小説 「欧州周遊旅日記」

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3月5日(火)朝、カプリ島発のフェリーでナポリへ戻った。ここから友人と別行動をとった。彼はドイツの

ベルリンを目指した。12時過ぎ、フィレエンツエ行きの電車に乗り、17時22分到着。ホテル・アスコッ

トに投宿。駅の近くだが5,450リラ(朝食付き)。ベッキオ橋付近を散策する。


 黒瀬のアルカンシェルは通訳翻訳会社といっても、かつてのように文書が飛び交うスタイルとは仕事の進め

方が大分変わっていた。インターネットが世界を網羅している時代には新しい会社のスタイルが当然求められ

るし、そうしなければ競争社会で生き延びてはいけなかった。黒瀬は社員に各国言語を母国語とする日本

語を話す人物を採用した。広告の経費を徹底的に削減するため会社のホームページのみで社員と翻訳・通

訳者を募集した。新聞などの採用広告は比較的安価で出せるといっても、適当な人材を集めるには数回は

広告を打つ必要があり、途中で辞める者があれば再び募集しなければならない。それがインターネットで

自前で募集がかけられるようになったのは画期的だった。社員の募集には面接をしなくてはならないが、

翻訳者には基本的に必要がない。能力だけを発揮してもらえれば良かった。営業は別としても、翻訳した

文書のやりとりはかつてのような郵便や宅配便からeメールに代わった。時間とコストの節約は計り知れ

なかった。逆に、IT革命の時代には時間の短縮は当然のことのようになってしまった。時間との戦いは

通訳翻訳の世界でも始まっていた。翻訳者は国内という枠から世界へと広まった。まさに国際時代に相応

しい会社だった。このフランス語で虹という社名は世界と日本の間に虹を架ける事を望んで命名されたも

のだった。

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 3月4日(月)市電(50リラ)に乗り港へ行った。9時15分発の船(420リラ)でカプリ島へと向

かった。嵐が近づいているのか船は大いに揺れた。現地の人も皆が酔っている。小生だけは何とか大丈夫だっ

た。島に着いてから中心地まではしつこい運転手を断り切れず、タクシー(500リラ)で登った。途中に女

子校があり、女生徒と話をした。終点の広場の左手にあるヴオットというカフェバーで休んだ。帰りはアナカ

プリ行きのバス(100リラ)に間違えて乗ってしまった。再び元に戻ったが、嵐のためフェリーは休航でカ

プリに一泊しなくてはならなかった。結局、青の洞窟も何も見ることができなかった。残念至極。

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 3月2日(土)トレビの泉に行き50リラを後ろ向きに投げ込み、再びここに来られることをお願いした。

次いでパンテオンへ行き、窓のない堂内を見学した。ポポロ人民広場からバチカン市国へ向かう。巨大なサン

ピエトロ広場から巨大な教会へ入った。嘆きのピエタを見学。大理石で造られた像に素材の冷たさと作者の暖

かさを感じた。システィーナ礼拝堂は見学できなかった。次いで聖アンジェロ城へ行き、再びスペイン広場へ

向かった。1、500リラでフルコースの夕食を摂った。細いスパゲッティが美味だった。宿泊はホテル・パ

ヴィア。


 3月3日(日)日本では桃の節句。午後雨。10時15分発の電車に乗って2時間半の旅。ナポリに向

かった。ナポリの駅頭では子供たちが群がり、ポケットを叩いてお金をせびる。複雑な気持ち。ホテルを

選んでからポンペイへと向かった。電車で220リラ。2600年前の遺跡が当時の文化の高さを示して

いる。学生は入場料無料。なぜか帰りの電車は210リラ。アルベルゴ・プグリエスというレストランで

1600リラのフルコースを食べた。

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 3月1日(金)目覚めるとローマのテルミニ駅だった。長い強行軍だった。駅近くのペンション・アスコッ

トに投宿する。ホテルで50米ドルを両替した。3万2千200リラを受け取った。コロッセオに向かう。道

が分からないので学生に聞くと女学生が一緒に行くと言ってくれた。彼女たちの名前はスタンチ・ギグリオ

ラ、モルヴォナ・アナ、ベノリッチ・クラッチア、ヴェンデッティ・リタ、エヴァゲリスタ・ルアナの5名。

次いで古代ローマの中心地の遺跡、フォロ・ロマーノ(学生入場料無料))に行く。パラティの丘から下を見

るとその辺りはかつての高級邸宅地。ついでカラカラ浴場(入場料100リラ)に向かう。次いでビットリ

オ、エマヌエレ記念堂へ行く。帰りにスペイン広場、スペイン階段を抜けた。

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 黒瀬はグラスを傾けながら旅行の日記を開いた。ニースでの写真が貼ってあった。そこには黒瀬と友人に加

わった牧野が写っていた。それを撮ったのは黒瀬の恋敵だった。黒瀬も若く、頬がこけて精悍だった。年上の

牧野はそのおひな様のような童顔で、黒瀬よりかなり若く見えた。着痩せするタイプの牧野はその10年以上

前に話題となった英国のトゥイギーの様に思えた。


─彼女はどうしているだろうか。あれから二十年も経ってしまった。僕も素直でない年頃だった。彼女に謝っ

たり、あるいは深く思い遣ったりしなかった。彼女にとって三十才というのが大切だったのだろう。あのと

き、行くな、と言っていれば或いは今の自分は違った人生を送っていたのかも知れない。


 見上げた月は涙に曇っていた。二十年前のあの夜のように、ふと死の誘惑を感じていた。

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