|
北朝鮮軍が最近とみに強硬姿勢を露わにしている。先月25日には総参謀部が、米韓連合軍司令部が実施する合同軍事演習の中止を要求し、「必要なら核抑止力を含むあらゆる攻撃手段を総動員する」と核攻撃まで示唆した。
背景には、北軍内部で強硬派が台頭していることがある。
8日から18日までとされる米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」は朝鮮半島有事の際の米軍の増援、指揮態勢を点検する。野外機動訓練「フォールイーグル」も同時に行われ、「フォールイーグル」の一部訓練は4月末まで継続する。
米韓連合軍司令部によると、米軍は在韓部隊約1万人と在日米軍など域外から約8千人が参加する。空母を含め約2万6千人が参加した昨年より規模は縮小された。移設問題が起きている普天間基地の米海兵隊も無関係ではない。
同司令部は2月、北朝鮮側に対し「定例的な訓練」として日程を通告しており、通常の演習以外の特別な意味はない。
ところが、北朝鮮は過剰ともいえる反発を強めている。
朝鮮外務省スポークスマンは9日、「核抑止力継続強化」を表明したが、特に強硬なのは軍で、人民軍最高司令部は8日、スポークスマン談話を発表し、「先制侵略戦争演習、核試験戦争練習に備える」として全軍全民に戦闘態勢を発令した。前日、人民軍板門店代表部も報道官談話で演習が強行されれば非核化プロセスの中断と、休戦協定に拘束されないと発表した。
先月25日の人民軍総参謀部報道官談話は、「わが国を侵略するための先行作戦だ。朝鮮半島情勢は一触即発の危険な局面を迎えている。もし演習を強行するなら強力な軍事的対応を講じ、必要なら核抑止力を含むあらゆる攻撃と防衛手段を総動員し、敵の砦を粉砕する」と警告した。
核攻撃を示唆したのは昨年8月の米韓合同軍事演習の際に表明して以来、二度目となる。
日米核密約などで米軍による核先制攻撃の脅威に晒されてきた北朝鮮が反発するのも無理がない側面があるが、現時点で核攻撃まで示唆するのはやはり過剰反応である。
客観的にはそうした脅威が存在しないことは明らかであり、北朝鮮内部に原因を探るのが妥当であろう。
米国もそうした反応だ。ボズワース北朝鮮担当特別代表は先月25日、「(6か国協議は)極めて近い時期に、再開のための準備が整う」と仁川国際空港で記者団に述べ、北軍部の過剰反応とは別に対話外交を進める姿勢を明らかにしている。
北軍部で何が起きているのか?
その謎を解く鍵は6日に行われた咸鏡南道咸興市での「2・8ビナロン連合企業所」竣工を祝う10万群衆大会にある。石炭から作られる繊維=ビナロンは北朝鮮の純国産技術で、16年ぶりに近代化して再操業となった。
金正日総書記が初めて群集大会に参加する力の入れようであったが、首席団の金総書記の左側に金永南最高人民会議常任委員長、デノミ失敗による失脚説が韓国で流れた金逸日首相が、右側に金英春人民武力相、金正覚(キム・ジョンガク)人民軍総政治局第一副局長が並んだ。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2010/03/03-06/2010-0306-010.html
ポイントは、金正覚軍総政治局第一副局長だ。本来立つべき趙明録(チョン・ミョンロク)総政治局長は高齢と病弱のため、もう一人の軍最高実力者である李乙雪(イ・ウルソル)前護衛司令官とともに昨年来公式の席に姿を見せない。
つまり、金正覚軍総政治局第一副局長は事実上、趙明録総政治局長の後継者の役割を果たしていると読める。総政治局は軍の思想を統括する政治機関であり、総参謀部もその下に置く。
金正覚軍総政治局第一副局長は強硬姿勢を示して威令を行き届かせ、存在感を示していると読める。
後継移行時にはよく見られる現象であり、一時的なものとみられる。
金総書記は軍強硬派の意向も踏まえながら、米国などとの協商に臨むことになろう。
米朝対話、6か国協議が動くのは米韓連合軍事演習が終わる18日以降となろう。
なお、韓国の聯合ニュースは9日、北朝鮮軍が射程3千キロ以上の中距離ミサイルを2007年に実戦配備し、ミサイル師団を創設したと報じた。総参謀部のミサイル指導局の傘下に置かれているという。
|