河信基の深読み

読者各位様:本「河信基の深読み」は順次、北朝鮮投資開発戦略研究所(2019年4月〜所長・河信基)の公式HPへ移行して参ります。

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韓国気象庁が第一報で、北朝鮮北東部の豊渓里(写真1)で今日午後12時36分にマグニチュード5・6の人工地震が発生したと発表した。米地質調査局と中国地震局も確認した。
昨年9月9日の第5次核実験が同じ場所で5・3の人工地震を起こしていることから、第6次核実験と見られる。
実験を強行するなら昨年同様に建国記念日の9月9日と予測する見方が支配的であったが、何故中途半端に今日なのか?

私は5日前のエントリーで「金正恩は今頃、日韓の動きに目を凝らしながら、核実験を強行したら米国がどう出るか、先制攻撃されないかと考えを巡らせていよう」と書いたが、不幸にも的中してしまった。
数日前に米国南部が巨大ハリケーンに直撃され、テキサス州を中心に膨大な損害を被っている。トランプ大統領がその対応で手一杯の間隙を突いたのである。

いかにも金正恩らしいと言えるが、朝鮮中央通信は核実験直前、金正恩が核武器研究所を視察し、「水爆」を視察する状況を写真配信している(写真2)。
写真には水爆の小型化を誇示するように火星14号核弾頭がこれ見よがしに写されている。電磁パルス(EMP)攻撃が可能な多機能弾頭を推測させる周到さである。
金正恩は「水爆の全ての構成要素が100%国産化された。強力な核兵器を思い通りにドンドン製造できるようになった」と述べたが、今回の核実験でそれを証明したと言いたいのであろう。

核実験を強行した金正恩の狙いを読み解くのは、それほど難しいことではない。
ICBM搭載用の水爆開発に成功したと誇示して国際社会、特に米韓日を動揺させ、米国を交渉のテーブルに引き出すことである。
米国との対話が始まれば、核保有国として認知させ、対等な立場を認めさせる。その上で要求を際限なく吊り上げ、他方で核ミサイル戦力を向上させて交渉力をアップさせ、米国に譲歩を迫るのは見え見えである。

対話さえ始まれば、金正恩が核を廃棄し、平和が保たれると期待する気分が一部マスコミにも見られるが、相手を見くびった幻想に過ぎない。
また、軍事行使はあり得ないとの声が散見されるが、相手がその種の主張を弱味と理解し、増長する攻撃的な思考の持ち主であることを知らねばならない。

現在の状況を簡単に言い換えれば、無差別テロを予告して閉じ籠ったテロ犯と対峙している状況、と考えれば分かりやすい。
無益な殺傷を差し控えさせるためにネゴシエーションは必要であるが、過度な期待をかけ、無原則的に譲歩するようなことがあってはならない。
北朝鮮はまだ核を搭載できるミサイル開発に成功しておらず、金正恩は密かに焦る。ネゴシエーションは核ミサイル実戦配備の時間稼ぎに利用されてはならない。

なお、金正恩政権は北朝鮮一般国民の意思を代表しているわけではなく、その厳格な区分けが必要である。
前から指摘しているように、マテイス米国防長官が軍事行使に対して「壊滅的な戦争になる」と慎重な姿勢を示したが、壊滅的な犠牲を被るのは圧倒的な米軍事力の対象となる北朝鮮国民である。仮に核先制攻撃となったらピョンヤンが第2の広島、長崎になってしまう。
昔は旧日本軍、今はISがそうしたように、金正恩は事実上、北朝鮮国民を人間の盾にしているのである。
一部のマスコミが「日本、韓国が甚大な被害を被る」と誇張し、怯えるのはマテイスの意図を曲解し、金正恩を喜ばせるだけの平和ボケである。

今後の課題は、国連安保理が金正恩の度重なる国連決議違反に警察権行使を含めた断固とした姿勢を示せるかにある。
トランプ大統領は軍事行使をオプションに入れ、米軍はその方向でいつでも作戦に入れるように、米韓合同軍事演習や自衛隊との演習を行っている。事実上の米韓日有志連合であるが、これに対して中国、ロシアは消極的、というよりも、警戒的である。
斬首作戦に怯える金正恩が一転、強気に出ているのは、それを見ているからである。

北朝鮮への制裁が効力を発揮していないとの見方があるが、表面的である。北朝鮮の軍事力を支えた基幹経済は長年の電力不足で壊滅的状況にあり、核・ミサイル開発も基本的には輸入品の加工、組立である。
昨年は失敗を繰り返したミサイル実験が今年に入って向上を見せているのは、必死になって闇市場で部品を買い集めているからである。英シンクタンク国際戦略研究所のマイケル・エレマンが今年8月に発表した報告書で「北朝鮮がウクライナの国営工場で生産された旧ソ連の液体燃料式エンジンの改良型を入手した」と指摘したが、その筋ではかねてから噂されていたことで、事実であろう。金正恩が得意そうに誇示している火星14号がそれである。

ロシアが黙認しなければ不可能なことで、プーチン大統領の意図が反映していると考えるのが合理的である。
プーチンはシリア問題でトランプとの対立を深めており、北朝鮮を使って揺さぶるつもりなのだろう。

THAAD韓国配備で米国と対立する中国も、ロシアと気脈を通じている面がある。
中国、ロシアは暴走する金正恩排除に必ずしも反対ではないが、米軍の軍事行使で地域における米国の軍事的存在感が高まることには警戒的である。
特に尖閣諸島領有で対立する安倍政権が北朝鮮を口実に軍備拡張に走っていると警戒している。

安保理常任理事国の間でポスト金正恩を含めた北朝鮮の在り方について合意が出来るか、有志連合で実力行使に入るか、まさに正念場である。

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