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第十章
そんな平和な時代は長くは続かなかった。ローザント王国から使者が大慌てで
やって来た。「王・・・王大子妃からの・・・しょ・・書状を・・・。」 嫁がせた娘イルメラからの手紙だ。「一体・・・。」 なんと、イルメラの夫でローザントの第一王子であるクナイプが乱心し、自分の子供達を 殺していったというではないか。その上、イルメラも牢に閉じ込めてしまったという。 「馬鹿な!!・・・何ゆえこのような事が・・・。」 「真相を確かめねばならない。場合によってはクナイプやローザント王と刺し違えてでも イルメラを助け出してやらねば。」 「私が行きます。」「私も・・・。」 ヴァイスベアとアントニウスが名乗りを挙げた。「お前達、行ってくれるか。」 二人に任せれば安心だ、ロナウハイドはそう思い、全てを二人に託した。 娘の身に何があったのだろう。それにあれほど勇敢で正義感の強かったといわれる 王子クナイプが何ゆえ乱心で・・・しかも愛するわが子にまで手を掛けるなどと信じ られない。ロナウハイドはいても立ってもいられなかったが、二人の息子達がなんとか してくれる。それを信じ、待ち続けた。 しかし、間もなく息子達からの援軍の要請が来た。「援軍だと!!。」 ロナウハイドは兵を率いてローザントへ向かった。 ローザント城ではロナウハイドの出陣を予想していたらしく、到着するや否や、弓矢と 槍の攻撃で出迎えられた。 「やっと来たな。ロニエール王!!。」 城門の上に立っていたのは、クナイプ・・・いや、違う、 「あれは・・・、確か第二王子のゲロルト。何故彼が・・・。」 ロナウハイドは思い切って声を掛けた。 「何ゆえ、そなたがここにいる?。答えろ。王と王妃、そしてクナイプとイルメラは どうしたというのだ!?。」 「御自分の目でお確かめ下さい。但し、この城門を突破できたら、ですが。」 そう言ってゲロルトは高笑いした。その容姿がロナウハイドには「あの男」と重なり 強い怒りを覚えた。「若造めが・・・。」 ロナウハイドは目を閉じ少し考えて冷静になった。 「身内を盾に我が心乱そうとする魂胆なのか・・・。」 やがてロナウハイドは大きく目を見開き、叫んだ。「出撃!!、城門を打ち破れ!!。」 「・・・な、・・・何という事を!!。」 予想外の出来事にゲロルトは一瞬ひるんだ。「行け!!。」 破壊された城門から次々とロニエール兵はローザント場内へ突入していく。「おい!!。」 エルンテベルグが声を掛ける。「大丈夫なのか、あの子達はどうする。」 「俺は・・・子供達を信じている。」 そう言って、建物の中に攻め入った。 「エル。奴らの狙いは王である俺だ。恐らく兵士は俺を倒すことを目的に攻めて 来るだろう。その隙に城へ突入してくれ。」「解かった。」 エルンテベルグはロナウハイドと二手に別れ、城への強行突破を開始した。思惑通り、 兵士の殆どがロナウハイドに集中した事もあり、城の中は手薄だった。ロニエール兵は 一人一人場内を探し回り、イルメラを探し出した。と、同時に囚われの身となって いたえられていたローザントの王妃ドロテアも救い出した。 「何故、王妃が囚われの身に?。」エルンテベルグが訊ねた。 「今この国を指揮してるのが第二王子のゲロルト。彼は昔王が下女に産ませた子でしたが 体裁をつくろう為、わが子として育てた子なのです。本来であれば第一王子のクナイプが 王位を継ぐはずでしたが、それを不服とし、謀反を起こしたのです。クナイプの妃である イルメラに不貞密通の汚名をでっち上げ、子供達をクナイプに殺させたのです。そして それを理由に乱心したクナイプは生かしておけぬと牢に閉じ込めてしまったのです。」 「何という事・・・イルメラは後継者争いに巻き込まれてしまったというわけか。」 「イルメラはロナウハイド王に助けを求めたようですが、それを予測していたゲロルトは イルメラを人質にヴァイスベア王子とアントニウス王子に降伏を求めたのです。」 一方、集団で攻撃してくるローザント兵を物ともせず倒し続けるロナウハイド。しかし 流石のロナウハイドも休み無く攻撃してくる兵士とよる歳並みには勝てない。万事急す かと思われたとき、ロニエール兵が駆けつけ、事なきを得た。 結局はロナウハイドに打ち勝つことは出来なかったゲロルト。父親である王を暗殺し、 母違いの兄とその子供達まで手に掛けた。 「思いあがりが仇になったな。血の途絶えたこの国は滅びの道を歩むしかないだろう。」 ロナウハイドの言葉にうなだれるゲロルトだった。 開放され、祖国へと戻ってきたヴァイスベアとアントニウス。助けられたという事実に 自責の念に駆られる二人。アントニウスは実姉のイルメラを助けるためだ、と言い訳を するが、ロナウハイドはそれを許さなかった。納得のいかないアントニウスはそれを ヴァイスベアに相談するが、ヴァイスベアもそれなりに悩んでいた。 「父上は我々が囚われていたにも拘らず城内へ突入した。もしあの時それをきっかけに ゲロルトがわれらの命を奪うことは考えなかったのだろうか。そう思うと、我々は父上に とって大事な存在ではないと言う事なのだろうか。家族だから大事にされていると思う のが間違いなのだろうか・・・。」 兄から打ち明けられた悩みに、アントニウスは答えられなかった。父が自分達にした 仕打ちの過酷さを嘆いた。 以来、二人はロナウハイドを避けるようになった。ロナウハイドもまたその様子に 悩んでいた。しかし、ロナウハイドもそんな悩みに拘っている暇は無かった。暇さえ あれば国の防御を固め、国民を守る事で頭はいっぱいだった。それと同時に寝たきりに なってしまったラケルタの事も考えてやらなければなかった。 ヴァイスベアとアントニウスは少しずつ、自分の父親に疑惑の念を抱くようになって きた。ヴァイスベアもアントニウスも、ロナウハイドが亡くなれば王位後継者として 玉座は回ってくる。しかし、それがいつになるのか。父親が生きている間、いつ自分達の 身に何か降りかかるか解からない。どうせ捨て駒にしか思っていないのなら、早く父親を 失脚させた方が身の為だ。しかし、どうやって父を失脚させる?。しかし、二人の考え などお見通しの者がいた。 二人を呼び出したのはエルンテベルグだ。ヴァイスベアとアントニウスは自分達の 思惑が既にロナウハイドに感づかれていたと知り、愕然とした。そしてエルンテベルグは 付け加えた。 「あいつにとってはお前達は自分の命よりも大事な家族だ。それをそんな風に考えて いたのか?。」 「しかし!!。」 アントニウスはエルンテベルグに食って掛かろうとしたが、ヴァイスベアがそれを止めた。 「あいつが家族を失ったとき、どれだけ辛く苦しい思いをしたか。だから、決して お前達を捨て駒になど考えてはいないさ。」 「・・・家族を・・・?。どういうことだ?。」 「・・・もしかして、知らなかったのか?。」 その言葉に、二人は驚きを隠せなかった。 「若い頃、マルモルという国の兵士だった時あいつは家族を持った事があった。だが、 その異例の出世を妬む者によって家族を皆殺しにされた。だから家族というものに対する 愛情は他の誰よりも強いはずだ。そんな奴が家族を、大切な家族を捨て駒にするわけが 無かろう。」 「・・・その話・・・本当なのか?。」「・・・初めて聞いた。」 「本当に知らなかったと言うのか・・・。」 「そんな話聞いたことも無かった。信じられない。」 ヴァイスベアは首を横に振った。 「・・・そうか、そうだな。あいつは・・・言いたくなかったのかもしれない。」 エルンテベルグは一呼吸し、再び口を開いた。 「中庭の、池の側に咲いている花の名を知っているか?。」 「スミレだろう。あとはユリ・・・。それが・・・どうかしたのか?。」 「その側に植えてある木は?。」「・・・覚えていないが・・・一体それが。」 「月桂樹とブナ。皆、あいつの家族の名だ。」「そうなのか!?。」 「・・・そう、スミレは妻だったウィオラ、娘のリーリウムはユリ、長男のラウルスは 月桂樹から、そして次男のファーグスはブナの木だ。言いたくはなかったが、忘れる 事はできなかった。そこまで家族という者に愛情を注げるあいつがお前達を捨て駒に などする訳が無い。」 「・・・けど・・・ならば何故!?。」 「ローザント城に突入する直前、俺はあいつに、お前達が人質に取られているのでは ないかと訊ねた。するとあいつは『子供達を信じている』とだけ言って突入して いった。つまり、そんな事で屈しない強き精神を持ち合わせていると信じていたから ではなかったか?。家族であればこそ、お互いの気持ちが手に取るほど解かるはず。 そうではないか?。」 二人は黙ってしまった。 「俺には家族という者がいないから、あいつのお前達に対する愛情の深さは解からない けどな。ただ、家族というものには、他人ではわからない強い繋がりがある。そう 思っている。」 エルンテベルグはそれだけを言うと立ち去ってしまった。後に残されたヴァイスベアと アントニウスはその後姿を黙って見続けていた。 主のいなくなったローザント。この王国にはもう王と呼びし指導者はいなかった。 不本意ながらも娘の嫁ぎ先であるこの国を滅ぼしてしまった。恐らく、守るべき 者がいなくなったこの地にはよからぬ連中が国の指導権を巡って無益な戦いを 繰り広げる事になるのは間違いないだろう。そうなれば、犠牲になるのはいつも一般 市民だ。ロナウハイドはそれを防ぐ為、次男のアントニウスに国の統治を任せる事に した。 「巧いことやったなロナウハイド王。それにしても何たる蛮行。最初からそれが目的 だったののだな。」 「と、言う事は娘を嫁がせたつもりで様子を見ながら機会を狙っていたのかもしれない。」 ローザントも実り豊かな土地柄、その地を狙っていたものも多い。そんな中、 ロニエールがローザントの国を奪ったと言いがかりをつける国も多かったが、大半が 自分達を差し置いて国の統治権を奪った事をよく思っていないのが明らかだ。中には ロナウハイドが無理矢理国の統治権を奪い取ったと思い込んでいる輩もいた。 それを理由に最初に攻めてきたのがグロッセンという国だ。ここの王ハインは密かに ローザントの国境付近まで近づいてきていて、一気に攻め入る計画を立てていたようだ。 しかし、その計画はローザントの兵の機転によって未然に防ぐ事が出来た。 ここで面白くないのがハイン王。 「奴ら・・・ローザントの兵を捕虜にしたのではなかったのか?。」 大抵、国同士の争いが起き、一方が負けると負けた国の兵士は処刑、或いは捕虜にされ 強制労働などに従事されるのが通例だった。しかし、ロナウハイドはあくまでも ローザントは統治国で、兵士もそのまま自国を防衛させると言う考えを持っていた。 国の方向性を決めるのはあくまでもローザント国民で、ロニエールはそれに力を貸す、 或いは国の危機が合ったときに手助けをする。という役割に拘っていた。 それは嘗てラケルタがアドウェルサを支配ではなく、統治で守ろうとした事に則っての 事だった。 しかし、そんなロナウハイドの考えをそのまま納得せず、自分達が都合のよい ように解釈し、ローザントに攻め入る理由をつけようとしていた。 グロッセン王ハインはなんとかこの状態を巧く利用して、ローザントを手に 入れようと計画を立てていた。 「ローザントの兵士を何人か捕虜にし、それを盾にローザントに攻め込む。それで ローザント国内にいるロニエール軍を追い払う。さすればローザントは自国を救出した この国に敬意を払う。ローザントの兵を味方につけ信用を得たところでロニエールを 一気に攻め落とす。そこで隙を作ってローザントを手中に収めるという筋書きだ。 さすれば二つの国を一度の手に入れられる。」 それを元にハイン王はローザントの国境まで密かに兵を進めた。 「よしっ、国境線を落とせ。だが、攻めるのは国境までだ。」 グロッセン軍はローザントの国境警備兵を数人人質に取った。 作戦の第一段階が成功したハイン王は、完全勝利を確信した。 「よし、ローザント兵を盾に一気にローザントへ突入する!!。いいか、倒すのは ロニエールの兵士だけだ。ローザント兵には手を出すな。ローザント兵を討ったと なると後で言いがかりをつけられんからな。」 「・・・兵士の区別が付きませんが・・・。」 「お前達、どこに目をつけている。軍章の違い位分かるだろう。」「はあ。」 捕虜にしたローザント兵を盾に国内に侵攻したしたハイン王とグロッセン軍。 しかし、ロニエール兵らしき兵は思ったより居ない。殆どがローザント兵で、ハイン王も どことなく違和感を感じてはいたが、ローザントを手中に収める事の方に気がいっていた 為、気のせいだと打ち消していた。 「我々は正義の名の下にローザントをロニエールから開放に来た。我が意思に同意し、 祖国を奪還する志のある者は我が膝元につけ!!。」 ハイン王はそう叫んだ。だが、誰一人として近づくものはいない。その時、遠くから 軍隊がやってくる。「攻めてきたな、ロニエール軍よ。」 しかし、やってきたのはローザントの軍隊と、ローザントの将軍シュピッテルだった。 「・・・。何・・・!!。」 「久し振りですなハイン王。この地に一体何の用ですかな。」 「これはこれはローザントにこの人ありと謳われた将軍シュピッテル。このローザントを ロニエールの支配から開放する為に我が国は手を貸す。どうだ、悪い話ではなかろう。」 シュピッテル将軍は辺りを見回し、冷静な態度で訊ねた。 「何ゆえ、我が国に手を貸そうとなさるのか。貴国はそれでどういった得があるの ですか?。」 「得・・・。」 ハイン王は黙ってしまった。ここまで言えば流石のローザントも自分の言う事を聞いて くれると思い込んでいたのだが、こういう質問をされるとは全く予想外だった。とにかく 何とかこの場を巧く回避できる答えを返さねば。 「・・・我々は正義の名の下、ロニエールに支配されているこの国を解放しようと ここまでやって来た。その為の協力は惜しまないつもりだ。」 「正義・・・ですか。国境線を力ずくで破り、更に我が国の兵士を人質に取っておいて、 それがあなたの正義というものですか。聞いて呆れますな。」 「何だと!!。」 すると、周りを囲んでいたローザント兵は一気にグロッセン軍に槍を向けた。 「話を聞け!!。私は・・・。」ハイン王は何とかして兵を引かせようとする。 しかし、ローザント兵は武器を納めない。「こやつら・・・。」 「言い忘れていましたが、彼らは我々の為国を守っているロニエールの兵。王亡き後の ローザントを他国から守るだけに配置された兵でしてね。仮に万が一、私がロニエールに 反旗を翻したとしても私についてきてくれる兵士な忠実な兵士です。しかもそうさせた のはロニエール王ロナウハイド。あなたの言う偽りの正義などこの国には必要ない。」 「な・・・・何っ・・・。信じられぬ。自国を攻められる可能性があるのにも拘らぬと 言う事なのか・・・。」 「ロナウハイド王はそれだけ懐の大きい王。あなたのように小さい男とは別格だ。 そういう事で、この国に対する協力とやらは御無用。早々にお帰り下さい。帰らぬと ならば援軍としてやってくるロニエール軍があなた方をこの地に沈めますが、宜しい ですか?。」 返す言葉が無いハイン王。いつの間にか人質だったローザント兵は解放されていて ハイン王は更に立場が悪くなる。 「っくっ・・・覚えておけ!!。」 ハイン王は退却せざるを得なかった。 ロナウハイドはアントニウスに約束を守らせていた。それは、あくまでもこの国は 統治国で、自分達の国ではない。 あの時の蟠りはエルンテベルグによって父親の本心を知ったアントニウスは少しずつ 父の思いを理解するようになっていった。それは長男であるヴァイスベアも同様で、 第一王位後継者としての責務を果たすべく王政に励んだ。 ロニエール王国の王ロナウハイドの名は増して知られるようになり、大陸半ばにある 列強国にもその名が知られるようになった。 「ロナウハイド・・・確かその名・・・。」 そう呟く者がいた。「まさか・・・南で王になっているとはな。」 ルブルムモンスに舞った砂嵐の中、不適な笑を浮かべた者がいた。 ある日の事。ローザントでアントニウスに仕えていたレーガトゥスが密かにロナウ ハイドの元へやって来た。「ロナウハイド王、話がある・・・。」 レーガトゥスは嘗てルブルムモンスでラケルタに仕えていた人物。忠実で、正義感が強く 今のロニエールにとってはなくてはならない人物だった。だが、アントニウスを教育 する為にローザントで若輩者のアントニウスに仕えていた。 「最近、王子がとある商人に心を許しているようなのだが、その人物と言うのがどうも 信用できない気がするのだ。その男、『アッキビテル』と名乗っているようだが、 話し方がどうもルブルムモンス人のような話し方なのだ。私の思い違いならよいの だが、これだけロナウハイド王の名が大陸中に知れ渡っているのなら、当然奴の 耳にも入っているのではないかと。そして、場合によってはこの国に攻め入ってくる のではないかと。」 ロナウハイドは少し考えた。 「お前は・・・ラケルタ殿の意思を継ぎたいか?。ウルスス王子の敵をとりたいのか?。」 「お言葉だが王。奴には私の両親も殺されている。奴は私にとって両親の敵でも ある。」 「レーガトゥス・・・。」「何か・・・。」 「敵討ちなど個人的な思いだ。それの為に兵士を動かすことは出来ぬ。俺もラケルタ 殿には語りつくせない恩義がある。意思を継いでウルスス王子の敵討ちと、ルブルム モンス奪還に力を尽くしたい。だが、今のこの国にとっては過去の話。今の兵士達には 何の利益も無い。」「・・・そんな・・・。」 レーガトゥスががっくりと肩を落とした。するとロナウハイドは立て膝を着き、目線を レーガトゥスにまで下げた。 「お前には引き続きアントニウスの様子を見ていてくれ。どんな小さな事でもいい。 何かあったら必ず連絡してくれ。よいな。」 ロナウハイドはレーガトゥスの瞳をじっと見て言った。レーガトゥスは一瞬驚いた様子を 見せたが、深く頷いた。そしてロナウハイドの心の内を理解した。 いずれは倒さねばならぬ相手、とというのがあるのなら、ロナウハイドが真っ先に 思い浮かべるのはルブルムモンスのプテロプースだろう。ラケルタの息子の敵討ち、 というのもあるが、自分に裏切りを迫った。恩義あるラケルタの目の前で。あの自慢と 傲慢に満ちた瞳は忘れることはできない。聞けばプテロプースは自分と同年齢。奴を 老衰で死なせるわけにはいかない。絶対にこの手で討ち取ってみせる。そう心に 誓っていた。 アントニウスは次男なので王位後継者としては第二位の位置にいた。が、今回ロー ザントを統治するという任務を任せられた事によって多少有頂天になっていた。統治 とは言うものの、ある意味王と同じ立場だ。ロニエールの次の王が兄ヴァイスベア、 それは変わりないが、自分はどこか端手の方にある小さな領地を与えられて終わり、 だとばかり思っていたところへこの話だ。アントニウスはこのローザントをロニエール より豊かで繁栄を極める大陸一番の国にしたいと考えていた。あちらこちらから様々な 商人等を集め、各国の珍しいものや武器等を手に入れようとした。 そんな息子を心配したロナウハイドは、アントニウスをロニエールに呼び出し忠告した。 「有頂天になる気持ちも解かるが、程々にしておけよ。もし国民投票で不信任案でも でたらお前は即失脚だ。解かるな。」 「分かりました。気をつけます。」 それだけを言うと、さっさとローザントへ戻って行った。 「何かと思って駆けつけてみれば、結局説教をしたかっただけじゃないか。少しは 私の事も信用して欲しいところだ。」 文句を言いながらローザントへ戻って来たアントニウス。父親に対する愚痴を レーガトゥスに零す。 「王子にも少し考えて頂きたいと思って王は仰っている。その気持ちを少しは 組んで頂かないと・・・。人を余り信用しすぎるのもよくありませんぞ。それに あの『アッキビテル』という者・・・。」 「またその話か。仮に父上が仰るとおりだとしてそれがどうしたというのだ。何か あったときぐらい自分でやり遂げられる。だが、父上は何も分かってはいない。私が どれだけこの国の事を思っているか。一体どうすれば父上は私を一人前と認めて くれるのか!!。」 「それはそうだが・・・。」 「これも皆ローザントを繁栄を極めたあの頃の時代を取り戻す為。国民とてそれを 望んでいるはずだ。」 アントニウスは改める態度さえも示さなかった。その為、もう一人の監視役である ローザントの元王妃ドロテアも気が気ではなかった。 その話を聞いてロナウハイドは少し頭を抱えた。ルブルムモンス人らしき商人の話は 考えすぎとして、有頂天になっている息子の事は悩まずにはいられなかった。 「何か悪い事が起きなければよいが。」 ただ、そう祈るしかなかった。 |
第三幕 第十章
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