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南北関係を安定化させる具体的な方途は、最も不安定化した状態を分析し、しかるべき教訓を得ることである。
その意味で、昨年の大坪島砲撃事件は格好のサンプルとなる。この事件の詳細はすでに書いたので省略し、幾つか教訓を挙げる。
第1は、南北間で偶発的な軍事衝突が起きるリスクが存在し、増大する兆候があることである。
皮肉なことに、冷戦の縛りから解放され、南北の自主性が回復するとともに衝突の危険性が高まっている。
第2に、それは南北の感情的な対立や面子が絡んでエスカレートする危険性がある。
大坪島砲撃事件の経緯を簡単に振り返ると、韓国が自国領海に向けて実弾演習をしたことに、北朝鮮は自衛権行使を名分に島を砲撃した。それに怒った韓国空軍のF16戦闘機が島上空に飛来し、報復爆撃態勢に入った。寸前に米韓連合司令部の反対で中止されたが、韓国国防相は「韓国固有の自衛権」とし、今後同様な事態が起きれば、独自に対応することもありうるとの見解を表明した。
それは南北の自衛権行使が全面戦に発展する事態が起こり得ることを如実に物語っている。
北朝鮮は「南は米国の傀儡国家」と非難し、韓国では「北はソ連の傀儡国家」と反発する。
しかし、両方とも現実離れした虚構に過ぎない。この虚構の上に立っている限り南北関係は安定せず、対立を繰り返し、周辺大国に付け込まれるだけである。
論文『ナショナリズムを超える南北関係と統一論試論』(徐勝編「朝鮮半島の和解・協力10年」)所収で指摘した通り、北は食糧など生活必需品の絶対的窮乏、南にはモノが溢れながらその恩恵に与れない再分配システムの欠落などそれぞれ内部に分裂と対立を抱え、また南北相互に価値観の違いと固有のナショナリズムが形成されている現状では、南北が話し合えば何でも解決できるなどと言うのは幻想にすぎない。
新しい現実に即した平和構築と共存共栄のビジョンと対応策が必要不可欠である。それが南北の相互承認と協力関係の再構築である。連邦や国家連合はその次の段階になる。
一時的に「二つの朝鮮」が出現するが、分断固定化ではないことは東西ドイツの例が示している。
「南進統一」「北進統一」はともにベトナムから教訓を学ばない愚者の妄想である。
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