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オバマ大統領は1日夜(日本時間2日)、ホワイトハウスでの緊急演説で、オサマ・ビンラディンを米軍がパキスタン国内で殺害し、遺体を確保したと発表し、「最大の成果」と自賛した。
だが、ビンラディンの遺体は米軍艦船でアラビア海北方に運び、水葬したという。遺体の受け入れ国を探すのが困難なことが理由というが、矛盾した行動には報復への怯えが見える。
ビンラデイン一人始末するのに米国は膨大な死傷者と時間、カネを使った。敵も多くつくった。米国流経営学で言えば明らかなコスト倒れであり、もう立ち直ることはできないだろう。
過大な軍事費負担が悪化させた累積財政赤字は5月中旬に債務上限法上限の14兆3000億ドル(1200兆円)に達する見通しだ。国内対立も激しくなり、野党共和党が上限引き上げに反対すれば新規国債発行ができなくなり、ギリシャのようなデフォルトもありうる。
それ以上に、米国の知的道徳的衰退はもはや覆い隠せない段階に来ている。
米国がビンラディンの亡霊に怯えるのは、自身に道徳的な確信がないからにほかならない。
ビンラディンはイスラマバード近くの民家に潜んでいたが、米軍特殊部隊がヘリで攻撃して殺害したと言う。国家による個人の暗殺であり、国際法上は違法の疑いが濃い。
そこに10年に及ぶ米国の反テロ戦争の本質が垣間見える。
ビンラディンの無差別テロは決して許されないが、それを招いたのは米国である側面を無視できない。
ビンラディンは旧ソ連のアフガン侵攻に対抗し、米国が支援するイスラム・ゲリラに参加したが、米国が91年の湾岸戦争でイラクを攻撃し、サウジが米軍駐留を認めたことに反発して反米闘争を開始した。
イスラム圏が裏切り者はどちらかと怒るのは一理ある。
ブッシュ前大統領は、イスラム圏の反発をテロと決め付け反テロ戦争を前面に押し出して、イスラム圏全体を敵にしてしまった。
そこには狂信的なキリスト教福音派のブッシュ前大統領の資質と共に、ソ連崩壊に伴うポスト冷戦時代の覇権確立を狙い、米国の国益を前面に出した国家エゴが潜む。
米国の正義は、米国が世界に広めた国家エゴ=ナショナリズムとともに根底から揺らいでいる。
それは人類社会を蝕み、怒りと憎悪で分裂させている。
「ビンラディンの死で終わるわけではない」とクリントン国務長官は述べたが、米国自身が変わらなければ世界の混乱は今後とも深まりこそすれ、収まることはないだろう。
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