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安倍晋三首相が15日、自身の意向を承けた元官僚・学者らを集めた安保法制懇が報告書を提出したのを受けて記者会見を持ち、集団的自衛権行使へと憲法解釈を転換させる「基本方針」を明らかにした。
他国との戦争放棄を宣言した憲法の根幹を一内閣の判断で変えようとする異例の事態であるが、国民感情に訴えようと無理矢理こじつけた事例を自製パネルで繰り返し訴える安倍の言葉からは、歴史の審判にたえる哲学も覚悟も伝わって来なかった。 ただ、記者の質問に「1960年の日米安保条約に多くの人が反対したが、それが抑止力となって平和が守られた」と語気を強めた時、内面に巣くう深いこだわりが顔を出した。 日米安保は安倍の祖父岸信介首相が国民の反対を押しきって強行締結し、直後に石もって追われるように退陣した曰く付きのものである。 安倍は「デモ隊の怒号が聞こえてきた」と当時の記憶を雑誌などで回顧しているが、少年の心にトラウマとなって刻まれたことは想像に難くない。 三代世襲政治家の宿命とも言えるが、安倍の心中には、祖父は悪くなかったとの思いが古傷のように疼いた。やがて、それを明らかにし、志を受け継ぎたいとの思いに変わった。第一次安倍内閣を無様に放り出したことで執念と化したようだ それは同時に自身の存在意義を肯定し、自尊心を守ることでもある。 素朴な肉親の情を否定する必要はないが、政治の世界では独善的排他的なネポテイズムの温床になりやすい。また、自己愛に偏り、視野狭窄に陥りやすい。 安倍が先の戦争への反省を自虐的と拒み、被害国民の神経を逆撫でするように靖国神社参拝にこだわるのは、そうした危惧が杞憂でないことを示している。 その延長戦上に、他国と戦争する道を開く集団的自衛権を考えているとしたら、これほど危険なことはない。 安倍首相の記者会見を観ながら、日本と韓国の政治文化の違いを痛感した。 自分と同意見の有識者を集めた安保法制懇は韓国なら御用団体と歯牙にもかけられず、その報告書に基づいて基本方針を表明しようものなら自作自演の茶番劇と逆に国民世論から指弾されよう。 ところが、日本ではそうした声があまり聞かれず、マスコミも批判はしても同じ土俵で相撲をとっている。 一定の形式を踏まえれば済むとされる日本特有の情緒であり、茶道や華道、能楽などに見られる極端な形式主義文化に通じるものである。 しかるに、首相の記者会見という仰々しい形式に隠された内容は、貧弱極まりないものであった。韓国なら国会の国政監査により洗いざらい暴かれてしまうであろうが、公明党との与党協議を経て閣議決定し、国会はその後で一件落着というのであるから何をかいわんやである。 日本国憲法の根幹である平和主義を保障する9条が明確に禁止する集団的自衛権を、時の一政権の解釈で変えてしまう? 立憲主義を否定する暴挙である事は二言するまでもないが、安倍は「憲法が掲げる平和主義は守り抜いていく」と詭弁を弄した。呆れるほかない。 他方で、抜け目ないと言うべきか、米軍艦に母子が乗り込む絵柄のパネルを指しながら、この船が攻撃されても黙って見殺していいのか、と力を込める。 パネルは安倍本人が直接指示して描かせたものであるが、お涙ちょうだいの安っぽい紙芝居さながらである。日本国民も侮られたものである。 しかし、笑ってはいられない。 同パネルは北朝鮮有事を想定している。自衛隊を派遣して日本人を退避させる案もあるが、韓国の同意を得られないので、とりあえず米軍艦を挟んだということである。 安保法制懇に北朝鮮問題専門家は一人もおらず、集団的自衛権正当化のために北朝鮮有事が悪用されたという訳である。 北朝鮮情勢については別の機会に譲るとして、安倍の狙いが尖閣領有で争う中国にあることは明白である。 グレーゾーンなる言葉でオブラートしているが、中国漁民が大挙して尖閣に上陸する事態を見越し、自衛隊派遣の準備を急ごうというのが本音である。 日本国民の一部に領土を守れと息巻く反中感情が高まっており、それに便乗して武力行使、というのが安倍の描くシナリオだが、日中軍事衝突を招きかねない冒険主義的な危険な企みと言わねばならない。 今日のロイター伝は、ジム・チャイスら国際投資家が「安倍はアジアで最も危険な政治家」と非難の声をあげていると伝えるが、さもありなんである。 安倍が集団的自衛権を正当化する抑止論は、元A級戦犯の祖父から受け継いだものであり、戦前の日本軍部が叫んでいた自衛論の焼き直しである。周辺国を刺激し、際限のない軍拡競争を引き起こすだろう。 日本にとっても不幸なことであるが、経済的な相互依存性を深めている地域秩序への脅威となりかねない。 なお、安倍パネルで出汁にされた韓国の外務部スポークスマンが「平和憲法を堅持し、周辺国の懸念を払拭することを望む」との談話を出したが、隣国から憲法を守るようにと諭されるのも珍しい。 予断だが、今週号の週刊文春が「朴槿恵大統領が安倍首相とオバマ大統領を交えて会談した際などで、『二人だけの秘密』と目に涙を浮かべながら親日の心情を吐露した」と書いている。無論、出鱈目だが、「安倍側近」が明かしたとある。世耕らしいが、姑息なことをするものだ。 日本との首脳会談に応じない腹いせに、週刊誌に捏造情報を流して他国の元首を貶めたとみられるが、外交問題に発展しかねないこともわからないのかと、ほとほと先が思いやられる。 |
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2014年05月16日
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