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「そう言えば・・・奴と口を利いたのはあのときが初めてになるか。」
そうだ、あの廃ビルで奴を追い詰めた時だ。あの時奴に言われた言葉・・・。自分が あの場に来ることも、警察が突入してくる事も予想していた。 「もしかしてあの時、俺があそこで捕まれば四つ目の爆弾設置は なかったんじゃないか?。」ユーリウスは呟いた。
「何か分かったかね。」 「恐らく、奴はあの廃ビルで私が逮捕されると確信していたのかも しれません。だが、辛くもあの場で逃げる事が出来た。だから慌てて
四つ目の爆弾を仕掛ける事になったのではないかと。だが、私の行動範囲がどうしても分からない。だから仕方なく警察庁近辺に爆弾を設置する事に
した。それにこうすれば『国家警察に対する挑戦状』とも取れる、まさに
一石二鳥だったのかもしれませんね。」
「そういう事か。まさかアトラテック城に身を寄せているとは夢にも 思わなかっただろうにな。」
テレビのニュースでは相変わらずこの爆破事件について物議をかもし 出している。中にはユーリウスの名前が偽名で、真犯人は別の名前では
ないかという専門家もいたが警察庁は証拠がこれだけ揃っているから、
ユーリウスが容疑者である事は覆せないだろうという意見も多かった。
自分が容疑者として呼ばれるのは癪に障る。これ以上観てても気分が 悪くなるばかりだと思い、宿舎の部屋に篭る事にした。
他にやる事も無いので、暫くやってなかった筋トレでもするか、と 考えていた。公表された犯行声明によると、爆破予告が午後二時になって
いる。「二時か。」
それまで余りうろちょろしないほうが身の為だ、さてと、これから どうやって時間を潰そうか。
あとがき: 毎年の行事にしている「震災後の被災地の様子巡り」にまた 今年も行ってきた。8年も経過すると以前観た風景とはだいぶ 様子が変わっているのが分かる。ナビゲーションシステムには ない道路などがあって驚く事もある。 流石に瓦礫の山や消毒の後はもうなくなってはいるが、ただ、 あちこちで目立つのは工事途中で断念した場所や建設物だ。建設を 諦めたのではない。資材や人材不足で保留とされている建設物だ。 個人的にその理由を、「2020TOKYOオリンピックの為の新国立 競技場建設」を優先させている為だと思っている。 震災直後に国は「今後6年間は復興に向けて復興援助を保障する」 そう言っていたが、2020年のオリンピック東京大会が決定すると 手のひらを返したように、援助は打ち切りとなった。 オリンピック開催となれば、こうなるのは誰もが気付いていたはず。 それを、「開催までに復興を終了させる」と国際オリンピック委員会に 断言していたが、結局、約束は果たせぬままだ。 選手として頑張っている方には申し訳ないが、せめて2024年か 2028年の開催でもよかったのではないかとさえ思う。 国はその事をどう思っているのか。この現状を見て頂きたいと 心から思う。 |
サント・マルスと混沌の邪神〜アト
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「今日午前九時頃に送られてきた、ユーリウス・ヴォルフガング容疑者
からの犯行声明分によると、今度は警察庁の建物がある付近に爆弾を 仕掛けたといった内容である事が分かり、付近の住民の避難が急がれて います。また、この件につきましては先日押収された容疑者のものと 思われるパソコンからも犯人の割り出しに余念が無い模様です。これ 以上の被害を出さない為、一刻も早い犯人逮捕を祈るばかりです。」 「警察庁か・・・待てよ・・・なんで警察庁なんだ?。」 一緒にテレビを観ていた王が話し掛けてくる。 「・・・警察庁か・・・何か関係あるのかね。」「いいえ、全く。」 「だとするとこれは一体どういう事だ?。」 ユーリウスにも全く心当たりが無い。だが、何か引っかかる。 「どうかしたかな。」 「今までの真犯人の行動パターンと自分の足跡を照らし合わせて みてるんです。まず最初に、食事をしたホテルのレストラン、 次が自宅、そして軍の駐屯地。だが何故今度は全く縁も無い場所 なのか?。」 「犯人が別人、という事は考えられないか?。」 「つまり便乗犯という事ですか?。」「多分な。」 ユーリウスは考えた。けど、ヒントになるものは思いつかない。 「何か引っかかるが・・・。」そう言って背伸びをした。 「引っかかるって、何がだ?。」 「分かりません・・・、ただなんとなく附に落ちなくて・・・。」 「うーん。・・・ところで、その真犯人、なんて名前だったかな。」 「ワナギースカ、だったかと。」 「その人物は君の事をどれくらい知っているのかね。」 「・・・いや、多分それ程の事は知らないかと。軍にいた時は、顔は 知っていたが、話もした事もなかったですから。だから私の事を 知っているっていっても、例の私の友人からの情報しかないはず。 と言っても軍内では自分の事なんてそんなに 話さないですから。」「そうか・・・。」 二人は再び黙ってしまった。 あとがき: 宮城県気仙沼市にある県立気仙沼向洋高校の旧校舎が 震災遺構並びに「伝承館」として開館したという。 同校は震災時に4階建ての4階建て部分まで津波が 押し寄せ、大きな被害を受けた。写真で見る限りでは 津波の際に割れた窓や机、椅子などが散乱しており、 津波の破壊力の大きさ、悲惨さを物語っているように 見えた。 実際に旧南校舎の1階と、3、4階の一部分など内部に 入って見学できるという。また敷地内にある「伝承館」 では、津波が到達した際の映像や、震災直後の写真なども 展示してあるという。 震災の歴史を後世に残す「震災遺構」の一つに加わった この場所へ、近いうちに足を運びたい。因みに震災遺構 及び伝承館は10日より開館されるという。一人でも多くの 人に足を運んでいただき、決して風化される事の無いように 願いたい。 |
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「ん?。ティマイオスか。どうした?。」
「人々が憂い始めている。例の宗教団体の教えに皆少しずつ賛同している ようだ。事実は変えられないが、『道』とやらの虚偽の教えをのさばら せてはならない。」 「・・・要するに、『出来もしない事を出来ると言って人々を迷わせるな』 って事か?。」 「その通りだ。」 「こいつは面白くなってきたな。奴が挑戦状を叩き付けるなら、受けて 立とうじゃないか。ユーリウス・ヴォルフガングの名を騙り、犯罪者の 濡れ衣を着せた事、絶対に後悔させてやる。」 「それも大事ではあるが・・・。」ティマイオスは不満そうに呟く。 「・・・いや、宗教団体の方もぶっ潰すが・・・。」 世間にユーリウスの顔写真が公開された。軍の上層部が幾ら庇おうと
しても、下の階級の隊員は、国家警察が公務執行権を振りかざされると 逆らえないのだろうか。結局上層部がどんなに隠そうとしても情報は 漏れてしまう。 「国家警察のトップって、確か天下りじゃなかったっけ・・・。」 テレビのニュースに向かって文句を言ってみる。軍がここまで立場が 弱いとは思わなかった。確かに、粉争とか内乱とか起これば軍の仕事には なるが、それ以外は災害救助などしか仕事が無い。それに掛かる国家予算が 税金で賄われ、その負担が庶民に圧し掛かってくるとなると、庶民の不満は つのるばかりだろう。目に見えている活躍が無いのに税金だけが掛かる。 言ってみれば軍部はかなり肩身が狭い。その分国家警察が幅を利かせて いるのでは、といった専門家の意見を聞いた事がある。 テレビからいきなりポーズ音が聞こえた。「・・・臨時ニュース!?。」 「・・・今、警察庁から情報が入った模様です、どうやら四箇所目の 爆破予告が警察庁に送りつけられた様です。ただ今現場から中継が繋がって いるようです。」 ニュースキャスターの画像から中継の画像に切り替わった。特派員が メモパッドの原稿を読み上げる。 あとがき: パソコンの不具合で今日更新予定の掲載が遅れてしまい
申し訳ありませんでした。
といっても、完全に回復した訳ではないので、今後しばらくの間
更新できない事もあるかもしれない事、出来ても「あとがき」の
コメントが掲載されない場合もあるかと思いますので、ご了承、ご理解
頂きたく思います。
尚、本日掲載予定だった「あとがき」コメントは後日掲載させて
頂きますので、併せてご了承お願いいたします。
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ユーリウスはネットのテレビニュースのサイトを開いた。
そこには連続爆破事件の容疑者としてユーリウスの名と手配写真が 映っていた。 「・・・な!!。何っ・・・?!!。」 その瞬間、一気に目が覚めた。 「この写真・・・提供したのは軍の奴らか・・・。俺よっぽど嫌われてた のか?。」 写真の出所が軍でホームページを作った時の写真だとはすぐに気付いた。 「・・・待てよ。警察では遠隔操作の為のパソコンは押収したはず。 あれの中に何が入っているか確認しなかったな・・・。」 ユーリウスはその時のメモリを取り出し、パソコンに読ませた。 「・・・爆破箇所の特定に気を取られて、こいつの存在をすっかり 忘れていたな。」 「読み込み中」の表示が動いている。その時携帯端末機から 着信音が鳴った。王からだ。「はい。」 「ニュースを見たか?。」「ええ。」 「どう思う?。警察は例のパソコンを押収したはずだが、君を犯人と 断定するものが入っていたという事か?。」 「それを今確認中です。」 「今から私もそちらに行く。」「えっ・・・いえ。」 全て言い終わらないうちに向こうは通信を遮断したようだ。丁度 読み込みが終わり、中のデータが表示された。そのデータには爆破箇所と 遠隔操作の場所、そして何枚かの画像データが入っていた。 間もなく王が到着した。「どうだね。」 「ええ、奴はこのパソコンを始めから警察に押収させるつもりでいた ようです。ですから私が作ったように見せかけたデータが入っていた ようです。あと、私が軍にいた時の写真データなどを使って、犯人と 断定させる材料をパソコンのデータとして入れていたようですね。」 「うーむ・・・。」 王は腕組みをして考えている。 「方法はまだ思いつかないが、こいつを巧く利用して真犯人を捕まえる 事は出来ないものかと・・・。」 「なる程・・・。」 その時、部屋の中央に光の束が現れた。 あとがき: あれから8年。その歳月が長かったのかどうなのか。 「8年も経過した」のか、「まだ8年しか経ていない」 なのか、被災者にとってその受け取り方は多様だ。 3月11日。今年も巡ってきたたその日に東北の沿岸を 辿る。今なお手付かずの砂浜や更地を見る度「復興」 出来たと言えない状況に胸が痛む。 8年も経過してしまえば、なのか「震災特集」の特番 なども時間は短くなり、番組が終われば、まるで何事も なかったように時間は過ぎる。 8年が経過しても尚、仮設住宅で生活する人、心の傷が 癒えない人、震災の影響でPTSD(心的外傷後ストレス障害) に苦しむ人。テレビのインタビューなどでそういった 人々を見ていると、自身の無力さにやりきれない思いを 感じる。 14時46分のサイレンと共に祈りを捧げる。人々の中には それぞれが様々な思いを寄せているに違いない。今年は 降りしきる雨の中の祈りなだけに、思いは強いだろう。 この祈りは3.11の犠牲者だけでなく熊本地震、西日本 豪雨、北海道胆振地震などの災害への祈りにも繋がれば、 本望ではないかと思う。 |
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が、しかし未だ捕まらないテロリストに国家警察も苛立ちを感じている
ようだ。
一方、真犯人であるワナギースカは、ユーリウスが警察が来る前に 逃げられたので当然の如く不機嫌だ。
「何故、逃げられたんだ?。万が一の事を考えてあちこちにトラップを 仕掛けて置いたっていうのに・・・。まさか、これが『神の裁き』
なのか?。馬鹿な・・・。」
ワナギースカがそんな事を考えているとは露知らず、ユーリウスは 四箇所目の爆弾の設置場所の特定に余念が無い。場所は国家警察の
本庁になっている。
「この近くで遠隔操作が出来そうな場所は、と。」 「ユーリウス。何をするつもりだ?。」 「今度は奴の先回りをして、足止めを食らわせる。そこへ警察を呼んで、 奴はお縄を頂戴するって筋書きだ。」
「そう巧くいくのか?。」 「巧くいかせる。そうしないとこの事件いつまで経っても解決しないだろ。この俺が本気を出したら怖いって事をその身に叩き込んでやる。」 結局、四箇所目の爆破地点の遠隔操作が出来そうな場所の特定は 出来なかった。
そもそも四箇所も爆破する予定だったのだろうか?。 いつの間にか眠ってしまったらしく、外の明るさで目が覚めた時には パソコンのキーボード部分を枕代わりにしていたのに気付いた。
「・・・あちゃー・・・壊れなかったかな。」 ふと見ると携帯端末機にメールの着信が入っている。「・・・お、王か。」 ユーリウスは返信する代わりに直接電話を掛けた。 「・・・はあーい・・・。」 「おっ、やっと繋がったか!!。ロナウハイド君!!。ニュースを観て 見ろ!!。」
「はあ・・・?。」「大変な事が起きてるんだ。」 ユーリウスはネットのテレビニュースのサイトを開いた。 あとがき: 東日本大震災より8年。嵩上げや堤防の工事もやっと進み、 なんとか復興へ向けて進んでいっているといった感じだ。 以前より工事が進められていた復興道路「三陸縦貫鉄道」が 全線開通を目指している。 震災直後はあまりの現状の酷さに復興も想像すらできなかった。 完全ではないものの、時折被災地に立ち、瓦礫の山が少しずつ 道路や埋め立て地に変わって行く様子を見続けてきた。 今までは、復興を目指し、進んでいく、という気持ちでいた。 だが、最近は、熊本地震や北海道胆振地震などを目の当たりにし、 自分達が歩んできた復興の足跡を辿って貰おうと考えている。 そしてそれを、そちらの復興支援を後押しして貰いたいとも思う。 太古の昔から自然災害と戦ってきた日本人。この8年間で培った ものを、熊本や北海道の方々に観て頂きたく思う。 |




