小説 「欧州周遊旅日記」

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 しかし、この会談に公表されなかった密約が存在した。その密約とは北羅民国の拉致問題に関係していた。

日本国中を憤怒の波に陥れたこの問題は拉致された7名が帰国し、空白の30年余りが明らかにされつつあ

る。しかし、その後の残された家族問題や死亡宣告された10名の拉致被害者、また、そのほかにも数十人あ

るいは百人を超えるとも云われる拉致被害者とされる人々の問題が進展しないまま残されている。中華新国が

北羅民国に大きな影響力を持つことは知られている。その新指導部との会談で拉致問題が討議に上がっていた

というものである。


 日本外交はこれまでどのような方針の下に行われてきたのか明確でない、その外交姿勢が常に問題視されて

きた。顔のない国といわれて久しいが、真和泉首相は戦後初めて独自外交の一歩を踏み出したとされる平城宣

言を北羅民国との間に調印したが、その内容が曖昧であったために、拉致問題はその後進展しないままにあ

る。もっとも、独裁政権といわれる北羅民国との約束が簡単に実行されるとは誰も思わなかったが、その

後の情報を見るにつけ、北羅民国の惨状が明らかにされつつあり、問題が一筋縄ではないことが懸念され

ている。

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 すぐに雑誌を求め、銀座線の中で広げた。


 《与野党伯仲の中、次期総選挙が取りざたされ、政権交代があるいは起こりうる可能性が巷間に語られると

き、このような密約が取り交わされていたことが表沙汰になるのは民自党にとって大きな失態といわざるを得

ない。


 中華新国と民自党のトップ会談は去る2月29日に中華新国の首都、西京の国際会議場別館で行われた。こ

の会談が注目を集めたのは日本政府が中華新国の新首相との会談を実現できないなか、それに先駆けて民自党

党首が会談に成功したことである。真和泉首相が御国神社参拝問題で中華新国の批判を受ける中、本年3

月初め、大方の裏をかくような形で参拝を行った。8月15日にこだわらないという発言や、参拝は戦争

で心ならずも亡くなった人々の心を汲み取り、戦争は二度と起こさない事を誓う参拝である、ということ

が国内の一部の人々や、東アジアの国々に大きな反響を引き起こしているのは周知の事実である。


 こうした自公党が身動きの取れない時に民自党が中華新国の新指導者との会談を成功させたことは大き

な成功であり、我が国の外交の一部を担い、一定の成果を得たこととに賛辞を惜しまない。この会談の内

容は既に報道された通りであり、その結果は世論調査が示している。

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その日、黒瀬は渋谷駅頭でキオスクに並ぶ新聞を眺めていた。一面にはさほど大きな内容も見受けられな

かった。次いで、週刊誌を眺めた。そして、黒瀬は週間人物往来の表紙のタイトルが目に入った。頭から血が

引いていくのが分かった。


「なんだこれは。」と黒瀬は辺りの人が振り返るほど大きな叫び声を上げた。「何だ。一体誰がこんな記事

を。」


 雑誌の記事の見出しに太字で【民自党、中華新国と密約─屈辱外交の上塗り】とあった。このタイトルが何

を意味するか黒瀬にはすぐにピンと来るものがあった。それは紛れもなくアルカンシェルが請け負った中華新

国と民自党の会談内容の日本語訳の文書が流出したのではないかと思ったのだ。

欧州周遊旅日記 その37

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 民自党の仕事を受注することになったアルカンシェル社はやがて民自党の各国政党との会議の議事録や交渉

内容を日本語に翻訳する仕事を一手に引き受けるようになっていく。それは清水の口添えや鹿島田の支援が

あったからに他ならないが、それに見合う実力をアルカンシェル社が持っていたのは確かだった。仕事の拡大

と共に、民自党の機密にも深く立ち入らざるを得なかった。それは諸外国の諸政党との交流の中で、次期政権

を担う可能性の高い第二政党が担わざるを得ない必要悪であった。アルカンシェルはこの機密内容を保持する

ことが企業の生命線になっていった。社員の身元確認が重要な採用条件になっていた。それは黒瀬の本来望む

ことではなかったが、企業規模の拡大とともに従業員を生活させる義務が両肩に重くのしかかっていた。理想

と現実の狭間に悩まざるを得なかった。彼は青年起業家から信頼を問われる経営者への転換を強いられていた

のであった。

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 新連合の各国間との交流に関する文書の翻訳を受注したことが黒瀬の会社の歩んできた道筋に或る変化をも

たらした。金融経済、鉱工業、メーカーや販売などに政治が加わった。もちろん、何も政治ばかりに守秘事項

が多いわけはなく、一般企業の翻訳でも機密事項は多く、同業他社の仕事は担当を分けて互いの業務内容は機

密扱いにするようにしていた。こうした秘密事項が多いため、社員個々人の資質問題が大きなウエイトを占め

る。横の繋がりが当然薄くなるために不正を働こうとすれば可能な状態であった。


 新連合に続き黒瀬は民自党に攻勢をかけた。新連合との取引があることが追い風となった。新連合は民自党

と政策協定を結んでいた。再び、清水の力も借りた。鹿島田のルートも活用し、黒瀬はついに民自党へも食い

入ることに成功を収めた。

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