翌日九時、まず向井から電話があった。アラン・リオンの実家の住所が分かったという。黒木はその住
所をメモしながら、何か変わった事はないか尋ねた。向井は「特にない。」と言ったあと、伝言を伝え
た。石川が黒木を見舞いにルーアンに行きたい、ということだった。彼は苦笑しながらも「待っていると
伝えてくれ。」と頼んだ。
次いで弁護士に電話した。今度はすぐに電話に出た。簡単な挨拶を交わしたあと、用件を話した。返事
はノンだった。写真の人物はすべて調べがついているとのことで、ヴァンサン墓地で目撃されたような人
物は写っていないだろうと結論した。黒木は真理子のことも尋ねた。しかし、彼は知らなかった。
電話を切ったあと、彼はしばらく横になって事件の顛末を順を追って追って考えた。弁護士の話から真
理子が事件に関係していない様子なのでひとまず安心した。
―まず、『マリコ』の男はヴァンサン墓地で撃った男に間違いないだろう。はっきりはしないが、時間と
ともにそう思えてきた。そして、ギャラクシアの男はまた別の男だ。教会の男もまた別人だッた。そして
撃たれた男、アラン・リオンは喫茶店で顔見知りというだけの関係だ。コミューンの壁とは結びつかな
い、と弁護士は言うが。ギャラクシアの男もアラン・リオンも関係していないはずはない。教会の男だけ
が単なる物盗りだったということか。では『マリコ』の男は何を狙ったのか。フィルム以外には考えられ
ない。しかしその男は写真には写ってはいなかった。組織の一員か雇われた殺し屋か。新聞にあの写真が
流れたのは僕の仕業だと考えるだろう。でも、あの世界の人間にしては確かに『マリコ』の男の手口は幼
稚だったと云えなくもない。では写真館ギャラクシアの男は一体何者だろうか。僕のフィルムを知ってい
るのだから何らかの関係はあるはずだ。組織の別の男なのか。そうとしか考えられんな。アランは何者だ
ろうか。宗教団体とは云うがどんなものなのか。なぜ彼が一度会っただけの僕の後を追って助けなければ
ならないんだ。全くわからんな。
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