河信基の深読み

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先週初め、韓国のテレビ局から神戸児童連続殺傷事件について取材依頼の電話を受けた。もはや社会現象と言うべき『絶歌』出版騒動が韓国でも注目されているらしい。
私の著書『酒鬼薔薇聖斗の告白ー悪魔に憑かれた時』の出版社デスクを通してだが、人間は誰しも天使として祝福されて産まれるが、成長過程で悪魔に憑かれる、との論旨が注目されたようだ。

少年犯罪の原点、と目されている事件を簡単に振り返ってみよう。
阪神・淡路大震災やオウム真理教事件で社会が揺れている最中の1997年2月から5月にかけ、新興住宅街の神戸市須磨区で5人の小学生が連続殺傷される事件が勃発し、世間を震撼させた。
被害者の首を切断し、口に酒鬼薔薇聖斗と名乗る挑戦状をくわえさせて中学校の校門に晒し、さらに神戸新聞社に「人を殺すのが愉しくてしかたない」と嘲笑する犯行声明文を送り付け、世間を驚愕させた。

マスコミは前代未聞の凶悪犯の人間像を競って報じ、多くの有識者が30代から40代の変質的な知能犯であると予測した。
ところが、逮捕されたのは14歳の中学3年生であった。
全く予想外の展開に世間は衝撃を受けた。

少年が少年法の適用対象であり、家庭裁判所の審判に回されたため、顔も名前も伏された。1997年10月の審判決定で少年Aの関東医療少年院送致が決まり、神戸地裁は動機は性的サデイズム、とする異例の決定要旨を公表した。しかし、性的倒錯に陥らせた愛着障害などの原因を解明する上で不可欠の生育歴や精神鑑定主文の重要な部分が抜けていた。

私は当時、5千字の決定要旨は先天的犯罪資質と示唆して少年Aを一般人と切り離し、世間を納得させようとしていると判断、著書で不透明な動機の解明を試みた。
『絶歌』を読んで改めて、長男に過度に期待した厳しい母親との葛藤、嫉妬や孤立が少年の疎外感、心の闇を絶望的に深めたと確信している。

衝動的な殺人ではなく、生きる意味が分からない少年の中に、酒鬼薔薇聖斗なるもう一人の自分(悪魔)が現れ、バモイドオキなる神を創って妄想を膨らませた挙げ句の計画的な殺人であった。
死を肯定し、殺人を正当化する。逮捕された時、「死刑にしてくれ」と叫んだが、自殺願望型殺人の悪しき先例となる。現実逃避的な倒錯した自己解放の狙いがあったのであろう。

その後、元少年Aの動向は途絶えるが、2005年1月に少年院を退院し、名を変え、人知れず社会復帰する。
その間、真相を知らされない人々の苛立ちと不安は募る一方で、ついに2000年、少年法が厳罰化の方向で改正され、刑事責任能力が14歳にまで引き下げられた。殺人、過失致死容疑は16歳まで刑事裁判に付され、重大犯罪は14歳まで刑事責任が問われる。
少年法には復讐・抑止重視の応報的司法と教育・更正重視の修復的司法の二つの立場があるが、不寛容な社会風潮と共に前者が優勢となった。

しかし、少年法厳罰化で少年犯罪が減ることはなかった。
一昨年の佐世保高1同級生殺人事件や昨年暮の名大生殺人・タリウム事件で、犯人はいずれも「人を殺してみたかった」、「どうして人を殺してはいけないのか?」とうそぶき、殺害欲求の動機が酒鬼薔薇聖斗化している。
実際、彼女らは“伝説化”した少年Aに強い関心を持っていた、いわゆる酒鬼薔薇聖斗予備軍であった。

そして、元少年Aが手記『絶歌』を出版し、また世間は騒然となった。
初版10万部が忽ち売り切れる反面、発売中止や不買運動を呼び掛ける声が澎拜と沸き上がる。販売や貸出しを取り止める書店や図書館まで現れた。
アマゾンに殺到した2千近いカスタマーレビューを観ると、被害者家族の事前承認を得ず、「元少年A」と匿名で出版し、印税を手にしていることに怒っている。本を読もうともせず、私の著書にも『絶歌』と勘違いしたレビューが書き込まれる過熱ぶりである。

「2度殺された」と突然の出版に憤り、出版に被害者側の同意を義務付ける法的規制を求める土師淳君の父親の思いは、人情論として至極当然である。私が当事者であったらそう考えるであろう。
しかし、私はあくまでも第3者であり、同種の事件の再発防止を優先的に考える。

他方、アマゾンのカスタマーレビューの約3割は、謎に包まれていた事件の真相や加害者の心理を知り、元少年Aが反省し、生き続けようともがいている事に同情、更正の可能性を見て、出版に肯定的な反応をみせている。
こちらは実際に読んでの意見なので、なるほど、そういう見方もあるのかと、私も大いに参考になった。
元少年Aの懺悔は「なぜ人を殺してはいけないのか、まだ分からないが、罰の重さ、苦しさは身に染みて分かった」と、不十分ではあるが、ゴールへの過程にいることはうかがい知れる。

総じて、日本社会には異質なものに拒絶反応を示す不寛容な風潮が、事件当時よりも強まっているように思える。
だが、それを反省する流れも確かに起きており、二つの潮流がせめぎあっているように思える。
事件当時、少年Aを擁護するものは、両親、兄弟以外、皆無に近かった。
しかし、元少年Aを理解し、真の更正を望む人々が次第に増えていることも否定できない。

実は、新井将敬の自殺事件は神戸事件から1年後のことであった。在日韓国人を両親に持つ気鋭の衆院議員で、「改革派のホープ」と称され、小沢一郎氏らと自民党単独政権崩壊と連立の時代を切り開く。「戦後世代初の首相候補」とまで期待されながら、些細な証券法違反容疑でマスコミの集中豪雨のようなバッシングに遭い、「自分はルーツが朝鮮人なので、釈明を聞いてもらえない」と自殺した。
私は新井憤死の真相についても『代議士の自決』で書いた。神戸の事件との共通性、人間の孤独の闇のようなものを感じたからであった。

酒鬼薔薇聖斗についてネットで両親が朝鮮人、韓国人とのデマが流された。その頃から、世田谷一家殺害事件など凶悪事件が起きる度にその種の無責任な噂が流布されるようになった。極め付きは公道で公然と徒党をなし、「朝鮮人、韓国人出ていけ」、「殺してやる」と大音量のスピーカーで行進するヘイトスピーチである。
1990年代は日本の転換期であったが、改革の挫折、景気停滞、格差拡大による社会分裂などが相乗的に作用し、保守化、右傾化へと向かい、戦前回帰的な安保法制案の強行採決など今また重大な転換期に差し掛かっている。

時ならぬ『絶歌』騒動の背景には、そうした世相がある。
北朝鮮による日本人拉致問題では被害者家族会の主張に無条件同調する人々が、従軍慰安婦問題では被害者の声を無視する矛盾した現象もある。
「罪と罰」は人類永遠のテーマであるが、過去の罪に真摯に向き合い、反省することの意味が全社会的に改めて問われている。

韓国でも少年犯罪が増え、日本と似たような厳罰化現象が起きており、『絶歌』騒動に無関心ではいられない。
世界の各地で戦争や自爆テロが頻発し、日常風景と化してすらいるが、「どうして人を殺してはいけないのか」を根源的に問い直すべき時代でもある。

そういうわけで、今週木曜日から土曜日にかけて神戸に入り、事件を今日的な視点から再検証し、しかるべき教訓を得ようと思っている。

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