河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

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ポンペオ国務長官が明日5〜6日の日程で三度目の訪朝をする。「2年半以内に実現できると見込んでいる」と北朝鮮非核化について述べた。トランプ大統領もツイッターに「北との対話はうまく行っている。ミサイル実験も核実験も8ヶ月以上ない。私がいなかったら戦争が起きていただろう」と書き込み、ポンペオ訪朝に期待を込めた。
米朝首脳会談はいよいよ内実を問われるが、我慢比べの様相を帯び、今後の展開は予断を許さない。

と言うのも、私がかねてから指摘しているように、米朝関係はその実、北朝鮮の事実上の後見人である中国と米国の力関係の試験場でもあるからである。
それをよく弁えているのが金正恩委員長自身であり、トランプ大統領との会談直後の6月19、20日に三度目の電撃訪中をし、習近平主席に「経済制裁で大きな苦痛を受けている」と訴えた。
習は待っていたように、ロシアと共同で国連安保理に制裁緩和案を出した。それが米国の拒否権で霧散したことが、米中の綱引きが水面下で熾烈化している事を如実に物語る。

米中は6日にそれぞれの輸出品に25%規模の関税をかけると予告している。貿易赤字削減とハイテク分野の覇権が絡んだ貿易戦争が激しくなるほど、互いに北朝鮮を相手を揺さぶるカードに利用しようとするだろう。
それが北朝鮮核問題を一段と不透明化していることは否めない。

今後の見通しをする上で重要なのは、制裁強化と軍事的圧力の二つが金正恩政権を対話に追い込んだ意義を再確認することである。
米韓合同軍事演習の中止は金正恩にとって大きな成果である。だが、制裁緩和は一向にはかどらず経済的な苦境は深まり、飢餓線上の北朝鮮国民の不満が強まると共に金正恩政権の基盤は弱体化している。暴動が起きる可能性も否定できない。
他方のトランプ政権は中間選挙を控えて具体的な成果を求めている。
我慢比べとなっているが、不安定な状態がそれほど長く続く保証はない。

景福宮瞑想(続)

今、金浦国際空港の出国ロビーでのんびりとテレビを観ているが、まだ時間があるので改めて韓国の印象をまとめてみる。
昨年のロウソクデモ以来の韓国だが、この国の変化の速さを実感させられたのがカード社会である。

今回、現金と共にカードを準備して持参したが、コンビニやスターバックスの支払いから娘・孫への土産まで全てカードで済ませ、現金をほとんど使わなかった。日本では体験しなかった驚きであり、韓国は完全なカード社会に変貌した。
タクシーもカードで払ったが、「3年前ぐらいからカードに切り替えられた。税金のとりっぱぐれがなくなったので、国としては好都合なのでしょう」との運転手の言葉が事の本質をついている。
日本ではアリペイなど中国が話題に上がるが、韓国の比ではない。中国のカード普及率は60%台だが、韓国は90%で世界ダントツの1位だ。現金決済は13%という数字もある。
5Gでピョンチャン・オリンピック放送をするなどインターネット普及率で韓国は世界トップを走ってきたが、そのネットインフラがカードの急速な普及を促したとみられる。
仮想通貨が問題になっているが、現金決済が姿を消し、通貨の社会的な役割や概念が変わるのはもはや現代社会の趨勢と言うべきであろう。

現在の韓国を語る上でもう一つ見逃せないのが、青年の就業問題である。
日本にいるときは9%前後の韓国の青年失業率の深刻さがテレビ、新聞で取り上げられていたが、学歴社会特有のカラクリがあることを今回、知った。

大卒の仕事は70万人分足りないが、逆に高卒以下は110万人前後の労働力が足りないという注目すべき数字がある。
つまり、仕事がないのではなく、選んでいるのである。
実際、職にあぶれるという暗い雰囲気はなく、ミョンドンなど見た目にも元気な青年たちで溢れ、活気があるのはそのためであろう。
ミスマッチの間隙を埋めているのが中国、東南アジア、スリランカ、バングラデッシュなどからの外国人労働者である。
韓国は日本以上に少子高齢化が進んでおり、大きな転換期に差し掛かっていることは間違いない。

意外であったのは、思っていたほど北朝鮮が話題になっていないことだ。
代わって、ワールドカップで韓国が初戦に破れたことが衝撃となり、今夜のメキシコ戦に注目が集まっている。

良くも悪くも韓国人は熱く、楽天的である。
私もこれから飛行機に乗り、家でゆっくりメキシコ戦を視聴するつもりである。

景福宮瞑想

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景福宮の一隅にあるカフェのテラスのチェアーで一眠りした。緑茶をすすり、木々を渡ってくる心地よい風を感じているうちに軽い眠りに落ちてしまった。
目が覚め、周囲をボーッと眺めているうちに、百数十年前のこの空間はどんなだったろうと想いを巡らせた。

目前を韓国人に混じって中国人、米国人、スウェーデン人、日本人、マレーシア人等々が列をなして通りすぎていく。男女問わず、韓国の伝統衣装である韓服を着ている人が少なくないのが、幻想的ですらある。
とりわけ、チマ・チョゴリを華麗にドレスのように着て楽しんでいる黄白黒の女性たち(写真Aはスウェーデン人一行)を見ていると、韓流ドラマと似て非なる世界が見えてくる。そして、それを楽しんでいる自分が時空を超えた気儘な観察者に思えてきた。

18日に釜山近くの金海空港から韓国入りし、高速道路を走って東海岸の港湾都市統営に入った。翌日、大河小説「土地」の作者の朴景利記念館を訪れた後、遊覧船で李舜臣将軍が豊臣秀吉の水軍(脇坂軍)を撃破した閑山湾戦闘の現地を訪れた。李将軍の指揮所が制勝堂として保存されている。
写真Bはそこで撮ったものだが、背景の狭い湾を見れば勝因は明らかである。一帯はリアス式海岸の多島海であり、大小の湾が入り交じっている。その一つに日本水軍は誘き寄せられ、両側から挟撃され、47隻中12隻が沈められる惨敗となった。

その翌日、忠清北道の天安市の独立記念館に向かった。日本植民地時代の独立闘争を記念する広大な記念館であるが、興味深かったのが、社会主義者の独立闘争が一つのコーナーで紹介されていたことだ。
金日成の名はなく、金九らが中心の構成であるのはいつもの通りであったが、朝鮮共産党創始者の一人であるチョ・ボンアムの名が当時の日本の新聞記事を引用しながら登場していた。反共を国是としてきた韓国で恐らく初であろう。歴史教科書改訂などイデオロギーを超え、事実を事実として記述しようとする風潮がうかがえた。

さらに20日には扶余に移り、李朝時代からの古民家などを集めた民俗村を訪れた。30万坪の広大な敷地を駆け足で見学したが、李朝の崇儒抑仏の下でも弥勒菩薩が山間に祭られ、弥勒信仰が民衆の間で広まっていたことを実物で知ったのは当時の世相を新たな視点から分析できる大きな収穫であった。

とまあ、これまで訪れたコースとは全く異なるコースから韓国を訪れ、別の視点から新しい発見があった。
と言うのも、今回、日韓の未来を担う国際的人材育成という独自の教育理念を掲げた茨城県の中高一貫校である青丘学院の理事を引き受け、修学旅行に随行したからであった。

そして今日から、学生たちと別れて自由行動となり、景福宮を訪れた。
私は韓国に来ると、必ずここを訪れることにしている。韓国の自負心を直に感じる場だからだ。

最初に訪れたのは自著『朴正煕』の取材のためで、金泳三政権の時であったが、王宮前には旧朝鮮総督府の建物が建っていた。非常にグロテスクに見えたものだ。
その次に訪れた時には撤去工事が始まり、来る度に古の趣が復活した。正門の光化門が復元され、昔ながらの色彩豊かな軍装の衛兵が仁王立ちし、交代式も復活して観光客を楽しませるようになった。
一般公開された王宮内部でも大規模復元工事が行われ、今回は後宮の庭園が整備され、水路が往時の姿で水を流しているのを確認した。新たに興福殿の復元工事が年内完工を目標に進められている。
来る度に旧王宮の姿に近付いているのは韓国がそれだけの国力をつけた証であり、自負心である。・・・と、感じている私の自負心でもあるだろう。

今や韓流ドラマの影響で世界中から観光客が訪れ、ドラマの主人公たちと同じ服装をして王宮の中を歩き回っている。
貸衣裳屋が景福宮の近くに店を構えネットで売り込んだのが当たったのであるが、韓流にうまく乗ったということである。

今や世界の中の韓国であるが、韓国自身はその事をどれだけ理解しているであろうか。
伝統文化の心臓部である旧王宮内を、往事の姿で多国籍外国人が闊歩するのは韓国ぐらいであろう。単なるお国自慢や観光政策で済まされるレベルを超えている。
時空や人種、国籍を超えた普遍的なものがあるように思えるのである。

明日は韓国語訳版『朴正煕』の新版の打ち合わせをする。自由韓国党が理念を見失い、分裂、自滅状態の今、最貧国の韓国を経済大国への軌道に乗せ保守の精神的拠り所となった朴正煕元大統領の再認識が不可避である。
私は保守ではないが、革新と保守共に偏る傾向がある以上、相互のバランスは必ず必要である。
(上)で指摘したように、やはり史上初の米朝首脳会談は米中の力学に大きく影響され、陰の主役は習近平主席であった。
トランプ大統領が金正恩委員長に米韓合同軍事演習の中止を示唆したと米メデイアが報じ、韓日に大きな衝撃を引き起こしているが、仕掛人が習近平であることが明らかになったのである。

十分に予測されたことであるが、朝日新聞(17日付)が北京外交筋の話として、「米韓演習中止 習氏が提案」と報じた。大連で5月7、8日に電撃的な第二回朝中首脳会談が開かれ、習が金正恩に「行動対行動の原則に基づくなら、先に動くことに利がある」とし、米韓軍事演習の中止を求めるよう勧めたという。金正恩はそれに乗ったわけであるが、ここに北朝鮮、ひいては朝鮮半島を取り巻く国際政治の厳しい現実がある。

金正恩としては力強い後ろ楯を得たことになる。
首脳会談のキャンセルと軍事行使を示唆したトランプの書簡に怯え、恭順の意を表したが、押されっぱなしでは体制保証は覚束ない。そこで中国に再び駆け込んだのであるが、習のバックアップでいくぶん強きが戻ったのが真相であろう。
習としては貿易戦争に突入しつつあるトランプを揺さぶる北朝鮮カードを得たことになる。
長く懸案となっている韓国配備のTHAADの脅威を除去するためにも、米軍の地域のプレゼンスを極力削がねばならないところだ。

米朝首脳会談に対する日本の世論調査は、歓迎するが北朝鮮の非核化は期待できない、が多数派を占める矛盾した反応を見せている。
とりあえず戦争だけは回避し、対話による解決の道が開けたと判断しているのであろう。

共同声明には「トランプ氏は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金正恩氏は朝鮮半島の完全な非核化に向けた確固とした揺るぎない責務を再確認した」とあるだけで、具体的な方策と時期はそっくり抜けている。
私は派手なショーの生中継を全て観させてもらったが、敵対してきた両者が会って相互理解をある程度深めた以上の意義を見つけることが出来なかった。認識不足や誤解した部分があるやもしれず、米朝関係は依然として不安定である。
共同声明に「相互の信頼醸成」を強調し、「首脳会談の結果を実行するため、ポンペオ国務長官と北朝鮮高官による今後の追加交渉を出来る限り早く開く」とあるように、今後の追加交渉次第で戦争局面にコロリと変わる可能性がある。

今後の展開を占う指標は制裁の継続如何である。
北朝鮮の核戦力は当面、事実上塩漬けとなるが、その間にも制裁が続けば疲弊した北朝鮮経済は遠からず崩壊し、内部は大混乱となろう。
米国が制裁を続け、中国も国連安保理決議に従って制裁を続けるか、あるいは朝中国境に抜け穴を作るか、が注目点だ。
米中の力比べが今後熾烈化していくが、貿易戦争との絡みで予断を許さない。

米朝共同声明が板門店宣言を再確認し、一つのモデルとしているように、韓国の文在寅政権の役割が否応なしに高まろう。ソン・キムら韓国系米国人を多数登用している事実は、トランプ大統領が文在寅大統領の豊富な対北情報に頼らざるを得ない実情を物語る。
韓国の国益を踏まえた主体的、現実的な外交が試される。明日にでも統一が出来るかのように受かれているようでは足をすくわれよう。

安倍首相はトランプ大統領にも邪険にされ、いよいよ自力で日朝対話に道を切り開かねばならないが、拉致問題がネックとなる。
従来のような「全員生存、返還」を対話の前提としているようでは一歩も前に進まない。
金正恩政権は拉致問題は解決済と繰り返し、生存者はいないとの立場である。相手任せにせず、生存者情報を握っているなら明らかにするしかない。それが出来ないようなら、思い込みを捨てて冷静に、まず対話、その過程で真相解明と段階を踏まえるしかない。

(今から一週間の予定で韓国に出発する。)
二転三転した米朝首脳会談がいよいよ明日午前9時(日本時間10時)からシンガポールで開催されるが、激しい前哨戦は既に始まっている。
トランプ大統領はG7など眼中にないかのように共同宣言発表前にカナダを発ち、昨晩8時すぎに現地のパヤレバ空軍基地に着いた。機中から「エキサイテイングな一日になる。金正恩は今までやったことがないような何かをするだろう。この一回限りの会談が無駄にならないと感じている」とツイッターし、北朝鮮核問題を最優先している姿勢を露にした。

他方の金正恩委員長も同日午後2時半、習近平主席が利用する中国国際航空のボーイング747をチャーターし、中国領空を飛行してチャンギ空港に到着した。中国が全面的にバックアップしている証左であり、米朝首脳会談の帰趨の要因がG2として事実上世界新秩序を仕切っている米中関係にあることを改めて見せ付けた。
金正恩の本音は、中国の関与をなるべく強め、トランプからの体制保証の約束を担保する後見人的な役割を果たしてもらいたいということであろう。

完全で検証可能かつ不可逆的な北朝鮮非核化(CVID)を求める米側と、体制保証や経済支援を得ながらの段階的な非核化を主張する北朝鮮側との溝はまだ埋まっていない。
実際、この時点でもソン・キム前駐韓大使と崔善姫北朝鮮外務次官との実務協議が続けられているとみられる。

しかし、今日一日現地で逐次状況報告を受けたトランプ大統領は明確に時間を切った。
先ほど米側が発表したところによると、米朝会談は明日予定通りに9時から通訳だけを交えた単独会談が行われ、ついで拡大会談、昼食会と続く。その後、トランプ大統領は記者会見し、午後8時に米国へと飛び立つ。それまでに北朝鮮側から非核化の具体的な回答を求める作戦と読める。
トランプは今日午後、文在寅大統領、ついで安倍晋三首相に国際電話をかけて協議したが、北朝鮮側が煮え切らない態度を取り続けると会談決裂もありうるとの決意を韓日首脳に伝え、予防線を張ったのであろう。

トランプ大統領は一回の会談で北朝鮮非核化の具体的な成果を得ようとしているが、可能であろうか?
答えはイエスである。

北朝鮮非核化には15年掛かるとか、北朝鮮ペースで進んでいるとか、といった悲観論も飛び交っているが、北朝鮮非核化問題の本質が見えていない。
すなわち、北朝鮮非核化とは核一般ではなく、実戦段階直前の北朝鮮の核戦力を除去することである。具体的には12個以上あると推定される核弾頭と主要な中長距離ミサイルを引き渡せば足りる。

金正恩は昨年11月に「核戦力完成」を宣言したが、実際はミサイルに搭載する核小型化やミサイルの大気圏再突入技術は未完成と見られている。
対話に転換したのも、核の実戦化前に米韓の攻撃を受けることを恐れたからに他ならない。一部に核に自信を持ったから対話路線に転換したと述べるものがいるが、北朝鮮の宣伝に乗せられているに等しい。

従って、実戦化直前の核能力を除去すれば事実上、北朝鮮核問題は軍事的脅威ではなくなる。
その他のプルトニウムや濃縮ウランの回収、実験施設の撤収などの付帯措置は時間を掛けて進めれば済む事である。

北朝鮮側もそれは十分承知しているため、段階的非核化を口実に完成間近の核戦力を何とか隠そうとしているとみられるが、タイムリミットは刻々近付いている。
北朝鮮国内メデイアは今日米朝首脳会談を大々的に伝え、核よりも生活向上を求める国民の声は高まっている。
金正恩としては後戻り出来ないところまで追い詰められている。自身の保身ではなく、北朝鮮国民のために決断できるか、その時がいよいよ来る。

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河信基
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