河信基の深読み

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 検察審査会が小沢・民主党幹事長に対する検察の不起訴処分に対して「起訴相当」と議決した。新たな証拠があったわけでも無いのに、11人全員一致というから驚きだ。
 しかも、「絶対的権力者」と主観的、扇情的な表現で小沢氏を糾弾しており、中国文革時の人民裁判さながらである。
 
 以前から指摘しているように、小沢氏へのいわゆる政治資金規正法違反容疑騒動は、市民団体を装った「特定集団」の告発→検察捜査情報漏洩→マスコミ世論形成というプロセスを辿って政治問題化した。
 そして、一時は小沢民主党代表辞任となり政権交代を危うくしたが、腐敗した自民党長期政権への批判は止められなかった。
 第二弾が、政権交代後の今回の「起訴相当」議決だが、検察審査会に訴えたのは同じ「特定集団」である。
 つまり、事実上、その「特定集団」が世論を操作して日本の政治を動かしていることになる。
 
 これは極めて危険な兆候であり、日本の民主主義の自殺行為につながりかねない。
 『代議士の自決』でも指摘したが、新井将敬が愛読したスペインの思想家・オルテガは『大衆の反逆』で、衆愚的なポピュリズムが政治を「熱狂的で、我を忘れた政治」に堕さしめ、社会を大衆ファッシズムが蔓延る「原始的な野蛮状態」に落とすと喝破した。今の日本の状況はまさにそれである。
 
 小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法虚偽記載違反容疑は一年にわたり東京地検特捜部が捜査し、陸山会が世田谷区の土地購入代金の原資4億円を収入として政治資金収支報告書に記載しなかったなどとして石川・衆院議員ら小沢氏の元秘書3人を規正法違反罪で起訴したが、小沢氏については「公判で共犯として有罪判決を得るだけの証拠はない」として嫌疑不十分で不起訴処分にした。
 これに対し、市民団体を自称する産経新聞元記者、「在特会」関係者ら「特定集団」が「検察庁の判断は国民目線に立っておらず、不起訴は納得できない」として検審に審査を申し立てた。
 
 それに対して有権者の中からくじで選ばれた11人の審査員で構成された第五検察審査会は冒述のような議決をしたが、11人中全員が「起訴相当」で一致したのがまず異常である。
 7、8割の世論は小沢氏への疑念を持っているとのアンケート調査があるから、国民目線なら単純計算して7、8人賛成となろう。全員賛成は一部強硬派に扇動された結果とみられる。
 挙げている根拠と言えば、「秘書たちが取引を報告しており、小沢氏が知らなかったはずがない」と憶測に過ぎず、しかも小沢氏を「絶対権力者」などと週刊誌の中吊り広告に影響されたような不適切な表現を用いており、冷静な判断とはほど遠い。
 
 このような判断が一政治資金規正法違反事件にとどまらず、日本の政治に影響を与えるとしたら、民主主義を根底から揺るがす重大事態と言わねばならない。
 だが、現実には、民主党のイメージを大きく損ない、7月の参院選を左右しようとしている。
 今回の議決を受けて検察は3カ月以内に結論を出すが、それに対して審査会が再審査を行い、再び起訴相当の議決が出ると強制的に起訴される仕組みであり、場合によっては民主党は壊滅的な打撃を被り、日本の政治は大混乱状態に陥ろう。
 
 昨年5月の改正法施行後、明石市の歩道道事故で明石署元副署長が、尼崎市のJR脱線事故で歴代3社長が検審の2度の議決をへて強制起訴され、国民の喝采を浴びているが、それとは問題が根本的に異なるのである。
 国民の多くがそれに気付かず、今回の起訴相当議決に喝采を送っていることが、衆愚的なポピュリズムの恐ろしさを物語る。
 
 内には破綻寸前の財政赤字と格差拡大・生活破壊、外には中国、韓国の台頭で、日本は今、重大な歴史的な転換期に直面している。
 政治が舵を失うようでは、日本丸はこのまま沈没しかねない。

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