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(上)で「貿易戦争の裏で習近平主席が高笑い」と書いたが、26日のパリでそれが誰の目にもハッキリと映った。焦点の一つであるファーウエイ(華為技術)問題でEU欧州委員会は「単純に禁止しない」と各国の判断に任せたのである。イタリア、英国、ドイツはファーウエイ採用に前向きである。
トランプ大統領は安全保障上の理由を付けてファーウエイ排除を呼び掛けていたが、EUは袖を振ったのである。それどころか、イスラエルが占領したシリア領のゴラン高原への主権を認めると発表し、逆に孤立を深めてしまった。 ここに来て、米中の経済力の差が露になっている。 習主席はフランスのマクロン大統領の招きでメルケル・ドイツ首相、ユンケル欧州委員長らとの4者会談後に臨んだが、その直後に声明を出し、「反グローバル化や保守主義が台頭している。他国間主義こそ経済成長の原動力だ」と述べた。自由貿易主義の旗幟を高々と掲げるのは自分だと誇示し、トランプ大統領の保護主義を暗に批判したのである。事実上の勝利宣言に等しい。 直前まで、日本のマスコミはこぞってマクロンは中国のEU進出に歯止めを掛けようとしていると報じていたが、蓋を開けてみると真逆の結果が出た。マクロンは予想とは正反対に、「共に他国間主義を推進したい。中国と協力し、対話する用意がある」と対中融和姿勢を示した。 習の巧妙な一手が功を奏したのである。前日の中仏首脳会談で、フランス中心の欧州航空大手エアバスのA320を300機発注など電力、造船分野を含む総額400億ユーロ(約5兆円)の経済協力を申し出て、デモ対策で窮地にあるマクロンに手を差し伸べたのである。 英独仏がイタリアの「一帯一路」参加に警戒的であったのは事実であるが、3カ国に対する中国の投資額はEU全体の半分に達し、引き返せないところに来ている。 既にAIIBに加盟している英独仏が「一帯一路」参加の覚書に署名するのは時間の問題である。 習の欧州エアバスの大量発注は、トランプへの巧妙な当て付けでもあった。 というのも、エアバスのライバルの米ボーイングは旅客機737MAXの連続墜落事故で世界的な不信を買い、中国も同型97機の国内での運航を停止した。中国の旅客機需要は今後20年間で7000機と推定されているが、この時期でのエアバス大量発注は米国を揺さぶり、英独仏を引き付ける格好のカードとなろう。 EU首脳は中国を「競争国」と見なし、知的財産権保護などの通商ルールの順守を求めているが、中国は大きな問題とは受け取っていない。 中国側は今回のEU訪問中、「中国が訴える多国間主義や自由貿易の原則は、本来は欧州の理念である。一帯一路の方向性について反対できるわけがない」と外信記者に積極的に発信し、一段と自信を深めている。 文明論であるが、畢竟、中国の強みは製造業を握っていることである。世界の工場と言われていた一時代前は先進国に低廉な労働力を提供する下請けに甘んじていたが、次第に自力をつけ、自前で生産できるようになった。 ある時期まで、技術移転を迫り、先進各国の知的財産権を侵害していたし、現在もそうした状況が全く無くなった訳ではない。 しかし、世界特許の申請件数が米欧を抜いているように、確実に自前の技術を発展させ、蓄積し、先進国を部分的に抜き始めた。5G構築で世界をリードしているファーウエイはその象徴である。 もともと文明の三大発明と言われる火薬、紙、印刷技術は中華文明圏の産物であり、教育熱や教育水準の高さは欧米の比ではなかった。 その自力が再現、発揮されつつあるということである。 習が欧州首脳を前に「欧米が300年かけた産業化(工業化)を中国は改革開放の40年で達成した」と述べたのは、単なる強がりではない。 |
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2019年03月29日
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