河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

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 中越沖地震で刈羽原発から放射性物質が外部に流れ出た問題は、どこか社会保険庁の「宙に浮いた年金」と似たところがある。一部施設が宙に浮いたからではない。ずさんな管理体制がそっくりなのである。
 社保庁不祥事を暴いたのは“ミスター年金”こと長妻議員だったが、刈羽原発も地震がなかったら隠されたまま、取り返しの付かない大事故に遭うことになったかもしれない。

 何しろ、社保庁もびっくりのいい加減な管理体制が浮かび上がって来た。
 報道されたものだけピックアップしても、変圧器脇の火災は自治体消防が到着するまで手を施せず、傍観していた。7号機の排気筒から放射性物質が大気中に排出し、何日にもわたって止められない。6号機からは使用済み核燃料プールの水が海に漏れ、1号機の原子炉建屋では消火用配管損傷による水漏れ、4号機と7号機のプールでは使用済み核燃料が入った囲いの上に鉄製の作業台が落下。低レベル放射性廃棄物が入ったドラム缶数百本が倒れ、数十本のふたがはずれ・・・。

 いずれも操作手順の誤りと機器の故障が重なったという。
 「結果として大事に至らなくても、安全性の検証は必要だ」と経済産業省原子力安全・保安院関係者は役人独特の持ちまわった言い方で弁明するが、チェルノブイリをみても、「原発の大事」は「終末」とほぼ同義だから、身震いさえ覚える。

 事態は国際社会の憂慮を呼び起こし、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は調査団派遣を表明した。
 政府は「現場混乱などを理由」に受け入れ見送りを伝えたが、新潟県知事が22日、IAEA調査を受け入れるよう文書で要請した。住民の不安を考えれば、第三者に判定してもらいたいのは当然だろう。
 
 社保庁の「宙に浮いた年金」を政府は長年隠していたが、原発に関しても同じような隠蔽体質が感じられる。
 すでにIAEAは2年前に各原発に消防隊を置くように指摘していたが、今回図らずも無視されていたことが明らかになった。
 東電はコスト節約から無視し、監督官庁の経済産業省は黙認し、安全は軽視された。おなじみの官業癒着であり、背景には定番の天下りがある。
 
 政治も見て見ぬふりである。
 安倍首相は地震直後現地に飛び、刈羽原発も視察し、「問題ない」と発表していた。変圧器脇の火災を知ったのは官邸に帰った夕方と言うから、社保庁不祥事を放置した構図とそっくりではないか。東電は多額の献金をし、参院選でも自民党を支援している。政権が変わったらまずいと思っているのだろう。
 マスコミが報じ出すと、「刈羽原発はけしからん」と怒って見せるのも毎度のパターンだ。

 戦後半世紀以上も続いた自民党一党独裁体制の下で、政官業が互いにもたれあい、かばいあい、弛緩しきっているのである。
 その意味で、社保庁の「宙に浮いた年金」も刈羽原発事故も起こるべくして起きたと言える。
 抜本的解決は、風通しをよくするしかあるまい。

 なお、IAEAは04年6月に、4年にわたり日本の原子力関連の研究開発施設や資機材製造施設など170カ所、5000の建造物について検証作業を行い、「核兵器転用の疑いはない」と、日本への査察回数を年5回から半減する方針を明らかにしている。
 55の原発を有し、大量のプルトニウムを保有する日本については北朝鮮や欧米諸国が「核兵器転用の可能性」を訴え、IAEAの全査察費用の10%を投じて査察を繰り返してきた。

 安倍さんがIAEAの調査団派遣を断ったのは“他意”があっての事ではないと思うが、「自衛的核武装は憲法違反ではない」発言から、念のためと言うこともある。
 新潟知事の要望に応えるべきであろう。

 「北の脅威」を政権浮揚力にしてきた安倍首相は「米国が北朝鮮と再度対立し、日本との提携を強める」ことに密かな期待をかけているが、陽炎を追うようなものである。
 小泉=安倍政権をバックアップしてきた頼みのネオコンが、ブッシュ政権から放逐されつつあるからだ。

 6か国協議は今後、8月末までに五つの作業部会、9月初めに本会合を開いてロードマップを作成し、6か国外相会合へと向かうことになる。
 作業部会の日程と開催場所は議長国が決定するが、経済・エネルギー協力作業部会議長国の韓国は来月6日ごろソウルで開催する方向で調整しており、拉致問題を理由に「重油95万トン分に相当する経済、エネルギー、人道支援」への参加を留保している“日本問題”が焦点に浮上する。
 
 重油95万トン分は金額にして800億円前後だから、それ自体は大したことではない。
 問題の本質は、日本が行動対行動の原則に従い義務を担うことが出来るか、再び曖昧な態度を取り続けると、資格が問われることになる。

 日本では「北朝鮮は引き延ばし戦術に出た」と報じられるが、他の6か国協議参加国の間では、日本がそれを許したとの冷めた見方が支配的である。
 従来のように、拉致問題と言う自国の利害を地域全体の利害に関わる核問題より優先させると、他の参加国から、わがままに過ぎる、ごね得、との批判が高まろう。
 それこそ北朝鮮の思う壺であり、“日本問題”を理由に「次の段階」の完了時期をさらにずれ込ませ、日本の孤立化を図る。
 核問題優先の韓中ロは無論、任期中に外交成果を挙げたいブッシュ政権からも、対日圧力が強まることになるのは間違いない。米下院の従軍慰安婦対日非難決議案は日本の立場をさらに弱めるだろう。

 すでに北朝鮮は、日本を厳しく牽制している。
 金桂官(キム・ゲグァン)北朝鮮外務次官は21日、帰国する直前の北京の空港で記者団の質問に、19日の佐々江日本首席代表との協議について「日本側の申し入れにより6か国協議の枠内で、6か国協議の前進と朝日関係について意見交換した」と答えた。
 そうして、「圧力だけで問題は解決しない。日本は我々の民族的自主権を侵害し、危機を作り上げている。これ以上続けると災難が来るから注意せよ」と、警告したことを明らかにした。
 
 また、今回の6か国協議について、「満足している」と語る一方で、「核無能力化の期限設定には時間が足りなかった。9・19共同声明と2・13合意を誠実に履行する我々の立場は明確だが、相手側の準備が不足している」と語った。その上で、「核兵器解決の基本は重油ではない。 無能力化に相応する各国の義務や履行順序を明確にしなければならない。信頼構築をしながら解決するが、今後、実務会談と第二段階の6か国協議でさらに論議する必要がある」と強調した。
 さらに、「核施設解体には軽水炉の提供が必要だ」と付け加えた。
 http://www.yonhapnews.co.kr/international/2007/07/21/0619000000AKR20070721045400009.HTML

 金外務次官の認識は、日本だけが圧力に偏り、無能力化に相応する義務を怠っているというものだ。
 また、朝鮮総連中央本部の土地・建物競売問題を「民族的自主権を侵害する」圧力と理解し、対抗措置を匂わせている。
 今後、一定の信頼関係が構築されたと判断する米国との対話をベースに、一段と対日圧力を強めてこよう。韓国、中国、ロシアは米朝対話を一貫して支持しており、日本の立場は苦しくなる。
 まさに日本外交の危機だが、刈羽原発を現地視察しながらの火災事故を知らず、「問題ない」と戻ってきた安倍首相の危機管理能力では、手に余るかもしれない。

 今回の6か国協議についての米側の評価は、「非核化にはずみがついた」(ヒル次官補)と言うものだ。
 スノー報道官も定例会見で「核無能力化を完結させる必要があると北朝鮮が理解しているとみている」と答えるなど、履行期限目標設定先送りにそれなりの理解をみせている。
 
 ネオコン主導下のブッシュ政権による北朝鮮敵視政策はイデオロギー的なもので、実際に、米朝間にそれほど深刻な利害の対立はない。米朝対立と連動していた南北の分断・対立が、融和へと向かっているからである。
 その副産物であった核問題も、ロードマップの描き方さえ間違えなければ解決できない性質のものではない。

 テロ支援国家指定解除など金融・経済制裁の解除は、BDA送金問題を通して基本的に米朝間で決着のめどが付いていると思われる。
 ブッシュ政権がこだわってきたウラン高濃縮問題も、実態は、数十の遠心分離機をパキスタンから購入したと言うものでしかない。高濃縮には数千台の分離機が必要であり、最近は米国も低濃縮と言い換え始めた。つまり、北朝鮮が有する世界最大のウラン資源を開発する核燃料用というわけである。
 
 そうした問題は、申告が先か無能力化が先かの観念論争をしても無意味である。
 例えば、核無能力化を二段階に分け、第一段階をすでに封印された核施設の無能力化とし、エネルギー支援を行う。そうして具体的な成果を挙げながら、一歩一歩、行動対行動の原則で前進させればよいのではないか。
 最終的には、米朝の国交正常化とともにジ・エンドとなろう。

 だが、日本との関係次第で、積み残される問題が出てくる可能性がある。すでに北朝鮮が保有している“過去の核”である。
 これについては、北朝鮮は、日本が敵視政策を放棄し、国交正常化=経済協力をしない限り手放すことはないとみられる。それとの関係で日本が98年のノドン・ミサイル実験など「北朝鮮の脅威」を理由に構築しているMD網の解体も求めてこよう。
 
 その意味で、米朝よりも日朝の方が壁が高い。
 ブッシュ政権がクリントン政権のように、“過去の核”を不問にして北朝鮮との関係改善を急ぐ可能性も否定できない。

 安倍政権には「見返り支援参加を遅らせることで日本の存在感を示す」という考え方もあるが、それほど単純な問題ではないことだけは確かである。

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