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旧市街地クーダムでの発掘作業中見つかった石板は、瞬く間に世間の話題となり、誰もが
記された年代の特定と、そこに書かれてある文章の解読に注目した。場所が場所 だけに自国の遠い祖先の遺物ではないかという事で誰もが興味を持ったようだ。勿論この
私もその一人で、解析の依頼が自分の元へ来ることを期待していた。
皇紀暦1992年から始まった王墓の発掘調査で、王の遺品と共に発掘されたその石板は古い 文字で書かれているらしく、流石の発掘調査チームでさえも解読不可能だったという。 王家の遺品ならという事で、王家で古くから伝われていた文字の解読の専門家である
私が勤めている、リュッフェン国立大学へと持ち込まれた。
この石板の文字の解読は私にとってたっての願いだった事もあり、寝食を忘れる程夢中に なったのは言うまでもない。大学の固定電話に妻からの連絡が入り、どのくらい時間が経過 したのか知らされた時はかなり驚いてしまった。聞けば携帯電話のバッテリーも切れていた らしく何度電話をしても出なかった事でかなり叱咤された。 発掘チームの話では、旧ロニエール王国建国の父ロナウハイド王の墓石の近辺で埋葬 されていたらしく、建国時に関連するものではないかとの期待も高かった。私も荒ぶる
鼓動を押さえ解読すべく文字を読み始めた。
が・・・とんでもないことが分かった。書かれてある文字は現在リュッフェンで使われて いる文字ではない事は確かだったが、前身、ロニエール王国の頃の文字でさえない事が 分かったのだ。そうなれば発掘チームが解読できなかったのは無理もないと言えるだろう。 と、なると、この石板は旧王国時代よりはるか古いものになると考えられた。年代に換算 すれば王国以前、すなわち千年以上前の遺品という事になる。それによって考えられる 事は、伝説でしかなかった「オルケルト族」についても何か手掛かりがあるのかもしれ
ない、と言う事で私の興奮は益々高まった。
旧王国以前の文字を解読するとなると、新たな資料が必要になる。国立博物館にある 資料を見る為急いで向かった。館長に話をし、勝手に資料室へと足を運んだ。
王国時代、大きな儀式の際には旧文字等を使う場面がある。その「お手本」となる資料が どこかにあるはず。そう思いあちこち探してみた。 「お手本」は割とすぐに見つかった。通称ゲルマン文字と言われる古文字の描かれた 資料は持ち出し禁止の為、ここで解読しなければならない。念の為、石板の文字を写真に
撮影して来てよかった、と思った。
石板は、至る所が欠け落ちていて文字もその度に飛んでいる。欠けている文面を推測 しながら導き出した答えは・・・。なんと「勇者ロナウハイドと闇の神」についてだった。 言ってみれば「オルケルト神話」だ。 「・・・月による陰から現れた闇の神は、世界を闇で覆いつくそうとした。それに対し この世界の神は、大地の神々と世界が選んだ者達によって、炎の山に封じ込まれた。」 となっていた。 闇の神と、世界が選んだ者達。勇者ロナウハイドとは、その世界が選んだ者達の中の一人 なのだろう。もしかしたら、自分の祖先がその勇者と呼ばれし人物だったら、なんて事を 考えたらなんだか嬉しくなってきたのは言うまでもないだろう。 しかし、残念ながら「勇者ロナウハイドと闇の神」について記載されている文面はその たった二行だけで、あとは文章らしきものは無かった。見つかった石板はこれだけで、 あとはあっても殆どが粉々に欠けており、オルケルト神話の謎にたどり着く手掛かりは なかった。 嘗て高度な文明を誇っていたというオルケルト族だが、未だその手掛かりにたどり着く 事はない。その謎が解き明かされる日は来るのだろうか。 |
短編小説
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「レイカ・・・。」
母アシリアがそう呼びかけたので、王女マルガレーテは顔を見上げた。そしてもう一度、 寝台に腰掛けている母の膝に頭を埋めた。 「ごめんなさいね、心配かけて。」アシリアはそう言って娘の黒髪を撫でる。 「おかあさま。あのね、ひとりぼっち、いやなの。レイカはおそばにいたい。いいこでいる から、おねがい。」「レイカ・・・。」 アシリアは自分の身の上を呪う。この国ロニエールの王ハンス・シュタインブルグに見初め られ、心ときめかせて嫁いできた。しかし、第一子である王女マルガレーテを生んで以来、 すっかり体を弱らせてしまい、寝台から離れられない日々が続いていた。元々体も弱かった のだったが、出産を機に増して体を弱らせていた。王シュタインブルグは寝台から起き 上がれない妃アシリアの為、王妃の寝室に著名な画家であるアントニウス・キヘルニに 依頼し、天井一面に画を描かせた。窮屈な寝台の上での生活の中で、少しでも 気晴らしになればとの気遣いなのだろう。 アシリアはその天井画を見上げた。一人の若い男を中心に幾多の神と大勢の人々、そして 対成して描かれているのはこの世が恐れる闇の神の存在。このロニエールが統一される遥か 以前から伝わる神話の世界だ。「・・・勇者様。」 母の呟きが聞こえたのか、マルガレーテはもう一度母の顔を見上げた。そして母は静かに 話し始めた。 「むか―し、むかし、この世界には神様が沢山住んでおりました。神様によって人や動物 たちが生まれ、皆平和に暮らしていました。けれど・・・。」 アシリアは天井画の黒い部分を指さした。マルガレーテも母の指さす方向に目をやった。 「闇の神は、月の影でできた闇からその姿を現し、この世界を全てのみ込もうとしました。 それを知った神様達は、人間に力を与え、闇の神を倒してしまおうとしました。その一人が この大陸の勇者『ロナウハイド』なのですよ。」 「・・・このくにをつくったひと?。ずっとまえ、おとうさまがおはなししてくれたの。」 「そうじゃないの。このロナウハイドは神様の力を貰って闇の神と戦った勇者なの。闇の 神を倒した勇者ロナウハイドは闇の神をお山に閉じ込めたの。それがサントヴルカーン山。 この国を創ったロナウハイド王はその勇者様から名前を戴いたの。だから同じ名前の 別の人なのよ。」「別の人?。」「そうよ。」 「このえのひとは、ゆうしゃさまなの?。」「そう、勇者様よ。」 マルガレーテは画の中央に描かれた勇者ロナウハイドに目を向ける。 「ゆうしゃさまは、おかあさまのおびょうきをなおしてくれるかしら。」 「・・・そうね、そうだといいわね。」 アシリアはもう一度娘の髪を撫でた。幼い我が子に辛い思いをさせているかもしれない 事実がアシリアの心に重く圧し掛かる。 再び天井を見上げるアシリア。こうして娘にこの物語を語って聞かせられる日々が、 どれだけ続けられるだろうか。「勇者様・・・。」 祈らずにはいられなかった。この天井画の人々のように。 アシリアは祈りと共にこの物語を伝えていこうと心に決めた。 完
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まるで宴のように広間は盛り上がる。ただ、いつもの凱旋の宴とは違う雰囲気に、 エルンテベルグは疎外感を感じてならなかった。命令とは言え、こういう場は肌に合わない そう感じていた。元々はクーダムの将軍エンシュティルの提案で、ロナウハイド、エルンテ ベルグの他、何人かのルブルムモンス兵は、ここで家族を持ち、定住をするようにと この場を設けたという。
しかし、家庭を持つ事は勿論、誰か女性に対し何かを感じた事さえない。自分の分身とも いえる存在のロナウハイドのように誰かに恋をし、家庭を持つ憧れをも感じた事さえない。 「見合いなんてな・・・。」 美しい女性たちを必死で口説こうとしているルブルムモンス兵の盛り上がりを尻目に、一人 バルコニーへ出て夜風に当たり、夜空を眺めていた。 人生を共にしてきたロナウハイドには、冗談半分で彼の好みそうな女性を指さして促し たりもしながら、自分の事はどうでもいいとさえ感じていた。「あのう・・・。」 誰かに呼ばれた気がして振り向いた。自分が呼ばれたのか?。そんなはずは、と思いながら その方向を見る。美しい女性が一人自分を見つめている。その視線で彼女が自分に声を 掛けたのだとようやく気付いた。「エルンテベルグ様、でしたね。」「あ・・・ああ。」 「・・・わたくしの名はベルリーナー・・・。ベルリーナー・ヴィンセンハイマー。」 「あ・・・じゃ、あの学者先生の?。」「ええ、娘です。」 そう言われてエルンテベルグは彼女をまじまじと見つめた。「あ・・・。」 「いや、すまん。」
余りじろじろ見たので驚かせてしまったのか。何故か急に恥ずかしくなり下を向いた。 「・・・申し訳ない。」 「ああ、いいえ。こちらこそ。急に驚いたりしてごめんなさい。」 そう言われてエルンテベルグもやっと顔を上げた。
「何故こちらに?。」 「・・・そうだな。俺にとってあいつは一心同体だった。子供の頃からずっと・・・。」 「あ、いえ・・・そうでは無くて、何故宴の輪に入らないのかと、お一人がお好き なのかと。」
「え?。」エルンテベルグは目を丸くする。どうやら何か勘違いしていたようだ。 「いや・・・あ、あの、す、すまん。・・・。」急に恥ずかしくなり、照れながら頭を 掻いた。するとその勘違いが可笑しかったのか、ベルリーナーはくすくすと笑った。 「ごめんなさい。わたくしもきちんと言えばよかったものを。勘違いさせてしまい ましたね。」
「いや、謝るのは俺の方だ。すまなかったな。」 そう言うと彼女はにっこり笑った。 美しい笑顔だった。その笑顔にエルンテベルグは今までに感じた事のない程の鼓動を 覚えた。 こういう時、何か気の利いた言葉でも言えればいいのだろうか。しかし、相手は学者 先生の娘。教養なんて縁のない自分が彼女に気の利いた言葉を投げ掛けられるとはとても
思えない。
暫く考え、ようやっと言葉が出た。 「さっきの質問の答えだが・・・。宴の席が気に入らない訳ではない。いつもの宴なら よかったのだが、見合いとなるとどうしたらよいのか分からなくてな・・・。」 「・・・そうなのですか。だからお一人で・・・。」 ベルリーナーはそれ以上の事は言わなかった。エルンテベルグは側に美しい女性がいる、 それだけでもう胸がいっぱいだった。何か話さなければならない。とは思うが、何を 話したらよいのか考えもつかない。そう考えている今の状態が段々苦痛になってきた。 彼女のような美しい女性が側にいるのは嬉しいが、この雰囲気の苦手意識は耐えられない。 いっそ自分に構わず宴の席へ戻って欲しいとさえ思った。 宴が終焉するまで二人は一言も声を交わさなかった。迎えに来た父親に付き添われ、 帰って行った。「ベルリーナー・ヴィンセンハイマー・・・。か。」 エルンテベルグはそう呟いてみた。 あれからか彼女に会う事はなく、何日か過ぎて行った。聞いたところによると、 ロナウハイドは例のほくろの女性の元へ行き、求婚したという。自分も彼女の元へ 行けばいいのか、そうすればあの美しい人がいつも側にいるのか。だが、自分は学者 先生の娘であるベルリーナーと釣り合うはずもない。無学で愛想もない、こんな自分を 受け容れてくれるのだろうか。逢いに行ったところで逢ってくれるのか。今のエルンテ ベルグには一歩を踏み出す勇気がなかった。戦場では勇猛果敢に突き進んでいく エルンテベルグだったが、こんな時の勇気は微塵も持ち合わせていなかった。 やがて季節は過ぎた。ベルリーナーとは一度も逢わないまま、ルブルムモンス兵の 一人ブランデンが彼女を口説き落とし、結婚するまでに至ったという。 「ブランデンか・・・。」 エルンテベルグは何故か心の中に蟠りを覚えた。ブランデンはいい奴だ。自分より若いし、 夫として彼女を幸せにしてくれるに違いない。そう自分に言い聞かせたが、心の蟠りは 消える事はなかった。 再び彼女と会ったのは、何年か過ぎた頃だった。ベルリーナーがロナウハイドの子供達の 家庭教師として城に上がる事になったからだった。ロナウハイドの子供達、それにその頃 には彼女もブランデンとの間に子供を授かり、そしてその子達も学友として一緒に城で 勉強することになった。 歳月を経てもベルリーナーの美しさは変わらなかった。その事にエルンテベルグは再び 胸を打たれる。しかし、今更なんて声を掛けたらいいものか。いや、寧ろ声など掛けられる 立場などではない。すれ違っても何も言わずに通り過ぎるだけだった。 更に月日は流れた。再び彼女に会ったのは、ブランデンが戦場で命ををとしたという 知らせを聞いた後だった。名誉の戦死を果たしたブランデンの葬儀は国葬として執り行われ その列に参列したエルンテベルグ。家族を失った悲しみを顔に出さず、気丈に振る舞う、 彼女の姿にどれだけ胸が痛んだことか。だが、張り裂けそうな心を露わにすることもなく、 エルンテベルグは彼女をただ見つめていた。 夫を失い、未亡人となったベルリーナー。悲しい思いをしているであろう彼女に、優しい 言葉の一つでもかけられれば彼女は癒されるのだろうか。自分を見つめてくれるのだろうか。 そんな考えがエルンテベルグの頭の中を過る。だが、未亡人とは言え、人妻だった身。 自分が声を掛けただけでも世間は良からぬ噂をまき散らすだろう。そんな事で彼女を 苦しめたくはない。張り裂けそうな思いを堪えるしかないエルンテベルグ。六十歳も超え、 こんな年寄りに声を掛けられても彼女は嬉しくもなんともないだろう。エルンテベルグは 一人勝手に想像し、、悲しみに暮れていた。 ある日、凱旋を終えたエルンテベルグ。剣をぶら下げていた下げ紐が切れていたのに 気づかず、通路の真ん中で剣を落としてしまった。大きな音に周囲が注目する。慌てて 剣を拾おうとしたエルンテベルグは伸ばした自分の手の他に、もう一つの手が伸びて いたのに気づく。「あ・・・。」「エルンテベルグ様。」 そう呼ばれてはっと気づく。ベルリーナーだった。彼女は自分を覚えていたのか。彼の心の 中にあの切ない思いが再び蘇ってきた。 「下げ紐・・・治させてくださいな。」 ベルリーナーはそう言って手を出した。どうする?。断る理由など無いはず、はやる 気持ちを押さえ、呼吸を整えた。 「ならば、お願いしよう。」そういって下げ紐を渡した。 その翌日の事。ブランデンの屋敷から遣いが来た。 「奥様よりエルンテベルグ様にお渡ししたいものがあるとか。お屋敷までご足労をお願い したいとの事です。」 何だろう。下げ紐の事か?。だとしたらこの使いの者に持たせても良かったのではないか。 だが、彼女にまた会える喜びも隠せなかったので、直接会いに行った。 屋敷に行くとベルリーナーが快く出迎えてくれた。 「お待ちしてました。さあ、中へどうぞ。」「あ・・・ああ。」 すぐに戻るつもりでいたのに、成り行きで屋敷の中へ入る他なかった。こういう屋敷では 決められたマナーに沿って接待されるのが習わし。だが、そういう場はエルンテベルグに 取って苦痛でしかない。とんでもない所へ来てしまったと後悔する。 ところが、ベルリーナーは居間を通り抜け、中庭に案内した。そこに敷物を敷き、 腰を下ろした。そして籠の中から焼き菓子のトーテを取り出し、ハンカチーフを皿代わりに 乗せた。「はい。どうぞ。」 あまりの突然の展開にエルンテベルグは戸惑う。「お座りくださいな。」 「あ、・・・ああ。」
エルンテベルグは言われるがままに敷物の上の腰を下ろす。そしてトーテを手で摘まみ、 口に運んだ。「・・・旨いな。」 「良かった。お口に合わなかったらどうしようかと思っていましたから。」 まるで少女のような微笑みにどきりとするエルンテベルグ。 「堅苦しいのはお嫌いだと伺っておりましたので、こうしてみたのですが、失礼では なかったかと。」 「いや、とんでもない。気を使わせてすまなかったな。もう一つ、食べてもいいか?。」 「ええ、勿論。」 暫く沈黙が続く。するとベルリーナーはエルンテベルグの方に顔を向けた。 「ようやく来て下さいましたね。」「え・・・?。」 何の事だろう・。何か約束でもしていたのだっただろうか。だが、全く心当たりはない。 「初めてお会いした時の事・・・覚えておられますか?。」 核心を着いた質問に最初は戸惑ったエルンテベルグは少し考えた。そして素直に認めた。 「あの見合いの日の事、忘れる事など出来なかった。」 暫く考えていたベルリーナー。そして覚悟を決めたように話し出した。 「わたくしは・・・。あの後、あなたが来て下さる事を望んでいたのですが、その願いは ずっと叶わなかった。そして二十年経った今、ようやくその願いが叶いました。」 「・・・俺が・・・?。」 エルンテベルグは胸の奥に沸々と湧くときめきを隠せない。けれど相手は人妻。未亡人 とは言え軽はずみな行為は巷の噂になる。自分一人ならいいが、彼女を好奇の目に晒す 訳にはいかない。 「・・・俺を待っていたのか。・・・。」 あの時、勇気を持って彼女の元を訪れていれば、彼女に寄り添うのはブランデンではなく、 自分だった。けれど今はどうにもならない。 彼女は自分を望んでいたのか。しかし、自分が行動を起こさなかったから、ブラン デンを選んだのか?、そうとしか思えなかった。 残りのトーテを摘まもうとした時、ベルリーナーの白く細い指が目に入った。その手に 触れたい衝動に駆られる。「いや・・・。」エルンテベルグは小さく呟き、自分を押さ えた。 気付けばエルンテベルグが一人でトーテを平らげていた。 「・・・ありがとう。ご馳走になったな。」そう言って立ち上がった。 「いえ、こちらこそ。」ベルリーナーも立ち上がろうとした、が、足元が不安定だった のか、よろけて尻もちをついてしまった。「あ・・・。」 「大丈夫か?。」エルンテベルグが声を掛ける。 「ごめんなさい。足を取られてしまって・・・。助けて下さいますか?。」 ベルリーナーはそう言って手を差し出した。エルンテベルグはその手を掴もうとした。 その指には指環が嵌められている。それに目が釘付けになるエルンテベルグ。一瞬 戸惑ったが、その手を掴み、彼女を引き上げた。「ありがとうございます。」 彼女の暖かい手に心が揺れ動く。だが、その指環も気になる。ブランデンとの思い出の 指環なのか?。そう考えたら自分のベルリーナーに対する心の揺れが酷く滑稽なものに 思えた。当たり前だ。彼女はブランデンと二十年近くも家族として暮らしてきた。情が ないはずもない。エルンテベルグは俯く。自分の感情が顔に出ないように。この感情が ベルリーナーを傷つけてしまうのではないか、貞淑な妻の身を穢してしまうのでは。 そう考えていた。 「・・・この指環、母の形見なんです。」「あ・・・。形見!?。母親の。」 エルンテベルグは拍子抜けした気分だ。 「母はわたくしが幼い頃に亡くなりました。以来父が男で一つでわたくしを育ててくれ ました。母がいない分悲しい思いをしないようにと、父がくれた物なのです。悲しい時、 辛い時、この指輪で母との思い出を支えに生きてきました。」 「・・・そうか。思い出の指環か・・・。」 城に戻ってからも、エルンテベルグの心の揺れは納まらなかった。あの言葉が真実だと すれば彼女は自分に思いを寄せていた事になる。あの夜、バルコニーで一人になっていた 自分を探し出し、声を掛けてくれたあの行為にも納得がいく。なのに自分は勝手に想像し、 彼女の想いを断ち切っていた。「ベルリーナー・・・。」 ときめく思いを止められない。思わず口から出た言葉は、流れ星と共に夜空に消えた。 以来、ベルリーナーとエルンテベルグは城で逢う度、二、三度言葉を交わすように なった。何を話す訳でもなく、時折二人で遠くを眺めては視線を交わす。言葉にしない 想いは二人の仲を急速に縮めていった。 時にはベルリーナーの話に耳を傾けるエルンテベルグ。幸せだった。こんな日々がある のかとエルンテベルグは小さな感動を覚える。身を寄せ合う事もなく、ひたすら同じ 時間の流れを過ごす。お互いそれ以上の事は何も望まなかった。 もし、今よりももっと、もっと若ければ激しく想いの糧を彼女にぶつけていたかも しれない。お互いを語り合い、もっと深く「愛」というものに心乱していたかもしれ ない。 けど、今の彼女は亡くなったとはいえ夫があった身。その身の上から道を外れる事は 誰も良くは思わないだろう。そんな事で彼女を傷つけたくはない。後ろ指刺される ような真似はさせたくはない。だからこうして何も言わず同じ時の流れを過ごしたい。 自分は明日の命も分からぬ身。この世に未練を残すつもりなど無かった。しかし、今 だけは・・・この幸せに包まれていたい。そしてベルリーナーも何も言わなかった。 これは「愛」と呼べるのか。心だけの繋がりを「愛」と呼ぶのだろうか。いや、身を 寄せ合うだけが愛では無いはず。二人の仲を世間が認めないなら、せめて心だけでも 繋がっていたい。彼女も分かっているのだろう。我儘ひとつ言わず自分の側にいてくれる。 もしも今よりもっと若ければ、この手を伸ばし、彼女に触れようとしていただろうか。 耳元で自分の想いを囁いていただろうか。その気持ちを押さえてそっと彼女を見つめた。 そんな幸せな日々をエルンテベルグは心の糧にしていた。例えこの命が尽きようと、 この幸せな日々はきっと忘れる事はないだろう。 「奴を討つのか。」「ああ、」 「やっと腰を上げたか。臆病風が吹いたのかと心配していたぞ。」「馬鹿を言うな。」 ロナウハイド王がプテロプースを討つ為、ルブルムモンスへ行くという。 「俺が居なければ、奴は討てないだろう。」 「そうじゃない。お前がどうしてもついて行きたいというなら連れて行く、という事だ。」 「俺を見縊るなよ。」 「そう言うと思った。」 二人の男はそう言って肩を組み合った。 完
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明日の天気は晴れのち晴れ(下)
「食いっぱぐれないように、か。確かに、夢だけじゃ食えないしな。」
二人は青空を見上げた。「あ。」
誰かが自転車で近付いてくる。「総司ー。おっかえりー。」
自転車は総司たちの側で止まった。
姉の乙芽だ。総司愛用の自転車に乗っている。「え・・・だ、誰?。」
乙芽の事を知らない美智葉は戸惑う。「俺の、姉・・・ちゃん。」
「え、お姉・・・さん?。あんたにお姉さんなんて・・・。」
美智葉の質問を物ともせず、乙芽は総司を自転車の後ろの荷台へ乗るようにと
急かす。「じゃ。」
そう言って自転車をこぎだした。
「おい、どこ行くんだよ。」「いいからいいから。」
自転車は滑るように街の中をすり抜けて行く。
「二人乗りはだめなんじゃないか?。ケーサツに職質されるぞ。」
「大丈夫、すぐそこだから。」「すぐそこって・・・何処?。」
やがて大きな鳥居が見える所まで来た。乙芽はその鳥居の下で自転車を降り、
「降りていいよ。」そう言った。「ここ・・・熊野さん?。」
鳥居には熊野神社と書かれてあるが、この界隈の人達は皆「熊野さん」と呼んで
いた。ここには小学三年の頃にお祭りで来た以来、足を運んでいない。
こんな神社に何があるんだろう。自転車を押して歩く乙芽に就いて、神社の敷地へ
入って行った。自転車を止め、鍵を掛ける。手水鉢で手と口を清め、社殿に
向かってお参りをする。まさか、合格祈願じゃないだろうな、とそんな風に思った。
「こっち。」
乙芽は社殿の裏に回る。総司も彼女の後を追い、社殿の裏手に向かう。社務所を
横目で見ながら傾斜のある山道を登り始める。「どこ行くんだよ。」
「いいから。」
乙芽は小径をどんどん登っていく。「何処まで行くんだよ。」
すると乙芽は総司の質問には答えず、「ねえ、さっきのコ、あんたの彼女?。」
と訊ねた。
「ンなわけないだろ。ただの友達。六年生の時転校して来てあそこに家建てた。
それだけ。」「ふーん。」
乙芽は意味ありげな返事をする。
やがて頂上が見えてきた。到着した途端、乙芽は思い切り背伸びをする。「うーん。」
総司も頂上にたどり着き、辺りを見回す。
「この神社に、こんな場所があったなんて。」
頂上からは総司達の住む団地が一望できる。初めての景色に少し感動さえも覚えた。
「ねえ、ここへ来たのって、初めて?。」
「うん。熊野さんの裏手の山が登れるなんて、知らなかった。」
総司は暫く街の風景を眺める。遠くには電車が走っているのが見えたり、高いビルが
連なって見えたり、普段目にしない光景に、非日常的なものを感じた。
「凄いなあ、俺らの住む街って、こんな風になってたんだ。」
「ここはねえ、私の秘密の場所。誰も来ないんで勝手に決めちゃってた場所。」
そう言った姉の横顔に、総司は目が釘付けになった。
「中学・・・落ちたんだってね。」
それを聞いた途端、今までの感動がすっと消えた。その話かよ、となんだかムッとする。
「私もね、実は今年大学、落ちてんだ。」
「え・・・大学受験してたんだ。で、今、どうしてるの?。」
「結局は第二志望の学校へ行ったんだけど、やめちゃった。だから今はニート状態。」
「やめるって・・・退学って事!?。なんでやめたりしたの?。」
思わず質問したが、言って後悔した。もしかして、まずい事聞いちゃったのか?。
けれど、乙芽はすぐに答えを返した。
「なんか、面白くなかった。っても授業とか校風とかじゃなくて、そこに集まって
来る人達が自分とは違うって感じたから。私はここに勉強したくて来たのに、
授業料払って進学させてくれた養父母の為に頑張ろうって思って入った学校
だったのに・・・。」
乙芽はちょっと考えている。総司はあえて何も言わず、黙って話を聞いている。
「一緒に入った連中は、皆『サークルを頑張りたい』って言ってみたり、意味もなく
バイトに精を出したかったり、遊び歩いて単位を落としそうになったりとか、詰まる
ところ就職の時の履歴書に『大卒』って書きたい為だけに入学した連中ばっか
だったんだよね。そういう連中と一緒ってのが、なんか、情けなくて・・・
我慢ならなかった。向こうの親は、『気にするな』とか『第二志望があるから』なんて
言ってくれたけど、今にして思えばもっと強く叱って欲しかったなって。けどさ、
そんなこと言ったってしょうがないよね。大学落ちたのは自己責任だし、自分の
勉強不足でこうなっちゃたんだもん。」
自己責任・・・そうだよなあ。自分も中学受験で落ちたのも、受験をナメて
かかっていたところもあるのかもしれない。母は自分に責任を感じてたようだけど、
結局のところ受験するのは自分なんだし、他人がどうこうしたところで何の対策
にもなるわけがない。受験というものにもっと真剣に向き合わなければならなかった。
それを怠った自分に非があった。だったら、今度は本気で頑張るしかないよな。
と、そんな風に思った。
「うーん・・・。」
乙芽は大きく背伸びをし、深呼吸した。
「私ね。どうしようかって悩んでた。勿論今のままでいい訳がない。もう一度、
第一志望の大学受けようかどうかって。・・・で、今決めた。やっぱりもう一度挑戦
してみようって。」
「じゃ、また大学受験するの?。」「そう。」
頷いた乙芽の顔が夕日に照らされ、赤く色づいている。その横顔は何故かキラキラと
輝いたように観えた。
「明日の天気は晴れのち晴れ!!。」「何それ?。」
「いい事の後に悪い事が起きる、悪い事の後にはいい事が起きる。なあんて考えない。
いい事の次もいい事が。そしてその次もいい事。ずっといい事って考えるの。そうじゃ
ないと悪い事ばっかじゃん!?。いい事と悪い事は紙一重。悪い事も見方を変えれば
いい事に変わるかもしれないって思うんだよね。」
「それって、どういう事?。」
「第一志望の大学に合格できなかった、それは私の中では『悪い事』なんだけど、それが
あったからこんな風に考えられるようになった。受かってたらこうは思わなかった、
そう思うの。受かってたら、向こうの親にお金出させてもらって大学へ行く
有難さってのも分かんなかったかもしれない。いってみれば、ひとつ大人になれた、
って。」
「・・・大人ねえ・・・。」
総司はそう言ってもう一度景色を眺めた。夕焼け空が空一面に広がっている。
「明日の天気は晴れのち晴れ」そう信じてやるしかないか。
明日もいい天気だな、総司の目にはそう映っていた。
完
以前から書きたいと思っていた短編小説を上げさせてもらった。これまでとは
随分と違う世界観の物語で、書きたいことが伝わったかどうか不安に思う
部分もあるが楽しんで読んで頂けたら幸いと思う。
今後も、機会があればこういった短編小説を上げていきたいので宜しく。
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明日の天気は晴れのち晴れ(上)
終業のベルが教室中に響く。「よし、あとは宿題。来週まで提出だ。」
先生はそう言って教室を出て行った。クラスメイト達は皆ざわざわと音を
立てて机を移動させる。
「掃除かあ・・・。」掃除当番が面倒クサそうに掃除用具を取り出すのを横目で
見ながら、総司はかばんにノートを詰め込み、教室を出て行った。
「あ・・・、中川!!。待ってよ。」
近所に住む同級生の今野美智葉が声を掛ける。総司は気づかない振りをして、
玄関へと向かう。「もう・・・待ってって言ってるのに。」
「何だよ?。」総司はやれやれといった風に美智葉の方に顔を向けた。
「この間借りたノート、返すの忘れてたから。」「あ・・・ああ。」
突き出されたノートを受け取り、かばんにしまう。「ね。一緒に帰らない?。」
「はあ!?。」「・・・へーえ、驚いた顔面白い。」「なんだよ、馬鹿にしてンのか?。」
「いやー、冗談冗談。」「ちぇっ。・・・全っ然、つまらない!!。」
総司は下駄箱から靴を取り出し、かかとを踏み潰したまま外へ出た。校門を抜け、
自宅へ向かって歩き出す。
「ねえ・・・。短期講座、受けるんだって?。」「え!?。なんでそんなこと知ってンだよ。」
「お母さん話してたもん。そんでこっちもとばっちりよ。ウチのお母さんも
『あんたも受けてみない?』だってさ。」「おめーと一緒かよ。」
「しょうがないじゃん。受験生、なんだからさ。」
受験かあ・・・。総司は三年前の事を思い出す。中学受験で中高一貫の私立の学校を
受験したものの、見事に不合格だった。仕方なく地元の公立の中学校に入り、高校受験で
希望校を目指すつもりだった。今回こそは合格して貰わないと・・・。母は口癖のように
何度も繰り返す。その為、家の帰るのが憂鬱だった。けど、寄り道する場所もない。
仕方なく家路を急ぐだけだ。
「じゃ、私ここで・・・。またね。」団地の入り口にある新しい家に向かい、美智葉は
入って行く。「ただいまー。」その声を背中で聞きながら、奥にある自分の家へと向かった。
夕食を終え、テレビのお笑い番組に夢中になっている総司。
「ねえ、総ちゃん。そろそろ休憩は終わりにしない?。」
母が勉強させようと総司を追い込む。
「いいじゃないか。この番組が終わるまで休ませてやっても。」
父が助け舟を出してくれた。「でも・・・。」
「来週から短期講座受けるんだから、今はいいじゃないか。」
父はお茶をすすりながら母に顔を向ける。すると母は大きくため息をついた。
「仕方ないわね。じゃ、それが終わるまでよ。」
ピンポーン。いきなりチャイムが鳴った。「誰かしら、こんな時間に。」
母は慌てて玄関へ向かう。
「こんばんは・・・。」
若い女の声だ。
「ちょ、ちょっと・・・。」そう言いながら母がリビングに駆け込んできた。
「どうした?。」
母が父に小さな声で耳打ちした。「何だって?。」
若い女は家の中へ入ってきた。どこかで見た事のある顔なのだが、思い出せない。
「総ちゃん、久しぶり。大きくなったね。」
総ちゃん、そう言われて思い出した。十年ほど前に、養女へ貰われていった
たった一人の姉の乙芽だ。「どうしたんだ、突然。」
父も母も動揺を隠せない。「暫く厄介になるけど・・・いい?。」
「あ・・・ああ。」
「ねえ、向こうの・・・お、お養父さんやお養母さんは、ここへ来る事を知ってるの?。」
「ううん。黙ってきた。」
呆気にとられる両親を他所に、二階の空き部屋へ向かって行った。
お笑い番組も終わっていた事もあり、総司も二階の自分の部屋へ向かった。
何となく興味がない振りを装いたかったが、気になって仕方がない。音を立てない
ようにそっと空き部屋へ近づいた。「わっ!!。」
いきなりドアが開き、乙芽が顔を出した。「あ・・・あ、あの。」
総司は何か言い訳しなければならない衝動に駆られた。「どしたの?。」
「い・・・い、いや・・・なんでも・・・。な・・・。」
「私がどうしてここに来たか、知りたいんでしょ。」
そんな事を質問するつもりはなかったが、そういう事にしておこう。
とりあえず少し話を聞いてみる事にした。
とは言え、乙芽は詳しく話をするわけでもなく、ただ総司の事をあれこれと尋ねる
だけだ。「へーえ、じゃ受験生なんだ。ま、頑張れよ。」と言ってポンと肩を叩く。
「えーっと・・・。」言いかけたが、乙芽は空き部屋へ入り、ドアを閉めた。
総司は仕方なく自分の部屋へ行き、宿題を済ませる事にした。
翌朝、いつもより少し早く目が覚めた。隣の空き部屋に寝ているであろう姉の事が
気になって仕方がなかったからだ。身支度をし、リビングへ向かった。
「おはよう。今日は早いのね。」「・・・。ん。」
ぶっきらぼうに返事をする総司。母が台所仕事をしいている。父はまだ起きて
いないようだ。乙芽は起きたのだろうか、いや、それよりもまだこの家にいるのか。
聞いてみたい気もするが、お喋りな母の事、いつの間にか自分の受験の話にすり替わって
しまう事を恐れ、ぐっと堪えた。「あのね・・・。お姉ちゃんの事なんだけど。」
話を切り出したのは母の方からだった。
「夕べ、向こうの親御さんに電話したのよ。心配してるかと思って。『やはりそちらに
居ましたか。』って言われて・・・。お父さんとも話をして、あの子の気の済むまで
いさせてやろうかって話になったのよ。」「・・・。」
「・・・。ねえ、聞いてる!?。」「聞いてるよ。」
総司は食パンにジャムを塗り付ける作業を繰り返しながら、不貞腐れたように答える。
「あんたの受験の事もあるけど、あんまり気を遣わせるのも気の毒だし・・・どう?。」
「何が?。」すると母は総司に近づき、声を小さくした。
「あの子がいる事で受験に差し支えるんじゃないかって。」「別に・・・。」
「ホントに?。大丈夫なんでしょうね。」
「別に、構わないんじゃないの。」
「あんたがそういうなら・・・。けどね。お母さんも心配なのよ。前の事もあるし。」
「・・・。」総司は立ち上がり、「もう行くから・・・。」
「で、でも、サラダ、残ってるでしょ・・・。それから・・・。」
母が言いかけた途中、父がリビングに入ってきた。「やめないか。朝から。」「だって。」
「朝からそんな事を言われたら、総司じゃなくても面白くないだろう。朝ぐらい、
受験のことは言わなくてもいいんじゃないのか。」「でも・・・。今度こそは・・・。」
両親の会話を背なかで聞きながら、リビングを出る総司。
「今のあいつは自分でもどうしていいのか分からないんだ。反抗期というのもあるし、
少しは自由にさせて、あいつのしたい様にさせた方も・・・。」
二階への階段を上る総司の耳に、そんな会話が入っててきた。
母の気持ちも分からない訳ではない。中学を落ちたのは、自分にも責任があると
感じているところもあるようで、しつこいくらいに言ってくるのもその為じゃ
ないかと思っている。けど、今は何だか言う事を聞く気がしない。父が言っていた
「反抗期」なのかとも思った。
今日も帰りは美智葉と一緒になった。特に何を話すという事はなかったが、沈黙の
まま家へと歩く。何か話さなければという衝動に駆られ、何を話そうかと思いを
巡らせる。
「えーっと、今野さあ、どうすんの、短期講座。受けンの?。」
「うん。いざという時の為に、非常線張っておこうと。」
「戦国武将かよ。」「似たようなもんじゃん。受験も戦も。」
「ふーん。で、どこ受けンの?。高校。」
すると美智葉は少し考えた。
「もしかして、私の事ライバルとか思っているとか?。」「今野がライバルなら、楽勝だ。」
「ひっどーい。けど残念。私、中川と同じ学校、受けないから。」
「え、俺が受けるトコ、知ってンのかよ。」
総司はまたお喋りな母が言いふらしたのかと思い、むっとした。しかし、美智葉は首を
横に振る。
「まっさかあ。そうじゃなくて、私が受けるのが女子高校なだけ。」
「あ・・・そういう事。」
総司はホッとすると同時に、自分の勘違いが可笑しくなり、声を立てて笑った。
「ちょっと、そこ笑うトコじゃないでしょ。女子高受けるの、そんなに変?。」
「ごめん、違う違う。俺の母さんが言いふらしたのかと思って。俺の勘違い。
どっちかって言うとそっちが可笑しかったから。」「なあんだ。」
二人は再び歩き始めた。
「私ね。女子アナ志望なんだ。」
「え?アニメの声優はどうしたんだよ。」
「現実的な事を考えて堅実に会社員になろうと思って。将来食いっぱぐれないように。」
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