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ヘイトスピーチは2008年頃から目に付くようになった社会現象であり、戦前からの在日朝鮮・韓国人差別とは本質的に異なる特徴を帯びる。
その中核となっているのがいわゆる「在日特権を許さない市民の会」(在特会)であるが、その呼称が示すように在日を特権集団とみなしている。 一昔前まで、在日は哀れな亡国の民であり、日本社会の最底辺で呻吟する憐憫と蔑視の対象であったが、ヘイトスピーチで僻んだ憎悪を吐き出す一部日本人には特権集団と認識されている。 反動形成、すなわち、コンプレックスの裏返しである。 10月下旬、都心のJR新宿駅周辺に100人ほどが日の丸の旗を持って集まり、「日韓国交断交国民大行進in帝都」の垂れ幕を掲げ、「クソまみれの朝鮮人」、「ゴキブリ朝鮮人を叩き出せ」とシュプレヒコールをあげながら駅に向かって行進し、1時間後に解散した。 その間、デモに反対するカウンターと呼ばれる人たちが歩道から「レイシスト、帰れ」と批判し、応酬する場面もあった。 私も街中でヘイトスピーチデモを見掛けたことがある。マスクなどで顔を隠していたが、若者が多い。女性も混じっていた。 ありったけの口汚い言葉をてんでに叫んでいたが、私の耳に聞こえてきたのは、彼らの心の悲鳴であった。何が若者をこのような無意味な行動に走らせるのかと、怒りよりも、悲しみが浮かんできた。 街行く人々は概ね、何が起きたのかとビックリした表情を浮かべて見送っていたが、私と同様の感想を持った人も少なくなかったであろう。 ヘイトスピーチの背景にあるのは、長い停滞に沈む日本社会の閉塞感である。 40代以下の層は高度成長時代の日本を知らない。彼らがイメージする日本は不景気、リストラ、非正規労働、ブラック企業、格差拡大、財政危機であり、未来に希望を持てないものが多い。 相対的に中国、韓国の国力が高まり、領土問題や歴史認識において日本との摩擦が強まっている。 閉塞感や危機感の捌け口を外に求める排外的なナショナリズムが高まるが、その極端な形態がヘイトスピーチにほかならない。 日本の内なる外的な存在である在日に攻撃の矛先を向けて、日頃の憂さを晴らそうとしているのである。 植民地時代に強制徴用などで日本に来た在日とその子孫には事実上の賠償として特別永住権が与えられているが、在特会は特権と批判する。 貧しい朝鮮部落が存在した一昔前はそれを特権と意識する日本人は皆無であったが、彼らの目には、それは、在日の生活を良くしている特権と映る。その分、自分達が損をし、未来を暗くしていると怒りをぶつけてくるのである。 そのほとんどは彼らの一方的な誤解なのだが、歴史観の欠如と偏見が感情的な反発を増幅させている。 ヘイトスピーチが不正なものであることは言うまでもない。 国連人種差別委員会が8月、日本政府にヘイトスピーチの法規制を勧告し、それに先立って京都地裁が人種差別として在特会に学校周辺でのヘイトスピーチ差し止めと損害賠償を命じた。 問題は、政治の世界にそれを助長する動きがあることである。 山谷国家公安委員長らが在特会幹部と写真を撮って親密な関係を誇示したり、自民党がヘイトスピーチ規制に消極的な姿勢を見せたり、一部マスコミが公然と庇ったりと、ヘイトスピーチが言論の自由、表現の自由に属するかのような誤解を与えている。 それが結果的にヘイトスピーチを助長している。 |
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2014年11月03日
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