて
いますが、展開が待ち遠しいので、また遊びに
行かせていただきます。
[ Duke Friedrich Ronniele ]
2016/12/23(金) 午後 3:53