河信基の深読み

タブーを排し、批判精神を高めましょう(商用無断転載厳禁)

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 十分に予測されたことだが、拉致被害者家族会の蓮池透副代表の「山崎訪朝評価」発言に一番、敏感に反応したのが、他ならぬ安倍首相であったことが明らかになった。
 安倍氏は記者会見で初めて山崎ー蓮池会談を知り、「なぜそんな重大事を自分に伝えず放っておいたのか!」と真っ赤になって声を張り上げ、拉致問題担当の中山恭子首相補佐官を呼び出し、「喜んだ」と報じられた蓮池薫氏に電話させて「事情聴取」したという。

 今発売中のFRIDAY(07/2/9日)が「安倍官邸が蓮池薫氏に『山拓訪朝を否定せよ!』圧力電話」という記事で報じた。詳細は同誌を読んで頂くことにして、さわりの部分だけを抜粋する。
 
 安倍首相は定例の記者会見で、記者団から山崎氏と会談した蓮池さんのコメントについて質問が出た。首相は淡々と「北朝鮮に対しては対話と圧力です」などと話していたんですが……」(全国紙政治部記者)、内心は「淡々と」どころではなかった。山拓-蓮池会談自体をまったく知らなかった。
 何食わぬ顔で会見をやり過ごした首相だったが、執務室に戻る頃には顔が真っ赤に紅潮していた。「激怒していたようです。執務室に戻るやいなや、『なぜそんな重大事を自分に伝えず放っておいたのか!』と罵声をあげ、即座に、拉致問題担当の中山恭子首相補佐官を呼び出すようスタッフに命じました」(別の政治部記者) 。
 慌てて駆けつけた中山氏は、すぐに首相と談判。まず、「喜んだ」と報じられた蓮池薫氏に電話して
事情を聴取。そして、「報道を撤回せよ」という意味の“圧力”をかけたというのである。「さらに中山氏は、マスコミ各社に電話攻勢をかけ、『訪朝を喜んだという報道は捏造。否定記事を報じるべし』と猛プッシュしました」

 本誌はこの“事件”について、蓮池透氏に確認をとった。すると透氏も、事実関係を大筋で認めたのである。
 「弟に、中山さんから(最初の報道を撤回するよう)電話がかかってきたというのは聞いています。ただ、もともと『弟が喜んだ』という記事も間違いで、私が山崎さんの訪朝について、『何もしないよりは、動いてくれたほうがいい。だから否定はできない』という意味で発言したりしたことが、うまくニュアンスが伝わらず“評価”という報道になってしまったようです。
 でも正直、私のような者が山崎さんと会っただけで、なぜ(官邸は)大騒ぎするのかな、という気持ちはあります。穿った見方をすれば、官邸は自分たちが何もしていないから後ろめたいのだろうか、と思ってしまいます」
 安倍官邸が自分たちの都合のいい方向に情報操作しようとしたのは、疑いない事実だ。政権のカンバンにしてきた拉致問題が、もはやどうにもならない膠着状態に陥っている焦りがあることは否めない。
 「日本は北朝鮮に対し、経済制裁などで締め上げていますが、アメリカはハシゴを外す形で独自に金融制裁を解除しようとしています。佐々江賢一郎アジア大洋州局長がヒル国務次官補と会い、制裁続行や日朝2国間競技の口添えを依頼したんですが、『返答できない』『できない』などと、あっさり断られたとか。安倍首相は、アメリカからも見捨てられているんですよ」(外務省キャリア)

 山崎訪朝を拉致被害者の蓮池兄弟が「評価」「喜んだ」と報じられたことに、もっとも敏感に拒絶反応を示したのが、首相官邸と家族会であった。
 山崎訪朝に安倍首相が「不快感」を示し、家族会や「救う会」も「二元外交」「北朝鮮を利する」などと猛烈に反発していた矢先のことであったので、衝撃が強かったのであろう。

 いくつか例を挙げると、前掲記事中の中山氏の電話には、蓮池透氏が「報道は間違い。山崎氏に利用された。軽率だった』などと語ったなどと産経新聞(1/19)が報じた。
 また、「救う会」は18日夜に都内で緊急集会まで開いたが、同会ニュースは「北に利用されるだけ−蓮池薫さんがコメント」で、 「蓮池薫さんが、地元柏崎市役所を通じて、下記のコメントを発表しました。・・・ 一部では、山崎拓議員の訪朝に対し、自分(薫)が喜んでいるとの報道もなされていますが、そのような事実は一切ありません。それは北に利用されるだけであると考えています」と報じた。
 対北朝鮮強硬派の増元照明・家族会事務局長は、山崎訪朝を「政府方針に反している。自民党も山崎さんに離党勧告くらい出してもいい」と述べたが、自身のホームページでも「『山拓氏に利用されたという感が否めない』」との感触であり、(蓮池透氏は)皆さんにご迷惑をおかけしたことを謝罪されました。 今回の報道には、担当者の『拉致問題への理解度の低さ』となにか、北朝鮮の工作をも感じさせる『胡散臭さ』もあるようです 」と書いた。
 http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200701/20070118.htm
 http://www.interq.or.jp/power/masumoto/ms.html

 何かコップの中の嵐みたいで外からは何が起きているのか分かりにくいが、それを的確に報じたのは恐らく日刊ゲンダイの記事「何が起きているのか『拉致家族会』」(1/22)と思われる。

 拉致被害者の家族会がおかしなことになっている。訪朝から帰国した山崎拓元副総裁と蓮池透・家族会副代表の会談にカミつき、「報道は間違い」とマスコミにも八つ当たりだ。一体何が起きているのか。
 山拓氏と蓮池透さんの会談は、透さん側からの申し込みで、17日、都内のホテルで行われた。平沢勝栄代議士などが同席する中で、透さんは「政府のやり方では解決できない。ただ時間だけが過ぎる中で(山崎訪朝は)風穴を開けた」「弟(薫さん)も喜んでいる」といった発言をしたらしい。
 翌日の新聞は、「透さん、山崎氏訪朝を評価」「安倍政権の強硬路線に家族からも疑問符」などと報じた。

 ところが、事態は急転だ。会談の内容を知って家族会が緊急会議。「山崎訪朝は評価せず」「二元外交だ」との見解をまとめ、蓮池さん兄弟も「喜んでいるなんて言っていない」「山崎氏に利用された」と語り、おかしな雲行きになっているのだ。

 一般国民は「何があったのか」とチンプンカンプンだが、背景にあるのは家族会内部の認識の違いらしい。
 「安倍首相は北朝鮮制裁の強硬路線を続けているが、拉致問題解決は何も進展しない。そこで別の方法も探ろうという人たちが家族会の中にはいる。片や、家族会の主流派は安倍首相支持で、制裁で金正日体制を崩壊させて初めて拉致問題は進むという考え方。蓮池さんは前者のようですが”一本化”がはかられたということでしょう」(事情通)

 だが、安倍首相の強硬路線だけでコトが進むのかどうか。半島情勢に詳しい評論家の河信基氏が言う。
 「日本政府が窓口を一本化して成果を出しているなら、山崎氏の訪朝は二元外交と言われても仕方ない。しかし、何の成果も出ていないばかりか、肝心の米国だって、北朝鮮との対話を進めている。山崎氏を批判するのはお門違いです。米国でも議員外交は当たり前です。かたくなな安倍首相や家族会は、米朝が手を組んだら、どうするつもりでしょう」

 以上の日刊ゲンダイの指摘は、これまで他のマスコミが家族会などに遠慮して半ばタブー視してきたことだが、それも崩れてきた。

 安倍首相は「国際的圧力をかけて拉致問題を解決する」と言うが、実際は米国などに頼る他力本願で、北朝鮮からは無視され、行き詰まっている。
 国民の間からも「言葉はいいから、結果を出せ」と批判が上がり、家族会などもストレスが溜まっている。
 その矛盾を露呈させたのが山崎訪朝であり、蓮池透氏が「評価」するのは当然とも言える。山崎・蓮池会談に記者が立ち会った毎日、読売がともに「評価」と報じているので、間違いあるまい。

 その後、「評価」を否定する声が高まっているが、その裏で、首相官邸や安倍首相のブレーンとされる西岡力「救う会」副会長らが画策していることは予想された。
 その真相を暴いたのが冒頭のFRIDAY記事と言えよう。

 安倍政権発足から間もない昨年11月、私は当ブログで「安倍政権は拉致で沈む」と以下のように指摘した。
 「拉致問題一つで首相の座に駆け上り、永田町の“シンデレラボーイ”と陰口をたたかれる安倍首相は、今度は拉致問題で沈みかねない。
 小泉首相の下では、好きなように“強硬論”を叫んでいればそこそこ世論にアピールできたが、自身が首相になった以上は、当然、結果を出さねばならない。
 ところが、スタイルは相変わらず、対話重視の小泉首相に対して圧力を分業させられていた官房長官当事のままだ。
 案の定、片肺飛行を繰り返しており、いずれ燃料切れになるのは目に見えている。」
 http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/6782816.html?p=1&pm=l

 いよいよその通りの展開になってきた。
 再度、言う。
 安倍さん、つまらない我をはらないで、早く山崎さんのアドバイスを受けなさい。

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 時事通信が26日に“特報”した「金総書記身辺に異変説=『抗争』『軟禁』情報も」は、誤報、つまり、韓国の小説「蝶よ青山に飛べ」の広告を誤解したものであることが分かった。「金総書記身辺に異変説」検証(上)で「単なる噂の域を出ない」と指摘した通りの顛末となった。
 30日から北京で朝米金融協議が開かれることが正式に決まり、金融制裁解除など対米交渉に手応えを感じている北朝鮮が、今になって動揺するはずもない。

 聯合ニュースによると、さる24日、テギョペーテルスマンという出版社が新刊「蝶よ青山に飛べ」の広告のために、「金正日監禁事態発生!」とセンセーショナルに書き込んだ号外を街頭や新聞折込で大量にばら撒いた。
 金正日総書記の顔写真入りの、相当派手な宣伝であったが、「新刊『蝶よ青山に飛べ』の広告」という断りが小さかったため、噂がまことしやかに広まった。
 日本の報道各社からも出版社などに問い合わせがあり、「時事通信の“ハプニング”はその中で起きたのものらしい」という。
 http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2007/01/26/0504000000AKR20070126176700014.HTML

 時事通信が「韓国の消息筋」としたのは、広告を勘違いしたことから出たものであることは間違いない。
 現時点で時事通信の訂正はないが、噂の出所を確認せず、乗せられてしまったというところであろう。

 「蝶よ青山に飛べ」はノンフィクションのスタイルをとった小説で、「6か国協議米首席代表のヒル国務省次官補が06年10月突然消え・・・」といった調子で展開され、「北朝鮮軍部の権力争いの中で金総書記が監禁される」と続く。
 著者は、朴大統領時代の核開発と絡ませる劇的展開でストセラーとなった「ムクゲノ花ガ咲キマシタ」の金辰明氏で、日本でも翻訳出版され、南北が核兵器を共同開発して日本に対抗する部分が話題になった。
 新著では一転、核兵器開発の危険性、愚かさを訴えているという。
 http://book.daum.net/bookdetail/book.do?bookid=KOR9788957591840
 

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