河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
周知のように岩屋防衛相は昨年12月21日、「海上自衛隊のP1哨戒機が能登半島沖の海上で韓国駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた。由々しき事態だ」と談話を発表し、韓国側に抗議した。
事実なら重大な挑発行為となる。

しかし、韓国側は「広開土王艦と一緒に、遭難した北朝鮮漁船の救助活動中であった海警救助船の捜索レーダーを勘違いしたのだろう」とし、火器管制レーダーの照射は全面否定した。
両者の見解は正面から衝突し、日韓実務協議も決裂した。その協議の内容も双方からそれぞれのマスコミを通して明らかになっている。

日本防衛省は「レーダーの情報交換を求めたが、拒否された」とし、韓国国防部が真相究明を妨げたと非難した。日本の各メデイアがそれを大々的に報じ、私もこの時点では、日本側に理があるやと思っていた。
ところが、である。韓国側は事実歪曲と反論し、議事録の詳細まで韓国メデイアに公開した。それによると、日本防衛省は韓国側に問題となっている火器管制レーダーの周波数を出すように求め、それと同時に自分達が保持するデーターとの交換を求めたとなる。
これが事実なら、日本防衛省はレーダー照射の核心的情報を自ら出すことを拒み、相手側に提出を求めたとなる。

レーダーの電磁波周波数はレーダーの指紋と言うべきもので、防衛省側がその席で提示したら韓国国防部側も火器管制レーダー照射を認めざるを得ず、謝罪、責任者処罰で一件落着となったことだろう。
ところが、防衛省実務者は容疑者に指紋提出を求める異常行動を取ったのである。犯行現場で取れなかった指紋を入手し、証拠を捏造しようとしたと疑われても仕方あるまい。
国防部側が抗議すると、防衛省側は「防衛機密は出せない」と理屈にならない理屈で継続協議打ち切りを一方的に通告した。

すべからく争い事を平和的、合理的に解決する上で欠かせない大原則は、当事者が立証責任を果たすということである。
この件に関しては、「火器管制レーダーの照射を受けた」と一方的に公表、非難した岩屋防衛相にその責任があるのは二言を要しない。

岩屋防衛相が火器管制レーダーの周波数を出す、その一言に尽きる。その立証責任を果たせなければ、嘘、狂言と断定されても仕方があるまい。

日本でもこの問題に関して慎重な見方が出ているが、挑発的な論考も目につく。
その意味で、御用作文とまでは言わないが、偏り過ぎと判断せざるを得ないのが、文藝春秋3月号掲載の「レーダー照射問題の全真相」(麻生幾)である。
核心的なレーダー照射の証拠に目を塞ぎ、「自衛隊関係者」の弁明の羅列に終わり、結果的に自衛隊の一方的な正当化宣伝に利用されている。

防衛省が唯一の証拠と挙げたのがレーダーの照射音であるが、ゲームマニアの子供でも作れる雑音の類いである。麻生は「専門家なら分かる」と「自衛隊関係者」に下駄を預け、「音質は機密」と口裏を合わせ、初歩的な検証もしていない。
韓国海軍参謀長と「ミリミリの解決を求める」空軍参謀長の間で確執があると諜報戦まがいの言葉で結んでいるのだから、何をか況んやである。

22、23日に「日韓安全保障戦略対話」が東京で予定されているが、日本防衛省当局者が急遽、参加を見合わせた。2016年以来初めての珍事だが、韓国側当局者からは「証拠問題で突っ込まれたくないのだろう」との声が出ている。

防衛省は証拠提出を行わず、立証責任を果たさないと、第三者の心証はますます悪くなり、レーダー照射云々は嘘、狂言と断定されかねない。
クロとしたら、考えられるシナリオは3通りある。
1つは、哨戒機機長が事実を誤認し、岩屋防衛相に報告、岩屋が発表してしまい、引っ込みがつかなくなったケースである。
第2は、日章旗を掲げた自衛艦の合同式典参加を拒否された海自の意趣返しである。韓国艦に150メートルの低空飛行で3回も500メートルまで近付いて挑発しているが、レーダー照射されたと自作自演し、意図的に緊張を高めたケースである。
第3は、安倍政権が反韓嫌感感情を煽り、低迷する支持率アップを狙ったケースである。安倍首相には違憲軍拡路線を正当化する動機があり得る。
モリカケ問題での公文書改竄・捏造問題、賃金統計不正操作等々官邸と官庁の癒着が多々明らかになっているが、先の日報問題に続いて防衛省も例外ではなくなっているということであろう。

いずれにしても事は偶発的な軍事衝突に繋がりかねない重大事態である。曖昧にすることは許されない。
必ず真相を明らかにし、責任の所在を明確にしなければならない。
北朝鮮の非核化は「新冷戦時代」に入った米中関係次第といち早く分析したのは私であるが(『二人のプリンスと中国共産党』参照)、1日(ブエノスアイレス現地時間)のトランプ・習近平会談はその正しさを改めて示した。
両者は2時間半にわたり追加関税、貿易不均衡、知的財産権の保護、台湾問題で突っ込んだ意見を交わしたが、どれも噛み合わず、90日間の猶予期間を置くとした。唯一合意に至ったのが北朝鮮情勢であり、発表文に「朝鮮半島の非核化で連携」と記された。習主席が再度の米朝首脳会談を支持とも併記された。

トランプ大統領は会談後の記者会見で「習氏は100%、私と一緒に北朝鮮問題に取り組むことで合意した。これは大きなことだ」と自画自賛した。
習政権は米国との全面対決は避けたいのが本音であり、少しでも米国からの圧力を弱めるには、北朝鮮問題で貸しを作る必要がある。米国と協調し、金正恩政権への圧力を再度強めるのは必至である。
ポンペオ国務長官は手応えを感じ、第2次米朝首脳会談について「年明けすぐにあると思う」とCNN記者に語っている。

北朝鮮は安全保障上も経済上も対中依存度をいつになく強めている。国家予算すら満足に組めなくなって久しい経済は、事実上の破綻状態である。これまで頑張ってきたからこれからも頑張れる、と無責任に言える状況ではない。
国民は対岸の中国朝鮮族の助けを得ながら辛うじて食いつないでいる。中国の圧力強化でその生命線が絶たれれば、飢餓が広がり、暴動、反乱も十分にあり得る。

金正恩委員長は焦点の非核化でトランプ大統領に譲歩せざるを得なくなった。
政権の生き残りをかけ、米国から相応の措置を得る条件闘争に外交戦の総力を挙げてこよう。

微妙な立場に置かれているのが、米朝の仲介役を自認する文在寅大統領である。
9月の金委員長との首脳会談で12月13、14日のソウル答礼訪問を約した。大統領府が3日明かしたところによると、トランプ大統領との会談でそれを伝えてソウル訪問に賛同を得て、「金氏と共に残る合意を全て履行することを願う。金氏が望む事を私が成し遂げる」とのメッセージを託されたという。
同時に文大統領は「韓米間に朝鮮半島の完全な非核化を進めていく上で立場の相違は全くない」と再確認し、南北協力が制裁の抜け道にならないと釘を刺された。

第2次米朝首脳会談の論点は明確である。全面非核化か限定非核化である。
米側は20ヶ所と推定される核施設のリストと非核化プログラムの提示を求め、北朝鮮側は寧辺など一部の核、ミサイル施設の廃棄に相応した制裁緩和を求めている。

今に至ってなおも金正恩が核に拘るのは何故か?
体制保証を確実にするためとの見方が日本では支配的だが、それほど単純ではない。

先月30日の新宿講演会でも強調したことであるが、その点に北朝鮮核問題の本質と難しさがある。
北朝鮮には南北統一の主導権を握りたいとの建国以来の悲願があり、韓国に経済力で大きく遅れを取った現在、核なくしては悲願を達成できないとの思いを強くしている。
金正恩が体制保証や経済的利益優先で核全面廃棄を約束する可能性がなくはないが、それで労働党・軍の中枢を握る金日成時代以来の保守強硬派を説得出来るかは別問題である。
文政権が米朝間の仲介役を果たそうとするのであれば、そこまで視野に入れた対策が求められる。
韓国大法院が旧朝鮮人徴用工に対して、強制労働を強いられ、賃金も払われなかったとして訴えた日本企業への慰謝料請求権を認めた。
これに河野太郎外相が「日韓条約で個人請求権は解決された。認められない」とコメントし、日本国内で韓国に反発する声が高まっている。それに韓国世論も怒り、と悪循環が始まっている。
河野外相は判決文を読んでいないか、誤解している。日韓条約文も読んでいないようだ。大法院判決は財産請求権は日韓条約で解決したとし、別途、慰謝料請求権を認めている。とりあえず法理的には矛盾がない。

拙書『朴正煕 韓国を強国に変えた男』に詳しいように、当時の日韓当局は個人請求権などで衝突し、金鐘泌・大平正芳メモで政治的決着をみた。後世に解決を託したのである。
ところが、個人の人権意識が高まり、智恵や経験が蓄積されたはずの後世の今、同じ問題が蒸し返され、揉めている。金、大平両氏はあの世で嘆いていることだろう。

日韓共に大人になれと言いたい。
これ以上感情的にこじれる前に、国際司法裁判所に訴えて国際的、客観的な判断を仰ぐしかあるまい。

ただ懸念されるのは、徴用工問題以外にもそれに便乗するような動きが出ており、事態を必要以上に複雑化させている事である。
従軍慰安婦問題で日韓が揉めてきたのは衆知のことであるが、その原因の一端が最近、明らかになった。
「拉致問題を拗らせた西岡力というデマゴーグ」で指摘した事であるが、安倍首相と何回も面談している西岡が元従軍慰安婦の金学順女史について「進んで売春婦になったと当人が語っていた」と自身の著書や各種コメントで述べていた。しかし、それが全くの捏造であった事を裁判の証言で西岡自身が認めたのである。
良心の欠片でもあれば公開で謝罪し、世論の誤解を解くのが筋であるが、いまだにだんまりを決め込んでいる。

それどころか、徴用工問題が持ち上がると、再び便乗するように「韓国最高裁の戦時労働動員への賠償判決に抗議する」と当人が会長を務める歴史認識問題研究所の名で一部の新聞、雑誌で広告している。内容は相変わらず誤解、曲解、捏造の類いであり、どさくさに紛れて自身の謝罪・説明責任を曖昧にしようとの意図が読み取れる。
この種の他愛のない扇動に日本の一部世論が乗せられているのは不幸というしかない。拉致問題が解決できない原因の一端もそこにある。

翻って、韓国側も大人げない面がある。韓国の人気グループの防弾少年団が過去に原爆投下と解放を描いたTシャツを着ていた事を日本の反韓系メデイアが報じてSNSで拡散し、日本のテレビ局が出演をキャンセルする騒動へと発展した。
麻生太郎副首相が「ホロコーストは動機は良かったが・・・」と過去に述べた事を掘り出したような話であるが、韓国側がやはり逆ギレし、何が悪いと大手紙までが論評する異常事態となった。

韓国の理屈は、それがなかったら朝鮮は日本の植民地からの解放はあり得なかったというものであるが、重大な事実誤認がある。
原爆投下以前の段階で東京など日本の主要都市は米軍の空襲で灰塵と化し、無条件降伏は時間の問題となっていたのである。トルーマンの原爆投下命令の狙いは冷戦を見据えてソ連を牽制することにあった。これについては『二人のプリンスと中国共産党』に詳しい。

原爆投下は絶対に許されない反人道的なジェノサイドである。しかも、広島、長崎の原爆投下では一万人前後の朝鮮人徴用工らが犠牲になっている。
同胞が異国で無惨に焼き殺された事を喜ぶ国があろうか。反日、解放で何でも正当化する習性は修正する時期に来ている。

なお、これについては日本側にも責任がある。新聞記者時代に現地取材して痛感したことであるが、朝鮮人犠牲者は長く原爆慰霊碑から疎外され、今も平和公園の片隅にある。
自国民の犠牲者だけ強調するようでは、真相が分からず、隣国も国際社会も納得しまい。

米中の確執が激しくなり、日韓共に自国ファーストでは生きていけない。だが、逆は真である。
狭量な精神と決別し、新時代に目を向けよう。

イメージ 1


日本人拉致問題について「全員生存、全員生還」が安倍政権の最優先課題とされ、10年間、何の進展もなく徒労となったが、その元凶が平成のデマゴーグと呼ぶべき西岡力「救う会」会長である。
蓮池薫ら5人が帰国し、拉致問題が解決へと大きく動き出した最中、安明進・元北朝鮮工作員と組んで「北朝鮮のどこどこで横田めぐみさんを見た」といった捏造以外の何物でもない生存情報を連日マスコミに垂れ流し、「全員生存、全員生還」の虚構世論を作り上げた張本人、それが西岡をはじめとするデマゴーグたちであった。

安明進はその後、麻薬密売で韓国で逮捕され、西岡らにデタラメ情報を高く売ったと明かした。
しかるに、その「証言」を得意気に紹介した「北朝鮮に詳しい某たち」は知らんふりを決め込み、某テレビ局キャスターのAは懲りもせず今だにゲスなポピュリズムを煽っている。

その西岡の正体がようやく裁判で露になった。
西岡は従軍慰安婦問題を追跡した元朝日新聞記者から捏造で名誉を傷付けたとして損害賠償訴訟を起こされているが、被告人尋問で週刊誌のコメントや自身の著作で事実と異なる捏造を行った事を認めた。
従軍慰安婦であったと名乗り出て、裁判で賠償を求めた金学順について「女性は親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書き、韓国紙の取材にもそう答えている。捏造記事と言っても過言ではない」と週刊文春(2014年2月6日号)とコメントしたことを尋ねられ、「記憶間違いだった」と力なく答えている。
それのみでなく、著書にも韓国紙ハンギョレの記事を引用したとして、「私(金学順)は40円で売られてキーセンの修業を何年かして日本軍隊に行った」と書いた。その真偽を問われると、「間違いです」と小声で捏造を認めた(写真。佐藤和雄・週刊金曜日9月4日)。
西岡のこうした言辞が櫻井よしこらによって喧伝され、「従軍慰安婦ではなく、売春婦」といった風説を広めたが、それが嘘であったことが明らかになったのである。
恥を忍んで訴え出た被害者を貶める非人間的、非人道的な行為である。世論を惑わす平成の悪しきデマゴーグと言っても過言ではない。

西岡の性癖とも言える嘘八百は慰安婦問題に止まらない。「常識外の偏った考え方」と社長自ら事実上の廃刊処分にした新潮45などで長く反北朝鮮反韓国の論陣を張り、無知な読者を欺いてきたのは知る人ぞ知ることである。

西岡に乗ったのが小泉内閣の官房副長官に抜擢された安倍晋三である。
転機が「横田めぐみの遺骨」問題であった。高熱で焼かれ科学警察研究所がDNA鑑定は不可能としたが、吉井・帝京大学講師が特殊な試薬で二人のDNAを採取し、「横田めぐみの遺骨ではないかもしれない」とした。英科学誌ネイチャーが「非科学的」と疑問を投げ掛けたが、細田官房長官(現細田派座長)が「他人のもの」と断定し、この瞬間から拉致問題は人道問題から政治問題となった。
なお、その後、吉井は警察庁傘下の科学捜査研究所に医科長として引き抜かれ、今日まで一切マスコミとの接触を断たれている。露骨な口封じである。

そこで西岡らが韓国から引っ張ってきたのが安明進であり、連日マスコミに登場し、偽の生存情報を流し、「全員生存」とマスコミ世論が形成されていく。
さらにそれに便乗したのが無名であった安倍官房副長官で、「全員生存、全員生還」を声高に叫んで注目を浴び、首相にまで駆け上がる。

当初から解決不可能な課題を安倍政権は掲げたのであり、今日まで10年以上も「早期解決」を横田夫妻らに約束しながら成すこともなく引っ張ってきた。
安倍政権は拉致問題が解決できない責任を北朝鮮側に押し付け、対決姿勢を誇示してきたが、世論を欺く巧妙な詐術である。嘘と公文書偽造で国政を私物化していると国民大半から疑われているモリカケ問題と瓜二つの構図である。
例えば、北朝鮮と再調査で合意したスコットホルム合意であるが、安倍政権は北朝鮮は約束を守らないと世論を誘導してきたが、全くの嘘である。北朝鮮側は再調査を終え、日本側に渡している。だが、「全員死亡」とあったので日本側が受け取りを拒否し、今日に至っている。

無垢の日本人を拉致した金正日政権の罪は思いが、国際法的には小泉首相との会談で合意文書まで交わして決着して、蓮池薫ら五人が戻された。
「横田めぐみ遺骨」を偽物と断定してから安倍政権は北朝鮮側の嘘を非難してきたが、どちらが嘘をついてきたのか、今や明々白々である。

拉致被害者家族と世論を欺いた西岡の責任は重大である。その巧妙で意図的な嘘は、売名と出世主義が主たる動機であろうが、拉致で反北朝鮮、従軍慰安婦問題などで反韓国、という特異な姿勢に私はかねてから興味を抱いていた。その訳はどうやら韓国留学時代にある。
日本では戦後も在日朝鮮人への差別が酷かったが、実は、韓国に於ける日本人差別はそれをはるかに凌ぐものがある。韓国の日本人妻が日本語を喋れなくなっているのを知って私は愕然とし、日本人であることを徹底的に隠して生きてきた状況を把握した。無性に虚しく、悲しくなった記憶がある。
そうした中で学んだ西岡が半島への怒りと憎悪を募らせたであろうことは容易に想像できる。似たケースをいくつも見てきたからである。

隣国同士がそうした関係にあることは不幸なことである。
それを清算する突破口の一つが、嘘に阻まれた拉致問題の解決であることは間違いない。
文在寅大統領が金正恩国務委員長と19日に会談し、「ピョンヤン共同宣言合意書」に署名したが、内容的には4月の「板門店宣言」や6月の「米朝共同宣言」より事実上、後退している。
北朝鮮が非核化を約した2つの宣言履行を巡って、核廃棄が先か、見返り措置が先かと対立してきた事は周知の事である。しかし、今回、「北側は米国が6・2米朝共同宣言の精神に従い相応の措置をとれば、寧辺核施設の永久的廃棄のような追加措置をとる用意がある」として見返り措置が先であると明記した。最も肝心な部分で、北朝鮮側に押し切られた結果となった。

米側は非核化対象のリストや工程表提出を繰り返し北朝鮮側に求め、文も訪朝に先立ってトランプ大統領から念押しされていた。金正恩との単独会談でもその点を繰り返し説得したとみられるが、合意書を見る限り、明確な成果は得られなかったようだ。
ただ、外交に付き物の裏取引もあり得る。文は24日にトランプと会い、今回の訪朝結果を伝えるが、報道陣に対して大統領府は文・金会談では公開出来ない話があったとして、「金正恩の真意」をトランプに直接伝え、理解してもらう意向を示している。文・トランプ会談を見ないことには即断できないが、前途多難である。

金正恩の、文を巻き込んだ新戦術の狙いは透けて見える。北朝鮮の核施設は寧辺だけではないが、非核化の対象を極力そこに集中させ、文を仲介に譲歩を装い、逃げ切る作戦であろう。
そうして最終的には過去の核に蓋をし、米国とは事実上の核保有国として核軍縮交渉に臨むということである。

1ヶ月半ほど前の前回のブログで、トランプと金正恩はこれから互いに中国の顔を窺いながら脅しすかしの我慢比べに入ると指摘したが、ほぼその通りの展開となった。
両者共に強気を崩さないが、足元は脆弱である。経済的困窮が深まる金正恩は立ち枯れ、ロシア疑惑やセックス・スキャンダルを抱えたトランプは泥沼状態にある。
そこから一種の腐れ縁、すなわち、金正恩は米国の制裁解除に希望を繋ぎ、トランプは北朝鮮外交の成果で中間選挙を乗り切ると奇妙な相互依存関係にある。それが第2回米朝首脳会談を現実味あるものにしているが、一歩間違えば互いに命取りになりかねない危うさも秘めている。

金正恩は9日の建国記念日に5年ぶりの大規模軍事パレードを行い、文には17万収容のスタジアムでマスゲームを披露した。いずれもかなり前から莫大な費用と労力を投じて準備したものであるが、所期の目的を達することが出来なかった。
というのも、金正恩は当初、後ろ楯と頼む中国の習近平主席の訪朝を当てにして準備していた。朝中の結束を誇示して米国に対抗し、同時に中国からの経済支援を引き出す狙いがあったのである。

外交経験不足の金正恩は大きな思い違いをしてしまった。習は3、4日に北京で開いている「中国アフリカ協力フォーラム」に「今年最大の主場外交」(王毅外相)と総力を挙げていた。持論の一帯一路に今後急成長が期待されるアフリカを取り込む狙いである。「一帯一路は米中新型大国関係構築の要になる」と『二人のプリンスと中国共産党』で書いた通りである。金正恩は習のそうした思惑を理解できず、一人相撲で苦しい国家財政をさらに苦しくしてしまった。
習としてはそうでなくとも貿易戦争で険悪化するトランプの怒りを買うことは避けねばならない。代わりに建国記念日式典にナンバー3とされる栗戦書を送り込んだが、外交を統括する盟友の王岐山ならともかく、栗では体裁を整える以上の意味はない。

金正恩が今後最も神経を尖らすのは制裁解除であるが、それを金正恩を動かすビバレッジと考えているトランプが寧辺核施設の条件付き廃棄や既に用済みの東倉里ミサイル実験場閉鎖程度で解除に応じるとは考えにくい。
制裁が現在のレベルで続けば、凶作の今年、北朝鮮国民は深刻な飢餓に直面し、金正恩政権への不満、怒りは極限まで高まろう。

とはいえ、トランプも予測不能な面がある。深夜に「ピョンヤン宣言合意書」にツイッターで歓迎の意思を表し、金正恩との第2回会談に前のめりになっている。外交的成果を挙げ、泥沼からなんとか脱しようと必死だ。
11月6日投開票の米中間選挙は事実上就任2年のトランプ大統領への信任投票となるが、焦点は共和党が下院で過半数を維持できるかにある。現時点で共和党は民主党に支持率で後れをとっている。
民主党が過半数を奪還すれば、トランプには最悪の事態が待っている。マラー特別検察官によるロシア疑惑捜査はほとんどトランプ黒で固まりつつあり、民主党主導の下院でトランプ弾劾裁判が始まることが十分に予想されるのである。
核実験やミサイル実験停止程度でも米国民を喜ばせ、有利な投票を見込めると判断して安易に妥協する可能性も排除できない。

その意味では文大統領の役割が重要となるが、低賃金引き上げ問題で躓き、支持率が急落している。功を焦って事態をより複雑にしかねない。
越南者でもある文を見ていると、親日軍事政権と朴正煕政権を糾弾した民主化勢力の宿業みたいなものが見えてくる。朴政権時代に今日の発展の基礎が築かれた韓国という国体に誇りと自信が持てず、反射的に抗日独立闘争の英雄とされる金日成に憑かれてしまう傾向である。
金九の上海臨時政府を過度に評価し、韓国近代化の礎を築いた朴正煕の時代を正当に評価しない限り、その呪縛は続くだろう。付け加えれば、金九は金日成が呼び掛けたピョンヤンでの南北協商会議に参加し、韓国政府樹立の単独選挙に反対している。

今日午前、文は金日成が抗日闘争を行った聖地とされる白頭山を訪れた。私もかつて訪れ、独特の厳かな雰囲気に魅了された記憶がある。
北側に心情を見透かされ、ミイラ取りがミイラになる可能性がなしともしない。

北朝鮮核武装容認は東アジアに共滅の核拡散ドミノを引き起こすのは必定である。
文大統領には、核に正義はなく、北朝鮮核保有は朝鮮民族と東アジアの悪夢である事をゆめゆめ忘れず、非核化の初心を貫いて貰いたい。その先にノーベル平和賞がある。

.
河信基
河信基
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事