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日本では中国が北朝鮮を見限り始めたとの願望を込めた見方が支配的であったが、温家宝首相の訪朝と中国建国60周年式典での胡錦涛主席の演説は、朝中同盟が簡単には崩れないことをはっきりと示した。
自民党政権時代はそれが全く見えておらず、無駄な上滑り外交を繰り返していた。鳩山新政権はそのことをしっかりと見据えた上で、対北朝鮮外交やアジア重視外交を進める必要があろう。
順安(スナン)国際空港に4日に到着した温首相を金正日国防委員長が直接出迎えたのは、胡主席の特使として戴秉国国務委員が先月18日に訪朝した後の水面下の根回しが完了したことを踏まえ、国交樹立60年を迎えた朝中間の親密な関係を内外に誇示するセレモニーでもあった。
温首相を沿道で数十万ピョンヤン市民が大々的に歓迎し、テレビで流したことがそれを端的に物語る。色々勝手に、面白おかしく解釈する向きがあるが、それ以上でもそれ以下でもない。
朝中間の首脳往来はソ連・東欧社会主義圏が動揺した80年代後半から頻繁になり、91年5月の李鵬首相訪朝で中国は朝中貿易決済のハードカレンシー移行、南北国連同時加盟を求め、以後、両国は同盟よりもそれぞれの社会主義体制の生き残りに重点を置く関係へと移行した。
それから18年、胡主席が建国60周年記念式典で「社会主義が中国を救い、開放・改革が中国を発展させる」と演説したように、中国は事実上の“G2”として米国とともに世界を牽引する立場になった。
他方の北朝鮮は体制の危機を脱し、金総書記が憲法を改正した今年四月「私が社会主義を実現する」と新たな決意を披瀝したものの、開放・改革に手間取り、先行きは不透明だ。
そうした中、両国は再び歩み寄ろうとしている。
李鵬訪朝5ヵ月後に金日成主席が訪中しているが、金総書記が訪中するようなことになれば、究極の理念・目標を同じくする両国が新たな関係の時代に入っていくことも十分にありうる。
朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは温家宝首相を「中国共産党政治局常務委員・国務総理」と紹介し、金正日総書記が「迎接」「ともに歌劇観覧」と伝えており、党としての関係を重視した扱いをしている。 温首相も空港での書面演説で「中朝善隣友好関係を絶え間なく発展させることが中国党と政府の確固不動の方針」と、党関係を優先させている。
日本からは見えないことだが、この点が中米、日中、韓中関係との決定的な違いと言える。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/10/10-04/2009-1004-013.html
http://www.kcna.co.jp/calendar/2009/10/10-04/2009-1004-015.html
無論、かつてのようなイデオロギー偏重の関係ではないが、日米同盟以上の強固さが保持されていることは間違いない。
温首相ら訪朝団300人はピョンヤン東方100キロの平安南道檜倉郡にある「中国人民支援軍烈士の墓地」を参拝し、温首相は毛沢東主席の長男の墓に厳かに献花したように、朝鮮戦争をともに戦った「戦友関係」が消えたわけではない。
核問題や6か国協議復帰問題もそうした流れの中の一部に過ぎない。「核問題を巡る朝中間の対立」が日本では喧伝されるが、部分的な問題を誇張している。
新華社は6日未明、金総書記が5日夜、温首相と会談し、「『朝米協議を通じて2国間の敵対関係を和平関係に変えねばならない。朝米協議の行方をみながら、6者協議を含む多国間の会談を行う』と述べた」と伝えた。
4月に6か国協議離脱を表明してから金総書記が協議復帰の可能性に言及したのは初めてのことでそれなりにニュースではあるが、それ自体は私がすでに予測したことであり、驚くに値しない。
北朝鮮にとって、米朝協議さえ保障されれば、その後に続くものが3者であれ4者であれ、あるいは6か国協議であれ本質的な違いはない。
クリントン訪朝で大まかなシナリオは出来ており、残るはそのための環境づくりであった。北朝鮮としては6か国協議議長国の中国のメンツを立て、同時に、その仲介的な役割に期待するということであろう。
新華社は温首相が金総書記の発言を評価し、「朝鮮半島の非核化に向けて関係国とともに努力する」と応じたと伝えた。具体的には、何かと付帯条件を付けたがる韓国、日本を説得すると言うことである。
温首相が日本のメディアがしきりに取り上げる「北朝鮮の非核化」ではなく、「朝鮮半島の非核化」、つまり、地域の非核化に言及していることに留意する必要がある。
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