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オバマ米大統領は17日、オーストラリア議会での演説で、安全保障政策でアジア太平洋地域を「最優先」に位置づけ、地域の秩序作りを主導する新アジア太平洋戦略を発表した。
唐突な新戦略にはオバマ政権の焦りが垣間見える。「米国は太平洋国家であり、ここにとどまる」と強調したが、留まらなくてはならない事情があるということである。
一部メディアは台頭する中国を軍事面で牽制とか、北朝鮮情勢に対応と伝えるが、逆立ちしている。
膨大な対外債務を抱え、失業増大と格差拡大で国内対立が深刻化し、経済問題が最大の安保に浮上している中、債務危機に火が付いた欧州は当てにならず、世界の成長センターのアジアに踏みとどまって経済的権益を最大限追求しようというのが真の狙いである。
中国牽制、北朝鮮云々はそのための後付の理屈である。
韓国の李明博政権や日本の野田政権はそれを読めずに右往左往し、米中の間で股裂き状態に成りつつある。
余談だが、西岡力・荒木和博グループと産経など従米右派メディアが「米国が本腰を入れ始めた。金正日政権崩壊は近い」とはしゃいでいるのは軽薄の極みと言うべきである。
オバマ政権はアフガニスタンとイラクからの米軍撤退を加速化させている。それ自体は歓迎すべきとしても、動機が身勝手で、良くない。
財政難で国防費の大幅削減を迫られる中での背に腹は変えられない措置であり、明確な世界戦略に基づくものではない。地域を不安定化させ、力に余るから出て行くという無責任さは否めない。
同じようなことをアジアで繰り返す危険性がないとは言えない。
アジアが米国経済の浮沈を握るとの認識は米国でも普遍化しつつある。
アフガニスタン、イラク撤退で幾分余裕が出てきた軍事力をアジアに振り向け、最大限の経済的な譲歩を勝ち取ろうという作戦であろう。
インド洋から南シナ海に至るシーレーン(海上交通路)、一部ASEAN諸国と中国が海洋権益を巡って対立する南シナ海、日中が領有権を争う尖閣(魚釣)、北朝鮮核問題や朝鮮南北対立は格好の材料であり、漁夫の利を得ようと関係国を揺さぶってくることは明らかである。
乗せられるほうが馬鹿、と言ってしまえばそれまでだが、利権は国境を超えており、複雑化している。
当面はASEANが主舞台に成る。17日のASEAN首脳会議はASEANに日中韓など6カ国が加わる「広域自由貿易圏」の構想で合意し、米国の参加には慎重である。
その一方で、「広域自由貿易圏」加盟国をASEAN側が自主的に決めるとし、中国の温家宝首相からも同意を取り付け、フリーハンドを確保した。
18日からインドネシア・バリ島で中米首脳会議が持たれるなど多数派を形成する入り乱れた外交戦が展開されている。
軍事偏重の硬直した安保観念に捕らわれ、柔軟性を喪失した国が脱落していくであろう。
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