河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

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大義なき自爆解散

安倍首相が25日夕、首相官邸で記者会見し、28日召集の臨時国会冒頭に衆院を解散すると発表した。国会で所信表明演説をしない解散は解散権濫用との謗りを免れない異例中の異例であり、余裕を全く失っている証左である。
少子高齢化と北朝鮮問題を国難と解散の名分に挙げたが、取って付けた観がある。事前練習を重ねた20分ほどの演説は、美辞麗句で飾った空虚な言葉が並ぶ。国会審議でも見慣れた光景であるが、なぜ今なのか?記者の質問を受けると途端にしどろもどろになり、舞台裏の補佐官が送るモニターに目をチラチラやりながら文脈の合わない矛盾した言葉を連ね、質問とは無関係な自己主張にそらす。

隠そうとするほど言外に大義なき本音が透けて見える。
唐突な解散の直接の狙いは、夫人が詐欺罪で起訴された森友学園の安倍晋三記念小学校名誉校長に就任するなど森友・加計学園ビジネス疑惑への夫婦共々の関与が再び国会で追及されるのを避けることにあった。
そして、野党の足並みが揃う前に総選挙に売って出て、勝利すれば全ての疑惑をチャラにし、政権の延命を図ると、まあそんなところであろう。

しかし、「岸信介恩顧の森善朗演出の安倍一強は、賞味期限が切れた。小池旋風に吹き飛ぶだろう」と都議選前に出版した『日本改革の今昔 首相の座を目指した在日新井将敬』で指摘した通りに、都知事選、都議選に続く第3の小池旋風が吹き出した。
一度ある事は二度ある。安倍首相は第一次安倍内閣を国会での所信表明演説直後に下痢を理由に病院に駆け込み、投げ出した。今回の大義なき延命解散も自爆解散となりそうである。

安倍が急遽掲げた少子高齢化対策は不人気な女性層の歓心を引こうとするのが見え見えのバラマキであり、財源は消費税増税分を充て、待ったなしの財政再建を次世代につけ回す無責任極まるものである。
日銀に国債を無際限に買わせる金融秩序無視のアベノミクスでミニ円安・株高バブルは起きたが、製造業は衰退し、世界企業ブランドで日本トップのトヨタが7位と6位の韓国サムスンの後塵を拝し、シャープ、東芝が中国、韓国資本の支援を受けている。国の借金は1,100兆円と雪ダルマ式に増えて返済不能状態に陥っている。そうした深刻な実状には一切頬被りし、実態はゼロ成長なのに高度成長期のイザナギ景気を超えたかのような誇大宣伝で国民を欺いているのである。

北朝鮮問題に至っては、緊張の最中に政治的空白を生む解散総選挙と全く矛盾した事を行おうとしているのだから、何をかいわんやである。
あるいは、解散演説で一人高揚した気分を滲ませたのは、トランプ大統領との間で北朝鮮への軍事行使に自衛隊を出動させる密約でも交わしているのかもしれない。集団自衛権行使を既成事実化して憲法9条を事実上、骨抜きにし改悪してしまおうというものであるが、だとしたら、戦前の関東軍もビックリの食わせものである。

安倍なりに民進党の迷走を読んでの奇襲策であったが、一枚も二枚も上手がいた。
小池東京都知事である。状況をギリギリまで見極め、安倍の記者会見直前に「希望の党」を立ち上げ、代表就任を宣言した。人々の注目はこちらに移り、安倍の滑稽な独演となった。起死回生の目論見も真夏(は過ぎたが)の夢に終わりそうである。
都議選で自民党は惨敗したが、『日本改革の今昔 首相の座を目指した在日新井将敬』で予測したように公明票をゴッソリと持っていかれたからである。今回も小池は「解散には大義がない」と安倍への対決姿勢を明確にし、他方で「次期首相は山口公明代表に」と揺さぶっている。この一言は公明党の実働部隊である創価学会婦人部への秋波であり、都議選同様に公明票は「希望の党」へと流れ、自民党は首都圏で惨敗しよう。
野心家の小池が目指すのは、1990年代初めの非自民野党政権の核となり、細川護煕首相を誕生させた国民新党再現である。

自民党で安倍降ろしが始まるのは避けがたく、ポスト安倍の一番手と世論調査で見なされている石破自民党元幹事長が浮上してこよう。
石破は「改革派のホープ」と鳴らした新井の盟友であったし、小池を含みいずれも小沢一郎の新進党で行動を共にしていた。因みに、二階自民党幹事長も仲間であった。
その絡みの中で、1990年代の再現となる政界再編の流れが起きよう。
北朝鮮は第6回核実験に続いて火星12号を15日早朝に北海道上空を通過して太平洋沖に発射したが、朝鮮中央通信は16日、発射を現地指導した金正恩委員長が「いまだ国連の制裁に頼って我々を屈服させられると妄想する大国を自認する諸国がもどかしい。最終目標は米国と力の均衡を実現し、米執権者の口から軍事的選択といった悪口が出ないようにすることだ。核戦力の完成は最終点にほぼ達した」と強気に述べたと伝えた。
それに対してトランプ大統領は19日、国連での一般討論演説で「ロケットマンは自殺行為をしようとしている。我々は北朝鮮を全滅させる以外に選択肢はないかもしれない」と答えた。ツイッターで「ロケットマン」と呼んでいる金正恩への警告である。
その瞬間、文在寅大統領や安倍晋三首相ら各国首脳が詰めかけた議場には驚きの声が広がり、北朝鮮国連大使は席を蹴って退席した。

単なるこけおどしではなく、最後追牒と言っても過言ではない。
というのは、前回指摘したように狂犬のマテイス国防長官が核実験直後に記者会見で「北朝鮮全滅」を口にしている。金正恩はそれを単なるブラフと受け取り、弾道ミサイル実験を強行したのである。それに対してトランプは本気であると示したのである。
各国首脳の前での発言であり、金正恩は甘く考えると、自身の命はもとより、北朝鮮国民に取り返しのつかない大被害をもたらすことになると知らねばならない。

金正恩は保身のために北朝鮮国民を盾にしている、といち早く指摘したのは私であるが、最近、各メデイアで似たような論調が散見されるようになった。
しかし、まだ事の本質が見えていない。

米軍部は武力行使の準備に入っているとみて間違いない。
トランプの「北朝鮮全滅(totally destroy)」発言前日、マテイス国防長官が「ソウルを重大な危険にさらさずに軍事力を行使する手段はある」と語っているのが、それである。トランプ発言はそれを踏まえている。
日韓の軍事専門家と称する人物たちには「北朝鮮の反撃で日韓にも甚大な損害が出る」と知った風なことを述べ、果ては「東京が核攻撃で数十万の死傷者が出る」と金正恩の脅しに乗せられた暴言を吐くものすらいるが、事態の本質が見えていないばかりか、必要以上に危機を煽っている。

金正恩は「核戦力の開発はほぼ最終点」と述べている。当人は急速な核開発を誇示したつもりなのだが、重大な軍事情報をその一言から読むことが出来る。
すなわち、「ほぼ最終点」ということは、反対解釈すればまだ完成していないとなる。

これまでの情報を総合すれば、韓国国防部が指摘しているように、北朝鮮が核搭載ミサイルを完成するのは早くて来年上半期となろう。
それが米国の軍事行使のタイムリミットとなろう。

マテイスの発言はそれを踏まえたものと読めるが、米国と北朝鮮の圧倒的な戦力差を考えれば、選択肢はいくらでもある。
恐ろしい極論であるが、米国の核戦力をもってすれば、北朝鮮全域は一瞬で広島、長崎と化す。反撃の間もない。
トランプの全滅発言はそれを想定している。世界中から反人道的との糾弾を免れず、さすがにトランプでも悪魔に魂を売れまい。
しかし、金正恩の無謀な行為が北朝鮮国民を全滅の危機にまで追い詰めていることは責められねばならない。

マテイスのソウル防衛発言はその前の段階を意味する。
ピョンヤン上空の電磁波パルス攻撃(EMP)で金正恩司令部の機能を麻痺させ、ソウル北方の北朝鮮砲兵陣地を戦術核搭載のバンクバスターで破壊するなど、まさに方法はいくらでもある。

トランプの「全滅」発言は労働党や軍上層部に衝撃波として伝わっている。彼らも最悪の事態を手をこまねいて見ているほど愚かではない。
米国の軍事行使が現実化する前、どこかの時点で金正恩政権か体制護持優先かと重大な決断を迫られるであろう。
『二人のプリンスと中国共産党』で1億玉砕を叫ぶ東條英機を中心とする日本軍部と昭和天皇を中心とする体制護持派の確執を細かく分析したが、本質的に同じような状況に今の北朝鮮は置かれている。
金正恩の怖さは自分の欲望のためには自国民の安寧、安全など眼中にないことである。その種のエゴイストは世の中、いくらでもいるが、核保有した国家のトップにいるケースは史上初めてである。
それが世界にIS以上の衝撃を与え、究極のポピュリストと揶揄されるトランプ大統領をも当惑させている。

北朝鮮への軍事行使に消極的とされていたマテイス国防長官が北朝鮮が第6回の核実験を強行した直後の3日、トランプ大統領主宰の国家安全保障補佐官協議に参加した後であるが、記者会見で「北朝鮮の全滅は望んでいないが、そうするだけの多くの選択肢がある」とメモを見ながら述べた。
北朝鮮全滅とは核攻撃を示唆する。日本のメデイアには北朝鮮の反撃で日韓も甚大な損害を被るとして軍事行使の可能性を否定する論調が少なくないが、事の本質が見えていない。
米軍が本気になれば、北朝鮮は瞬時に全ての反撃が不能な全滅状態となる。ピョンヤンをはじめとする主要都市、軍事基地が第2、第3の広島、長崎となる。
トランプも無論、そんなことはしたくない。だから、金正恩がそれを理解して行動を慎むようにと暗に促しているのである。

普通の指導者なら圧倒的に不利な状況を踏まえて自制するものであるが、今のところ、金正恩にそうした気配は見えない。自国民の安寧、安全を軽視し、自己の欲望充足の為に他に手はないかと、そればかり考えているのである。核実験場の豊渓里は山に亀裂が入り、放射能漏れが心配されているが、人命も環境破壊も、眼中にない。
ここに北朝鮮核問題の本質と難しさがある。

北朝鮮の核・ミサイル開発の速度は早く、来年前半には核搭載のICBMを完成するとの見方も米韓軍当局から出ている。
それを以て金正恩は北朝鮮は米国による核の脅威から脱したとか、米国を地上から駆逐するとか超強気な事を国内メデイアに言わせているが、無知な国民を洗脳する誇大妄想でしかない。現実的には、核先制攻撃を受ける危険性が格段に高まっている。
マテイス国防長官が有事には「効果的かつ圧倒的な軍事的対応をする」と言明しているように、北朝鮮の軍事力と米国のそれは蟻と象ほども差がある。現役時代は狂犬と呼ばれたマテイスは、一端軍事行使に入ったら容赦がないだろう。

現時点で、米国に対抗できる核戦力を有しているのはロシアのみで、中国すらまだ途上である。
経済力で韓国の50〜60分の1でしかない北朝鮮が米国に対抗する核戦力を備えるなど非現実的極まりない。
金正恩は昨年3、4月に北朝鮮党・軍幹部に発言録や冊子を配り、「先端的な装備一つ一つが、肉親のように大切に感じられる」と述べている。そこからは核・ミサイルで独裁者の地位を墨守せんとする野望と深い孤独が透けて見える。

三代世襲で正統性に欠ける金正恩は、核強国を実績として権威付けを図ろうとしている。
だが、半栄養失調状態で生活が苦しくなる一方の北朝鮮国民は、何のための核強国かと不信を募らせ、政権基盤は揺らぎ、金正恩を一層焦らせる。

そうした情報を多数の党軍政高級幹部クラスの脱北者から得た韓米側は2年前から斬首作戦を5015計画に取り入れ、合同軍事演習を行っている。
金正恩は昨年春にそれを激しく非難し、予定行事に姿を現さなくなったが、極度に恐れているからにほかならない。大袈裟に破顔大笑する写真を流すのは、それを隠すポーズである。

したたかなトランプもその辺りを読み、極限まで金正恩を追い詰め、逆利用する作戦に切り替えている。
国連制裁決議案に原油全面禁輸、臨検などの警察行動と共に金正恩の数十億ドルとみられる秘密海外口座凍結を含めて足元を揺さぶる。
他方、危機を煽るだけ煽って日韓に高価な武器を買わせ、貿易赤字削減を図る抜け目のなさである。

金正恩政権の命綱は中国、ロシアであるが、双方ともに首脳同士が一度も会ったことがない金正恩はとうに見限っている。
朝鮮半島と日本における米軍のプレゼンスを極力抑える方向で、いかに北朝鮮核問題を解決するかと腐心するのみである。
米中の思惑が交錯する中、軍事行使が先か金正恩が白旗をあげるのが先か、と焦点は絞られつつある。

金正恩が北朝鮮国民を盾にしながら核開発に執着する渇きは、元在日の母親の素性さえ明らかに出来ない疎外と孤独故であろう。
非嫡出子であるため祖父の金日成にも会えず日陰の存在となり、正規の学業に就けず、スイス留学に送り出された。国内に友人はなく、愛着もない。自分等を差別してきた旧支配層に憎悪を抱いていたが、図らずも権力トップに担がれ、権力闘争の過程で叔父を含めた幹部たちの無慈悲な粛清となって現れた。

金正恩は実は、自分の心の闇と戦っているのである。
水爆実験成功と一面トップで大々的に報じた4日の労働新聞には金正恩が署名した核実験命令書が掲載され、90歳になる金己男労働党副委員長の支持談話が添えられていたが、若い指導者を必死に支えてきた老幹部たちも頭が痛かろう。

イメージ 1

韓国気象庁が第一報で、北朝鮮北東部の豊渓里(写真1)で今日午後12時36分にマグニチュード5・6の人工地震が発生したと発表した。米地質調査局と中国地震局も確認した。
昨年9月9日の第5次核実験が同じ場所で5・3の人工地震を起こしていることから、第6次核実験と見られる。
実験を強行するなら昨年同様に建国記念日の9月9日と予測する見方が支配的であったが、何故中途半端に今日なのか?

私は5日前のエントリーで「金正恩は今頃、日韓の動きに目を凝らしながら、核実験を強行したら米国がどう出るか、先制攻撃されないかと考えを巡らせていよう」と書いたが、不幸にも的中してしまった。
数日前に米国南部が巨大ハリケーンに直撃され、テキサス州を中心に膨大な損害を被っている。トランプ大統領がその対応で手一杯の間隙を突いたのである。

いかにも金正恩らしいと言えるが、朝鮮中央通信は核実験直前、金正恩が核武器研究所を視察し、「水爆」を視察する状況を写真配信している(写真2)。
写真には水爆の小型化を誇示するように火星14号核弾頭がこれ見よがしに写されている。電磁パルス(EMP)攻撃が可能な多機能弾頭を推測させる周到さである。
金正恩は「水爆の全ての構成要素が100%国産化された。強力な核兵器を思い通りにドンドン製造できるようになった」と述べたが、今回の核実験でそれを証明したと言いたいのであろう。

核実験を強行した金正恩の狙いを読み解くのは、それほど難しいことではない。
ICBM搭載用の水爆開発に成功したと誇示して国際社会、特に米韓日を動揺させ、米国を交渉のテーブルに引き出すことである。
米国との対話が始まれば、核保有国として認知させ、対等な立場を認めさせる。その上で要求を際限なく吊り上げ、他方で核ミサイル戦力を向上させて交渉力をアップさせ、米国に譲歩を迫るのは見え見えである。

対話さえ始まれば、金正恩が核を廃棄し、平和が保たれると期待する気分が一部マスコミにも見られるが、相手を見くびった幻想に過ぎない。
また、軍事行使はあり得ないとの声が散見されるが、相手がその種の主張を弱味と理解し、増長する攻撃的な思考の持ち主であることを知らねばならない。

現在の状況を簡単に言い換えれば、無差別テロを予告して閉じ籠ったテロ犯と対峙している状況、と考えれば分かりやすい。
無益な殺傷を差し控えさせるためにネゴシエーションは必要であるが、過度な期待をかけ、無原則的に譲歩するようなことがあってはならない。
北朝鮮はまだ核を搭載できるミサイル開発に成功しておらず、金正恩は密かに焦る。ネゴシエーションは核ミサイル実戦配備の時間稼ぎに利用されてはならない。

なお、金正恩政権は北朝鮮一般国民の意思を代表しているわけではなく、その厳格な区分けが必要である。
前から指摘しているように、マテイス米国防長官が軍事行使に対して「壊滅的な戦争になる」と慎重な姿勢を示したが、壊滅的な犠牲を被るのは圧倒的な米軍事力の対象となる北朝鮮国民である。仮に核先制攻撃となったらピョンヤンが第2の広島、長崎になってしまう。
昔は旧日本軍、今はISがそうしたように、金正恩は事実上、北朝鮮国民を人間の盾にしているのである。
一部のマスコミが「日本、韓国が甚大な被害を被る」と誇張し、怯えるのはマテイスの意図を曲解し、金正恩を喜ばせるだけの平和ボケである。

今後の課題は、国連安保理が金正恩の度重なる国連決議違反に警察権行使を含めた断固とした姿勢を示せるかにある。
トランプ大統領は軍事行使をオプションに入れ、米軍はその方向でいつでも作戦に入れるように、米韓合同軍事演習や自衛隊との演習を行っている。事実上の米韓日有志連合であるが、これに対して中国、ロシアは消極的、というよりも、警戒的である。
斬首作戦に怯える金正恩が一転、強気に出ているのは、それを見ているからである。

北朝鮮への制裁が効力を発揮していないとの見方があるが、表面的である。北朝鮮の軍事力を支えた基幹経済は長年の電力不足で壊滅的状況にあり、核・ミサイル開発も基本的には輸入品の加工、組立である。
昨年は失敗を繰り返したミサイル実験が今年に入って向上を見せているのは、必死になって闇市場で部品を買い集めているからである。英シンクタンク国際戦略研究所のマイケル・エレマンが今年8月に発表した報告書で「北朝鮮がウクライナの国営工場で生産された旧ソ連の液体燃料式エンジンの改良型を入手した」と指摘したが、その筋ではかねてから噂されていたことで、事実であろう。金正恩が得意そうに誇示している火星14号がそれである。

ロシアが黙認しなければ不可能なことで、プーチン大統領の意図が反映していると考えるのが合理的である。
プーチンはシリア問題でトランプとの対立を深めており、北朝鮮を使って揺さぶるつもりなのだろう。

THAAD韓国配備で米国と対立する中国も、ロシアと気脈を通じている面がある。
中国、ロシアは暴走する金正恩排除に必ずしも反対ではないが、米軍の軍事行使で地域における米国の軍事的存在感が高まることには警戒的である。
特に尖閣諸島領有で対立する安倍政権が北朝鮮を口実に軍備拡張に走っていると警戒している。

安保理常任理事国の間でポスト金正恩を含めた北朝鮮の在り方について合意が出来るか、有志連合で実力行使に入るか、まさに正念場である。
北朝鮮が今朝5時57分にピョンヤンの飛行場であるスナン付近から飛翔体1発を発射し、日本東北部上空を通過して北太平洋に落下した。韓国軍合同参謀本部の発表によると、高度550キロ、飛距離2700キロで、中距離弾道ミサイルの「火星12号」と見られる。
26日にも江原道旗対嶺から東海(日本海)に向けて3発の短距離弾道ミサイルを発射した。
グアムへの4発同時発射を予告しながら、別の方向にミサイルを発射した金正恩の狙いについて様々な憶測が飛び交っているが、前から再三述べているように、北朝鮮・韓国・日本の一般国民を人質にする彼の姑息な戦術と性格を推し量ればその狙いは自ずと見えてくる。
圧倒的な戦力差がある米国による先制攻撃を招く可能性が高いグアム方面を避け、韓国、日本方面に切り替えたのである。両国に極力脅威を感じさせて反戦感情を揺さぶり、対話世論を高め、迂回的に米国に譲歩を迫ろうというものである。

その狙い通りになる可能性は極めて少ないが、中国の制裁強化で動揺する北朝鮮国民を引き締め、求心力を保って政権を維持するには、戦前の日本軍部がそうであったように反米強硬路線を貫くしかない。その延長線上で、坑道の動きが活発になっている東部の豊渓里で核実験を強行する可能性がある。
金正恩当人は今頃、日韓の動きに目を凝らしながら、核実験を強行したら米国がどう出るか、先制攻撃されないかと考えを巡らせていよう。

北朝鮮核問題の本質は簡単に言えば、金正恩が核ミサイル保有を誇示しているが、現実には保有していないギャップにある。
金正恩は並進路線を表明して以来、一貫してワシントンを攻撃できる核ミサイルが既に完成しているかのように喧伝し、米国を恫喝してきた。日韓でもそれに乗せられ、無闇に騒ぐメデイアを見かけるが、それを示す客観的なデーターはゼロである。金正恩は何とか其を誇示しようと核、ミサイル実験を繰り返したが、逆に情報を読まれ、限界を露呈してしまった。
結論を言えば、核弾頭の小型化も、核弾頭を搭載できるミサイルも未完成である。韓米軍当局は1〜2年内に完成する可能性があると公式に発表している。

そこで、韓米国の対北朝鮮対策の核心は核ミサイル開発の阻止に置かれ、最終的には軍事手段で解決するとなった。
朴槿恵政権時代に韓米軍事演習に金正恩を直接狙う斬首作戦が取り入れられたが、トランプ政権誕生で軍事力行使もありうると公開された。
今韓国で行われている乙支フリーダムガーデイアン開始の前日の20日、ハリス太平洋軍司令官、ハイテン戦略軍司令官らが訪韓し、公開の記者会見を持ったのは、グアムへのミサイル発射を公言した金正恩への警告であると同時に、中国、ロシアに対して事前に有事を示唆し、事実上の同意を求めたと読める。

つまり、トランプの対北朝鮮政策は金正恩の核ミサイル排除に焦点が置かれ、対話などの外交交渉はその手段と位置付けられている。
ツイッターでいろいろと呟いているが、要は、金正恩が軍事力の圧倒的な差を理解し、合理的に振る舞えと誘っているのである。そこに少しの妥協もないし、シリアのロシア軍基地への攻撃のように北朝鮮の核施設、ミサイル基地への空爆はいつ何時でもありうる。

スマホで米韓日の動きを逐次追っている金正恩もそこは承知しており、国内世論を意識した大口は叩いても、行動は慎重にならざるを得ない。
そこで韓国、日本を揺さぶる作戦に切り替えたという訳である。

韓国ではTHAADで迷走した文在寅政権が結局、トランプ政権の軍事行使に同意せざるを得なかった。それに対して文の核心的支持者の中で反発と動揺が広がっている。
それを見て金正恩は一策を講じる。奇襲部隊を視察し、「ソウルを一気に占領し、平定」と韓国世論を意識して訓示した。弾道ミサイル3発の発射はその翌日である。
案の定、青瓦台報道官は「通常の訓練。挑発ではない」と呑気に発表し、「韓国政府は北の報道官になったのか」と朝鮮日報に批判されている。

支持率低迷に悩む安倍政権の反応も、金正恩の期待に沿うものがある。
週刊誌などが喧伝する対北密使説がそれである。小泉元首相が固持したとか誰それに白羽の矢が立ったとかかまびすしい。
ミサイルの上空通過に対しては各自治体が警報を鳴らし、学校では避難訓練を行っている。テレビでは「戦争になったら恐い」といった市民の声を流している。
金正恩はそれを観ながら、してやったと例のごとく破顔大笑しているだろう。そして、日本の中で反戦気分が盛り上がり、安倍政権が米朝を仲立ちする対話へと動くのを期待している。
安倍首相は記者会見で「北朝鮮が我が国に弾道ミサイルを発射」と口を滑らせ、軽率と批判を浴びているが、金正恩に一番乗せられてしまっている。

奇妙な現象が、外国為替市場で北朝鮮リスクを避ける安全資産として円買、円高が進んだことである。円で資産を保有しているファンドが意図的に流している、為にする円安全資産神話であろう。
安倍が口を滑らせたように北朝鮮の弾道ミサイルが日本を狙えば、資産の海外逃避が始まり、円暴落、ドル高となろう。

しかし、金正恩がワシントンへの核攻撃を公言した以上、トランプ大統領は核廃棄を前提にした対話にしか応じないことは明白であり、日韓への対話工作には自ずと限界がある。
金正恩はピョンヤンが第2の広島、長崎になる前に決断するしかない。

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