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金正恩委員長とトランプ大統領の幕裏デイールは佳境に入りつつある。
それを端的に物語るのが、金正恩のスポークスレデイーである崔善姫外務次官の一連の発言である。15日、「いかなる形でも譲歩するつもりはないし、そのような交渉は望んでいない」と述べた、とタス通信が報じた。ハノイ首脳会談でトランプが求めた完全非核化を念頭に置いた発言である。主語を曖昧にしているが、トランプ側には金正恩の意向と伝わる。 崔はハノイ会談決裂直後にも同様な発言をして米側をおそるおそる牽制した。会談決裂は望まない、どうか寧辺核施設廃棄の見返りに制裁を解除してほしとの金正恩の切なる思いを代弁しているのである。 それに対するポムペイオ国務長官ら米側の反応が自制的なのは、ある程度金正恩の本音の部分を見透かしているからと読める。 議会で弾劾の気運が高まるトランプの足元を揺さぶって何とか譲歩を迫ろうとの苦肉の策であるが、金正恩は腰が引けている。 トランプ以上に追い詰められているからである。ハノイ会談決裂後に中国首脳との会談を求めたが、袖にされ、孤立感を深めている。 国内も厳しい。実際、金正恩は今、戦時用に備蓄した2号倉庫、5号倉庫の米まで配給に回して急場を凌ぐ状況にまで追い詰められている。 猛暑と干魃、洪水被害で昨年の穀物総収穫量が500万トンを割り、多くの国民が食糧難の春窮にあえいでいる。大規模暴動に発展しかねない状況であり、強権的支配は限界に近付いている。 金正恩は戦略的次元の根本的な手直しが求められている。 核開発と経済建設を同時に進めると豪語した並進路線が完全に破綻し、全てが裏目に出ているのである。 日本のマスコミはどこも、その点がまだ理解できていない。 昨年4月、金正恩は並進路線は勝利したと終了を宣言し、経済建設に総力を挙げる新方針を宣言した。これを真に受け、北朝鮮は核開発所期の目的を達成し核保有国になったと報じているが、北朝鮮の実態が全く見えていない。 実態はどうか? 鉱物資源や労働力輸出を制裁対象に含めた2016年以降の国連制裁決議が効果を現し、資金難資材難から、核ミサイル開発は核小型化とICBMの実戦化で行き詰まり、中途半端である。 軍需に予算を取られた民政部門はどれも計画倒れの枯れ死状態であり、金正恩が提唱した5ヶ年計画は絵に描いた餅でしかない。 つまり、並進路線は軍事的にも経済的にも破綻し、北朝鮮の国力をいたずらに消耗させたのである。 その責任を回避しようと、金正恩は一発勝負に出た。トランプとのトップ会談に賭けたのである。 事実、昨年の第一次会談は北朝鮮国民に希望を抱かせた。「米大統領とのトップ会談は偉大な金日成大元帥も出来なかった・・・」と、一部にカリスマ性も芽生えた。 それだけに今年の第二次会談への期待は大きかった。制裁が解除され、生活が良くなる、と。当然、それに失敗すれば反動は極めて大きい。 北朝鮮指導部もそれを十分に理解しているので、いまだに対応に苦慮している。会談決裂、と報じるわけにはいかず、朝鮮中央通信や労働新聞は肯定も否定も、一切報じていない。しかし、国民の間には中国国境地帯での携帯やスマホ情報を通して、失敗したらしいと噂が拡散している。 労働党内部の学習会では「核は手放さない。自力更正で耐えよう」と引き締めを図り、他方で備蓄米を放出して動揺を抑えるに必死だが、事は時間との戦いのレベルに入りつつある。南米のベネズエラと状況が似てきた。 余録だが、著名な投資家のジム・ロジャースが近著で「北朝鮮は5年以内に世界で最も魅力的な投資先となる」と語り、話題を集めている。特別な根拠を挙げているわけでもなく、私が以前から述べていることを後追いしたような話である。だが、第二次首脳会談を迎えトランプ大統領が「北朝鮮は核廃棄し、改革開放に向かえば世界のどの国よりも急速に発展する」とツイッター等で発信し、北朝鮮を新規の有望な投資先として世界中に認知させた事は間違いない。 ハムレット金正恩も本音では気苦労抜きに贅沢三昧できる儲け話に乗りたいであろう。 保守強硬派を説得できるか、その一点に注目しよう。 |
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2019年03月16日
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