河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

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日本では見逃されているが、変則的な日韓外相合意の幕裏で衝撃的な動きが進んでいた。そして、12月31日、「韓中国防部間ホットライン開通」と韓国、中国で同時に報じられ、韓民求・韓国国防長官と常万全・中国国防長官が初の電話会談に臨んだのである。
日韓外相合意の3日後であったのは、決して偶然ではない。この展開を見落とすようでは、今後の東アジア情勢は全く読めなくなる。日韓関係は日韓2国間問題の枠を超え、東アジア情勢と密接に絡んでいる。

ホットライン開設は、同年7月の韓中首脳会談で「戦略的な意志疎通を図る」として合意された。韓国としては米国、日本に次いで3度目であるが、日本とは従軍慰安婦問題などで折り合わずに事実上、中断状態であり、朴槿恵政権が安保の軸を米中に置いていることを端的に物語る。
そうした脈絡から、尖閣問題や南シナ海問題で中立を保ち、9月3日の北京での対日戦勝利70周年記念式典に朴槿恵大統領が参加した。

韓中軍ホットライン開設に敏感に反応したのが、ワシントンである。オバマ大統領が中国に対抗するリバランス戦略の軸を米日韓連携に置いている以上、当然の反応とも言えた。
かねてから従軍慰安婦問題が日韓間に軋轢を生じさせ、中国を利していると苦々しい思いで見ていたオバマ大統領は、日韓に歩み寄りを求める。
ソウルでの11月の日韓首脳会談で「従軍慰安婦問題の年内解決」が唱われたのはその産物であり、さらにその1ヶ月後の電撃的な日韓外相外相は米国にとって総仕上げの意味がある。
「最終的で不可逆的な解決」を最も喜んだのは米国であり、ライス大統領補佐官、ケリー国務長官が相次いで歓迎声明を出している。「自国の軍国主義的な過去への悔恨を示すことに消極的な安倍首相が妥協した」(ニューヨーク・タイムズ)との評価が一般的である。

では、米国に配慮した朴槿恵大統領の思惑とはいかなるものであったか?
ズバリ、「軍の関与」という安倍首相が拒否してきた強制性を日本側が認め、反省することで良しとすることである。
国民はどの国でもより多くの成果を求めるが、妥協を旨とする外交には元来、百%はない。韓国大統領府は二度にわたる対国民談話で文書なしの韓日外相合意への理解を求めているが、野党や市民団体の一定の反発は織り込み済であったと思われる。

日本側に多少譲歩しても、米国に対日関係改善で努力したことを認めさせ、韓中ホットラインを黙認させることが、国益上、得策と判断した。
米国から表だった反対の声は上がっておらず、その意味では成功したと言えよう。

朴槿恵大統領は年頭、父親の朴正煕元大統領が眠る国立墓地顕忠院を参拝し、芳名録に「統一を果たし、世界平和に寄与する2016年になる」と記した。
先述の韓中ホットラインには韓中の戦略的な意志疎通を強化し、北朝鮮の突発事態に韓中軍が協力して対応する狙いがあるとされるが、それこそが朴槿恵大統領の最優先の政策課題なのである。
習近平主席もオバマ大統領も北朝鮮事態に協調対応する相互合意は出来ており、その意味で朴槿恵イニシアチブに期待する面がある。

対する北朝鮮の金正恩第1書記は新年辞で昨年と異なり、「核抑止力」に一切触れなかった。
「金正恩訪中→第7回党大会のシナリオを読む」で指摘した核放棄→改革開放のシナリオはまだ生きていることの傍証となる。
従軍慰安婦問題は感情論に流れず、大きな視点からとらえ直す事が必要である。

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