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中越沖地震で刈羽原発から放射性物質が外部に流れ出た問題は、どこか社会保険庁の「宙に浮いた年金」と似たところがある。一部施設が宙に浮いたからではない。ずさんな管理体制がそっくりなのである。
社保庁不祥事を暴いたのは“ミスター年金”こと長妻議員だったが、刈羽原発も地震がなかったら隠されたまま、取り返しの付かない大事故に遭うことになったかもしれない。
何しろ、社保庁もびっくりのいい加減な管理体制が浮かび上がって来た。
報道されたものだけピックアップしても、変圧器脇の火災は自治体消防が到着するまで手を施せず、傍観していた。7号機の排気筒から放射性物質が大気中に排出し、何日にもわたって止められない。6号機からは使用済み核燃料プールの水が海に漏れ、1号機の原子炉建屋では消火用配管損傷による水漏れ、4号機と7号機のプールでは使用済み核燃料が入った囲いの上に鉄製の作業台が落下。低レベル放射性廃棄物が入ったドラム缶数百本が倒れ、数十本のふたがはずれ・・・。
いずれも操作手順の誤りと機器の故障が重なったという。
「結果として大事に至らなくても、安全性の検証は必要だ」と経済産業省原子力安全・保安院関係者は役人独特の持ちまわった言い方で弁明するが、チェルノブイリをみても、「原発の大事」は「終末」とほぼ同義だから、身震いさえ覚える。
事態は国際社会の憂慮を呼び起こし、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は調査団派遣を表明した。
政府は「現場混乱などを理由」に受け入れ見送りを伝えたが、新潟県知事が22日、IAEA調査を受け入れるよう文書で要請した。住民の不安を考えれば、第三者に判定してもらいたいのは当然だろう。
社保庁の「宙に浮いた年金」を政府は長年隠していたが、原発に関しても同じような隠蔽体質が感じられる。
すでにIAEAは2年前に各原発に消防隊を置くように指摘していたが、今回図らずも無視されていたことが明らかになった。
東電はコスト節約から無視し、監督官庁の経済産業省は黙認し、安全は軽視された。おなじみの官業癒着であり、背景には定番の天下りがある。
政治も見て見ぬふりである。
安倍首相は地震直後現地に飛び、刈羽原発も視察し、「問題ない」と発表していた。変圧器脇の火災を知ったのは官邸に帰った夕方と言うから、社保庁不祥事を放置した構図とそっくりではないか。東電は多額の献金をし、参院選でも自民党を支援している。政権が変わったらまずいと思っているのだろう。
マスコミが報じ出すと、「刈羽原発はけしからん」と怒って見せるのも毎度のパターンだ。
戦後半世紀以上も続いた自民党一党独裁体制の下で、政官業が互いにもたれあい、かばいあい、弛緩しきっているのである。
その意味で、社保庁の「宙に浮いた年金」も刈羽原発事故も起こるべくして起きたと言える。
抜本的解決は、風通しをよくするしかあるまい。
なお、IAEAは04年6月に、4年にわたり日本の原子力関連の研究開発施設や資機材製造施設など170カ所、5000の建造物について検証作業を行い、「核兵器転用の疑いはない」と、日本への査察回数を年5回から半減する方針を明らかにしている。
55の原発を有し、大量のプルトニウムを保有する日本については北朝鮮や欧米諸国が「核兵器転用の可能性」を訴え、IAEAの全査察費用の10%を投じて査察を繰り返してきた。
安倍さんがIAEAの調査団派遣を断ったのは“他意”があっての事ではないと思うが、「自衛的核武装は憲法違反ではない」発言から、念のためと言うこともある。
新潟知事の要望に応えるべきであろう。
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