|
「南京大虐殺」が国連教育文化機関(ユネスコ)により世界記憶遺産に登録された事に、安倍政権が「国連分担金の支払いを止めるべきだ」と反発し、物議を醸しているが、折しもパリで開催中のユネスコ定例総会では日本のイメージを大きく損なう逆風が吹いている。
日本外務省が中国に反論するために9月末、ユネスコ世界記憶遺産国際諮問委員会に提出した専門家意見書に、あろうことか札付きの反中派学者の独断的な著書が不用意に引用されていたことが問題視されているのである。 馳浩文科相は5日、総会で「透明性の向上」を訴えたが、日本の不透明性が露になり、防戦一方となっている。 問題の専門家意見書は佐藤地ユネスコ日本代表部大使が自己の意見書とともに提出したもので、高橋史朗・明星大教授が作成した。 産経新聞などでかねてから「南京大虐殺」否定の論陣を張っていた高橋氏は「中国の申請資料だけでは真正性について判断できない」とし、「約100名の日本兵が大虐殺を否定する本を出している」と主張し、南京市にいた中国人女性の日記については「伝聞情報に依拠した記述ばかり」と否定している。 この御仁の不明は、加害者側の肩を持ち、被害者側の証言を軽視するという真相解明の基本さえ弁えていないことにある。産経紙面等での偏った言説とあわせ、犯行否定の加害者心理に感情移入しているのがありありである。 さらに笑止なことに、高橋某は南京大虐殺を否定する仲間の東中野修道・亜細亜大教授の著書を引用しながら、中国提出の写真の撮影時期に「関連性が疑われる」と重箱の隅をつつくように難癖をつける。 そのうえで、南京軍事法廷で30万大虐殺の責任を認め死刑になった谷寿夫中将の証言まで否定し、「南京城内に500メートル入ったところで移動を命じられ、虐殺は物理的に不可能であった」と強弁した。 独断もここまで高じると、バカ者と一喝したくなる。南京城内に侵入し、興奮した兵士たちが殺戮に走ったと現地指揮官が戦陣日記に記している。常識的に考えても、一遍の命令で全軍が統率できるわけがない。 安保法制案を合憲と言い張った三バカ憲法学者のように、この手の曲学阿世の輩はどこにもいるが、「外務省関係者は『高橋教授は保守派の中ではバランスの取れた研究者だ』と話している」(毎日新聞11月6日)と庇っているというから、呆れるしかない。 外務省が不見識、時代錯誤に憑かれているから、極端な人物がバランスがあるように映るのである。 問題の意見書については、日本に対する印象を悪化させている、ホロコーストを否定するのと同様のイメージを世界に与えているとの声が日本国内でも起きている。 孫崎亨元外務省情報局長は「日本が『シベリア抑留』を登録する一方、『南京大虐殺』を非難したのも、世界から『日本は自国の利益だけで行動し、普遍的な価値観を持たない』と冷笑されている」(毎日新聞同)と慨嘆する。 外務省は国連安全保障理事会常任理事会入りの目標を掲げ、安保法制などで軍事的存在感を高めようとしているが、その前に、第二次世界大戦の反省から生まれた国連の意義と役割について根本から再認識する必要がある。 ユネスコ世界記憶遺産には来年度、旧日本軍慰安婦も韓国、中国など共同で申請される。 安倍首相は朴槿恵大統領との会談で旧日本軍慰安婦問題の「早期解決」を約束したが、二言なきことを期待したい。 やはりインドネシアでオランダ人女性が慰安婦にされたオランダのテイマーマン外相は「日本軍による強制売春であることに何の疑いもない」と断言しているように、日本軍による強制があった事は国際常識である。 高橋、東中野、櫻井よしこ、西岡力ら産経言論人はそれをも否定するが、産経新聞社主であった鹿内信隆が自著で主計将校時代に慰安所を設置運営していたと明かしていることぐらいは知っておくべきである。 日本外務省は『南京大虐殺』と同じ過ちを犯す愚を繰り返すべきでない。 |
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2015年11月06日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]





