河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

韓国政府は22日、北朝鮮が同日5時58分に元山付近からムスダンを試射したが、150キロ飛行して爆発した。さらに、8時5分に再度試射し、高度1000キロに達し、400キロ離れた東海(日本海)に落下したと発表した。前者は失敗、後者は「飛行性能は(一定の)向上」との見方を示した。
射程4000キロの中距離弾道ミサイルのムスダンは2007年に実戦配備されたとされながら、1度も試射されたことがなく、実態は不明であった。
今年4月15日に初めて試射され、続いて同月28日に2度試射されたが、いずれも数秒で空中爆発もしくは墜落した。5月31日にも試射が強行されたが、移動式発射台で爆発したことが韓国軍のイージス艦のレーダや衛星写真で確認されている。

今回を併せ2ヶ月でトータル6回試射し、最後の1発でようやく「成功」を収めた。単純計算して成功の確率は6分の1である。撃ってみないと飛ぶか飛ばないか分からないレベルであるが、これを直ちに実用的な兵器と見なすにはかなり無理がある。
一連の試射は金正恩委員長の肝煎りで実行されたものであり、今回も立ち会ったと見られるが、その狙いは何か?

それについて日韓のマスコミには様々な観測が飛び交っているが、残念ながらどれも皮相的に過ぎ、正鵠を射たものは見当たらない。
この問題を考察するには、近視眼的な視点には自ずと無理があり、歴史的なスパンが必要である。

一般的な軍事常識では試射無しのミサイル配備は下手をすれば飛ばないスクラップを並べることになり、冒険に過ぎる。
1つの可能性はダミー説である。私は1981年に北朝鮮東北部のオラン飛行場で、ダミーのミグ戦闘機がズラリと並んでいるのを見た。木製だが、上空からは本物に見え、実際、韓国、米国側はそのように数えていた。
ムスダンについても、敵に恐怖感を植え付ける為のダミーであった可能性を否定しきれない。

その2は、スカッドミサイルを輸出していたイラン、パキスタンで試射を重ねた上で実戦配備した可能性である。私は以前からこの点を強調し、「北朝鮮のミサイル技術がイラン、パキスタン以下であることはあり得ない」と指摘していた。
すると、1つの疑問が湧く。金正恩時代になって試射を繰り返し、失敗しているのは何故か、ということである。

しかし、実は、この疑問への回答はそれほど難しくない。
電力不足で、実戦配備されたミサイルの保守点検が適切に成されず、精密部が腐食しているのであろう。脱北軍人は武器の管理が不十分で戦闘機、戦車の多くが使い物にならなくなっていると明かしているが、デリケートなハイテク兵器であるミサイルなら尚更である。

秘密主義の金正日と正反対に、武器を誇示して相手を威嚇しようとする金正恩は、試射に積極的である。
しかし、それが裏目に出て、制裁による補修部品調達の困難に加え、工業の衰退が軍需産業に影響を及ぼし、ミサイルの維持管理が困難になっているのがあからさまになっている。

韓米側はミサイル試射を国連決議違反と表向き批判するが、その実、ほくそ笑んでいる。ミサイルの能力に関する情報を直に把握できるからに他ならないが、現時点で「北朝鮮のミサイルには核搭載能力がない」との見方が支配的である。
米国の科学国際安全保障所は北朝鮮が現時点で13〜21個の核を保有すると推定するが、運搬手段がない以上、軍事的には無意味である。
前にも指摘したが、韓米合同軍事演習で金正恩ら北朝鮮指導部を強襲する「斬首作戦」を実戦演習に組み入れているのも、北朝鮮が核ミサイルを開発する前にリスクを除去する狙いが秘められているからに他ならない。

金正恩委員長も「斬首作戦」を恐れ、常に居場所を隠す一方、今年3月に「核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの発射実験を行うように」と檄を飛ばした。一連の試射強行はその結果であるが、逆に、手の内をさらけ出すことになり、国際的孤立を深めた。
今回の実験で射程角度を高くし、落下範囲を北朝鮮領海に近い400キロに収めたのは、弾頭の破片を韓国側に押さえられるのを避けるためと見られる。先の人工衛星ロケット実験では断片を回収され、弾頭がアルミニウムに断熱材を張り合わせた粗末なものであり、部品の多くに輸入品が使われていることが発覚している。

金正恩委員長がムスダン試射にこだわったのは、29日からの最高人民会議に向けて自身の実績を誇示し、権力基盤を補強する狙いがあると読める。
それを裏付けるように、今回の試射について労働新聞、朝鮮中央テレビなど北朝鮮国内メデイアは「戦略弾道ミサイルの火星10号が上空1463.6キロに達し・・・」と事細かに報じ、金正恩の指導の賜物であると強調している。

国際社会の制裁強化で北朝鮮経済は破綻状況に直面し、国民の不満を押さえつけるために金正恩は強権支配に傾き、軍事に頼る悪循環に陥っている。
核・経済を共に進める並進路線は事実上、破綻しているが、それを認めれば権力の座が危うくなるジレンマがある。

日韓の一部のマスコミには北朝鮮制裁の効果を疑問視する声があるが、事はそれほど単純ではない。
それを熟知しているのが、北朝鮮の対外貿易の9割を占め、事実上、金正恩政権の命運を左右する中国である。
制裁の強化が北朝鮮の体制崩壊と地域の不安定化を招くことを恐れ、制裁の匙加減に苦慮しているのである。
習近平主席としては、北朝鮮への影響力を維持しながら、6ヵ国協議などで金正恩に進んで核放棄させ、改革開放へと舵を切らせたい。

そうした問題意識を共有しているのが、習主席と7回も会談している朴槿恵大統領である。
「非核化のない対話は欺瞞」であり、核隠しの対話はしないとしながらも、6ヵ国協議参加国の外交当局者等の「北東アジア協力対話」に政府高官を派遣したのは中国の顔を立て、その役割を期待してのことであった。
朴大統領と習主席の個人的な信頼関係が中国が国連制裁決議に同調する上で大きな役割を果たした。THAAD問題がそこに微妙に絡んできた事は既に指摘した通りである。

しかし、南シナ海問題での中国と米日の対立が北朝鮮問題に影を落としていることも軽視できない。
特に、参院選を意識してか、ここに来て安倍政権が中国艦の尖閣水域や日本領海「無害通行」などで対決姿勢を露にしていることが、事態を複雑にしている。「日本は北朝鮮の脅威を過度に煽って安保法制正当化など国内問題に利用している」として中国が警戒感を強め、北朝鮮問題が日中問題化している側面がある。

北朝鮮核問題は各国の思惑や利害が入り乱れて紆余曲折を得ようが、つまるところは、北朝鮮非核化と金正恩政権の処遇に帰着しよう。
その点において、米中の大局的な利害が一致するからである。

バイデン米副大統領が20日、PBSとのインタビューで中国に対して「北朝鮮の核を放置し、日本が核武装したらどうなるのか?日本は一晩で核武装する」と述べ、制裁を効果的に履行するように求めていることを明らかにした。
トランプが日本と共に韓国の核武装に選挙演説で言及し物議を醸したが、朴正煕時代に核開発に手を染めた韓国もその気になれば数年で北朝鮮以上の核を開発することが可能である(「韓国を強国に変えた男 朴正煕」参照)。
つまり、オバマ政権の真の危機意識は、小国北朝鮮の核保有よりも、それが大国日本、韓国の核武装を誘発することにある。そうした戦略的な思惑は習政権も共有しているのである。

全1ページ

[1]


.
河信基
河信基
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
検索 検索

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事